
マスター=元型となる純正部品(劣化&硬化でカチカチのゴム部品)形状を見る限り、抜き取りがスムーズにできそうなので「石膏型」でチャレンジするのがベストかも?と判断した今回のDIY部品製作。ある程度の数作り(例えば10個20個製作)を想定するなら、シリコン型を起こすのが間違いないはず。しかし、今回のケーブルプロテクターは、部品形状が平坦かつ単純なので、石膏型で、しかも最低2個の製品作りだと考えた場合、間違い無く石膏型の方が一般的と言えるような気がした。
前回リポートした「型作りの前半」では、石膏液の流し込みとサイザルを使った型の補強段取りを解説したが、ここでは引き続き、製品作りの一部始終をリポートしよう。
目次
ウレタンゴムが摩擦に対して減りにくい
アダプトカラーウレタンゴム80Lと呼ばれる商品を利用し製品作りする。この商品は、重量比で主剤100に対して硬化剤を60の設定で混合させることで程良い硬さの製品になる。数多くの紙コップを用意し、間違えて使わないように、流し込みの混合液を作る際には常に新品の紙コップを利用しよう。比率は重量比なので料理用の秤を準備するのがよい。
カラートナーでウレタンゴムに着色
カラートナー液が同梱されている商品なので使い勝手が良い。大きな模型屋さんや美術クラフト系商品を扱う専門店、WEB通販でも購入することができる。ウレタンゴムは完全乾燥すると相当硬くなる印象だが、中強度なら適度に弾力性があって、硬すぎる印象は無い。トナーの入れ過ぎには要注意。特に、今回は黒なので色浸透が良いようだ。主剤と硬化剤を混ぜた混合液に、少な過ぎず、多過ぎず、適量のトナーを入れる。混入したら、割り箸などを使って、しっかり混ぜ合わせよう。混合液は即硬化しないので、作業はじっくり確実に行なうことができる。
マスター型取りと同じカリ石鹸で剥離処理
乾燥した石膏型は湿気が完全に無くなり、軽く感じるはずだ。このマスター型の乾燥は常温でじっくりゆっくり行うのがベスト。家庭用の除湿器を応用することもできる。四季を通じて数日以上乾燥させるのがベスト。次の週末まで放置するくらい、のんびり作業しても良いようだ。日数的には1週間から10日は乾燥させるのが良い。脱型したマスター型の表面に離型剤となるカリ石鹸をウエスに適量塗布する。型部分だけではなくアクリル板で型取りされた平面部分にもカリ石鹸をしっかり延ばして塗布しよう。そして、さらなる離型促進に!!
剥離剤はカリ石鹸だけではなく「シリコン離型スプレー」をしっかり吹付けて離型促進を行うのが良いそうだ。ここで再確認。離型剤を塗布する前に、型の中に残ったマスター修正用のネンドは必ずキレイに除去してから離型処理を実践しよう。
ウレタンゴムの流し時は石膏型をコンコン
石膏型を斜めに傾けながらウレタンゴムの液体を上流からゆっくり流し入れ、徐々に傾きを無くして水平にしながらゴムを流し込む。表面張力を確認できるまで、ウレタンゴムの混合液をしっかり流し入れよう。石膏型を水平に置いてウレタンゴムの混合液を流し入れ、必ず表面張力を確認する。この表面張力=ある程度ゴムを盛っておくことで、硬化時に発生するゴムの引け(微妙な縮み)に対応することができる。水平状態の石膏型を指先でコンコンと叩いてエアー抜き促進を行う。混合液が安定するように、色付きでわかりやすいアンバーのアクリル板に3箇所の穴開けを行う。穴の寸法やカーブは、フロントフェンダーをマスターに穴位置寸法を決定しよう。
高温乾燥機を利用してゴムの硬化促進
穴加工済のアクリル板を固定する際には、アルミテープではなくガムテープ(布テープ)を利用すれば良い。ADAPTカラーウレタンゴムは、常温23℃なら24時間で乾燥硬化。高温乾燥機を使った場合は、60℃の設定で4時間が硬化時間である。高温過ぎても良くないようだ。こんな作業時でもカーベックのCVジュニアが圧倒的に使える!!
まるで羽根付き餃子のような仕上がりに!?
表面張力分のウレタンゴムが「羽根付き餃子」のようにハミ出し、さらなる余りは3箇所の穴から溢れ出ている。結果的にはCVジュニアを利用して60℃で5時間ほど硬化させてみた。溢れ出たウレタンゴムが硬化していることを確認できたため取り出した。ガムテープをゆっくり剥がしてから、石膏型から慎重にアクリル板を剥がしてみた。石膏型は、壊れたり、型崩れするまでは、使い続けることができる。
車体に取り付ければ堂々の純正部品風!!
美味しそうな羽根付き餃子が完成!?餃子よりも魅力的な復刻部品!?これで完全ワンオフのDIYケーブルプロテクターが完成!!石膏型を壊さないように慎重に作業することで、5個や10個は型抜き可能!?かも知れないが、実際には2個だけ作って終了した。羽根付き餃子と言うよりも、不気味なゲジゲジ虫のようにも見えるケーブルプロテクター。羽根付き部分のバリは、ハサミでカットすれば良い。カット後、表面にシリコンスプレーを吹き付け、ウエスでしっかり磨けば完成!!
- ポイント1・ウレタンゴムの混合時は主剤と硬化剤の重量比率を確実に。料理用の秤を利用するのが良い
- ポイント2・ カラートナーの混ぜる量は、少な過ぎず、多過ぎず。少量入れて割り箸でかきまわし、程良くセッティングしよう
- ポイント3・ ウレタンゴムを流し込むときには表面張力を意識しよう。裏当て板がしっかりしていれば完成品の取り付けも容易になる
程度が良い純正部品が残っていて、それを型取りできるのなら、実に手っ取り早い!?と考えがちだが、石膏型でゴム部品をワンオフ製作する際に注意しなくてはいけないのは、石膏型はシリコン型と比べると再現性はいまひとつになる。その分、モデル型は可能な限りコンディションが良いものを使いたい。今回のマスター部品は、完全に硬化していたが、スクレパーでキレイに剥がすことができたのがラッキーだった。
一方、マスター型となる純正部品型が欠損していたり、まったく無いような場合は、似たような形状のマスターをアクリル板素材から作り出すことができる。実は、カワサキ用復刻部品を製作した後に、アクリル板で波板形状になった商品を見つけたので、その波板アクリル板を素材にカットしてから温めて曲げ造形し(ここでもカーベックのCVジュニアが活躍した)、それをマスター型として同じような石膏型を作ってみた。すると、長年使われてき純正部品をマスター型にするよりも、明らかに高精度な型作りができ、ウレタンゴムで製品注型した際には、こちらの完成品の方が、見るからにシャープな仕上がりを得ることができた。完成した部品同士を目視比較すると、明らかにアクリル波板を素材に作ったマスター型の方がシャープなエッジを持ち、より一層、納得の仕上がりを得ることができた。
今回のように、石膏型を作ってからのゴム製品注型は、決して楽な作業ではない。のんびり取り組む時間が必要なことも忘れずにいたい。特に、前半の石膏型作りでは「石膏型の完全乾燥が成功の決め手」になるので、慌てて乾燥中の型を強制乾燥させたり、完全乾燥前に製品作りをするなど、慌ててはいけない。乾燥促進のコツとしては、乾いた新聞紙に型をくるみ、湿気を感じたら新しい新聞紙に交換することだ。また、温度が高くならない除湿器を併用しても良いだろう。
撮影協力 モデルクリエイトマキシ
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