旧車のトラブルや不具合の筆頭とも呼べるのが電気系。ポイントやコンデンサーのコンディションが悪いのなら、程度の良い部品や新品部品に交換することで、コンディションは良くなり、気持ち良く走ることができるようになるはずだ。仮に、それら部品コンディションが低下しているのなら、トラブル症状からも「おおよその原因」は突き止めやすいもの。しかし、調子が良いときは何事も起こらないのに、ひとたび不調になると、どうも手こずってしまう……と言った電気系トラブルの場合は、人間に例えれば「血管」や「神経」とも呼べる「メインハーネス」にダメージがある例も多い。ここでは、旧車のメインハーネスを疑いリフレッシュしてみることにした。

外観だけで判断せず中味を確認しよう

旧車のコンディションは、単純な部品交換のみで好調回復するケースが多々ある。新品部品が入手可能な人気旧車なら安心だが、もはやパーツは絶版で、程度が良い中古部品が見つからないケースも多々ある。そんな代表例がメインハーネスである。そんなときには現車部品=メインハーネスをベースに、各部を修復再生してみると良い結果を得られることが多い。レストア作業は、チャレンジしながら楽しもう。まずは劣化した保護チューブをカット除去し、内部ハーネスの点検開始。

ギボシ端子の太さに違いがある!?


メインハーネスの修理再生時に必要不可欠なギボシ端子群。70年代初頭以前のギボシ端子は現在のような部品形状ではなく「こけし」のようなオス端子形状だった。仮に形状が違っていてもオスメスの寸法には互換性があるので気にすることはない。新しい部品の方が間違い無いので端子交換しよう。端子圧着の際には、配線を抱き込むように圧着する圧着ペンチで必ず行おう。また、国内バイク4メーカーのギボシ端子は、ホンダとスズキがやや細く、ヤマハとカワサキがやや太い一般端子サイズを採用。さらにカワサキのウインカー用ギボシ端子は、特別に細いサイズ(ウインカーステーの通し穴を通過できるモデルもある)のギボシ端子を採用している。

巻きテープは剥がし、チューブは切開


幹となる太いメイン部分から各端子へつながる=枝部分になる保護テープやテープの巻きを剥がし除去していく。この段階では、ステアリング部分の保護チューブ以外は完全に剥がし、配線1本1本を確実に目視点検した。中には押されて潰れていたものもあった。

端子に吹く緑青(ろくしょう)を除去


緑青が吹いている端子が多かったこのモデル。現代の端子はスズメッキなどの表面仕上げが多く、腐食しにくいのが特徴。この当時の表面処理は、腐食に弱かったのだろう。クエン酸をお湯で割った溶液に浸し、緑青を溶解してからウエスで拭き取る。単純な汚れや油分除去の場合は、アセトンに浸してウエスで拭いても良い。汚れは不要になった歯ブラシなどでゴシゴシ洗浄しよう。

なかなか見つけられない(売っていない)4WEY端子は、カシメ部分を起して端子を取り外してから洗浄した。再利用したい4WAY端子は、再カシメ後にハンダ固定した。修理実践モデルは1960年代初頭に登場したヤマハ125YA5。この時代の4WAY端子用の保護カバーは、透明ビニールチューブを差し込んだだけのもので、簡単に取り外せた。端子に吹いた緑青はネチョネチョしている。配線および端子の固定が済んだら、新品のクリアチューブをカットして保護カバーにすれば仕上がりも良い。

ハーネス専用テープで良い仕上がりに

ハーネステープを巻くときには、粘着部分が熱に強いハーネス専用のテープ=ハーネステープや、自己融着タイプと呼ばれるハーネステープを使って巻き直すのがよい。ギボシ端子を修復もしくは交換して、ギボシ保護カバーを交換してからテープを巻き付けて補修するのが良い。このような手順で作業進行すれば、かなり良いコンディションに仕上がる。

見仕上がりはこの通り美しい!!

