完全自爆で車両保険に入っていなかったのは悪夢としか言いようがないかも知れないが、どうやらこのようなケースは星の数ほどあるようだ。そんな状況下で何とか走れるようにメンテナンスしたいと考えたときには、できる限りお安く、しかしながらそれなりの美しさに仕上げたいとはサンデーメカニックなら思うものだろう。一般的には、エンジンを降ろして部品交換するのがベストだが、ここでは、エンジンコンプリートのまま化粧直しした実例をリポートしよう。

高性能金属充填剤で欠落部分を再現

ここでは高性能金属充填剤「コンクエスト110」を利用。-30~170℃が利用可能な温度レンジだ。今回はエンジンの外側なので、120℃を超えないと思うのでチャレンジしてみた。硬化後に磨くことでアルミのような輝きも得ることもできる。類似商品は数多くある。

型取り用樹脂ねんどでデザイン複写!?



エンジン左側面を下にして地面を滑走した様子?その結果、削れて欠落部分ができてしまった。ダメージ位置がもう少し下であれば、もっと容易に修復できたかも知れない。利用したのは欠落部分を型取り用樹脂ねんど。沸騰したお湯に浸してグツグツ煮ること数分。硬化していた固まりのねんどは、温めることでつきたての餅のように柔らかくなり、型取りできる状況になる。

似たデザインの吸入右側を複写してみた

水冷ツインカムエンジンを目視観察してみたら、削れた排気左側と、生きている吸気右側シリンダーヘッドのデザインが酷似!?そこで、吸気右側シリンダーヘッドのデザインを型取り用樹脂ねんどで複写した。結果はご覧の通り大成功!!この形状を参考に金属充填剤を盛って造形すれば良いと考えた。

混合比は商品によって違うから要注意



ここで利用したコンクエスト110は、付属の混ぜ板に適量ディンプルがあり、大きなディンプルに主剤、小さなディンプルに硬化剤を取り、適量に混ぜあわせることができる計量板が付属していた。これを目安に充填剤を混ぜることで、おおよそながら混合比は許容範囲に入るようだ。不要なクリアファイルをはさみでカットして、混ぜ合せ板として利用。しっかり混ぜておかないと、後々硬化不良を起こすので要注意だ。

多過ぎず少な過ぎず盛りつけよう



現状患部にはバリやささくれが多いので、小型ポリッシャーに120番のサンディングディスクを取り付けて、表面をある程度整える。表面を慣したら周辺を脱脂洗浄し、ヒーターで周辺を乾燥させた。折れた金ノコを削って自作した小さなヘラを使い、患部周辺にコンクエスト110を盛り付けていく。この日の作業場気温は12~13℃程度。仮に夏場でも即硬化開始するようなことはない。完成形状を見据え、少な過ぎず多過ぎず盛りつけていく。

型取りねんどを押し付けて複写



型取り用樹脂ねんどで形状複写した修正型の仕上げ面にシリコンスプレーを適量吹付ける。このスプレー膜があれば、硬化後もポンッと取り外せるはずだ。狙いを定めて患部に型を軽く押し付けつつ、マスキングテープで固定した。この状態で待つこと半日。最低でも4~5時間程は固定したいところである。気温と相談しながら5時間程度待ったが、ヒーターなどで熱を加えれば、金属充填剤は硬化しやすくなる。しかし、温めることで型取り樹脂ねんどの形状がタレて崩れてしまうため、常温で作業進行する。

形状複写、復刻に成功!!

想像していた通り、おおかた形状再生することができた。作業を急いで患部周辺を温めてしまうと、型取り用樹脂ねんどの形状変化で仕上がりにも違いが出てしまったはずだ。

小型ポリッシャーで形状を微修正

完全硬化していないと考え、鈑金作業用のハロゲン投光器で強制的に熱を加えて乾燥硬化させてみた。一般的なデスクランプや作業灯でも、白熱球を近づけることで強制乾燥させることができる。ハロゲン投光器の効果は大きく、寒い夕方の作業でも威力を発揮した。1時間程度でカチカチに乾燥したので、小型ポリッシャーを使ってバリ取り修正を行った。敢えて鋳肌表面には手を加えていない。

ペイント調色で完全復活!?

今回の作業は、モトメカニック誌のアドバイザー、モデルクリエイトマキシの工房で作業進行した。僅かにメタリックが入った半艶ブラックのようで、まずは鋳肌感のさらなる再現でザラ付くようなペイントを施し、さらに仕上げペイントで乾燥を待った。ハロゲン投光器で1時間ほど乾燥させて完成!!このクォリティが伝われば幸い。何も言われなければ、気がつかれない仕上がりになった。

POINT

  • ポイント1・ 高性能金属充填剤は中古車興しの現場でも頻繁に利用されている。磨けばアルミのように輝き、光沢も出る
  • ポイント2・ お湯で変形する型取り用樹脂ねんどを利用するときには、熱乾燥などの併用ができないので自然乾燥が必須
  • ポイント3・ 型取り用樹脂ねんどに離型用シリコンスプレーを軽く吹き、型を金属充填剤に押し付けてマスキングテープで固定
  • ポイント4・ 色合せやペイント技術によって、より一層高度な仕上がりになる

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