エアクリーナーはエンジンにきれいな空気を送り込むために不可欠なパーツです。オフロードモデルや小型車、絶版車での採用例が多い湿式タイプのエアクリーナーエレメントは、定期的に洗浄することで長期間にわたって吸入空気をクリーンに保つことができます。作業は簡単なので「いつ洗ったかなぁ……」という人はぜひ実践してみましょう。

ペーパーエレメントに比べると少数派のスポンジタイプ

キャブレター時代のヤマハSR400のエアクリーナーエレメントは湿式のスポンジタイプ。スポンジ表面の蝶ネジを緩めるとフレームとスポンジが一体で外れる。エアクリーナーボックスの特性上、ボックス内の負圧が大きいためゴミやホコリを吸い込みやすく、それだけにエアクリーナーエレメントの働きが重要。ボックスがあってもエレメントが無ければ、ゴミの吸い込み具合はファンネルのみの直キャブと大差はない。

原付から1000ccオーバーのスーパースポーツまで、すべての市販車にはエアクリーナーボックスが付いています。1980年代半ばまでのレーサーはエアファンネルのみでボックス無しが主流でしたが、走行風で過給効果を得るラム圧を利用するようになって以降はキャブレターでもボックス付きとなり、さらにFI(フューエルインジェクション)に切り替わって以降はエアクリーナーボックスが必需品となっています。

エアクリーナーボックス内のエレメントに注目すると、湿式のスポンジタイプ乾式のペーパータイプに分類できます。素材としては前者はポリウレタン、後者は不織布となります。どちらも空気中のチリやホコリを吸着させてエンジンを保護するという目的自体は同じです。また、適切にメンテナンスを行っていれば、性能面でも明確な違いはないと言われています。

現在販売されている市販車の多くは、ペーパータイプのカートリッジフィルターを装備しています。このペーパータイプにも乾式とフィルターオイルを染み込ませたビスカス式があります。スポンジフィルターについては、2ストローク時代のスクーターや絶版車を中心に装着されていました。

小排気量車を中心にスポンジタイプの採用率が高かった理由としては、カートリッジフィルターよりコンパクト化が可能で製造コストが安価であったことが考えられます。カートリッジタイプは不織布を蛇腹状に折り曲げたエアクリーナーエレメントを保持するフレームが必要です。スポンジフィルターにもフレームは必要ですが、スポンジ自体のフレキシブルな性質に頼ることでカートリッジタイプよりも簡素なフレームでもエアクリーナー機能が成立するという特長があります。

一方でバイクのカテゴリーでみると、オンロードモデルはペーパータイプへの移行が早かったのに対して、オフロードモデルはスポンジタイプを比較的長く使用していたようです。この理由はスポンジタイプの方が洗浄面で有利だったことが挙げられます。オンロードに比べてオフロードモデルのエアクリーナーボックスにはホコリや泥、さらには水の浸入も多いと考えられるため、部品交換ではなく洗浄で対応できるスポンジにメリットがあるというわけです。

しかしながら、現在では小排気量車もオフロードモデルもほとんどがペーパータイプがとなっており、スポンジタイプのエアクリーナーエレメントは少数派となっています。


SR400のエアクリーナーエレメントは樹脂製のフレームとスポンジが分割でき、スポンジ単体で洗浄できる。またスポンジが劣化や破損した場合は単品で購入できる。カスタムでエアクリーナーボックスを外したい気持ちも理解できるが、その場合もエアフィルターは装着したい。

 

POINT

  • ポイント1・エアクリーナーエレメントには湿式のスポンジタイプと乾式のペーパータイプがある
  • ポイント2・スポンジタイプは原付や小型、旧車や絶版車に多く現行車には少ない

クリーナーの選択を誤るとボロボロになるので注意


燃料系がFI(フューエルインジェクション)に変更された2010年モデル以降、SR400のエアクリーナーエレメントはペーパータイプとなっている。このタイプは洗浄できないので、2万km走行ごとに交換する。

乾式タイプのエアクリーナーエレメントのメンテナンスは走行距離に応じて交換するだけです。エレメントのひだの谷部分にゴミやホコリが溜まっていれば床に軽く叩きつけて取り除いたり、エンジン側から軽くエアブローして吹き飛ばしても良いですが、エレメントに油分を染み込ませたビスカス式の場合はエアブローも禁止です。愛車のエレメントが乾式かビスカス式かはサービスマニュアルなどで確認しましょう。

スポンジタイプも定期点検距離までは特にすることはありませんが、時期が来た時には交換ではなく洗浄でリフレッシュできます。

ここで紹介するヤマハSR400は、キャブレター時代の2008年モデルまではスポンジフィルターを装備しており、2010年以降のFIモデルではペーパーフィルターに変更されています。最初期型が登場したのは1978年のことなので、その時代はスポンジフィルターが一般的だったわけです。そもそもSRは、オフロードモデルのXT500をベースに開発されたオンロードモデルなので、そこにスポンジフィルターの由来があるのかもしれません。

スポンジフィルターが湿式と呼ばれる理由は、スポンジにフィルターオイルを染み込ませているためです。そのためホコリやチリで汚れたスポンジフィルターをメンテナンスする際は新たなフィルターオイルを塗布しますが、事前の洗浄が必要です。

ドライブチェーンのメンテナンスの際に、古いチェーンオイルの上から新しいオイルをスプレーする人がいますが、フィルターオイルも重ね塗りするだけでは効果はありません。それどころか、それまでに付着した汚れをオイルで封じ込めるだけということにもなりかねません。

