
フロントホイールは様々な場面で取り外す機会があると思うが、そんな際に必ず行うのがブレーキキャリパーの脱着だろう。ボトムケースに締め付け固定するブレーキキャリパーを取り外さない限り、ホイール&タイヤを抜き取れないことから、第一に取り外す部品が、シングルだろうがダブルだろうが、ブレーキキャリパーだと思う。
そんなブレーキキャリパーを取り外した際には、バケツに溜めた水道水+中性洗剤でゴシゴシ洗ってみよう。そんな単純な作業でも、ブレーキ性能を維持できるのだ。簡単な作業だと思うが、実践していないサンデーメカニックが多いので、ここでは敢えて、ブレーキャリパーの洗浄とその後の簡単なケアに注目してみよう。
目次
2000kmも走ればこのような汚れに
ディスクブレーキの場合は、一般的にディスクローターとブレーキキャリパーが露出している(インボードタイプはそのような構造ではない)。ホイールを取り外さなくても、ブレーキキャリパーだけをボトムケースから取り外すことができるので、そんなキャリパー本体の単純洗浄と洗浄後の簡単なケアで、キャリパー性能は維持することができる。ブレーキフルードが流れるブレーキラインは、つなげたままで良い。
サンメカ支持率が圧倒的な「ママレモン」
様々な中性洗剤がある中で、サンデーメカニックから数多くの支持を得ているのが、ママレモンだ。手に優しいとか、なんだかんだの付加価値ではなく、しつこい汚れや油汚れに対して強い、昔ながらの中性洗剤の「代名詞的商品」が、相変わらず根強い人気を得ている。ペイント前の脱脂洗浄時に、ママレモンを使っているプロペインターは意外と多い。
水割りではなく「ぬるま湯」が効果的
容器に水道水を入れて中性洗剤を混ぜて洗浄開始、なのだが、この際には、冷たい水道水ではなく、少しだけ温かい(お風呂ぐらいの温かさなら十分!!)ぬるま湯を利用することで泡立ちが良くなり、汚れ落ちが圧倒的に良くなる。やかんでお湯を沸かして混ぜたり、給湯器がある場合は、ぬるま湯を用意してから作業に取り掛かるのが良いだろう。
キャリパー洗浄の時にあると便利なのが各種ブラシ類。使わなくなった歯ブラシやビジホ宿泊時の歯ブラシなどは、捨てずにメンテナンス用として持ち帰ると良い。工具店で購入できる筆型ブラシは、細かな奥まで届くので使い勝手は良好。とにかく出たとこ勝負。様々な形状のブラシがあると、洗浄作業もスムーズに進めることができる。
ピストンを露出させて汚れを洗浄
ブレーキパッドを抜き取ってからブレーキレバーをポンピングすることで、キャリパーピストンが徐々に出てくる。片押し1ピストンなら楽だが、マルチピストンの場合は、片押しでも対向でも、2個のピストンが同時に出てくるとは限らない。板を挟んだり先に出てくるピストンを押さえ込むようにしながら、2個とも同じような露出具合に調整しよう。決して露出させ過ぎなくても良い。ピストンシールが触れているあたりをしっかり洗浄しよう。
ピストンが露出したキャリパーを洗浄容器内にまるごと沈め、ブラシを使ってジャブジャブ洗浄してみよう。キャリパーが容器へ届かないときには、洗浄容器をビールケースなどの箱の上へ載せるとよい。細かな部分までしっかり洗浄することで、想像以上に美しい仕上がりになる。エアーガンがあるならエアーブローで水分除去。無いときにはキレイなウエスで拭き取ってから乾燥するのを待とう。
ピストン作動性はラバーグリスでアップ
露出したピストン外周に薄く伸ばしたラバーグリスを塗布することで、キャリパーピストンの作動性が一気に良くなる。シリコン系グリスをベースにしており、ラバー(ゴム部品)と金属部品の摺動性を飛躍的に高めるのがラバーグリスだ。決して塗り過ぎず、薄く伸ばすのが作動性向上のカギだ。大量に塗ってしまうと、ピストンシール部分でハミ出したグリスが、逆に砂利やパッドカスなどの汚れを呼び寄せてしまうので「塗り過ぎ」には要注意である。
- ポイント1・キャリパー単品時だけではなく、ブレーキラインがつながった状態でも効果的なメンテナンスができる。
