コンプレッションゲージで測定する圧縮圧力は、エンジンコンディションの判断基準として活用される数値ですが、不調の原因を想定するのに使えるのがリークダウンテスターです。吸排気バルブなのか、ピストンリングなのか、エンジン不調の原因特定に大いに役立つテスターの使い方を紹介しましょう。

コンプレッション低下にもいくつかのパターンがある

エアーコンプレッサーのホースをつないで圧力を設定して、ピストンを圧縮上死点で止めたシリンダーのプラグ穴から空気を送り込み、吸排気バルブとピストンリングからの空気漏れ量を測定できるリークダウンテスター。測定時はピストンを完全に上死点にしておかないと、送り込まれた空気でピストンが押し下げられてしまうので要注意。


圧縮圧力やリークダウンを測定する前に、タペットクリアランスが適正か否かをチェックしておく。この時点でクリアランスが下限以下ならバルブシートの摩耗が進行していると判断できる。もっとも薄い0.01mmのシックネスゲージすら入らない状態なら、タペットがカムシャフトのベース円に乗り上げているためバルブは完全に閉じきらず、圧縮圧力は低くなりリークダウン量は多くなる。

「良い圧縮」はエンジンを好調に保つ重要な要素のひとつです。キャブやインジェクションで「良い混合気」が作られ、ベストのタイミングでスパークプラグから「良い火花」が飛んだとしても、燃焼室内の圧縮圧力が低ければ充分なエンジン出力にはつながりません。

エンジンのパンチ力がイマイチだと思った時に、圧縮圧力を知ることは不調解決の糸口になります。機種ごとのサービスマニュアルを見れば、圧縮圧力の標準値が必ず表記されています。

カワサキZ1の場合、圧縮圧力の標準値は980kPaで使用限度は690kPa、気筒間のバラツキは98kPa以内と指定されています。この表記は現在のSI単位系に従ったもので、1970年代当時の表記では標準値10kg/cm2、使用限度7kg/cm2、バラツキ1kg/cm2以内となります。

圧縮圧力が最大値となるのは吸排気バルブが閉じてピストンが再頂部に来る圧縮上死点時ですが、圧縮圧力が標準値から低下する原因としてはエンジン内部の摩耗が考えられます。シリンダーと接触しながらストロークするピストンリングが摩耗すれば、リングの合い口の隙間が広がって燃焼室で圧縮された空気が逃げてしまいます。そのため、リングの合い口隙間には上限が定められています。

吸排気バルブがしっかり閉じなければ、バルブとバルブシートの隙間から空気が漏れてしまいます。バルブの開閉時に強い力で打ちつけあうバルブとバルブシートが摩耗することでタペットクリアランスが小さくなることが、バルブがちゃんと閉じない原因として考えられます。Z1のタペットクリアランスの標準値は0.05~0.10mmですが、その隙間以上に摩耗が進行すれば、バルブは常に開いた状態となるため圧縮圧力は低下します。

タペットクリアランスが適正であっても、バルブとバルブシートの当たり面にカーボンスラッジが噛み込むことで気密性が下がると圧縮圧力の低下につながります。バルブシートが沈んでタペットクリアランスが小さくなった場合、シックネスゲージで測定すれば分かりますが、カーボンの噛み込みはタペットクリアランスを変化させない場合があるから面倒です。タペットクリアランスが小さくなっていないのに圧縮が漏れているとしたら、原因はシリンダーヘッドを分解してみないと分かりません。

単気筒エンジンなら分解は容易ですが、4気筒エンジンでは簡単とはいきません。4気筒の圧縮圧力を測定して1気筒だけ圧縮圧力が低かった場合、Z1の場合98kPa以上の差違があれば修理が必要です。

圧縮圧力が低い原因が吸排気バルブにあるのなら、シリンダーヘッドだけを外して吸排気バルブの摺り合わせやバルブシートカットを行うことでコンプレッションが回復するかもしれません。しかしピストンリングに問題があるなら、シリンダーまで外さなければなりません。

コンプレッションゲージでは圧力の絶対値は測定できますが、標準値より低い場合に何が原因かまでは分かりません。圧力低下の原因が吸排気バルブへのカーボンが噛み込みだけなのにシリンダーを外してピストンリングの合い口隙間を確認するするのは、走行距離がある程度に達しているエンジンなら同時チェックや内燃機加工という判断もあるでしょうが、考え方によっては無駄な作業ともとらえることができます。このような場面で重宝するのがリークダウンテスターです。

POINT

  • ポイント1・コンプレッションゲージで測定する圧縮圧力は、エンジンコンディションを把握するための重要な指針となる
  • ポイント2・経年劣化や異物噛み込みなど、圧縮圧力低下にはいくつかの原因があり、修理には正しく状況を判断する必要がある

燃焼室内からの空気漏れを測定できるリークダウンテスター


新品ピストンリングを組み込み、バルブシートカットを行ったばかりのエンジンでリークダウンを測定すれば、リーク量は10%以下と超優秀な数値を示すはず。リーク量を示す右のゲージは、右下を指すほど漏れ量が少ない。

リークダウンテスターはリークという単語が含むことから想定できるように「漏れ」を測定するテスターで、圧縮を測定するコンプレッションゲージとは正反対の要素を知ることができます。

具体的には、ピストンを圧縮上死点位置に止めた状態でプラグ穴からエアーコンプレッサーの圧縮空気を燃焼室に押し込んだ時の気密性を測定します。セルモーターやキックペダルでクランクシャフトを回して、圧縮圧力を測定するコンプレッションゲージが動的なのに対して、ピストンを動かさず測定するリークダウンテスターは静的で、この点でも正反対です。

