回転部分や摺動部分に組み込まれているオイルシールは、機械内部のオイルを外部に漏らさないための重要なパーツですが、経年劣化などでシール性が低下することがあります。オイル漏れが始まりシールを交換する際に、シャフトを抜かないとシールが外れない構造だと作業が面倒ですが、ハウジングやシャフトを傷つけることなくシールだけを取り外せる便利な工具があります。旧車ユーザーにとっては要注目です。

オイルシールの劣化や損傷は避けられない?

インナーチューブが往復する際に異物や点サビがリップを傷つけて、フォークオイルが漏れ出すのが典型的なフロントフォークのトラブル例だ。インナーチューブにうっすらと油分が付着するのは問題ない。逆に完全にドライ状態だと、鉛筆で書いた文字を消しゴムで消すようにインナーチューブとリップが強く擦れて異常摩耗の原因となる。

エンジンのアウトプットシャフトやシフトシャフト、フロントフォークのアウターチューブに組み込まれたオイルシールは「中の世界」と「外界」の境界線となっています。回転や摺動、往復運動する部品に触れているオイルシールのリップは、シャフトの間にあるごく薄い油膜と、ギリギリ最小限のフリクションで内から外へのオイル漏出を防いでいます。
そんな重要なパーツも、経年劣化や不測のトラブルで破損することがあります。以下にトラブルの原因を列挙します。

●経年劣化

リップのゴムが硬化する経年劣化については、紫外線や空気や時間経過によってどうしても生じます。オイルシールだけでなく、タイヤやグロメットなどすべてのゴム部品は経年劣化の影響を受けるため避けられません。

●異物噛み込み

これもオイル漏れの原因としてメジャーで、砂や泥やサビなどがリップとシャフトの間に入り込んで傷を付けるとオイル漏れが始まります。フロントフォークのオイルシール漏れの多くが異物噛み込みです。フロントフォークの点サビが原因になることもありますが、サビも異物と捉えればこのパターンです。

●シャフトの振れ

エンジン内部のベアリングの摩耗などに起因してシャフトが偏心しながら回転すると、リップの当たりに強弱が生じて偏摩耗を起こしてオイル漏れが発生することがあります。

●圧入不良や初期潤滑不良

これは作業ミスによるものですが、オイルシールを斜めに打ち込んだせいでシャフトと斜めに当たっていたり、リップが乾燥した状態でシャフトが回転したせいで焼き付きや異常摩耗を発生してオイルが漏れる場合もあります。
これらのトラブルが生じたオイルシールはそのまま使用せず、できるだけ速やかに交換しなくてはなりません。

シャフトが外れればシールは簡単に取り外すことができるが……

インナーチューブの先端にスライドメタルが付かない機種は、アウターチューブ下端のダンパーロッド固定ボルトを外せばインナーチューブだけ抜くことができる。これでアウターチューブ開口部からシールプーラーをセットでき、オイルシールを取り外すことができる。

オイルシールは本質的に、シャフトに接して簡単に外れないように組み込まれています。そのためオイルシールと接しているシャフトが外れるか否かで、オイルシール取り外し作業の難易度は大きく異なります。

ここで紹介する例のように、アウターチューブからインナーチューブが抜けてしまうフロントフォークの場合、マイナスドライバーやプーラーをオイルシールに容易に引っ掛けることができ、内側からこじって取り外すことができます。
またエンジンに組み込まれているオイルシールでも、オーバーホール前提ならばエンジンを分解してからシャフトを抜いて、オイルシールを取り外すことができます。

これに対して、シャフトが刺さったままのオイルシールを取り外すのは容易ではありません。オイルが漏れているとしても、シャフトとシールリップの間にマイナスドライバーを突っ込むほどの大きな隙間はなかなかできません。
先の尖ったピックツールを隙間に入れたり、オイルシールの端面にタッピングビスをねじ込み、スライディングハンマーなどで引き抜く方法もありますが、失敗すると中途半端にオイルシールが壊れて八方塞がりになってしまうことも。
またどの方法にしても、シャフトやシールケースを傷つけたり破損するリスクがある点にも注意が必要です。シャフトを削ってしまうと、せっかくの新品オイルシールのリップが再び傷つき、オイル漏れが発生してしまいます。またシールを圧入するケースが傷つくとシールの収まりが悪くなり圧入不良の原因になりかねません。

最も確実なのは、手間を惜しまずオイルシール部分からシャフトが抜けるまで分解することですが、小さなオイルシールひとつのためにそれ以外に多くの交換部品が発生するのはできれば避けたいものです。

シャフトとシールの隙間に差し込む薄いブレードがキモ

シャフトを外さずオイルシールを取り外せるシールプーラーは、全国展開の工具ショップ・ストレートのオリジナル商品。自動車のエンジンのカムシャフトシールやクランクシャフトシール交換を前提とした専用工具だが、バイクのオイルシールにも流用できる。

幅狭で薄いブレード(右)と、ワンタッチで位置を調整できる支点(左)によってオイルシールを引き抜く。

このような状況で重宝するのがシャフトなどを残したまま(付けたまま)オイルシールを取り外す専用工具です。工具メーカーのストレートから販売されている「シールプーラー シャフトタイプ」は同社のオリジナル商品で、ブレードと呼ばれる薄い爪をシャフトとシールの隙間から挿入し、90度に折り曲げられた爪の先端をシールに引っ掛けて引き抜くことができます。

ピックツールやタッピングビスがシールの表面から作用するのに対して、このプーラーのブレードはシールの裏側に回り込んで作用するのが特徴です。さらにスライディングハンマーのように衝撃を加えるのではなく、テコの要領で引き上げるのもポイントです。一カ所だけで決めようとするとシールが傾くリスクも高いですが、シャフトに沿ってブレードを回しながら、数カ所でジワジワ引き上げることでシャフトもシールケースもダメージを受けづらいメリットがあります。

ブレードの爪をオイルシールの裏側に引っ掛けることと、テコがしっかり利くように支点を確保することが成功のカギとなりますが、他の工具で無理にこじってシャフトなどに傷を付けてしまうことを思えば、確実に作業できる専用工具を備えておく方が賢いことは言うまでもありません。

シャフトに沿ってブレードを挿入して、オイルシールの裏側にブレード先端の折り曲げ部分を引っ掛ける。グリップを押し下げたときに、シャフトに沿ってブレードが動くように支点の位置を調整することが重要。

オイルシールプーラーのPOINT

  • ポイント1・リップが傷ついたオイルシールを交換する際に、シャフトとオイルシールの組み合わせによって作業の難易度が変わる
  • ポイント2・汎用工具や代用品でシャフトが貫通した状態でオイルシールを抜こうとすると、シャフトやケースを傷つけるリスクがある
  • ポイント3・シャフトを外さずオイルシールを取り外せる専用工具によってシール交換作業が安全にできる
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