スポンジフィルターの洗浄にはきれいな灯油や専用のフィルタークリーナーを使います。お湯と台所用洗剤でも洗浄できますが、フィルターオイルはサラダ油より粘度が高くしつこいので洗浄に手間がかかります。その点で灯油やフィルターオイルは油分を溶解する能力に優れています。

またスポンジに水を含ませると乾燥に時間がかかるというデメリットもあります。何日もかけて乾かすといった時間的余裕があれば良いですが、洗浄したらすぐにフィルターオイルを塗って復元したい場合には水以外の手段で洗浄した方が良いでしょう。

ただし、クリーナーに含まれる溶剤の種類とスポンジの材質の相性によっては、スポンジが脆くなることがあるので注意が必要です。またスポンジフィルターの素材であるウレタンフォームの素材によっては、空気中の水分が触れることで加水分解という反応が起こり、スポンジがボロボロに崩れてしまうこともあるので、走行距離が短くても使用期間があまりにも長い場合はスポンジに触れて確認することも重要です。


エアクリーナーエレメントとフィルタークリーナーをビニール袋に入れてもみ洗いする。掛け流しより無駄がなく、洗浄後のクリーナーの回収も容易。一度で洗浄できないほど汚れている場合は、袋を交換して複数回洗浄する。

雑巾のように絞ると切れたり破れることがあるので取り扱いは丁寧に、洗浄後のクリーナーはウエスを押しつけて吸い取る。ヤマルーブのフィルターオイルの説明書には、クリーナーは完全乾燥させるよう指示されているので、ウエスを取り替えながらしっかり乾燥させる。

 

POINT

  • ポイント1・経年劣化や保管状況によってスポンジ自体がもろくボロボロになることがある
  • ポイント2・スポンジの洗浄は灯油や専用のフィルタークリーナーで行う

優しくもみ洗いしてフィルターオイルを塗布すれば性能回復

フィルターオイルにもさまざまな製品があるが、バイクメーカーが開発した製品には安心感がある。お気に入りのブランドを選ぶのも良いが、ヤマルーブのオイルやケミカルははコストパフォーマンスの高さが魅力だ。

完全に乾燥したエアクリーナーエレメントにフィルターオイルを浸透させる。フィルタークリーナーと同様に、ビニール袋にオイルとエレメントを入れて揉み込むように浸透させることで、オイルの無駄使いが防止できる。全体に行き渡ったら、スポンジを押した時に僅かに滲む程度までウエスで拭き取って復元する。

キャブレター時代のヤマハSR400の取扱説明書には、エアクリーナーエレメントの洗浄はきれいな灯油で行うよう記載されています。またガソリンや引火性の高い洗浄剤の使用は禁止されています。

ここではスポンジフィルター専用のクリーナーを使用しますが、無駄に使わないようビニール袋や缶にクリーナーを入れて、その中でエレメントをもみ洗いします。汚れが著しく一度で洗浄できなければ、クリーナーを交換して二度洗いします。

洗浄後のクリーナーはきれいなウエスを押しつけてしみ出させるか、軽く手で絞ります。長く使ったスポンジを強く絞ると破れてしまうことがあるので優しく扱います。コンプレッサーでエアブローすればより良いと考える人もいるかもしれませんが、エアブローガンは狭い範囲を狙うには便利ですがフィルター全面からクリーナー成分を吹き飛ばすには時間が掛かる割りには効率は良くありません。染み抜きの要領でウエスやタオルを押し当てて吸い取らせるのが結果的には最良です。

フィルターオイルには、ゴミやホコリをキャッチしながら吸気の抵抗にならない性能が求められます。ゴミをしっかり取り除きたいと過剰に染み込ませれば、ミスト状のフィルターオイルが燃焼室に入る可能性もあります。フィルターオイルは2スト用エンジンオイルと違って燃焼用オイルではないので、燃焼室やスパークプラグに付着すればカーボンとして残り続ける可能性もあるので、オイル選びと塗布方法には注意が必要です。

ヤマルーブのフィルターオイルは、モトクロスレースでの使用を前提に砂や泥、水分混入時にも目詰まりや乳化を防止できる性能を作り込んでいるのが特長となっています。

クリーナーで洗浄後、完全に乾燥させたフィルターにオイルを浸透させますが、洗浄時と同様にビニール袋に入れたフィルターに対してオイルを垂らし、袋の中でよく揉むことで全体に均等に浸透させることができます。全体に染み渡ったら、ウエスで押して余分なオイルを除去します。あまり吸い取りすぎるとホコリやゴミを吸着する能力が低下してしまうので、オイルはスポンジを押すと軽く滲む程度残します。

これでエアクリーナーボックス内に復元すればクリーニングは終了ですが、フィルターオイルが付着することでペーパータイプに比べてエアクリーナーボックス内が油っぽく、ホコリや汚れが付着することが多いのでパーツクリーナーで洗浄しておきます。

吸気系カスタムの際に、汎用のスポンジフィルターを切り出してエアクリーナーとして利用する場合にも、洗浄とフィルターオイル塗布が必要なことも多いので、この手順と要注意ポイントを覚えておくと良いでしょう。

フィルターオイルの塗布量が多いと、エアクリーナボックス内にオイルミストが付着する場合がある。エアクリーナーエレメントを取り付ける前にパーツクリーナーで洗浄しておこう。

 

POINT

  • ポイント1・ヤマハSR400はキャブ世代はスポンジフィルター、FI世代はペーパーフィルターを装備
  • ポイント2・フィルターオイルは多すぎず、少なすぎずの適量を染み込ませる

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