長期保管でガソリンタンクをサビさせないために有効な方法のひとつは、タンク内のガソリンを完全に抜いてしまうこと。一方で錆びたタンクが目の前にあれば、完璧なサビ退治をを行いたいものです。優秀なサビ取りケミカルは数多くありますが、汚れたガソリンタンクにケミカルを投入するのはもったいない。実は水だけで落ちる汚れやさびも結構あるのです。そこで役に立つのは高圧洗浄機と中性洗剤です。

サビ取りケミカルを浮きサビに反応させたらもったいない


内部のサビは承知の上で、再ペイント用に入手したガソリンタンク。サビ取りを先に行い、使えるメドが付けば再塗装を行う。サビを落としてみたら穴が開いてしまったとうことも起こり得るので、サビ取りが先行。

タンクキャップの通気孔から腐ったガソリンの臭いを嗅ぐと、レストア心が燃え上がるのはかなり重傷のバイクいじり好きです。今から半世紀近く昔のバイク雑誌を見ても、(その頃の)古いバイクの整備やレストアでは決まってガソリンタンクのサビ取りをやっています。

さらに昔の2スト全盛時代でなおかつエンジンオイルが分離給油になる以前は、ガソリンタンクに入れたエンジンオイルがコーティング剤代わりになって錆びづらかったという話もありますから、何が幸いするか分からないものです。

かなり少数派になってきた2ストロークモデルを含めて、現在のバイクのガソリンタンクはガソリンだけを入れるので、経年変化によってタンクをサビさせる要因となります。長期間に渡ってバイクに乗ることなく保管する際にタンク内のサビを防ぐには、ガソリンで満タンにしておくか完全に抜いてしまうかの2つの選択肢があります。

満タンと言っても給油口の縁まできっちり満たすのはなかなか難しく、そんな時はガソリンの変質を防ぐ安定剤を入れておくのが良いようです。

これは私の体験例ですが、燃料コック内を含めてタンクからガソリンを完全に抜き、タンクキャップ半開きで海上コンテナ内に保管したところ、5年経過してもサビひとつなくカラカラ状態を維持できたことがありました。

不幸にして錆びさせてしまった場合、またここで紹介するタンクのようにサビを承知でレストアベースとして入手したタンクの場合、サビ取りが必要です。サビ=鉄の酸化なので、昔のサビ取りと言えば強い酸性でサビを落として、その後に中和を要するものでした。

しかし今では、ガソリンタンクのサビ取りケミカルの多くが中性の性質になっています。濃度の高い酸性ケミカルの後処理をどうするかを考えた時、下水に流せる中性のメリットがクローズアップされます。

中性で酸化鉄を取り除ける理由は界面活性剤にあります。

界面活性剤は石けんや洗剤に含まれる成分で、水と油の境界の結びつきを弱くします。これは液体同士だけでなく固体同士の境界にも働きかけ、錆びたガソリンタンクであれば素材の鉄とサビが浸食した酸化鉄の境界に入り込んで両者を切り離そうとします。

中性なので環境への影響を気にせず使えるのが大きな特長ですが、強い酸性のサビ取り剤に比べて即効性と言う点では若干穏やかな反応となります。

またタンク内がサビだけでなくガソリンや油分で汚れていたら、界面活性剤はその汚れを取り除くために仕事をしなくてはなりません。本来のサビ取りの前に、余計な仕事で使ってしまうのはもったいないことです。

 

POINT

  • ポイント1・長期保管時のガソリンタンクは満タンにするか、完全に抜ききるかの二者択一
  • ポイント2・中性タイプのサビ取り剤は界面活性剤の力を活用する

給油口から高圧洗浄するだけでサビはかなり落ちる


1)給油口から覗いたタンク内部は赤サビで覆い尽くされている。
2)剥がれたサビを回収できるよう、プラスチックコンテナの中で高圧洗浄を行う。
3)大きなかたまりから細かく砕けた物まで、高圧洗浄だけで大量のサビを取り除くことができた。
4)エアーブローすることでさらなるサビのかたまりが。これを最初からサビ取りケミカルで除去しようとしても、時間が掛かる上にケミカルが劣化してしまうのでもったいない。

そこで活用したいのが家庭用の高圧洗浄機です。コンクリートに染みついた汚れも簡単に洗い流せる洗浄機の魅力は圧力です。この高圧洗浄機を給油口から突っ込んでタンク内に向けて噴射すると、一般的な水道ホースの先端を指で摘まんで勢いを増すより、遙かに高い圧力でタンク内部を洗浄できます。ポンプで加圧しているのだから当然です。

この圧力によって、表面にカサブタのように発生したサビは意外なほどあっさり除去できます。もちろん、給油口の位置やガソリンタンクの底板形状によって、高圧噴射が当たる部分と当たりづらい部分が生じます。しかし簡単に剥がれる浮きサビや残留するガソリン系の汚れを吹き飛ばしておくことで、サビ取りケミカルの反応効率は向上します。

タンク内のサビ取りにサンドブラストを活用するという考え方もあります。サンドブラストを使うにはブラストを当てる相手が乾燥している必要があるので、高圧洗浄機でクリーニングした後でタンク内部を完全に乾燥させてから使用します。

