車体にアルミテープを貼ると静電気が除去されてハンドリングが良くなったり車体性能が向上したりする……。
トヨタ自動車が特許を取った事で大注目を浴びたウソみたいなこの話、未だに喧々諤々の論争が続いています。

そんな簡易的な物で静電気が除去できるの?
仮に除去出来るとして、静電気除去したらハンドリングが良くなるって何?どういう事?
静電気という目に見えない物な事もあり、サッパリわかりません。
プラシーボ(思い込み)だと断言する人も多いです。

しかーし!
静電気を積極的に放電させる事が常識の世界もあると言ったら驚きますか?

皆様にささやかな幸せとバイクの知識をお送りするWebiQ(ウェビキュー)。
今回は静電気除去チューンについて掘り下げます。

オカルトチューンとは


まず最初に「オカルトチューン」という用語について。
誰に言うともなく自然発生した言葉で、30年前には既に存在していたのでネットスラング等ではないです。

キャブレター交換やマフラー交換など、装着する事で明確に何かが変わるという根拠のある『普通のチューニングパーツ』に対し、オカルト系は明確な根拠が無い、あるいは根拠が特殊過ぎて普通の人には理解できない物になります。
例えば「装着するとピラミッドパワーで宇宙からエネルギーを受信して……」とか、「古代エジプト神話にも登場する太陽神ラーのエナジーを内包しているので……」とか、普通の人にはちょっと何言ってるのかわからないけれど、信者には絶大な効果を発揮するパーツです。

では簡単な装置で静電気を除去するとイロイロ良くなるという静電気除去チューンはどうでしょう?
少なくとも字面からはオカルトチューンの匂いしかしません

トヨタの静電気除去


静電気除去チューンそのものは昔からある事にはありました。
しかしオカルトチューンっぽい物が一般的に受け入れられるはずもなく、「意味無し」の一言で片付けられて廃れて来た歴史があります。

流れが変わったのはトヨタが静電気除去の為のアルミテープで特許を取ってから。
特許は簡単に取れるものではないので、無駄な事を徹底的に省くトヨタが意味も無いのにそんな特許を取るわけがありません。

トドメは発売中の車に対して既に静電気除去チューンが実施されている事が判明した事。
しかもオプションパーツとして販売するのではなく、標準装備で。
コストに異様に厳しいトヨタですから、無駄な物をわざわざ標準装備するわけがありません。
アルミテープ代、テープを貼る作業時間に相当する人件費、剥がした台紙の処分費用、作業スペースの為の土地代などなど、全てのコストを考慮しても余りある性能を発揮するから採用された事は明白です。

信じ難いですが、わざわざやるだけの効果があるという事なのでしょう。

世の中の静電気除去装置


ところで、世の中には性能向上目的で静電気除去させている事例が既にあります。

最も有名かつ絶大な効果をもたらしているのが飛行機の放電索(スタティック・ディスチャージャー)と呼ばれる部品。
主に翼の後端に装着してあるヒモ状や棒状の放電装置で、普通の旅客機にも装着されているのが確認できます。
この放電索が無いと機体に帯電した静電気の影響で通信用電波に電磁波障害が起こるそうです。

ヘリコプターには放電索が無い事が多く、放電しきれない電気が機体に帯電するので、レスキューなどで救助用のフックを下ろす際は一旦地面に接触させて放電させないと地上の人が感電してしまう事があるそうです。

ん?!静電気って意外と大きな力を持ってるのかも?

静電気はなぜ起きる?


