冷却や潤滑、密封や洗浄を行うエンジンオイルは、我々人間にとっての血液のようなものできわめて重要かつ不可欠な存在です。季節ごと、走行距離によって定期的に交換する作業を自ら行うライダーも多いですが、何となくいつも通りでやってしまうことはありませんか?単純な作業にもアイデアを加えることで、もっと効率良く安全になる余地があるかもしれません。

冬場のエンジンオイル交換時に気をつけるべきポイント


冬場は油温が上昇しづらいのと同時に、暖房を掛けた室内の窓ガラスに水滴が付着するのと同様、エンジン内外気温差でクランクケース内に結露が発生しやすい。オイルレベル窓でオイルがカフェオレ色に変色していたら水分が混入している証拠だ。


オイルフィラーキャップの裏側に乳化したオイルが付着しているのも、エンジン内部で結露している時の典型的な症状だ。オイルレベル窓がなく、フィラーキャップがレベルゲージを兼用している機種の場合、ここで確認できる。オイルが乳化しても油温が上がれば水分が飛んで元に戻る場合もあるが、水分混入を繰り返すとオイルの性能自体が低下する。

エンジンオイルにとって、油温が上がりやすい夏場はもちろんですが、冬場も厳しい季節です。どんなオイルでも、油温がある程度まで上昇することで流動性が向上して適正な粘度となり、エンジンの隅々まで滑らかに行き渡るようになります。エンジンオイルのパッケージに10W-40といった表示がある場合、低温時の粘度が10Wで、高温時の粘度が40であることを知るライダーは多いことでしょう。

では低温時とは具体的に何度ぐらいを示すのでしょうか。10W-40などのオイルの粘度番号は、アメリカのSAEという団体によって規定されており、低温側は油温40℃での粘度を示しています。一方、高温側は油温100℃での粘度を示します。もちろん、実際にエンジンの中で働くオイルには40℃以下の場合も100℃以上の場合もあり、それらの領域では低温側はさらに硬く、高温側はさらに軟らかくなります。

外気温が10℃を下回る冬場の冷間始動時は、エンジンオイルもまた10℃以下になります。氷点下になるような季節も同様で、外気に連動して油温が氷点下になることもあるかもしれません。そのような状況でも流動性と潤滑性を確保できるように開発されたのが10W-40など「○○W」が付くマルチグレードオイルです。

どんなオイルでも低温時は粘度が高く流動性が低いので、充分に暖機できるまでは高回転まで回さない方がエンジンにとって優しいのは事実です。ただし空冷エンジンの場合、外気温が低過ぎるとエンジンの発熱量より放熱量の方が大きくなり、エンジン回転数を上げずに走り続けると適正油温まで上昇するのに時間を要するという矛盾も生じます。私の例ですが、250cc空冷単気筒のバイクで気温一ケタ台の夜間、1時間程度走行した際の油温が30℃台だったことがありました。

このような状況で有利なのが水冷エンジンです。ウォータージャケットとはよく言ったもので、エンジン内とラジエターをつなぐホースに仕込まれたサーモスタットが開くまで、冷却水はエンジンを暖めるために使われます。機種によってまちまちですが、サーモスタットが70℃前後で開弁する頃には、油温も高くなり本来の性能が発揮できるようになっているというわけです。

油温が上がりづらい冬季にエンジンオイルの性能をなるべく早く引き出したいのなら、低温側の粘度を下げるのがひとつの手段となります。10W-40と5W-40のオイルが選べるのなら、5W-40の方が40℃での粘度は低いので流動性が高くなりつつ、高温側の粘度は変わらないという結果が得られます。冬場も通勤やツーリングでバイクを使用するユーザーは、現在のオイルよりも低温側の粘度がワンランク低いオイルを選んでも良いかもしれません。

POINT

  • ポイント1・冬場のライディング時には油温が適温まで上昇するまで走行しながら暖機する
  • ポイント2・オーバークールで油温が上がりづらい時は、低温側の粘度が低いオイルを使用することで流動性を改善させる

オイルフィルター交換時に垂れたオイルをキャッチするアイデアをプラス


オイルパンの底にオイルフィルターエレメントが内蔵されているカワサキGPZ900R。集合マフラーによっては、フィルター交換時にマフラー着脱が必要な場合もある。この車両はフィルターカバーを緩めると純正センタースタンドにオイルが付着しそうな位置関係だった。


厚紙の一カ所を軽く丸めてマスキングテープで引っ張り、緩いロート状としてフィルターカバーの下に置いてみる。


どんな形状が正解なのかは機種によって異なるし、作業方法によっても結果は変化する。このニンジャの場合も、サイドスタンドでフィルターを外せばセンタースタンドをオイルで汚す心配はなかったかもしれない。

オイル交換時にフィルター交換を合わせて行う際に、フィルター周辺から流れ出すオイルのケアをどのように行うかによって、交換作業の効率がアップすることがあります。オイルフィルターにはカートリッジ式とエレメント内蔵式の2タイプがあり、それぞれに長所短所があります。

カートリッジ式は交換作業が楽なのが一番のメリットですが、エンジンからケースが出っ張るというデメリットがあります。一方の内蔵式はエンジン内部にエレメントが入るため外側への出っ張りが少なくなりますが、フィルターカバーを外した際にオイルが流れ出して周囲を汚しやすいという面があります。またエンジンを設計する段階で、クランクケースにエレメントを内蔵するだけの余地を作る必要があり、エンジン全体のコンパクト化にとって不利な部分もあります。