ステアリング可動部分の保護チューブや保護テープ内で、肝心のハーネスが切れてしまっているケースが実は多い。このハーネスは、ステアリング部分の屈曲が穏やかで保護チューブにも弾力性が残っていたため、今回は敢えて再利用した。ハーネステープを巻く際には、保護チューブを移動して内部のハーネスにダメージや潰れが無いか確認した。再利用の保護チューブはシリコンスプレーを吹き付けて磨き、各ハーネスも保護チューブを外した段階で一本一本磨き込もう。新品ハーネステープをしっかり巻き付けることで、ご覧の通り程度極上部品に仕上がった。

バッテリーターミナル系ハーネスこそ!!

バッテリーターミナル用ハーネスは、当時のヤマハ純正部品に対して「2サイズ太くした強化仕様」としてみた。これでセルダイナモは、間違いなくスムーズに回転すると思うが、実際に思惑通りの働きをしてくれて大感激。電気系のフルレストアだからこそ、こんな部分にも気を配りたい。

POINT

  • ポイント1・ 漠然と傷んだパーツを眺めるのではなく、1箇所1箇所を確実に仕上げるように心がけよう
  • ポイント2・ 旧ギボシ端子を再利用する際には、汚れ落としをしっかり行ない、ウエスで拭き取ろう
  • ポイント3・ ギボシ端子には様々な種類があるので、購入する際にはしっかり商品を見定め、見極めてから購入しよう
  • ポイント4・ ハーネステープを巻き付けるときには、たるみや折れやシワが出ないようにしっかりキュッキュッと巻き付けよう
  • ポイント5・ セルスターター機能のあるモデルの場合は、バッテリー周辺の動力系ハーネスもしっかり作り直そう

メーカー純正新品部品が入手できるモデルなら、より一層安心。コンストラクター製のリプロダクションパーツでも、高品質な機種適合品が購入できるのなら、それはもう安心である(人気モデルのカワサキZ1/Z2やホンダCB750KシリーズやCB400Fourなど)。ところが、一般的に旧車用補修部品は、絶版=販売中止になっている例が数多く、なかなか思い通りに部品入手できないものが多い。だからこそ、そんな旧車をコンディション良く乗り続け、楽しんでいる姿は、旧車ファンからすれば「羨望の眼差し」に値するものでもある。ここでは、旧車を制するためには避けて通ることができない「電気系」部品の要であるメインハーネスに注目してみよう。

作業実践モデルのメインハーネスは、運良く比較的程度が良かった。しかしながら、細部を見れば、ギボシ端子は緑青によってみどり色に腐食。保護テープはほつれていたり切れている箇所があり、ムキ出しになったコードのビニール被服にはダメージを受けているところもある。指先で触れても、ネチョネチョ感がある場所も……。

ここでは、すべてのハーネステープを剥がし、歴代ユーザーが保護していたと思われるスパイラルチューブなどもすべて除去して、中古のメインハーネスをベースに「フルレストア作業」を行ってみた。肝心なことは、人間に例えた場合の「神経」=各コードの断線があってはならないことだ。配線コードは、保護表皮=ビニール被服の色分けで明確になっているため、一本一本の道筋を確認しながら、明らかにダメージを受けていたり心配要素がある際には、同色同芯サイズ線の新品コードを準備して、配線交換(俗に「張り直し」と呼ばれる)を行えば良いのだ。徹底的に楽しみたいのなら、全色コードとすべての新品端子を準備し、保護テープをすべて剥がしたメインハーネスを参考にして、完全自作のメインハーネスを製作しても良いだろう。事実、このような方法でメインハーネスを自作している旧車ファンは数多く存在する。

ちなみに、エンジン始動中にハンドルを勢いよく切ると、エンジン停止したり、ヘッドライトやウインカーが消灯したりなど、何らかの影響が出る場合は、ステアリング周りのハーネスが断線していたり、断線しかけている証拠でもある。そんな症状が出た場合や、過去に出た例がある場合は、配線をたどってダメージ箇所を発見して、根本的な修理を実践しよう。

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