バイクにとっては動脈であり、毛細血管でもあるのがメインハーネス。そのメインハーネスの復旧&レストアを終えたので、次に注目しなくてはいけないのが電気系の「各ユニット」の作動性とコンディションアップである。これらの電気系を制することができれば、完成後のトラブル、走行中のトラブル発生は、ほんとうに少なくなる。そんな事実をまずは知って頂ければと思う。とにかく電気メンテナンスは重要!!単純にコンディションアップすることで良い結果を得られる。レストア後のハンドルスイッチは、新品部品に見間違う美しさへ蘇った。

旧車のスイッチはバラバラにしやすい

ハンドルスイッチはボロボロだった現車から取り外した部品をレストア進行。右スイッチは、なんと新品部品の未使用品をゲットすることができた。上の完成状態の左右スイッチを比較して頂けると幸いだ。分解したスイッチは、かろうじて再利用可能な雰囲気!?なので、完全にバラバラにして内部パーツのサビ取りから行った。残念ながら後年式シリーズモデルのスイッチデザインや中味の部品は、デザインが異なり互換性は無かった。

タンクのサビ取りだけではない!!

スイッチ内の鉄製インナーパーツはサビサビだったが、肉厚は残っていて腐りはなかった。そこで利用したのがサビ取りの秘密兵器!?花咲かGタンククリーナー。同ケミカルを10倍のお湯で希釈して、ペットボトルの底をカットした容器に一晩漬けてみた。見事、サビ取り+防錆処理にも成功した。

各種ビスやネジは新品に交換

このヤマハYA5が開発生産された60年代初頭は、JIS/ISO規格ではなく、旧JIS規格を採用していたため、M5以下のボルトやビスは「ピッチ」が異なっていた。大手ホームセンターのネジ売り場へ行くと、近年は以前よりも旧JIS規格の商品が店頭に並んでいるような気がする。昭和の工業製品を直して使おう!?という気運なのか?

ISO規格(現在) 旧JIS規格
M3 P=0.5mm P=0.6mm
M4 P=0.7mm P=0.75mm
M5 P=0.8mm P=0.9mm
M6 P=1.0mm *M6は同ピッチ*


スイッチ内部の部品はサビで腐食進行している雰囲気だが、花咲かGの効果で鉄部品に酸化皮膜が載っている。コード類を固定するバンドの締め付けピスも、マイナス頭を採用していた時代だ。ここまで来れば先が見えてきた!!

小物部品は酸化防止皮膜を形成

アッパー側ホルダーにはウインカースイッチが組み込まれている。ロア側ホルダーは、クラッチレバーホルダーが一体化され、ホーンスイッチが組み込まれている。ホーンの作動(共振音)は、スイッチ部分のアースが肝心だ。配線コードは同色同サイズ芯線へすべて張り替え、保護チューブには、メーカー純正と同じビニールチューブを利用する。

未使用スイッチでもハーネスは交換

右側ハンドルスイッチ(ライトスイッチ) は、ネットオークションで見つけた未使用部品。不人気モデルは、オークションでもライバルがいないため、容易に購入することができた。新品インナーパーツはやはり信頼性が高くて安心。新品スイッチはテスターで作動確認済み。未使用部品でもハーネスは新品にすべて張り替え安心。

単品部品で作動確認

純正ホーンのフタを取り外し、端子をバッテリーと直結してみた。しかし、残念ながらホーンは鳴らなかった。そこで、各構成部品をドライバーの柄でコツコツやったら、突然「ブピーッ!!」と響き始めた。これなら修理できそうなので、各部をクリーンナップ&調整したら、バッチリ鳴るようになった!!