しかしサンドブラストの研磨剤である酸化アルミニウムの微粒子をガソリンタンク内に噴射すると、すべてを排出するのは難しい作業となります。そしてガソリンタンク内に残った研磨剤が何かの拍子に燃料コックやキャブを通り抜けて燃焼室に流れたり、燃料ポンプのフィルターに引っかかったりする可能性があると考えると、なかなか積極的に使う気にはなれません。

そんな中、固形ながらエンジン内部に影響を与えない研磨剤として注目されているのが重曹ブラストです。食品用としても使われる重曹の微粉末をコンプレッサーの高圧の空気で噴射する重曹ブラストは、重曹自体が水溶性なので残留しづらく、また金属のように硬くないのでクリアランスが狭い部分に入り込んでも金属部品に傷を付けづらい利点があります。

また重曹ブラストは水道水と併用することでウェットブラストとして使えるため、ガソリンタンクの汚れ取りやサビ取りにかなり効果的です。重曹ブラストを運用するにはブラストシステムやコンプレッサーが必要で、それらはガソリンタンクのサビ取りケミカルよりはるかに高額なので、ガソリンタンク用としてわざわざ導入するのは現実的ではありません。しかし重曹ブラストに魅力を感じて導入することがあれば、ガソリンタンクのサビ取りの強力な武器となることは間違いありません。

話はわき道にそれましたが、ブラストに比べれば家庭の清掃道具として一般的な高圧洗浄機は、圧力を活用するという観点からガソリンタンクの汚れ取り、サビ取りにとってかなり有効なアイテムとなります。


1)青い縦型のタンクが重曹を研磨剤として利用する、EZブラストという商品名がついた重曹ブラスト。外観はきれいだが長期保管で内部が錆びたタンクのサビ取りを行う。
2)給油口から重曹ブラストを行うと、燃料コック取り付け部分から赤さび混じりの液体が大量に流れ出る。地面の赤さびの輪がサビ落とし効果の高さを物語る。
3)こちらが作業前。一度も使用したことのないタンクだが、湿度の高い場所で保管したためまんべんなく錆びている。
4)重曹ブラストのみ施工してサビ取りケミカルを使う前だが、すでに大半のサビは落ちている。この状態になっていれば、サビ取りケミカルの反応も良い。

 

POINT

  • ポイント1・掃除道具の高圧洗浄剤は高い圧力でタンク内の汚れや浮きサビを吹き飛ばす
  • ポイント2・水溶性の重曹を研磨剤に用いた重曹ブラストなら、ガソリンタンク内に研磨剤を残さず洗浄できる

中性洗剤の界面活性力で下準備は完璧


食器洗い用の中性洗剤を50℃程度のお湯で希釈してタンクに入れて、よく振った後に1時間程度置いておく。


油汚れが落ちるのはもちろん、高圧洗浄機で取れなかった新たなサビの粉も落ちてきた。

もったいぶるわけではありませんが、高圧洗浄の次に使いたいのが中性洗剤です。食器用の中性洗剤はまさしく界面活性剤であり、高圧洗浄で取り残した油分を除去するのに最適のアイテムです。さらに先に説明したように、中性のサビ取り剤と同じ原理で鉄の地肌とサビの間に入ってサビを浮かせる能力もあるのです。

界面活性剤には成分や配合によって無数のバリエーションがあり、ガソリンタンクのサビ取りと食器洗いの洗剤では中身は異なります。ただし異なる2つの物質の間に入って分離させるメカニズムは同一であり、実際に食器用洗剤を錆びたタンクに注入すると汚れに混ざってサビが落ちてきます。

高圧洗浄で浮きサビを吹き飛ばし、脱脂洗浄で油分を洗い流しておけば、サビ取りケミカルの下準備としては万全です。希釈する際は水ではなく50℃程度のお湯を使うことで反応が活性化してサビ取り効率が大幅に向上します。また下処理を行うことでサビ取りケミカル自体の汚れが少なくなるので、再利用する際の性能低下が抑制されてコストパフォーマンスも向上します。

錆びたガソリンタンクを目の前にしてガックリうなだれる気持ちも分かりますが、いきなりサビ取りケミカルを投入するのではなく、急がば回れのたとえどおり、より効果的にサビを除去できるような段取りを考えてから実行に移りましょう。

ようやくサビ取りケミカルの投入。中性のサビ取り剤として定評のある榮技研のタンククリーナーを50~60℃のお湯で希釈して、温度が下がらないよう毛布でくるんで24時間反応させる。

タンク内のクリーナーを排出して水ですすぎ、あらかじめ別に分けておいたタンククリーナーで内部をコーティングする。作業前と比べると底板は新品のように輝いている。サビがひどくなると底面の溶接部に穴が開くことがあるが、幸い漏れなかったので再使用できそうだ。

 

POINT

  • ポイント1・食器洗い用の中性洗剤でもガソリンタンク内のサビ取りに一定の効果がある
  • ポイント2・充分な段取りを踏むことでガソリンタンクのサビ取りケミカルの効果が最大限に発揮できる

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