エンジン分解時はもちろん、しつこい油汚れやクランクケースのカーボン汚れをキレイさっぱり落としたいときに便利なのが強力カーボン汚れ落とし(泡タイプ)である。エンジンを分解した際に各種カバーガスケットがちぎれて残り、こびり付いてしまうことが多々ある。そんな箇所にも同ケミカルを利用し、しばらく待つとカーボンやガスケットの汚れがふやけて浮き上がり、比較的容易に落とすことができる。それが命名「強力」の由縁である。このケミカルを利用する時には、周囲へ飛び散らせて付着させたくないもの。そんなときには患部周囲を徹底的にマスキングしてから作業に取りかかろう。


周囲を養生してブシューってひと吹き!!


デイトナが取り扱っている「強力カーボン汚れ落とし(泡タイプ)」は、エンジン分解時など、取り外した部品にこびり付いたカーボン汚れやガスケットのこびり付きをケミカルのチカラで浮かせて除去できる強力な汚れ落としだ。ペイントにも反応してしまうので、スプレー時には洗浄部品を単品にしてから作業進行するのが良い。

しかし、どうしても車載状態で利用したい時などは、周囲に吹き付けたケミカルが飛び散らさないように、新聞紙やコロナマスカーで広範囲にマスキングしてから作業を始めよう。闇雲に吹き付けると飛び散ってしまうので、局所的に作業したいときには、カットしたペットボトル内にケミカルを吹き付け、刷毛塗りでカーボン汚れやガスケットのこびり付きに塗布するのも良い。



2ストエンジンのクランクケース、厳密には、乗り込んでパワー低下した2ストエンジンの一次圧縮室=クランクケースは、こんな真っ黒コンディションになっていることが多い。これは、減ったピストンリングの隙間から吹き返された燃焼ガスによる汚れだ。まさに未燃焼ガスによるカーボン汚れだろう。このような黒ずみやピストンに堆積したカーボン汚れは、ブラシやスクレパーで擦って無理矢理擦って落とするのではなく、この商品のようなスプレーケミカルを利用して、汚れを化学的に落とすのが理想的である。金属ブラシなどで擦り過ぎると、クランクケースにダメージを与えてしまうので要注意だ。

スプレー後に放置。除去できなければ繰り返し


完全分解した2ストロークスクーターのクランクケース。一次圧縮室はご覧の通り見事なまでにカーボンだらけだった。単品になったクランクケースのカーボン汚れにこのケミカルを吹き付けて数分間放置。汚れが浮き上がってきたら歯ブラシなどの毛足が柔らかいブラシで患部を擦り、ウエスで拭き取ればよい。汚れが落ちきれなかった部分は、同じ作業を繰り返し行うことでキレイになる。キレイになったところで、中性洗剤+ブラシで全体を洗い流して乾燥。もしくは残った汚れをパーツクリーナーで洗い流し、乾燥させよう。作業後はご覧の通りだ。まったく別物のような輝きを放つクランクケースとシリンダーヘッドに蘇った。



一次圧縮室が汚れているとなれば、同じ部屋の中で仕事している部品も当然ながら汚れている。一次圧縮室内で回転運動しているクランクシャフトのウェブ(ウエイト部分)や往復運動を繰り返しているコンロッドも、クランクケース内壁と同じような汚れ状態だった。このケミカルを吹き付けてからしばらく待ち、汚れが浮き上がってきたらブラシで擦って汚れを落とそう。汚れの浮きが悪い場合は、ヒーターやオーブンなどで部品を50度程度まで温め、ケミカルをスプレーしてからビニール袋やラップなどを巻き付けることで、カーボン汚れの反応が高まる。


クリーニングを終えたクランクシャフト。コンロッドサイドの隙間やオイル溝に向けて防錆浸透スプレーをタップリ吹き付け、ペアリングの隙間に入ってしまった異物や汚れを洗い流そう。
ダメ押しでエアーブローを徹底的に行い、さらなる回転馴染みの向上を目的にスーパーゾイルスプレーを吹き付けた。コンロッドの動きに引っ掛かりが無いことを確認したら、組み立て復元までの間は、ラップ巻きでクランクシャフトを覆って保管するのが良い。

強力ケミカル「こんなお仕事」もお勧め!!