- ポイント2・ブラシでゴシゴシする前に、ぬるま湯+中性洗剤の中にドブ漬けして汚れを柔らかくほぐしてから作業開始。
- ポイント3・洗浄時はあらかじめ様々な形状のブラシを用意しておこう。特に、工具ショップで購入できる筆型ブラシは使い勝手が良い。
- ポイント4・露出したピストンにラバーグリスを塗布するときには塗り過ぎに要注意。薄く伸ばして満遍なく塗り付けよう。
「ブレーキキャリパーは中性洗剤を混ぜたぬるま湯にドブ漬けして、汚れを柔らかくしてから作業すると良いですよ」なんてお話しをすると、必ず質問されるのが「中性洗剤を混ぜたお湯とか水にブレーキキャリパーをまるごと浸して、大丈夫なんですか?」といったものだ。そんな疑問を抱いて当然だと思うが、考えてみて欲しい。雨天時に高速道路を走ったときには、水道水に浸すような状況よりも、もっと過酷な雨水に打ち付けられる。雨水だけではなく、地面の砂利やドロが走行中に巻き上げられるため、雨中の高速走行時は、ドロ水でウエットブラストされているような状況が続くのだ。そんな状況を連想すれば、この作業によって、如何に効率良くキャリパーの汚れを落とすことができるのか、御理解いただけると思う。
利用する洗剤は、スーパーマーケットやホームセンターで購入できる中性洗剤のママレモン。我々が想像している以上に中性洗剤の分解力は高く、素晴らしい!!ガソリンタンク内部の洗浄時に、サビ取り段取りで中性洗剤をお湯で割り、タンクに満たして一晩放置することがあるが(タンク保温で毛布を巻くと効果的)、中性洗剤の分解力だけでも、軽度なサビならすべて除去できていることもある。
洗浄能力を高めるためには、中性洗剤を「ぬるま湯」で割って利用するのが良い。前述したようにバケツや容器(今回は金属製容器を利用)を使って中性洗剤をぬるま湯で割り、ブレーキラインにつなげたままのキャリパー本体をそのままドブ漬け。キャリパーが洗浄容器に届かないときには、ビールケースなどの上に容器置き、キャリパーがしっかり沈むようにすると、洗浄効果をより高めることができる。
ピストンを露出させるときには、キャリパーを目視しながら、ブレーキレバーをゆっくり握り込んでいこう。マルチピストンのキャリパーは、どれが1箇所ばかり飛び出してしまうことが多いため、そんなときには板を挟んだり、出てくるピストンを板で抑えて、すべてのピストンが同じ分だけ露出するように微調整するのが良い。洗浄用ブラシは、様々な形状品を用意することで、より一層、美しくキャリパーを仕上げられる。キャリパーピストンツールがあれば、ピストンを回しながら洗浄することができるが、ツールが無くても、ブラシの形状次第で全体的に美しく洗い流すことができる。洗浄後は、エアーブローやウエスで水分を拭き取って乾燥させ、その後、ラバーグリスをピストン外周に薄く均一に塗り、ピストンを押込み、再度、露出させるような動作を繰り返し行おう。ラバーグリスの効果と相まって、ピストンの作動性がスムーズになっていくことに気がつくはずだ。作動性の確認時には、ピストンの出し過ぎに要注意。動かし過ぎたことで、ピストンがポロッと……、なんてことにならないように注意しよう。
走行後のブレーキ周辺、特に、キャリパー周辺には、パッドのカスや汚れが堆積しやすい。定期的な洗浄によって、ブレーキの効き具合やレバータッチは確実に良くなるはずだ。このような洗浄メンテナンスを、是非ともお試しいただきたい。
不動車のメンテナンス時には……
片押しキャリパー車を動かそうとした際に、ブレーキが引き摺り気味で「押し歩きが重い」と感じた際には、木っ端を用意して、キャリパー本体のピストン部分を軽く小突くと良い。もちろん木ハンマーでも良い。片押しピストンキャリパーはその構造上、キャリパー本体がフローティングマウントになっているため、小突くことで瞬間的にキャリパーピストンが引っ込み、ブレーキの引き摺りが解消するのだ。こんな症状の車両こそ、ここで紹介したキャリパー洗浄が功を奏する可能性が高い。
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