機械式ホーンは調整次第

機械式ホーンは、共振板の位置関係を調整するアジャストボルトが付く。この旧式渦巻き型ホーンの場合は、キャップを外した内側にアジャストボルトがあり、そのボルトでギャップ調整することでホーンの響き方がまるで変る。

カバー修理とペイントで仕上げ

ホーンカバーはパチッとハメてあるだけなので、簡単に取り外すことができた。このカバーをペイントし直すことで、見た目も音の響きも良くなる。黒ペイントの剥がれが目立ったので、ワイヤーバフで旧ペイントを剥がした。

カバーの目立つ部分が凹っていたので、ワイヤーバフでペイントを剥がした後に、当て金で受けながら(ハンマーを万力で固定利用)、凹を押し上げるように平坦に叩いた。この後、サンドペーパーで凹部分をより平滑にしてからペイントで仕上げた。

POINT

  • ポイント1・旧車のスイッチはバラして接点を磨くことで復活しやすいが、小物部品の紛失には要注意
  • ポイント2・高性能サビ取りケミカルに浸し、錆びたスイッチ部品をサビ取りしながら部品表面に防錆皮膜を形成させよう
  • ポイント3・ ハーネスコンディションは張り替えによって最善にできる。ただしスイッチ接点のハンダ付けには要注意
  • ポイント4・ 機械式ホーンは汚れや腐食が原因で音が出ない、鳴らないことが多いので、本体にコツコツと振動を与えてみよう

現代のバイクは、プラスチック部品の組み合わせが圧倒的に多い。ハンドルスイッチに関しても同様で、ハウジング自体は比較的容易に分解することができる。しかし、そこから先は、構造や部品の組み合わせ理解していないと、なかなか進むことができない。肝心のツメを折ってしまったり、本来なら引っかかる部分をナメてしまったりなど、以外と分解そのものが大変になる。それに対して旧車用ハンドルスイッチは、単純明快な構造を採用している例が多い。防水機能などを備えていないのが普通なので、スイッチを開けてビックリ!!内部が真っ赤にサビていたり、未確認生物が孵化した形跡があったりなどなど、想定外の出来事を目の当たりにすることもある。

今回のハンドルスイッチも、想像していた通り、小物部品はサビていた。それでも再利用できそうだと判断。さらに今後のコンディション経過も考え、小物部品のサビ取りを実施した。こんな小さな部品のサビ取り時にも効果的なのが、ガソリンタンクのサビ取りケミカルである。サビ患部をワイヤーブラシなどで擦ってから、PETボトルをカットした容器の底に部品を入れ、タンク用のサビ取りケミカルを流し入れて浸すことで、サビ取りと同時に酸化防止皮膜を成形するため、使い勝手が良いのだ。もちろんハケ塗りタイプのザビ除去剤でも良いので、今後の腐食防止を念頭に作業進行するのが良い。

部品の締付けにはビスやネジが使われているが、そんなネジ類は新品部品に交換したいところだ。旧車の場合は、旧JIS規格のネジを使っている例が多いので、特に、1965年以前 (昭和40年以前) のモデルは要注意。メーカーによって切替えタイミングには違いがあるが、同じ太さのビスだと思って締付けようとした際に「渋さ?」を感じる時には、同径のピッチ違いを疑おう。特にM5、M4、M3は採用例が多いので要注意である。

機械式ホーンのメンテナンス時には、リード線を使ってバッテリーと直結し、音が出るか出ないか?確認してみると良い。今回の旧式ホーンはカバーの内側に共振板調整ボルトがあったので、カバーを外して調整作業を実践したが、70年代以降のモデルでは、12Vでも6Vでも、本体外側にプラスビスの調整スクリューがあるので、そのスクリューを回すことで共鳴音の強弱を調整することができる。まったく音が鳴る気配がないときには、小型ハンマーやドライバーの柄でホーン本体をコツコツ叩き、様子見してみよう。サビや汚れが共振板やスイッチ接点に挟まり、振動を起こさなかったり通電できない状況になっていることも多いのだ。音が出ないときには「コツコツ叩いて」みること。また、ホーン本体が、他の部品と触れていると(クラッチケーブルなど)音が出にくいので、ケーブルの取り回しを見直し変更してみよう。

この記事にいいねする

今回紹介した製品はこちら

コメントを残す

今回紹介したブランドはこちら