
キャストホイール車の多くはチューブレスタイヤを採用している。一方、スポークホイール車の多くは、浮き輪のようなゴム風船のようなチューブを組み込む「チューブタイヤ」である(チューブレスタイヤを組み込める大型モデルも増えている)。スポークを締め付けるニップルの頭とタイヤ内部のチーブが擦れ合うと、チューブにキズが入り、それが原因でパンクに至るケースもある。そのため、チューブの内側にあるスポークリムのニップル外周部へは、通称「フンドシ」と呼ばれるリムパンドを組み込むことで、ゴムチューブへのダメージを保護している。
そんなタイヤチューブの交換時やパンク修理の際には、注意しなくてはいけないポイントがいくつもある。ここでは、タイヤの取り扱いやタイヤチューブに関する、知って得するポイントを解説しよう。
タイヤには賞味期限切れがあるの?製造年週を知ろう

ゴム部品のタイヤには、間違い無く「賞味期限がある」。しかし、タイヤ性能を判断する材料として、よく知られているのは「残溝」の深さだ。自動二輪車には2年に一度の車検があるが、その際の検査基準となる数値は、残溝が「0.8mm以上残っているか否か」である。自動車の場合は、タイヤ溝に「スリップサイン」と呼ばれるポイントがあり、タイヤ製造時にその部分だけは、溝の深さが1.6mm浅く作られている。つまりタイヤを消費し摩耗が進んでいくうちにスリップサインに到達。そのサインが出たことで、残溝が1.6mm以下と判断され、タイヤ交換をしなくてはいけない。
バイクの場合は、前述したとおり残溝は四輪車よりも浅い0.8mm。タイヤの残溝が心配なときには、専用ゲージやデプスゲージ(ノギスのデプス機能)を利用して測定すれば、明確な数値を知ることができて安心だろう。しかし、残溝量だけではなく、それ以上に気にしたいのが「製造から何年経過しているタイヤなのか?」である。自動車用でもバイク用でも、タイヤ側面のどちらかには画像のような楕円スペースがあり、そこにはアルファベットや数字が記されている。その文字こそが製造時の刻印であって、このタイヤには「NDDM0318」とある。下4ケタの数字に注目しよう。このタイヤの場合は下2ケタの「18」が2018年を意味し、その前の2ケタ「03」が、第3週目と読み取ることができる。つまり製造日時は厳密に特定できないが、おおよその製造日は2018年の年初早々の3週目「2018年1月の中旬」という判断ができる。
絶版車や旧車ブームの影響で「タイヤも当時物がついている!!」と喜ぶファンが多いが、それは車歴を知る上で重要な判断材料になるもの。タイヤは紛れもなくゴム製品であり消耗部品でもあるので、残溝量だけで良否は判断できない。例えば、NSR250RのMC18、1988年型極上中古車の走行距離が500km!!。当然にタイヤの残溝は新品同様だが、いくらコンディションが良い環境で保管されていても、フレッシュな新品タイヤと同じ走行性能を発揮するはずがない。車歴を知る意味でタイヤトレッドの製造年週表示は、一番正確なデータだと考えよう。
以上のように、タイヤのフレッシュ度を判断するための指標は、残溝の深さと製造年週から判断するのが良い。「今回の2年間は走行距離が伸びなかったなぁ~」といった会話はよく聴くことがあるが、それでも4~5年に一度は新品タイヤに交換。チューブタイヤの場合は、2度のタイヤ交換毎にゴムチューブとリムバンドは交換したいものだ。

DIYでタイヤ交換やチューブ交換、パンク修理を実践する際に、あると便利なのがタイヤ交換用のイゲタやマニュアル式のUNITタイヤチェンジャーである。「古タイヤを重ねて作業してます」といったサンメカも数多いと思うが、タイヤ交換時やパンク修理時にホイールが安定する台の上で作業すると、圧倒的に仕事がはかどるものだ。

