「走ってナンボ」と呼ばれるのがバイクだが、そんな走りを支えているのが間違い無くメンテナンスである。4ストロークエンジンなら「オイル交換」が大切。車体周りのメンテナンスでは「ドライブチェーンの張り調整」も重要である。このようなメンテナンスが、何よりも大切だと理解していても、カスタム内容によって、簡単にできたはずのオイル交換やドライブチェーン調整ができなくなってしまう……、といったこともある。カスタマイズには、ある程度の覚悟も必要なのである。普通にオイル交換できて、普通にチェーン調整できるのが当たり前。ところが、カスタムしてみたら……、と言ったことも多いのだ。ここでは、そんな高い壁に挑んだ実例をリポートしてみよう。

集合管だからメインスタンドは不要なの?


走っているときの快感だけではなく、マシンをケアするときにもスムーズかつ楽チンでなければ快感を長持ちさせることはできない。マシンはスズキGS1000だが、エキパイが内側へ絞り込まれ、バンク角が深くなったGSX750Eベコ用純正メインスタンドを改造し、4イン1マフラーながらメインスタンドを取り付けられるように改造してみた。

パイプ角度を変更して溶接しつつ、マフラーと干渉しない部分にプレート補強を溶接して4イン1のテールパイプとメインスタンドが全域で(作動途中)も干渉しないようにレイアウト検討。これならイケそうだと先が見えたところで本溶接へ移行。

4イン1でもオイル交換可能に!!


サイドスタンドを利用し、車体を左側へ傾けたとき、エンジンオイルがスムーズに抜けそうな位置を発見。その位置にドレンプラグ(ドレンボルト)があれば、エンジンオイルはスムーズに抜き取ることができる。そこで中古オイルパンをスペアで購入。ドレンボルトの座を旋盤で削りだし製作した。

想定した追加ドレン位置を切削加工


井上ボーリングさんへ加工依頼。マーキングした位置に削りだしたドレンプラグの座を取り付けられるようにした。この位置ならサイドスタンド利用時にエンジンオイルをスムーズに排出することができそうだ。

機械加工によって追加ドレンの位置が決定したが、そこへドレンボルトの座を溶接する際には、アルゴン溶接のトーチ先端が入りにくいことがわかった。そこでリューターを利用し、冷却フィンの一部を削り込んで干渉除けにした。

アルゴン溶接は経験豊富なプロへ依頼

スペシャルバイクやレーシングマシン製作が得意なクラブ1.2FKへ、ドレンプラグ座の溶接を依頼。オイルパンは薄く作られているので、溶接後に「間違い無く歪みが出るよ」とのお話しが……。そうなったらまた考えようと。

バッチリで溶接完了、しかし……


追加するドレン座の横にある冷却フィンを削り込んだことで、溶接トーチがスムーズ入り美しいビードを引くことができた。外側から確実に溶接し、スムーズにエンジンオイルが流れ出るように、オイルパン内側は仕切りを加工修正。追加ドレンのネジ山途中には貫通横穴を追加し、エンジンオイルがスーッと流れ出るようにイメージ。しかし、溶接後のオイルパンを定盤上に載せるとガスケット面が歪み、ピタッと当たらないことが判明した。その際、歪みと逆方向に大型ゴムハンマーでドンッと叩いたら、歪みはほぼ補正され、さらに定盤で摺り合わせしたことでガスケット面はピタッ!!

4イン1の集合管でもドレンはこの位置

改造済みの新しいオイルパンを装着。改造後に何度か試運転しているが、オイル滲みはまったく無く良い感じだ。標準ドレンプラグの位置関係を見れば、オイル交換できない様子は御理解いただけるはずだ。追加ドレンプラグはボルトの頭が17mmのホンダ横型用を流用した。

POINT

  • ポイント1・ カスタムはボルトオンパーツがすべてでは無く、オーナー自身が創造することもできる
  • ポイント2・ カスタムの方向性を説明、理解して頂いたら、実作業はプロに依頼するのがベスト
  • ポイント3・集合管でもメインスタンドを利用でき、集合管でもオイル交換が容易にできるようになった

交換するだけで走りの印象が様変わりするのが4イン1集合マフラーの特徴だろう。しかし、装着したことによる変化は、違った場面でも起こってしまうことがある。商品によっては、マフラーの取り回しとドレンボルトの位置関係が悪く、集合マフラーを取り付けたことで、ドレンプラグを抜き取ることができない=単純にオイル交換できなくなってしまうこともある。また、集合管とメインスタンドが干渉してしまうため、メインスタンドの撤去を余儀なくされてしまうケースも少なくない。ドライブチェーンの張り調整も、メインスタンドがあれば作業進行は迅速である。しかし、サイドスタンドだけになると作業性が各段に悪くなってしまうことが多い。

カスタマイズ実践したスズキGS1000に限らず、カワサキZ1やKZ1000シリーズでも、集合管の取り付けによってメインスタンドを外さなくてはいけないケースが多い。過去にそのような経験をしたことがあるサンデーメカニックは、数多くいるはずだ。

GS1000に手持ちの集合マフラーを取り付けると、やっぱりこの不都合な「ダブルパンチ」を受けてしまうことになる。だったらノーマルマフラーのままで……、と考えたが、集合マフラーのフィーリングには、また違ったテイストがあり実に魅力的である。メインスタンドを外さないとマフラーは取り付けられず、メインスタンドを外したことでドライブチェーンのメンテナンス性が悪くなってしまう……。どちらも犠牲にせず楽しめないものか、と考えた結果、それならさらなるカスタマイズ=自分仕様の追求によって、なんとか対策できるかも知れない……。そんな発想からのカスタムチャレンジが、改造メインスタンドの取り付けと、改造オイルパンによるドレンボルトの追加だった。

他モデルでも過去に改造経験があったが、集合マフラーでメインスタンドを利用できるようになると、それはもう便利。パーキング時にも、最善の安定状況をチョイスできるようになるし、オイルパンをモディファイしたことで、マフラーを取り外したり取り付けを緩めたりすることなく「エンジンオイルを交換できる」ようにもなった。そんな理想を具現化したのが、このカスタマイズである。メンテナンス性の向上と理想的な走行フィーリングを両立した具体例でもあった。

オイルパンの改造では、ドレンボルトの位置を変更するため、ドレン座を追加で溶接した。すると、ガスケット座面が歪んで反ってしまった。溶接をお願いしたクラブ1.2FK代表の大平さんによれば、「反った座面はハンマーリングで戻ります」とのお話。今回、溶接の熱が残るうちにオイルパンの一部をゴムハンマーで一撃。もちろん、この叩きによる補正は経験が無ければできないノウハウである。驚いたことにハンマーによる一撃後には歪みが消え、定盤の上でガスケット面がカタカタすることが無くなった。念のため、取り付け前には定盤を利用し簡単に面出し摺り合わせしたが、オイルパンはピタッと組み込むことができ、その後もオイル漏れやオイル滲みが発生することは無かった。

取材協力
iB井上ボーリング(機械加工)
クラブ1.2FK(アルミ溶接)

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