旧車や絶版車をいじっていてしばしば出会うのが固着したビス。潤滑剤をスプレーしてしばらく待ってからドライバーを当てれば良いものの、ついつい先を急いで十字穴を潰して(ナメて)しまった経験はないでしょうか? 空回りするドライバーとすり鉢状に破損した十字穴を眺めても後の祭りですが、何とかビスを緩めたい。そんな時のために、ナメたビスを緩めるためだけに作られた工具があります。被害が拡大する前に、専用工具を活用することをお勧めします。

プラスビスをナメる原因は“押し付け力不足”

プラスビスの十字穴のサイズはネジ径によって1~3の3サイズがあり、ドライバーにも小さい方から順に1~3の3サイズがある(ごく稀に4が使われることもある)。十字穴サイズより大きなドライバーは穴に入らない(入っても掛かりが浅い)が、十字穴サイズより小さいドライバー(3の十字穴に2のドライバーの組み合わせ)は穴に入って、何となく回せそうなこともあるので注意が必要。ガタがある状態でドライバーを強いトルクで回せば高確率でナメる。画像のように、ビスの十字穴とドライバーの先端がピッタリ密着する組み合わせで作業すること。

通常のトルクで締まったビスならグリップを回すだけで良いが、固着して簡単に緩みそうにない場合は十字穴の傾斜に沿ってドライバーが浮き上がらないよう、グリップ後部を押しながら回す。がっちり締まったビスに対しては、押し6~7:回し4~3程度の配分で押しを優先する。ナメる前にインパクトドライバーを使うのも有効だ。

プラスビスはバイクや自動車はもちろん、私たちの身の回りで使用されてる最もポピュラーなネジの一種です。機械いじりを趣味としていなくても、ドライバーセットぐらいはあるという家も少なくないでしょう。
プラスビスはプラスドライバーで回すというのは誰でも直観的に理解できますが、実際に締めたり緩めたりする際には相応の知識とテクニックが必要です。

まず第一に「ビスの十字穴とドライバーのサイズが合っている」ことが重要です。DIYでバイクいじりをする人にとっては当たり前でしょうが、ドライバーには1、2、3というサイズがあります。このサイズはボルトの8mmや12mmのように、六角頭の二面幅のような寸法を示すものではありませんが、十字穴とドライバー先端のサイズが一致しないと回転力がしっかり伝わりません。
さらにドライバーを回す際はグリップを回転方向に回すだけでなく、ドライバー全体をビスに向かって押し付けなくてはなりません。これは締め付け作業だけでなく、ビスを緩める際も同様で、むしろ固く締まったビスを緩める最初の入力では、グリップを回すより押し付ける方に集中しなくてはなりません。

その理由は十字穴の形状にあります。十字穴は先端に向かってテーパー状に細くなり、ドライバーのアクセス性が良いのが特長です。しかし回転トルクを加えたときにドライバービットの先端が十字穴から浮き上がろうとします。これがカムアウトと呼ばれる現象です。

これを防止するため、ドライバーを使う際は「ビスに押しつけながら回す」のが鉄則なのです。
そのため締め付け時に過大なトルクを掛けたりサビによって固着したビスを緩める際は、潤滑スプレーを吹き付けたり、貫通ドライバーやショックドライバー(インパクトドライバー)で衝撃を与えながら回転させるのが効果的です。

ナメたビスを緩めるエキストラクターにも変化球がある

ナメた状態で長い年月放置したせいでネジ溝が錆びてしまったプラスビス。ビスの周囲が盛り上がっているためロッキングプライヤーで掴めず、平タガネで叩こうにも周囲を傷つけてしまうリスクがある。

ドライバーを中心とした工具メーカーANEXの「なめたネジはずしビット3本組」。十字溝が潰れたプラスビスを外す専用工具で、ドリルネジやコーススレッド、タッピングねじやキャップボルトなど熱処理されたネジには使えない。

左ねじのエキストラクターは数多くあるが、ドリルとエキストラクターが一体になった製品は珍しい。潰れたビスを緩める際はエキストラクターのサイズに適した下穴を開ける必要があるが、この製品なら下穴サイズがミスマッチになることはない。赤ラベルのビットはM2.5~3、黄ラベルはM3.5~5、緑ラベルはM6~8ネジに対応する。

気合いを入れてドライバーを押し付けたにもかかわらず、知らず知らずのうちにドライバーが浮き上がって十字穴を潰してナメてしまった……。ネジの頭が盛り上がったパンヘッドスクリュー(ナベ小ねじ)で、プラスビスの周囲に何もなければ、ロッキングプライヤーでがっちりくわえて回すことができるかもしれません。あるいはビスの頭をタガネで叩いても緩むかも知れません。

しかしビスの取り付け場所によっては、ロッキングプライヤーやタガネが使えないこともあります。そんな時に重宝するのがエキストラクターです。スクリュータイプのエキストラクターは一見すると木ネジのような先細り形状ですが、左ねじとなっています。このため右ねじのプラスビスにねじ込むと緩め方向の力が加わり、十字穴をナメても抜き取ることができます。

