
愛車のメンテナンスは自分自身で実践できても、外装パーツのペイントや補修ペイント、特に、バイクの顔でもあるガソリンタンクのペイントは「プロにお願い」するのが一般的だろう。それでも、自分自身の手でペイント実践してみたい!!と考えるDIYが大好きなサンデーメカニックは数多い。失敗するのは怖ものだ。しかし、やってみなけりゃわからない!!覚えられないのが、ペイントの実践である。ここではペイントのプロにご指導頂きながら、缶スプレーペイントにチャレンジしてみた。果たして、助言を参考に自分自身=DIYで仕上げることができるのだろうか?
重ね塗りで仕上げるキャンデイペイント
キャンデイペイントは下塗りのカラーや発色具合で、仕上がり表情が大きく変化するペイント。下塗りがシルバーでなくてはいけない、といった決まりごとは当然無い。仮に同じシルバーで塗っても、メタリックの粗さによって輝き方には違いが出る。また、下塗りの色に微妙なアクセントで色を追加すると、仕上がり表情が面白くなる。これはシエンナーと呼ばれるオレンジクリアとインヂゴと呼ばれる濃いブルーのクリア。
ホンダのエイプ純正の白タンクは、足付け脱脂後に白サフェーサーを吹いて乾燥を待った。サフの乾燥は早いので、乾いたところでバフレックスグリーンのドライタイプでペイント前の足付け作業を行った。その後、白ペイントでスプレーし、完全乾燥後にバフレックスで再度足付けを行った。バフレックスは表面を一皮剥くのに最適。程度が良い白タンクなら、サフを入れずにバフレックスで足付け後、ペイントしても良いだろう。
ワックスオフにも缶フプレー
白ペイント後に足付け作業を完了したエイプタンク。そのままライン入れしてハジキが出るのを避けるため、ここではワックスオフと呼ばれる脱脂溶剤を使い(イサム塗料の缶スプレーを利用)、毛羽立ちにくいペイント用ウエスにワックスオフを吹き付け、足付け後の表面を軽く拭き取り乾燥を待った。
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マスキングテープの幅を利用すれば……
マスキングラインを-際には、ペイントしたい幅でマスキングテープを貼り、そのテープの幅に合わせてマスキングテープを貼ることで、線がヨレヨレにならずビシッと真っ直ぐなマスキングテープ貼りができる。パールホワイトにしたいときには、白ペイント後にパールを被せて乾燥を待ち、乾燥したらクリアを薄く吹くと良い。パールの上に直接足付けするとパールがムラになってしまうので、クリアで薄く塗っておさえてから足付けしてマスキングするのが良いようだ。
一気に塗らずに薄く塗り重ねる
どんなペイントでも同じだが、特に、缶スプレーはノズルを押しているときには必ず顔料が吹き出すので、一気に厚く塗りすぎてしまわないように要注意。下地が透ける程度の薄さで全体を塗ってから待ち、何度か繰り返して色合いを切れる。今回はキャンディクリアのシエンナー(オレンジ)なので、塗り重ねることで色に深みが出てくる。
好みの色合いになったら吹き付けを止め、じっくり乾燥するのを待つ。乾燥途中でマスキングテープを剥がすと、塗膜の下の方が未乾燥で、塗料が伸びて糸引き状態になってしまう。それが失敗の元なので、どんなときでも時間を掛けて、しっかり乾燥させよう。完全乾燥後は重ね塗りしたエッジ部分に小さなバリが出るので、細かな耐水サンドペーパー(1500~2000番)を利用して、バリ部分のみ取り除くように磨くと良い。
3色で塗り分けたエイプタンク
インヂゴブルーでタンクのボトムラインをペイント。シエンナーの上面ラインと同じように薄く薄く塗り重ねながら乾かし、再度、塗り重ねていくことで好みの色の深さに調整できるのがキャンデイペイントの楽しさだ。必ずしもシルバーやゴールドのメタリックベースではなくてもキャンデイの風合いを楽しむことができる。
