アルミナサンドやガラスビーズをメディアに使ったサンドブラストとは異なり、ソーダ=重曹(じゅうそう)を使った新時代のブラストシステムは、環境問題にも優しく、様々なシーンで注目されている。ここでは、どんな部品に対して、どのような効果を得られるのか?注目のブラストシステム「EZブラスト」の体験リポートをお届けしよう。

直圧ブラスト式で水と同時噴射

一見では直圧式ブラストシステムとも似ているが、マジックパウダーと呼ばれる重曹メディアを直噴するシステムが組み込まれた18リットルの縦型タンクボディ。一般的なウエットブラストでは、高水圧でメディアを混合、もしくは高水圧による負圧を利用しメディアを吸い上げるが、このシステムでは、ガンノズルの噴射寸前に水道水を混ぜてウエットブラスト化している。

環境に優しい重曹主体のメディアなので、野吹きで作業したいときにも、バリアスクリーン超し(コロナ対策の透明アクリル板のつい立て超し)なら作業性は良好。地面に落ちて残ったメディアはスコップで集め、湧かしたお湯を掛ければスーッと溶けてしまう。飛び散ったメディアが冬場に固形化しても、雨で溶けてガス化してしまう。

クロームメッキの仕上げに抜群!!


スーパーカブの中古鉄リムを磨いてから交換しようと思ったが、ボンスターを使って優しく磨いたつもりでも細かなスクラッチキズが残りやすい。近年は、新品部品に交換するのではなく、可能な限り当時物部品を磨いて仕上げたレストアが好まれるので、汚れ落としの手段としては、現状最強とも言えそうだ。半露天で放置期間が長かった実用車の鉄リムとなればサビが気になってしまうが、EZブラストで優しく汚れ落としの感覚で処理することで、それはもう驚きの美しさに蘇える。


地金まで深くサビが浸食した部分はさすがに凸凹面が残るが、よっぽど酷いサビでなければクロームメッキ層が剥離し、落ちてしまうことも無かった。いわゆる「表面サビ」のレベルなら、驚きの仕上がりを得られるEZブラスト。金属ブラシで磨き落すのと違って、重曹由来のメディアなのでスクラッチキズは皆無。その輝きは素晴らしい。重曹メディアはアルカリ系なので、処理と同時に油汚れも一掃。処理後に室内放置してみたが、簡単には再サビ発生に至らないこともわかった。


サビやすいことで知られるクロームメッキのエキパイもこの通りの仕上がり。やり方さえ間違えず、インフラ環境や条件が整えば、素晴らしい仕上がりを得られるEZブラスト。薄汚れた旧車のレストアではなく、本当の意味で「ヤレ感」を演出することができるのが、このシステムの大きな武器である。

フルレスしたく無くなる仕上がりに

旧車ながら美しく仕上げて乗り楽しむファンが数多いし、その気持ちはよくわかるが、このEZブラストなら現状最善を目指した仕上がりを得られる。交換部品やゴム部品を入手していれば、フルレストアはいつでもできる!!そんな気分にさせてくれるのがEZブラストの大きな魅力である。

POINT

  • ポイント1・ 環境に優しい重曹由来のメディアなので野吹きしても後処理が楽々
  • ポイント2・ 3馬力以上の動力コンプレッサーがあれば連続作業も楽だが、AC100Vコンプレッサーなら休み休み作業しよう
  • ポイント3・ コンプレッサーへのドライヤー装着は必須。連続使用の結露で圧縮空気には水分が混ざるが、EZブラストに水分は大敵

大掃除のときに大活躍するのが洗剤である。油汚れを手軽に分解することができるとして、ここ数年、特に注目されているのが重曹だ。今では高性能洗剤として、100均ショップでも購入することができる。そんな重曹由来の専用メディア(一般の重曹とは違い粒度が細かい)を利用した、環境に優しいブラストシステムが「EZブラスト」。この新アイテムを使って感じたのは、「大きな可能性を秘めている!!」と直感できたこと。海外のレストアシーンでは、以前から実用化が進んでいるこのシステムだが、まずは「重曹とは何なのか?」確認しておきたい。

重曹とは、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ソーダ)の別称で、弱アルカリ性なのが性質的特徴である。食品への添加(パン生地やお菓子作りなど)や、医薬品への添加(シュワーッとする胃薬など)で利用されることが多い。人畜無害かつ環境に優しい特徴を持っている。冷水には溶けにくいが、加熱したり、お湯に混ぜたり、お湯を掛けたりすると炭酸ガスとなって揮発してしまうのも大きな特徴だろう。台所の油汚れやシンクの汚れ落としに利用する例は多いが、蛇口から出てくる40度弱のお湯でも簡単に解けてしまうことから、冷水でこそ、ウエットブラスト効果を得られるということも理解できる。逆説的な考え方をすれば、重曹が溶けないギリギリの水温でブラスト処理できれば、もっとも効果的な処理条件では?とも考えられる。

人畜無害で使い勝手が良いEZブラストに注目した我々は、様々な部品でお試し作業を行わせて頂くことができた。そんな中、他のブラスト処理では得られなく、明らかに他とは違う美しい仕上がりを得られたのが「クロームメッキ部品」のサビ落としだった。クロームメッキのサビには様々な段階があるのはご存じの通り。メッキ層を浮き上がらせてしまうほどのコンディションから、汚れのように表面だけに発生した軽度なものまで様々。地金まで浸透したサビは、クロームメッキ層を浮き上がらせてしまうが、そんな状態の部品でも、それなりの美しさを得ることができた。単純な表面サビ=ツブツブのサビなら、場所によっては何事も無かったかのように、ピッカピカ!! ツルッツル!! の仕上がりになった。しかも、あっという間に作業完了できるのだから素晴らしい!!(インフラ条件が整っていなくてはそうならない)

クロームメッキの表面サビを落とすには、防錆スプレーを吹き付け浸透させることから始まり、次に細かな金属ウールで磨くことが多いが、磨いた後にスクラッチキズが入ってしまうことが多い。そんな手磨きとは大違いで、指先が入らない細かな部分でも、ウエット式EZブラストなら水流の威力もあって一気に洗浄除去することができる。しかも処理後のメッキ表面にはスクラッチキズが無く、汚れやくすみも取れて一際明るい輝きを取り戻すことができる。長年に渡って倉庫内にブラ下げられていた未使用のクロームメッキマフラーでテストしてみたが、作業前の状態は、全体的に表面サビで真っ茶色になっていた。その仕上がりは、ビフォー&アフターの比較でご覧になれば、御理解頂けると思う。クロームメッキがサビている中古の鉄リムでも試したが、満足の仕上がりを得られた。

こんな仕上がりを得られるなら期待大だが、あくまでインフラが整っていてのお話しであることも忘れずにいてほしい。特に重要なのがコンプレッサーのコンディション。水分を含んだ圧縮エアーでは、完全ドライでサラサラなマジックパウダーを噴射できなくなるので、トータルシステムで理解した上で作業進行しなくてはいけない。それでも様々な応用が効きそうなEZブラストには期待大だ。

取材協力/EZ Blustr Japan

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