タイヤ交換しようとした際に「丸いマーキング」が気になった……といった経験のあるサンデーメカニックも多いはずだ。国内外を問わず、すべてのメーカーのタイヤにマーキングがある訳ではないが、国内メーカーの大型モデル用タイヤには「黄丸」の表示が多い。この黄丸ポイントは、タイヤ製造直後の検査で一番軽かったポイントを示す「軽点」と呼ばれる表示である。一般的には、この軽点をホイール側の一番重い部分(エアーバルブ部分)に合せるとされている。確かに、目視的にホイールのエアーバルブ部分は、ホイールの中でもバランス的に一番重い場所かも知れない。しかし、必ずしもそうではないこともある。迷ったときには、ホイール単品でバランス確認し、「一番重い部分」と「軽点」の位置を一致させるのがよいだろう。
タイヤ交換時に注意すべきポイントは、第1に回転方向=ローテーションマークの向きを明確にすること。ローテーション指示が無い場合は、どちら回転でも利用できる。また、前後輪併用タイヤの中には、前輪用として利用する際の「←FRONT」と、後輪用として利用する際の「←REAR」がある。そんな際には指示回転に合せてタイヤを組み込もう。
新品チューブを組み込む際には忘れずに!!

新品チューブを袋から取り出すと、折りたたんであったことがわかる。そのまま組み込むと、潰れたチューブがビードに挟まったり、タイヤレバーとリムの間に挟まり、新品のはずがいきなり「パンクかよっ!!」なんとことは決して珍しくない。そんなトラブルを回避するための策として、新品チューブに少しだけエアーを入れてみるのが良い。チューブ自体が輪になり、自立できる程度のエアー量で良い。入れ過ぎはNGだ。無抵抗のチューブにエアーを入れ過ぎるとチューブが変形で膨らんでクセが付いてしまうからだ。
チューブに少しだけ空気を入れてドーナツ状(浮き輪状)にしたら、キレイなウエスでチューブをカラ拭きしよう。さらにシリコンスプレーを吹き付けてから再びウエスで拭き上げ、チューブの滑りを良くしよう。シリコンスプレーを使ってウエスで拭き上げることで、ゴムチューブの滑りが良くなり、組み込み時にタイヤレバーでチューブを噛んでしまうことが少なくなるのだ。
チューブバルブの引き上げ工具が便利

タイヤローテーションを確認しながらホイールリムにタイヤをセット。次に、リムのエアーバルブ孔外側からエアーバルブプーラーの金具先端を差し込み、タイヤビードの隙間から先端金具を外側へ引っ張り出す。その金具をチューブバルブにネジ込み、バルブ先端をタイヤ内側へ送り込むのと同時にワイヤーを引っ張り上げることで、スムーズにエアーバルブをリム孔へ通すことができる。この工具の使い勝手の良さを知ってしまうと、次も必ず使いたくなる便利品だ。DIYサンメカには使って欲しい!!
オフ車用に開発されたタイヤチェンジャー
このようなスタンドで本当にタイヤ交換できるものか? 当初は本当なの?と思ったが、実際に使ってみるとその勝手は「思いのほか良好!!」。この商品は、オフロードバイクをより一層楽しむために登場したUNITポータブルタイヤチェンジャーと呼ばれる商品。タイヤビードを落とした後に、ホータブルチェンジャーにホイールをセットすれば、タイヤ交換作業を「スタンディングポジション」で行うことができる。サーキット走行派なら、トランポに積んでおきたい道具のひとつだ。