詳しく書くと難解な専門用語だらけになるので超簡略化しますが、物と物が擦れると帯電する(=静電気)、となります。

小学生の頃、下敷きを脇に挟んで擦ってから頭上にかざすと髪の毛が持ち上がる遊びをしませんでしたか?
アレは摩擦で発生した静電気が電気を通さない下敷きに帯電し、髪の毛を重力に逆らって持ち上げている状態です。

ドアノブを触った時に静電気が放電されてパチッとなるのは服と擦れて身体が帯電しているからです。
飛行機は機体と空気が擦れるから、ヘリコプターは高速回転する羽が空気と擦れるから静電気が発生して帯電するワケです。

大規模なところだと雷もそうです。
空気と空気が気流で擦れて帯電し、一気に放電されると雷になります。
空中放電される事もあるし、地上に放電されれば落雷になります。

「静電気ごときでバイクの性能なんか左右されない」と思っている人も、雷と言われるとちょっとは影響あるかも?くらい思えてきませんか?
太陽から出る太陽風(帯電した粒子)が人工衛星と擦れて帯電し、衛星内部で放電が起こって人工衛星が全損した例も何件かあるそうです。
静電気、実はけっこうスゴイ。

静電気は除去できるのか?

「あんな簡易的な物で放電できるわけがない」という意見があります。
しかし上の項目で飛行機の放電索を紹介したように、簡単な構造で帯電した静電気を空気中に放電する事は可能です。

静電気を溜め込んでから一気に放電すると雷のように火花を伴うので放電してる事が一目瞭然ですが、常時チョロチョロ放電していると何も見えず、何も感じないので放電している事を体感する簡単な方法はありません。
どのくらい放電しているかを計測表示するメーターなどもありません。

この「放電している事を確認する手段がない」という所が静電気除去のオカルトチューンイメージに拍車を掛けているのでしょう。
とても嘘っぽく感じてしまうのは無理もない話です。

バイクの静電気除去

ではバイクの場合、何かと擦れて帯電する可能性が高い部分はどこでしょう?

それは4輪車と同じく外装類の他、吸気した空気、燃料とホース、車体の各動作部分などが代表的な摩擦部分となるようです。
バイクは基本的に擦れながら動いている部分だらけですので、これらに対応する静電気除去を謳った製品が多数発売されています。

効果的に放電するためなのか(?)、車体全体で放電するのではなく、それぞれの場所ごとに放電させてしまうのがバイク用の特徴でしょうか。
足回りならサスペンション、吸気ならエアクリーナーやキャブレター(インジェクター)マウント付近、この辺りに対応した製品が多いです。

サスペンションは内部でオイルが高速移動しますし、エアクリーナーは空気が高速移動する場所です。
キャブレター(インジェクター)周辺は燃料の流れの他、混合気が高速移動しているので、確かに擦れて帯電しそうではあります。

飛行機と同様に空気と擦れるカウル類も帯電するはずですが、外装類の帯電を除去する製品は発売されていません。
これは恐らくトヨタの特許が影響していて、カウル類に有効な静電気除去製品が(例えアルミテープ貼り付け式でなくとも)商用利用できないからでしょう。
さすが特許。
因みに2輪ではNGCジャパンが「スムースドライブシステム」で帯電除去の特許を取っています。

静電気が除去されるとどんな効果がある?

ただでさえ放電してる事が見えないのに、その放電によってもたらされる効果となると、実は誰も論理的に説明できないようです。
トヨタもNGCジャパンも「帯電している物体から放電する事でいろいろ良くなる」とは言っているものの、では何がどう良くなるのかについては明言されていません。
とにかくイロイロ良くなる(らしい)。

その不明瞭さがオカルトっぽさを増してしまい、バカにする人は徹底的にバカにする状況を生んでいます。

空気の流れが良くなってハンドリングが良くなる、オイルの流れが良くなってサスペンションが良くなる、吸気の流れが良くなってエンジンが良くなる……。
うーん?!ホントに?!
静電気が帯電しなくなっただけで?!

本当にホント?!

