名車ヤマハSRは、初期モデルの登場から40年以上が経過。 FI=フューエルインジェクション仕様のヤマハSRが登場してからでも10年が経過した。2021年には、遂に最終モデルのファイナルエディションが発表された。そんなロングセラーモデルだが、特に、FIモデルはローエミッションによる希薄燃焼から来るオーバーヒートによって、排気側のバルブステムシールが不良となり、マフラーから白煙を吹きやすいトラブルも報告されている。事実、白煙が気になるとして、内燃機ショップへ対策を依頼するショップやユーザーも数多いようだ。ここでは、排気バルブのバルブガイド製作から交換までの様子をリポートしてみよう。

永遠の4ストビッグシングル

もはや誰もが認める4ストビッグシングルの代名詞、それがヤマハSR。1978年に登場してから2008年モデルまではキャブレター仕様のSRが発売され、排気ガス規制が厳しくなる2001年シーズンを前に国内仕様のSR500は姿を消している。2021年、ファイナルエディションが登場したが、途中の生産停止期間(FIモデル開発期間)を含め、43年間のロングセラーモデルとして数多くのファンに愛され続けてきたモデルである。

素材の変更で何故、白煙対策できる?

純正バルブガイドの素材は、一般的に鋳鉄製。旧車の中には砲金製やアルミ青銅製があるが、現代ではリン青銅製やチューニングエンジンではベリリウム銅製などが使われている。現代の国産車はほぼ鋳鉄製だが、耐摩耗性と熱伝導性をハイレベルで実現するのがベリリウム銅製。撮影協力して下さったiB井上ボーリングでは、マテリアルに関係なく、メーカー純正部品としての供給が無くなったモデル用バルブガイドも素材からの削り出しで製作対応している。左の先端が尖ったバルブガイドは、エンジンオイルの掻き落としガイドと呼ばれる仕様だ。ステムシールが無くてもオイル下がりしにくいタイプとして知られている。

ヘッドコンディションで微妙な対応

メーカー純正でもバルブガイドの設定はあるが、マテリアル=素材は鋳鉄製が一般的。素材以上に重要なのが外径サイズだろう。シリンダーヘッド側のコンディションによっては、純正ガイドの打ち込みでは圧入しろが少なく、短期間でガタが出てしまう可能性がある。そんな状況を考慮しiB井上ボーリングでは、請け負ったシリンダーヘッドのコンディションに合せてバルブガイド外径を設定し、最善の仕上がりを求めている。

デジタルカウンター付きの旋盤を利用し職人さんが加工進行中。仕上げ寸法付近なるとダイヤルゲージで明確な寸法データを測定。シリンダーヘッド側のカイド穴加工の寸法に対し、100分の数ミリだけプラス公差でガイド外径寸法が仕上げられる。1000分台まで測定できる高性能デジタルカウンター付き旋盤でガイドを製作。現在はガイド穴の下穴加工中。

熱膨張を利用してバルブガイドを抜き差し

効率良くシリンダーヘッドを温めた後に、間接温度計ではなく、より正確な温度を測定できる接触式温度計を利用し、シリンダーヘッドの温度を測定。熱膨張を利用して削りだしガイドをスムーズに圧入する。バルブシートを交換する時は、常温にて旧シートを削り落とし、削り出された新シートの圧入時は、バルブガイドと同様にシリンダーヘッドを温めてから圧入する。

吸排気バルブのフェイス加工が重要



バルブシートカットを施す際の条件は、新品バルブもしくは、中古バルブをベースに「フェイスカット」を行ったものを利用する。摩耗した中古バルブでも、当たり面=バルブフェースのリフレッシュ加工によって中古バルブがを蘇える。そんなリフレッシュ工程を「フェイス加工」と呼ぶ。この作業によって、バルブシートとバルブフェースの当たりが圧倒的に良くなり安定する。もちろん「良い当たり」を得るためには、バルブガイドのコンディションが大きなカギを握っている。

高性能加工機でシートカット



末永く、しかもコンディション良く走り続けるには、吸排気バルブシート当たりが大きな意味を持つ。モデルを問わず、腰上オーバーホールの際には必須の内燃機加工がバルブシートカットとバルブシートの摺り合わせだ。スイスのミラ社製バルブシートカッターを利用するiB井上ボーリング。旧式シートカッターでは、内/外/当り面の3角度をカットしなくてはいけないが、この加工機では1枚刃で一気にシートカットを行う。