ここで紹介するカワサキGPZ900Rニンジャは、Z1シリーズ以来の伝統でクランクケース下部にフィルターエレメントを内蔵しています。フラットなフィルターカバーの中心にリリーフバルブを兼ねたボルトが貫通しており、このボルトを緩めるとフィルターケース内に残ったオイルがカバー外周からボトボトと滴り落ちます。オイルドレンボルトとフィルターカバーの高さを比べると、当然ドレンボルトの方が低い位置にありますが、フィルターケース内にも残存オイルがあるので、ケース内から流れ出るのは致し方ありません。

サイドスタンドで立てていれば問題になりませんが、センタースタンドを使ってオイル交換を行う場合、オイルドレンパンをスタンドに押しつけたとしても、フィルターカバーから滴るオイルが絶妙にスタンドに降りかかります。

この車両は集合マフラーが装着されていますが、ニンジャに限らず純正マフラー装着車でフィルター交換時に滴るオイルがマフラーに付着することもあります。どちらもフィルター交換後にパーツクリーナーで脱脂洗浄すれば良いのですが、拭き残しがあったりエンジン始動後にマフラーからオイルが焼ける臭気は気分が良いものではありません。

そこでおすすめしたいのが、フィルターカバー下の汚れ防止カバーです。カバーといっても大げさな物ではなく、適当なサイズの厚手の紙で充分です。これをエンジンの下に雨どいのように置いて、滴ったオイルをドレンパンに流してやるのです。

このニンジャは丸めた厚紙をセンタースタンドとドレンパンに引っ掛けただけですが、オイルフィルターカバーの周囲から垂れるオイルを完全にキャッチしてセンタースタンドや作業台を汚すことはありませんでした。このオイル受けはカートリッジ式のオイルフィルターでも有効で、フィルターがクランクケース前に横向きに付くハーレーダビッドソンのスポーツスターでも、エンジンとフィルターの合わせ部分から滴るオイルをカバーで受けるのは定番となっています。

オイルフィルターはエンジン下部にあることが多く、取り外し時にオイルが垂れると作業台や地面を汚します。地面を汚すのもさることながら、そのオイルをタイヤで踏むかもしれないことを想像すると、垂らしてから拭き取るよりも垂らさない工夫をした方がスマートであることは言うまでもありません。

POINT

  • ポイント1・ドレンボルトやオイルフィルターを外した際に、オイルが車体に付着したり地面に垂れる車両は自作ガードで対処する
  • ポイント2・車体や地面を汚さなければ、オイルがタイヤに付着して危険な目に遭うリスクも軽減される

内蔵タイプのエレメントはパーツの入れ忘れや組み付け順序に要注意


GPZ900Rの場合、エレメントカバーの上にスプリング、その上にワッシャーがありエレメントが重なり、一番上にカップがかぶさる形になる。ワッシャーはエレメントに張りついて剥がれないこともあり、それに気づかず古いエレメントを捨ててしまったがために、その後ワッシャーなしになっているカワサキ車は少なくない。もし自分のバイクにワッシャーが付いていなければ、純正パーツを購入しよう。


エレメントが収まるカップは縁が鋭く、取り外す際に指を傷つける危険性があるので慎重に作業する。カップ内の汚れはパーツクリーナーで洗浄しておく。


フィルターカバーの固定ボルトは中空で、内部には油圧が高まりすぎた時にバイパスするリリーフ機構が内蔵されている。根元のOリングはフィルターカバーとの隙間を埋めてオイル漏れを防ぐために重要な部品なので、フィルター交換時には必ず新品を装着すること。

カートリッジ式のオイルフィルターは、取り付け前にカートリッジのOリングにエンジンオイルを薄く塗って、エンジン側の座面が汚れていないことを確認すれば、エンジン側の雄ネジにカートリッジをねじ込むだけなので取り付けは簡単です。これに対して内蔵式のオイルフィルターは、エレメント以外に細かな部品が組み込まれていることがあるので注意が必要です。

ニンジャやゼファーなどオイルパンにエレメントを内蔵するカワサキ車の多くは、フィルターエレメントが薄い金属製のカップに入っています。GPZ900Rの場合はフィルターカバーの上にスプリング、薄い金属製のワッシャー、オイルフィルターエレメント、カップの順に重なり、同じようなパーツ構成でもゼファー400はフィルターカバー、カップ、スプリング、ワッシャー、エレメントの順となります。

新車から所有してきたバイクや、作業時にパーツリストやサービスマニュアルを参照しているオーナーは大丈夫でしょうが、中古車として購入してそれ以前のメンテナンス内容が分からない場合は、一度パーツリストで部品の組み付け順序を確認しておくことをお勧めします。ニンジャやゼファーなどはワッシャーがオイルでエレメント側に張りついていることが多く、前のオーナーがそれに気づかずワッシャーなしで組み立てている可能性もあります。

このワッシャーは、エレメント中心のOリングにスプリングが食い込まないようにするために必要な部品なので、もし失われてるようなら純正パーツを入手して組み込んでおきましょう。もちろん、フィルターカバーやセンターボルトのOリングも新品に交換するのは必須です。

このように、当たり前のように行うオイル交換作業でもアイデアを盛り込み注意を払うことで、愛車をきれいに保ち良好なコンディションをキープできることを知っていただければ幸いです。

POINT

  • ポイント1・カートリッジ式フィルターは座面の汚れを拭き取ってから装着する
  • ポイント2・エレメント内蔵式はエレメント以外の組み込み部品が正しく揃っているか、サービスマニュアルで確認してから復元する

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