金属製で先端の尖った物を装着すればそこからコロナ放電して静電気が除去されるコレは本当です。
その原理で放電している実用物が飛行機の放電索以外にも世の中にはあります。

身近なところでは集塵機や脱臭機。
集塵機は静電気を放出する事で空気中のホコリを帯電させ、本体側に吸着させる事で細かなチリを集めます。
脱臭機も同じ原理でニオイの粒子を吸着する事で脱臭します。
(放電時に発生するプラズマで積極的にオゾンを発生させる物もありますが、これはまた別の話)
とりあえず単なる静電気で小さな物体を動かす事が出来るのは間違いありません。

問題は静電気を空中に放電したとして、それで体感出来るような効果があるのか?という事でしょう。
空気中のチリは極小の物質なので動かせるけれど、バイクは100kgを超える車体です。
樹脂が帯電するのは下敷きの例から見ても解りますが、樹脂が帯電したからと言って車体の挙動に影響したり、エンジンやサスペンションの性能を阻害するほどのエネルギーがあるのか?
これに尽きます。

ハンドリングが良くなるとはどういった事なのか?サスペンションが良く動くというのはどういう事?
疑問は尽きませんし、静電気除去のアヤシサは増すばかり。

実は既に体感している

静電気は物と物が擦れる事で発生すると書きました。
発生した静電気が帯電して悪さをするから、これを放電して解放させようとするのが静電気除去チューンです。
アヤシイですね!

ところが、この静電気を除去したのと似た状態を皆さん既に体感しています。
それは『雨の日
雨の日は静電気が帯電する前に水分の方へ流れていくから帯電しにくいのです。
結果、雨の日は自動的にある程度静電気除去チューンが施されているのと同じ状態になります。

では雨の日はサスペンションの動きが良くなるの?という話ですが、これが何とホントに良くなります。

今度雨が降ったらよーく観察してみてください。
雨の日はタイヤグリップに注意が行ってサスペンションの動きなんてあまり気にしていなかったでしょうけれど、気にしていると体感できます。
晴れの日と同じ走りが出来ない事と雨音のせいで超わかりにくいのが難点ですけどね。

バイクは直接風雨に晒されるのでわかりにくさMAXですが、自動車だとかなり明確に体感できるのではないかと思います。
「雨の日は何だか車の動きが良い」、ちょっと気にして運転してみてください。

試してみよう!

でもまぁ結局のところ、自分で体感してみるしかないです。
「こんなの効くわけがない」と試す前から決めつけずに試してみてください。
サスセッティングの知識なんか要りません、良し悪しを判断する必要も無いです。
「何かが変わった」という事が体感出来ればOK。

メーカー製品は様々なテストの上で「良く効く部分」だけを発売しているので明確に効果が体感出来るはずですが、いきなり大金を投入する勇気がない場合は自作してみても良いです。
多少効果は違っても、ようするに尖った金属の先端から放電させれば良いので、ソレっぽい物を付けるだけでも良いです。

ただ、メーカーでテスト中には「装着したら逆に静電気を集めてしまって最低な事になった」例も報告されています。
だから、自作した物を装着した場合は悪化する事もあるのが前提です。

とにかく、騙されてみないと解らない事もあるのです。
なにしろメーカーですら明確な理由が完全に解ってはおらず、未知の車両では様々な場所に装着して探っているのですから。

逆に言えば販売中の商品は効果アリと判断されている物になります。
特に車種別キットになっている物はそうです。

他人の意見は信じるな

何しろオカルト臭いので、試しもしないうちからオカルトと断定して全否定の人も居ますし、有りもしない効果を体感してしまう人もいます。
他人の感想など参考になりません。
この記事だって鵜呑みにしてはいけません。
自分で体感してみるしかないのです。

ちなみに私の場合ですが、所有している車両は揃いも揃って不人気車ばかりなので残念ながらメーカー製の車種別キットは存在していません。
今後発売される事も無いでしょうから自作して実験している途中です。
ですが、これが難易度高めで苦戦中……。

素晴らしい効果があったように感じても気のせい(=プラシーボ効果)ではないと確信するのは難しいですし、燃費に影響が出るほどのレベルには達していないので数値変化は出ていません。
テキトーな物を付けただけだし、良くわからないけど良くなっているように感じる、そんな段階です。

4輪の愛車であるハイエースには専用キットが発売されているのですが、まだ購入には至っていません。
もう買ってしまいたい気分では居るのですけどね。

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コメント一覧
  1. れじ より:

    燃費とかサーキットでのタイムとか客観的なデータがないものを信じるのは馬鹿と言う。

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