ボトムラインのインヂゴを吹き付けてから完全乾燥を待ち、ラインエッジのバリを除去してから耐ガソリン性ウレタンクリアを塗り重ねて仕上げたガソリンタンク。DIYのサンメカペインターでも、慎重な作業に徹し、慌てず焦らず、しっかり乾燥待ちできるゆとりの心があれば、このような仕上がりを望むことができる。ノーマルデザインから、実にスポーティなホンダエイプへ変身した。
- ポイント1・キャンデイペイントの下地はシルバーやゴールドのメタリックペイントがすべてではない
- ポイント2・キャンデイペイントは重ね塗りで色合いや色の深さ濃さを決めるので、一気に吹き付けるのではなく、特に慎重に重ね塗りする
- ポイント3・ 缶スプレーはガス圧の低下で吹き付けコンディションが変るため、吹き付け作業の前に、ぬるま湯に缶を浸して内圧を高めるのがノウハウ
ガソリンタンク&サイドカバーなどの外装部品ではなくても、過去に缶スプレーペイントの経験があれば、缶スプレーの使い方は、おおよそご理解いただけると思う。缶スプレー最大の特徴は、ノズルを押しているときは「顔料が必ず吹き出す」ことだ。プロユースのペイントガンは、トリガーを握り込んだ当初は、エアーのみが吹き出す。さらに握り込むことで、塗料が吹き出す仕組みだ。したがって、プロユースのペイントガンなら、吹き付けの際に様々なコントロールが可能になる。
缶スプレーの利用時に注意しなくてはいけないのが、慌てず焦らず、せっかちな作業進行はしないことだ。自家ペイントに失敗する最大の原因は「せっかちな作業にある」との声も多い。また、裏庭などで野吹きペイントすることが多いと思うが、上手な仕上がりを求めたいなら、ペイント時の環境作りも大切だ。例えば、ビニールハウス内や自転車の簡易テント車庫などは、立派なペイントブースとしても利用できることを知っておこう。
缶スプレーペイントに限ったお話しではないが、どんなペイントでも作業環境が仕上がりに大きな影響を与えると考えよう。湿気が多く、しかも猛暑の夏場に関しては、吹き付け直後からザラザラ気味にペイントがカブリやすい。これは吹き付けた直後にシンナー成分が飛んでしまうために起こる現象だ。真夏の露天作業は失敗しやすいが、そんな理由によるものである。逆に、真冬の寒い環境下では、ペイント後の塗膜がなかなか乾燥しないので、決して作業性が良いとは言えない。盛夏や真冬の作業は、できる限り避けた方が良い、といったアドバイスは、そのような環境だからなのだ。
仮に、露天作業でも、前述したようにビニールハウスやカーポートのような仮ブースを利用するのがベスト。風が吹くと枯葉やゴミが飛び散り、夏場だと蚊や小さなムシがピタッと貼り付いてしまうことが多い。ペイント途中でそのようなトラブルに見舞われたときには、ペイントを中断してそのまま乾燥させ、完全乾燥後に磨き落してしまうのがもっとも良い方法らしい。今回の作業途中で「なるほど」と思ったのは、状況によっては作業途中でもクリアを吹き、塗膜を安定化させること。例えば、パールペイント後にライン入れを行うため、ライン入れの前には足付け作業を行うが、この際は、クリアペイント膜でパールの層をおさえてから乾燥させ、その上から足付けすると良いことだった。クリアの膜がパール層をムラにしなくて良いからだ。また、その作業手順にすることで、パールの密着が高まるそうである。
自家製ペイントは間違い無く難しい。しかし、作業後の充実感は、他の作業では決して得ることができないものでもある。今回はイサム塗料のラボをお借りできたので、最高な環境下で作業できたのはラッキーだった。
おつかれコンディションのセカンドバイクを入手したときには、メンテナンスによってコンディションを蘇らせつつ、自家塗装で満足感を得てみてほしい。
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