リークダウンテスターには2つのゲージがあります。1つはコンプレッサーの空気圧をレギュレーターで調整した後の圧力を示し、その200~300kPaに調整した圧力を燃焼室に送り込みます。もう1つのゲージは、燃焼室に送り込まれたエアがどの程度漏れているか、つまりリークダウンしているかを示します。

リークダウン量は圧縮圧力のような絶対値ではなく、燃焼室に入れた量に対する漏れのパーセンテージで示されます。完全な気密状態にあればリーク量は0%で、逆にバルブが開いていれば入れた空気は全部燃焼室から出て行くのでリーク量は100%となります。

圧縮上死点では吸排気バルブは閉じているものの、ピストンリングの合い口隙間はゼロにはならないので、押し込んだ空気は僅かに漏れます。ゲージによって若干違いはあるでしょうが、私が所有するゲージではリーク量が10~40%の範囲であれば漏れは少ないと判断しています。

このリーク量が40~70%範囲になるとMODERATE=中程度と判断します。入れた空気の60%も漏れてしまって中程度で良いのかどうかは判断つきかねるところですが、これはあくまで静的な測定なので、実際にエンジンが回っている状態ではこの程度の漏れは許容されるのかもしれません。さらにリーク量が増えて70%以上となると流石に漏れが多いので修理が必要だと判断できます。

リークダウンテスターが重宝するのは、圧縮圧力だけでは見誤りがちなエンジンコンディションが把握できる点です。最新のエンジンの中には圧縮圧力の標準値が1500kPaを超えるものもあります。その感覚でZ1の980kPaという圧力を見てしまうと、どこかからコンプレッションが漏れていると判断しても無理はありません。

しかし980kPaという圧縮圧力の上でリークダウン量が20%未満であれば、吸排気バルブやピストンリングからの圧縮漏れはないと判断できます。

POINT

  • ポイント1・圧縮上死点で固定した状態でプラグ穴から圧縮空気を送り込んで漏れ具合を確認するのがリークダウンテスター
  • ポイント2・2気筒以上のエンジンでは、それぞれのシリンダーのリーク量のバラツキを把握してメンテナンスの方針を立てる

空気が流れ出す場所で不調の原因を特定できる


他のシリンダーの圧縮圧力が軒並み1000kPaを示す中、1気筒だけ圧縮がほぼゼロ状態。組み付け時の人為的なミスであることが濃厚だ。


リークダウンテスターをセットすると90%の空気が漏れていることが分かる。


プラグ穴から入れた空気はインテークマニホールドから盛大に漏れているので、原因は吸気バルブにあることが判明した。これによりシリンダーを外す必要がない=ピストンリングに異状はないことも分かった。

コンプレッションゲージとの合わせ技でより正確なエンジンコンディションができるのがリークダウンテスターの特長ですが、さらに便利なのはリーク量が多い時にどこから漏れているのかが分かる点です。

ゲージの理屈からして明白ですが、プラグ穴から圧縮された空気を無理矢理燃焼室に入れるので、気密性が低い場所にリークして空気が流れる音が出るのです。仮にリーク量が50%だった場合、ピストンリングが摩耗していればオイルフィラーキャップを外すと空気が流れるシューッという音が聞こえます。排気バルブがしっかり閉じていなければマフラーから音が聞こえ、吸気バルブが開いていればエアクリーナーケースから音が聞こえます。

じつはリークダウンテスターの最大の利点はここにあります。つまり、リークが吸排気バルブから発生していればシリンダーを抜く必要はなく、オイルフィラーキャップを外して空気が流れる音がすればシリンダーヘッドからバルブを外す必要はないのです。もちろん、どちらか一方の作業だけでは不安で気持ちが悪いなら、バルブシートカットとピストンリング交換の両方を行ってもかまいませんが、圧縮圧力が低いという現象に対して、その原因がどこにあるのかを知らせてくれるリークダウンテスターの役割は小さくありません。

ここで画像を掲載しているカワサキKZ900LTDの例では、4番シリンダーのみ圧縮圧力がほぼゼロという状態で完全に何らかのトラブルが発生していました。リークダウンテスターを接続したところ、ピストン圧縮上死点状態で90%がリークするダダ漏れ状態であることがわかり、さらにキャブレターを外したインテークマニホールドから盛大にエアを吹き出していました。

そこでシリンダーヘッドを取り外して吸気バルブを確認したところ、組み付け時にバルブステムを曲げるミスを冒したことで完全に閉じていないとこが判明。単に圧縮圧力を測定するだけでは可能性をいくつも想定できてしまいますが、リークダウンテスターを併用することで原因特定までの近道を辿ることができました。

実際に分解する前に不具合の目星がつけられる点で、リークダウンテスターは旧車や絶版車のエンジンメンテナンスの味方になることが間違いない測定ツールです。


空気が盛大に漏れた吸気バルブ(左)のステムは僅かに曲がっている。吸排気バルブをぶつけて曲げたまま組み込み、その時はうまくバルブガイドに収まったものの、セルを回してカムがバルブを開いたら閉じられなくなったらしい。テスターでリーク場所が特定できたので、最短距離で修理できた。

POINT

  • ポイント1・リーク量が多い場合、プラグ穴から入れた空気の出所によって要修理ポイントが分かる
  • ポイント2・コンプレッションゲージとリークダウンテスターを活用することで、エンジンのコンディションを素早く的確に判断できる

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