ここで紹介する工具はエキストラクターの一種で、六角ビットの両端にエキストラクターとドリルの刃が付いているのが特徴です。一般的なエキストラクターを使用する際はネジ径に合ったサイズのエキストラクターを選択し、その先端サイズに対して適切なドリルで下穴加工を行います。

エキストラクターに対してドリル穴が小さいと先端が僅かしか入らないため緩める力が十分に伝わらず、無理に回すとエキストラクターの先端が折れてしまう場合もあります。逆に下穴が大きすぎるとエキストラクターが空回りしてビスに食いつかず、緩めることができません。

この製品はエキストラクターとドリルがセットになっているため、下穴径とエキストラクター径のミスマッチが起きづらいのが魅力です。また3本のエキストラクターはそれぞれ対応するネジ径が明記されているので適切に選択できます。さらにこのエキストラクターは一般的な製品よりネジピッチが細かく、電動ドライバーで回せるのも特徴です。

電動インパクトドライバーで一気に大きなトルクを加えるとビットが空回りしたり折れるリスクがありますが、電動ドライバーでジワジワと左回転させることで抜きたいビスに食い込み、緩めることができます。

潰れたビスにねじ込む途中でエキストラクター自体を折った経験があると、エキストラクターを使うこと自体に気が進まないという人もいるでしょう。しかしその原因は下穴径とエキストラクターサイズが合っていないためだったということも少なくありません。その点、エキストラクターと下穴用ドリルがセットになっているこの製品であれば、工具を破損するリスクが少なく、しっかりビスに食いついて引き抜くことができそうです。

潰れた十字穴の中心を狙って、3~5mmの下穴を開ける。専用ドリルは短いので折れづらくビビりにくい。

電動ドライバーを左回転にセットしてエキストラクターをビスに対して垂直にねじ込む。高速で回転させると左ねじが食いつかずスリップしたり、急激に食いついた衝撃で折れることがあるので、低速で回転させるのがコツ。

特殊な歯先を食い込ませて緩めるインパクトドライバー

ANEXの「ネジとりインパクト」。プラスビット付きのインパクトドライバーに注目しがちだが、オレンジのツバが付いたネジとりビットがこの工具の要。ネジとりビットだけでも販売しているので、6.35mm六角軸が取り付けられるインパクトドライバーを所有していればビットだけ購入しても良いだろう。

固着したビスを緩めるインパクトドライバーの中にも、十字穴が潰れたプラスビスの緩め作業に特化した製品があります。
一般的なインパクトドライバーのビット(先端部分)は通常のドライバーと同様のプラスやマイナス形状ですが、ここで紹介する製品は特殊刃先形状を持ったビットが付属しているのがポイントで、このビットを潰れた十字穴に食い込ませることで新たなネジ溝を作ります。

またこのビットの六角軸は一般的なビットと同じ対辺6.35mmで、セットのインパクトドライバーで回すことができ、先に食い込ませて作った溝をきっかけとして緩めることができます。100均ショップでも買えるタガネでもプラスビスの頭に溝を作ることはできますが、プラスビスを緩めることに特化したビットは軸径が細く、刃先もビスを緩める作業に適した形状になっているのが特長です。

またナベ小ねじには一般的なタガネが使えますが、ブレーキマスターシリンダーキャップの固定に使われているサラネジの場合は、ネジ径と軸径が近いこちらのビットの方が作業性に優れるのは間違いありません。
先に紹介したドリル一体式のエキストラクターとこちらのインパクトドライバーは、どちらも十字穴がナメたプラスビスの取り外しに的を絞ったニッチな工具ですが、プラスドライバーが空回りしてロッキングプライヤーでも掴めないような状況では頼りになります。

冒頭で触れたように、プラスドライバーでプラスビスを緩めるのは簡単なようで意外に難しい作業です。まず第一に、カムアウト現象を起こさないようドライバーをビスに強く押し付けながら回すことを心がけ、それでも十字穴を傷めてなめてしまった場合には、ここで紹介したような工具を駆使してなんとか緩める方法を模索しましょう。

マイナスドライバータイプのタガネの中には軸径が細いものもあるが、ネジとりビットの先端はプラスビスの十字穴にしっかり食い込むようドリルの刃先のような形状となっているのが特徴。このため通常のタガネのようにはつり作業には使えない。

最初にハンマーで潰れた十字穴に食い込ませて溝を作り、次にインパクトドライバーで強い回転力を与えることで固着したプラスビスを緩めることができる。

POINT

  • ポイント1・プラスビスを緩める際は十字穴とドライバーのサイズを合わせて、押し付けながら回す
  • ポイント2・一般的な右ねじに左ねじを食い込ませて緩めるエキストラクターの中には下穴用ドリルがセットになった製品がある
  • ポイント3・潰れた十字穴にビットを食い込ませてから緩めるインパクトドライバーもある
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