ガッチリ食い付いてなかなか剥がれないガスケットは、無理にスクレパーやカッターなどでこそぎ落とさない方が良い。シャープかつ切れが鋭いスクレパーを利用したことで、ガスケット座面にキズを付けてしまい、それが原因でオイル漏れを起こしてしまう可能性もある。なかなか除去できないガスケットのこびり付きなどには、このスプレーを吹き付け、残留ガスケットがブヨブヨにふやけるのを待ち、その後、スクレパーを使って座面をキズ付けないように除去するのが良い。


ガスケットを除去したら、オイルストーン面にオイルを塗布し (ここでは2スト用エンジンオイルを利用。4スト用でもOK)、オイル塗布面でガスケット座面を擦って面出しを行おう。オイルストーンはドライ空間で利用するのは大間違い。各種オイルや洗い油に浸してからガスケット座面を研ぐことで、仕上がりが美しくキレ味も良い。ガスケットカスが多少残留した状態でも、オイルをしっかり塗布したオイルストーンで磨けば、ガスケットのカスはキレイに落ち、美しく面出しすることができる。

POINT
  • ポイント1・残留ガスケットカスが除去できないときには無理にスクレパーを使わず高性能ケミカルを併用しよう。
  • ポイント2・カーボン汚れは無理にブラシで擦らず、高性能ケミカルを併用して美しく仕上げよう。
  • ポイント3・ 洗浄後の機能部品やベアリング&摺動部分は、防錆浸透スプレーをたっぷり吹き付けてオイル洗浄。さらにオイルスプレーの塗布で初期カジリを防ぐ。

2ストエンジンでも4ストエンジンでも、エンジン分解するとシリンダーヘッドの燃焼室内や排気ポート内が、未燃焼ガスに起因した「カーボン汚れ」で真っ黒になっている。ピストンも混合気の燃えカスや燃え残りオイル(2ストエンジンの場合)のカーボンがピストントップ全体に堆積している。通常走行履歴のエンジンなら、オーバーホールするにもこれらカーボンの汚れ落としがメインになるが、走り込み過ぎてピストンリングやシリンダースリーブが摩耗限度に達していれは、本来なら汚れにくいクランクケース室内やクランクの一次圧縮室内が真っ黒に汚れていることが多い。

2ストでも4ストでも、シリンダーを抜取るとピストンが露出するが、ピストンリングよりも下のスカート側がカーボンで黒く汚れているときには、ピストンリングが摩耗限度に達していると考えよう。


ピストンリングが摩耗限度に達すると、ピストンリングによる気密保持が難しくなる。つまり爆発燃焼ガスの圧力にピストンリングが耐えらなくなり、リングの合口やリング溝の隙間からクランクケース側に向けて燃焼ガスが吹き抜けてしまう現象が起こる。4ストロークエンジンではプローパイガスとなり、2ストエンジンの場合は、フレッシュな混合気に爆発済の燃焼ガスが混ざり、いずれの場合でも本来のエンジンパワーは発揮できなくなってしまう。それと同時に、クランクケース内や一次圧縮室内が抜けた燃焼ガスによって真っ黒に汚れてしまうのだ。

そんな過走行車メンテナンスも含めて、エンジンのオーバーホール時に苦労するのが、こびり付いたカーボン汚れやガスケットカスの除去である。ゴシゴシ擦って無理矢理落とそうとすると、部品にダメージを与えてしまうことがある。特に、ガスケットカスやガスケットが完全に貼り付いて剥がれない場合は、強力ケミカルを吹き付けて、こびり付きが「ふやける」のを待つのが良い。ベテランサンメカの中には、ガスケットの固着やこびりつきを予想し、分解予定のエンジンの締め付けボルトを事前に緩め、カバーはプラスチックハンマーで叩いて締め付け座面に隙間を作り、そこへ高性能ケミカルを事前に吹き付けて染み込ませておく「裏テク」もある。いずれにしても固着したガスケットは除去しにくいので、ケミカルのチカラを利用して、少しでも楽に剥がすのが良いだろう。


分解部品がカーボンで真っ黒に汚れていることも多い。手っ取り早い洗浄方法のひとつに高性能な強力カーボン・汚れ落としスプレーを利用した洗浄がある。時間があるときなら、カーボンクリーナーを利用して、浸し洗い(漬け込み洗い)もできる。しかし、急いでいるときや時間をセーブしたいときには、この強力カーボン・汚れ落としスプレー併用作戦でタイムリーなメンテナンスが可能になる。無理してエンジン部品にダメージを与える前に、高性能ケミカルを併用することで、安心確実にメンテナンスを楽しもう。

エンジン全体が「真っ黒汚れ」なら……


ガレージセールやネットオークションでゲットしたコンプリートエンジンは「内容不明」なことが多い。現実的には、それが当たり前だと考えた方が良いだろう。実働保証のエンジンを購入したならまだしも、一般的には、ほとんどが「要オーバーホール」だと考えるべきだ。そんなエンジン外観が真っ黒なときには、分解作業の前にしっかり外観を洗浄することも大切な段取りだ。真っ黒なエンジンでも、分解してみたら内部は思いの外「キレイ!!」なんてラッキーなこともある。

時には外観的な汚れを洗浄せずに分解したため、キレイなインナーパーツが外部の汚れとまみれてしまい、後々の部品点検時や組み立て復元時に余計な作業を増やしてしまうこともある。そんなことにならないためにも、エンジン分解時には、まずは汚れた外観のクリーンナップから開始。外観がキレイになることで、分解作業時に余計なことを考えずにスムーズに進めることができる。

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