「スタンディングポジション」でタイヤ交換できれば、腰痛ともオサラバ……なんて考えていたサンデーメカニックには、間違い無く朗報だろう。完全マニュアルの手交換でも、スタンディングポジションならタイヤ交換も億劫にはならない。オフロード車はもちろん、スポークホイール車なら大型旧車でも利用できる。チューブレスタイヤ車でも、タイヤの脱着だけならこのチェンジャーのありがたさを知ることができる。
- ポイント1・ タイヤは「残溝深さ」だけではなく製造年週にも気を配ろう。
- ポイント2・新品チューブは組み込む前にエアーを入れてチューブ形状を保持してみよう。
- ポイント3・チューブを組み込む前にはウエスで拭き取りシリコンスプレーで表面を拭き上げよう。
- ポイント4・タイヤの「軽点」はホイールリムの重い部分と組み合わせる。タイヤ装着後にはバランス取りを実施。
チューブレスタイヤでもチューブ入りタイヤでも、タイヤ交換やチューブ交換、ましてやパンク修理の際にはコツがある。コツというのは、実作業経験から感じ取るものでもあり、言葉や文章で伝えるのは少々難しい。しかし、DIYタイヤ交換を実施する際には、最低限知っておくべき事柄があるので、ここではそんなチェックポイントをイメージして頂ければ幸いだ。タイヤの賞味期限は、「溝の深さ」と「ゴムの鮮度」から判断することができる。昨今の旧車ムーブメントの中で、何年かぶりに公道復帰したバイクの中には、タイヤの残溝深さは十分あるから「大丈夫だろう?」と思い込んで走っているライダーがいるが、これは大間違い。ゴム部品は、経年変化や劣化によって硬くなり、それと同時にグリップ力は著しく低下させてしまう。気持ち良く車体をバンクさせたとたんにスッテンコロリンなんて痛いお話しは数多くあるので、しばらく走らせていなかったバイクの復活時は、残溝深さが十分あったとしても、まずは製造年週を確認するべきである。
ここでは、チューブタイヤの交換時に注意すべき事柄を解説しているが、チューブレスタイヤでも注目ポイントはいくつもある。タイヤの賞味期限と同様に、エアーバルブのコンディションにも注意深くなろう。キャストホイール車の場合は、ゴムのエアーバルブをリム孔に通してエアー圧を保持しているが、このゴム製エアーバルブにも劣化がある。キャップをした状態のままエアーバルブを指先で、横へグイッと押し倒してみよう。新品バルブやコンディションが良いエアーバルブのときには反発が強く、リム孔との境もしっかり形状維持している様子を窺い知ることができる。
ところが、ゴムバルブの劣化が進むとバルブの反発が弱く、シール部分に亀裂が入っていることに気がつくはずだ。このようなコンディションでエアー充填し、走行するのは極めて危険である。チューブレスタイヤの場合は、タイヤ交換と同時にエアーバルブゴムも新品部品に交換するのが理想である。ゴムバルブではなく金属バルブを組み込んである場合は、Oリングでエアー漏れを遮断する構造になっているため、タイヤ交換と同時にエアーバルブのサイズに合致した新品Oリングに交換しよう。
「ゴム製タイヤ」対「金属のホイールやリム」は、滑りが良くなくて当然である。そんなタイヤとホイールの滑りを良くするのがタイヤビードワックスと呼ばれる商品だ。タイヤ交換時にビード部やリム内側とビードが触れる部分にしっかりワックスを塗布することで、リムに対してタイヤの滑りが良くなり、タイヤのハメ込みも容易になる。また、空気を入れた時に、ビードがリムエッジにしっかり上がるのを確認しないといけないが、ビードワックスを塗布することで確実に上がりやすくなる。中途半端な上がりのままでは、タイヤの芯円が出ず、エアー漏れの原因にもなるので、特に、チューブレスタイヤの交換時はビードワックスを使って、タイヤビードがしっかり上がっていることを確認しよう。チューブレスに比べチューブタイヤはビードが上がりやすいが、それでも上がらないことは多いので、すべてのタイヤ交換時にはビードワックスをしっかり塗布しよう。
チューブを組み込む際の注意点は、必ずチューブに空気を入れて自立する程度まで膨らませ、汚れを落としてからシリコンスプレーを使って拭き上げ、チューブ表面がツルツルに滑るようにすると作業性が良くなり、チューブを噛み込ませてしまうなどの失敗が少なくなる。特に、新品チューブの組み込み時は、タイヤレバーの噛み込みや引っかけでパンクさせてしまうケースが多いので、細心の注意が必要である。
タイヤ交換やパンク修理の作業性を向上させれば、作業中のトラブルは確実に減らすことができる。プロショップには、タイヤチェンジャーや様々な道具や装備があり、作業性は確実に高められている。我々サンデーメカニックのDIY作業とプロショップのお仕事を比較するのはナンセンスだが、それでも作業性の向上は、大きな夢であり目標でもある。そんなサンデーメカニックの希望を叶えてくれる商品が、UNITの各種マニュアル式タイヤチェンジャーかも知れない。カチカチに劣化した旧タイヤのビードを落とした後にマニュアル式タイヤチェンジャースタンドへホイールをセットし、タイヤ外しにチャレンジしてみたが、オンロードモデル用タイヤでも、想像以上に使い勝手が良かったのは印象的だった。
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