分解整備をしていると必ず出てくる各種ワッシャー。
組み直した後で「何枚かワッシャーが余ってしまった」は論外にしても、ワッシャーの入っていた場所にワッシャーを入れて組み上げて満足していませんか?

しかーし!
ワッシャーにはワッシャーの役割があるのです。
そもそもなぜワッシャーが存在しているのか疑問に思いませんか?
別に無くても良いのでは?って思いませんか?

皆様にささやかな幸せとバイクの知識をお送りするWebiQ(ウェビキュー)。
今回は気にしてる人は気にしてるワッシャーの向きに関する小ネタです。

復習:ワッシャーとは

ワッシャーとは、バイクの様々な場所で使用されている円盤状の部品で、主に鉄の板材をプレス機で打ち抜いたドーナツ型のパーツです。

アルミや銅製のワッシャーはブレーキの油圧が漏れないようにシールする役割がありますが、この場合は「ワッシャー形状のガスケット」となり、一般的なワッシャーの役割とは異なるので今回は除外。
また、プラスチックやゴム製のワッシャーもありますが、話がややこしくなるので今回は無視しておきます。

今回は通常よくある鉄製のワッシャーのお話です。

ワッシャーの役目・役割

ワッシャーが使われる部分にはボルト(またはナット)があるはずです。
そして、ボルト・ナットは部品と部品を結合固定する為に使用されるものです。

ボルトはネジを締め込む事でネジ山に沿ってクサビを打ち込んだような力を働かせ、ボルト軸に物凄い力を掛けるための装置です。
ややこしい計算式も存在するのでサクッと計算してみると、わりと細めのネジでもボルト軸には1トンを軽く超える力が作用している事がわかります。

そんな力を受けているのがボルトの頭の下面ですが、ボルトを回転させる事で軸力が増すので、そこは物凄い圧力が掛かる場所になります。
しかも『回転させる事で』という部分がミソで、締め付けの最後では強烈な力で軸力を発生させつつ、凄い圧力を受けているボルトも回転しなければならないので、ボルトの相手にネジ頭がメリ込んでしまったり、相手が削れてしまいます。

これは良くありません。
メリ込む事で回転抵抗が増してしまい、例えばトルクレンチを使った際に軸に規定のトルクが掛かる前にネジの回転抵抗によって「規定トルクに達した」と判断されてしまいます。

また、締め付け後に軸力を受け続けるのもボルト下の部分になりますが、締め付ける部分との接触面積が少ないとだんだんボルトがメリ込んでしまいます。

ボルトがメリ込むと言うと良く締まっているように思えるかもしれませんが逆です
メリ込んだ分だけ軸力が失われた事になるので、見た目とは裏腹にそういったネジは本来の締め付けが出来ていない事になります。

ワッシャーの役目とは『ボルトが回転する時の回転抵抗を減らす』ことと、『軸力を受けてもメリ込まないように接触面積を増大させる』というものです。

「ボルトによって相手側がキズ付かない為に」と説明される事もあると思いますが、上記の意味を超ザックリ説明するとそうなるので、間違っているわけではありません。
ザックリし過ぎていてわかりにくいですけど。

ワッシャーの製造方法

大きく別けて2種類の製法があります。
まずは最も一般的なプレスで打ち抜いて製造する方法。
作りたいワッシャーの厚さの板材を用意しておき、内側の穴と外周を打ち抜く事で作成します。
この製法は大量生産に向いているので、大量に使用するワッシャーはだいたいプレス製法です。

もう1種類は切削で製造する方法。
作りたいワッシャーの厚さの板材を用意しておき、内側の穴と外周を専用工作機械で削り出して作成します。
プレス打ち抜きでは作成できない厚さのワッシャーや、精度を要求される精密ワッシャーは切削製法です。

ワッシャーの断面


実は基本的にワッシャは全ての面が均一な厚さになっていません。
高精度切削ワッシャーだけはどの面でも同一厚ですが、そんな製法のワッシャーは非常に稀。

大多数のワッシャーが採用するプレス製法では型に嵌めて打ち抜くという製法の関係上、どうしても上から押された部分のカドは丸くなり、逆に打ち抜かれた反対側は引きちぎられる事になるので、バリが出て盛り上がるような断面になります。

ワッシャーには表裏がある

このプレス製法で製造されたワッシャーのうち、カドの丸くなっている方を「表」、バリの出ている方を「裏」と呼びます。

なぜカドが丸い方が表なのかと言うと、プレスで打ち抜く前の板材には既に表裏があり、表はツルツル、裏はそれなりの仕上がりになっている事が多いです。
このツルツルの面を上側(つまり表側)にしてプレス機にセットして打ち抜くので、当然打ち抜かれたワッシャーもツルツルの面が上になり、上から打ち抜いているのでカドが丸くなります。

▲表側


▲裏側

ワッシャーの表を表に向ければ良いワケではない

ピカピカで面の綺麗な上側(=表側)を見える向き、つまりボルト側にして組むのが正解! ……に思えるかもしれませんが、そうとは限らないのがワッシャーの面白いところ。

場所や用途によってワッシャーの正しい向きは変化します
何でもかんでも見栄えの良い向きに組めば良いわけではありません。

用途を良く考える

ここでもう一度ワッシャーの断面を見てみましょう。


かなり極端に書いていますが、プレス製造のワッシャー断面は上記のようになります。

さてここでワッシャーの役目・役割をもう一度思い返してみると……、ネジの頭が素材にメリこまないようにするためという目的がありましたよね?
この場合、接触面積が広ければ広いほど面圧が分散できるので、できるだけ接触面積が広い方をめり込み防止側に使いたい事になります。