光明丹を薄く塗布して当り幅を点検

バルブフェース側へ光明丹を薄く塗り、バルブをガイドに差込んで光明丹を塗布したバルブフェースをバルブシートに何度か当てる。さらにバルブを抜き取り、バルブフェースの光明丹をウエスで拭き取ってから、再度、バルブガイドに差込んでバルブフェースをシートに当てる。これにより光明丹がバルブフェースへ付着し、バルブシートの当り位置や当り幅を明確に知ることができる。

内燃機加工のプロショップ

創業60周年を超える内燃機加工のプロショップでありもはや老舗と呼ぶに相応しいのが埼玉県川越市のiB井上ボーリング。一般的な内燃機加工をハイレベルに行い、同社自ら様々な加工技術を提案する。現代的な技術を旧車エンジンや旧式エンジンへ転用する「モダナイズ」はiBがもっとも得意な分野。減らないシリンダー「ICBM®」は数多くの旧車ファンから羨望の眼差しを得ており、多くのユーザーがその素晴らしさを体感している。

撮影協力:iB井上ボーリング

POINT

  • ポイント1・オイル下がりによるマフラーからの白煙吹きは吸排気バルブガイドの仕様変更で対策可能
  • ポイント2・ バルブガイドは純正部品を購入するのではなく、内燃機のプロショップに製作依頼と交換仕上げを依頼する
  • ポイント3・ 吸排気バルブの当りが良くなることでアイドリングも安定する

初代モデルから大きな設計変更を受けず、ロングセラーモデルとして数多くのバイクファンに愛され続けてきたヤマハSR。長年乗り続けているオーナーも数多く、新車購入以来、10数万キロ走破!!といった車両が多いのも同モデルの特徴だろう。摩耗した部品を単純に交換するのではなく、内燃機加工による修理でエンジンコンディションを回復しているユーザーも多い。例えば、バルブガイドが摩耗したり、バルブシートの当たりが悪くなると、アイドリングが不安定になってしまうもの。また、マフラーから白煙を吹く症状も発生してしまう。そんなときには新品バルブに交換、もしくは中古バルブをベースにフェイス加工を施し、バルブガイドを交換することでコンディション回復しているエンジンも数多くある。

撮影協力を頂いたiB井上ボーリングでは、ロングセラーのヤマハSRに注目。400ccのノーマルエンジンのままで「軽量クランクシャフト」を提案し、シングルらしい鼓動とパワフル感をノーマル以上に楽しめるリメイクエンジン仕様を提案し、高い評価を得ている。近年、SRファンの間で話題にのぼるのが「マフラーからの白煙問題」だろう。具体的には、高年式のSR400「FIエンジンのオイル下がり」がそれだ。FI化によってローエミッションの希薄燃焼が可能になり、その影響で、排気バルブがこれまで以上に高温となってしまうようだ。その影響で、想定よりも早く排気側バルブステムシールにダメージを受けやすいらしい。状況としては、高温な排気ガスで排気バルブのステムシールがダメージを受け、エンジンオイルがバルブステムを通じて下がってしまう=白煙を吹くトラブルが多く出ているようだ。高年式SRのユーザーから、シリンダーヘッドの内燃機加工を受注する事例が増えているそう。事実、高年式のSR400用シリンダーヘッドの修理が入ると、依頼者からは「マフラーからの白煙を消す対策はありませんか?」との問い合わせを何度か受けたそうだ。iB井上ボーリングでは、60年代以前の外車や旧車に多く見られる「エンジンオイルの掻き落としガイド」を提案。熱伝導が良く耐摩耗性も高い高機能素材のベリリウム銅を利用し、放熱に関するアドバンテージも追求したそうだ。また、標準仕様の鋳鉄製バルブガイド以上に熱伝導性が良く、自己潤滑性能も高いリン青銅製バルブガイドに交換する事で排気熱の伝導性を高め、ステムシールのダメージを減らす策も提案しているそうだ。

小排気量エンジンの場合は、市販キットパーツを組み込むことでエンジンチューニングを楽しむ例が圧倒的に多い。事実、安価なキットパーツも数多くあるが、排気量を問わず4ストロークエンジンのコンディションアップには、バルブガイドのガタ修正やバルブシートの当り修正が極めて効果的。キットパーツうんぬんやボアアップうんぬんではなく、エンジンコンディションの向上を目指した内燃機加工本来の姿を是非、体感頂ければと思う。

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