足元の輝き=「キラキラ感」次第で、美しさが一変するスポークホイール。一本一本の輝きが変るだけで、こうも美しく見えるものかと、驚いてしまうのもスポークホイールの特徴である。そんなスポークホイールの張り替え時に、せっかくだから「インチ変更」して、タイヤの選択肢を幅広くしてみたいなどなど、考えたことは無いだろうか?ここでは、そんなアイデアを具現化するための具体的な方向性ややり方を、スポークホイールのプロから伺ってみよう

難しく考え過ぎずに寸法確認から

本来なら16インチホイールのノーマル車をベースに、18インチ化するオーダーサンプルで撮影させていただいた。このようなインチ変更依頼は、日常茶飯事らしい。ハブ、スポーク、リムがセットになっている組み合わせなら組み込むだけだが、今回のようにアンマッチな組み合わせでスポーク張りしたい場合は、最初に平坦な作業台を準備。次に、作業台の上にパブとリムを置き。ハブがリムの中心になるようにコンベックスやものさしを使って仮置きする。

リム側から不要なスポークを差込むと……


不要なスポーク&ニップルの「くの字」側(ハブへの引っ掛け側)をカットした不要なスポークを用意し、リム側から差込んでみよう。これにより、リム穴に対するスポーク角度を判断することができる。その延長上にあるハブ側の穴とリム側ディンプルまでの長さがおおよそのスポーク長になる。リム側フジツボ形状の穴の向きがスポーク張りに於いては重要になる。

仮組みによって長さ判断もできる


ハブ全幅とリム幅は異なるので、作業台上にリムを置く時には、リム台を用意すると良い。台の上へリムを置きながらハブセンターとリムセンターを目測で一致させてみよう。台の厚さ(高さ)を調整してセンター合せすれば良い。何らかのスポークが手元にある場合は、ハブにスポークを差し込みリム穴へ向けることで、スポーク長をある程度は判断することができる。

ハブ径とリムサイズの組み合わせは、いわば無限大。機種によってスポークの長さは異なるものだし、リムメーカーによっても特性がある。仮に、寸法的許容範囲に収まるスポークがあれば、流用することも可能である。しかし、メーカー純正スポークはすべて部品番号で管理されており「スポークの太さ」や「クビ下の長さ」や「ニップル外径」で管理されているわけではない。従ってメーカー純正流用を考える際には、様々な寸法データを知らなくては成立しない。写真の内掛け用スポークは、太さ、クビ曲げ角度やクビ上寸法はほぼ同じだが、クビ下長が2mm異なる。双方に互換性はあるが、長いスポークで張るとスポーク先端が飛び出し、短いスポークで組むとニップル部分にネジ山が露出してしまうこともある。

同じ太さでもニップル外径が異なる例

スポークの太さにも様々な種類がある。原付の細いスポークとモトクロッサーの太いスポークの違いを考えれば、誰にでも理解できるはずだ。また、前輪と駆動輪である後輪を比較すると、同一モデルでも駆動輪である後輪の方が太い。中には同じスポーク径(太さ)で同じネジ寸法なのに、リム側「ディンプル穴径」の違いで、外径の異なるニップルもある。カスタムの際には、このタイプのニップルに助けられることが多い。

ヤマハセローとブロンコのリアホイール


ヤマハの初期型セロー用リアドラムブレーキハブとブロンコのリアドラムブレーキムハブの部品番号は異なる。しかし現物同士を確認すると、寸法関係はほぼ同一。つまりペイント仕上げか、バフ仕上げかの違いで部品番号管理されていた。セローもブロンコも、リアホイールサイズは18インチで同一。だったらスポークも同一だろうと考えると、実は長さが違っている。セローはアルミリム、プロンコには鉄リムを採用していたため、アルミリムの強度確保でリムの厚さに違いがあった。その分、スポーク長が2ミリ異なるという唯一の特徴がある。このような現実を知ることで、純正流用時に役立つこともある。

18インチ化は小加工で成立した

他モデル用のメーカー純正スポークを流用して組み立てるケースは数多くあるとフェイス代表の鈴木さん。スポーク長を確認した段階で、部品箱から出してきたのは2種類のホンダ純正スポーク。太さはいずれもΦ3.2mm。ベストな長さはクビ下の折れ曲がり部分から内掛けは161mm、外掛けは163mmといった結果だった。ここではクビの曲げ角度を僅かに深め、セット角度を調整してから流用した。

POINT

  • ポイント1・ スポークが無い状態でハブとリムをレイアウトして、ハブセンターとリムセンターをおおよそ合せてスポーク長を測定する
  • ポイント2・ ハブセンターに対してリムセンターのオフセット5mm程度なら、スポーク張り調整で吸収可能
  • ポイント3・ 組み立て調整作業以前に、使うスポークに対してハブやリムがマッチングしているかを確認するのが基本

スポークに発生したサビは、走行安定性に大きく影響する要注意ポイントである。走行中の衝撃、例えば、僅かなジャンプからの着地時はもちろん、縁石にタイヤを乗り上げる際の衝撃などが影響して、スポークが折れてしまうことは意外と多い。ひとたびスポークが折れると、負の連鎖でつぎから次へと折れてしまうのが、スポークであることも知っておきたい。サビの無いスポークは、外力に対して靭性(ねばり)があり安心だが、サビたスポークは、簡単に「ポキッ」と折れてしまうものだ。

長年乗り込んだスポーク車のタイヤ交換時には、タイヤを外した段階でリムの振れ確認を行うのと同時に、スポークが緩んでいないか?サビで固着していないか?必ず確認するように心掛けよう。実測したところ、スポークが緩んでいて、リムが左右ヨレヨレに振れていた……そんなケースは珍しくない。先日、タイヤ交換したスーパーカブは、何とスポークが折れていた。スポークの張り替えは重要だが、タイヤ交換時にスポークホイール単体になったときなどは、スポークホイールの芯出し振れ取りを実践するのがよい。当時物部品にこだわる旧車ファンは数多いが、部品に対するこだわりと同時に「コンディションに対するこだわり」も忘れずにいて欲しいものである。

ここでは単純なスポーク張り替えではなく、リムサイズを変更するカスタマイズを実践。スポークホイールに関する豊富な知識とノウハウを持つ、フェイス代表の鈴木さんにお話を伺いつつ、スポークの採寸作業を撮影させて頂いた。

「サイズ変更の依頼は多いです。ハーレーの前後16インチ化やヤマハSRを前後16インチにするチョッパーカスタムも流行ってますね。ヤマハSRカスタムは、今も昔もご依頼が多いです。クラシック風のドラム仕様や高性能なディスクブレーキ仕様など、いろいろあります。スーパーモタードが流行った時期は、オフロード車を17インチのワイドリムにするカスタムが多かったです」。カスタムムーブメントのなかで、常に足元を支えてきたのがフェイスだったのだ。旧車のレストアに関しては「カワサキZ1/Z2やホンダCB750KシリーズやCB400FOURは張り替え依頼が多いです」。

見たこともないホイールの張り替え依頼も受けますが、そんな際には、分解前のホイールASSYを送って頂くのがベストだそう。リムオフセットなどを測定してから分解し、単品にしたスポークとニップルをそれぞれ計測してから新品部品を手配。中には「一度バラした部品をユーザーさんへ送り返し、ハブとリムをオーナーさんが磨き、再び送り返していただくこともあります」と鈴木さん。すべての作業を請負うこともできるそうだが、磨き済の部品を預かった方が確実です」とフェイス鈴木さん。まずは相談ありきである。

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