ワッシャー断面を見ると上から打ち抜いたカドの丸い方(=ピカピカな面の方)はカドが丸い分だけ接触面積が減ってしまっています。
接触面積が広いのは裏側。
ですので、ワッシャーの表をボルト側に向ける事で素材と当たるワッシャーの接触面積を最大化する事ができます。
おまけに回転するボルト頭下がツルツルした面に接触する事になるので、ボルト締め込み時の回転抵抗を低減できます。
つまり、面圧を分散してボルトがメリ込まないようにしたいのであれば、ワッシャーは表側(ピカピカしていてカドが丸い方)をボルト側に向けて組むのが正解

ところが、この向きではワッシャーのバリが相手素材に食い込むので、相手が柔らかい素材(例えばアルミなど)だとワッシャーのバリの跡がクッキリ残ってしまいます。
これを嫌ってワッシャーの向きを敢えて逆向きで組んで(=ワッシャー裏側をボルト側にして組んで)いる場合もあります。
つまり、相手側のネジ接触部にキズが入るのを防止する目的ならば、ワッシャーは裏側(ピカピカしていていなくてカドが立っている方)をボルト側に向けて組むのが正解

このように目的によってワッシャーの向きは正反対になってしまいます

なぜワッシャーを挟むのか、設計者の意図を読む

断言しますが、メーカーで無駄に使用されているワッシャーは存在しません
必ず意図があってワッシャーを挟むように設計されています。

しかしどんなにサービスマニュアルやパーツリストを見てもワッシャーの向きは指定されてはいません。
なぜなら、メーカーではどちらの向きであっても大丈夫なように設計されているからです。
生産ラインの現場ではいちいちワッシャーの向きなんか確認せず、流れ作業で組み立てるのが前提なので。

「じゃあワッシャーの向きなんて気にしなくて良いんじゃん!!」と言われそうですが、そうではありません。

確かに向きなんか気にせず組んでも、指定された位置にワッシャーが入っていれば壊れたりはしません。
しかし……、今まで書いて来たように正しい向きで組めばそれだけで性能が向上するのです。
メーカーの生産ラインではコストの関係で出来ない事が、自分で整備する場合は出来るのです。

チューニングとはそういう事の積み重ねです。
ワッシャーの向き調整は¥0で出来るチューニングというわけです。

だから、ワッシャーを組むときは「なぜこの位置にワッシャーを入れる必要があるのか?」を考えて組みます。
ワッシャーの目的がわかれば、必然的にワッシャーをどの向きで組み込むのが正解がわかるはずです。

仮に間違えて裏表逆に組んでしまったとしても、もともと向きの指定は無いので壊れる事はありません。
自信を持って正しいと思う向きで組みましょう。

たかがワッシャー

されどワッシャー。

ワッシャーの表裏にこだわったところで直ちに性能向上したりはしません。
しかし、ワッシャーに表裏がある事を意識するようになると、シャフトの抜け止めや位置決めに使うサークリップ(EリングやCリング)も同じ事だと気付くはずです。
サークリップもメーカーで向きの指定はありませんが、向きを考えて使う事でトラブル防止に必ず効きます

サークリップやワッシャーの向きを正しく組んだ事でトラブルを防止できる確率は極僅かかもしれません。
「だが、その差を僅かと笑う者にカスタムやチューニングを語る資格はない。」
湾岸線を車で暴走する某マンガに出てくるセリフの受け売りですが、私もそう思います。

オマケ:スプリングワッシャーに緩み止め効果はあるのか?


スプリングワッシャーというのは上の画像のようなワッシャーです。
周の一部が切れて捻りが加えてあり、このワッシャーを挟み込んでからネジを締め込むと捻りが潰される事になるので、スプリングのようにボルトにテンションを掛ける事が出来るのでゆるみ止め効果があると言われている物です。

いきなり正解を言ってしまうと、スプリングワッシャーに緩み止め効果はありません
もっと正確に言うと「緩み止め効果はあるけど、その力はネジの締め付け軸力に対して弱過ぎて意味がない」になります。
「スプリングワッシャー ゆるみ止め 効果ない」で検索すればイヤになるほど説明を見る事ができます。

でも、効果が無いはずのスプリングワッシャーがなぜ今でも存在しているのか疑問に思いませんか?

憶測ですが、これは緩んでしまったネジの脱落防止が狙いなのではないかと思います。
例えばネジの座面が陥没するなど、何らかの理由でネジ頭下部が浮いてしまったとします。
ネジ頭が浮いているので軸力はゼロ、そのままでは抜けてしまう可能性がありますが、そこに僅かでもテンションを掛ける事で
「緩んでいるので本来の軸力は発生していないが、スプリングワッシャーの力でネジ山に摩擦力を発生させて脱落を防止する事ができる」を狙っているのではないでしょうか?

バイクの場合は「緩んだボルトが脱落しては困る」ではなく「ボルトが緩んでは困る」なので、スプリングワッシャーの出番はほぼありません。
そんな事より正しい軸力を得られるようにネジを正しく扱う方がはるかに大事です。
もちろんワッシャーの向きもね!

コメント一覧
  1. 匿名 より:

    エンジン製造工程でほとんど気にしてないので
    全く意味がない
    大手でもこんなの気にしてない
    工場で働けばわかる

    ごく一部の工程以外全く気にしてない

  2. 匿名 より:

    くだらねー

コメントを残す