バッテリーの電圧は?と聞かれれば12Vというのが現代の常識ですが、1970年代以前には原付や小型クラスを中心に6Vバッテリーを搭載した車両が多くありました。そんな6Vバッテリーの弱点は知らぬ間にバッテリー液が干上がることですが、ひとつの部品を交換するだけで電気系統の不具合と不安は一気に解消します。

レクチファイアとレギュレーターの仕組みと役割は?


プレスフレームの中央部分に6Vバッテリーを収納している1968年製スズキAS90。基本部分をビジネスモデルと共用しながらスポーティな外装パーツを装備した、当時の若者向けモデル。エンジンはローターリーバルブの2ストローク90cc


バッテリー端子電圧を測定すると7Vを余裕で超えてくる。回転数を上げると9V近くまで上昇するが、出力電圧は6Vなので完全過充電となる。そうした状況が続くと電解液が蒸発して電極が露出するとバッテリーの機能が失われて6V仕様の電球が切れてしまう。

バイクでも自動車でも、エンジンはオルタネーターという部品が発電した電気をバッテリーに充電し、その電気をヘッドライトやウインカー、ホーンなどの電装部品で消費しています。オルタネーターはエンジン(クランクシャフト)によって回されており、主にクランクシャフトの左端やシリンダーの背面に装備されています。

ここで発電される電気は、家の中で家電品を動かしている100Vと同じく、プラスとマイナスの電圧が交互に入れ替わる交流です。そして発電する電圧はオルタネーターの能力の範囲でエンジン回転に比例して大きくなっていきます。

アイドリング時から充分な電圧を出力しようとすれば、高回転時には必要充分な量を大幅に超える電圧が発電されてしまいます。自転車のダイナモランプが、ゆっくり漕いでいる時はボンヤリ暗く、スピードを上げると明るくなるのと同じ理屈です。

発電される電気がエンジン回転数によって変動し、なおかつそれが交流だというのは、12Vの直流バッテリーを積むバイクや自動車にとってまったく不都合です。その調整役として機能するのが、オルタネーターとバッテリーの間に設置されたレクチファイアとレギュレーターです。

レクチファイアは電気を一方にだけ流す半導体の性質を利用して、プラスとマイナスを交互に出力するオルタネーターからマイナスの成分をカットします。また複数の半導体を組み合わせることでマイナスの成分をプラスに反転させることもあります。

そしてレギュレーターはバッテリーに流す電圧を制御します。エンジン回転数が高くなると発電電圧が大きくなり、所定電圧をオーバーするとオルタネーターの出力を短絡させて発電を休止させ、バッテリーが消費されると再び電圧を流します。

昔はレクチファイアとレギュレーターがそれぞれ独立したユニットで仕事をしていましたが、半導体技術の向上によって現在は一体化しています。現在と言っても1970年代後半以降はレギュレートレクチファイアが当たり前になっているので、すでに半世紀近くはレギュレートレクチファイア時代が続いているということになります。

 

POINT

  • ポイント1・レクチファイアで交流を直流に整流して、レギュレーターで電圧を制御する
  • ポイント2・現在はレクチファイアとレギュレーターを一体化したレギュレートレクチファイアを用いる

6V車にはレギュレーターがない!?


AS90純正のセレン整流器。四角い板にセレンという天然の物質が塗布してある。セレンには元々半導体の性質があり、プラスとマイナスが切り替わる交流のプラスだけを取り出す半波整流機能がある。2本の配線は一方がオルタネーターにつながり、もう一方はバッテリーのプラスにつながる。

そうした流れから取り残されてしまったのが6V電装の原付&小型バイクです。1970年代までは小排気量の電装系は6Vが主流でしたが、スクーターにもセルモーターが搭載される頃になると12Vの勢力は拡大します。スーパーカブやモンキーの横型エンジンも、1970年代までは6V仕様でしたが、オルタネーターを変更することでエンジン外観は不変のまま12V仕様になっています。

全体的な流れとしてはそうですが、6V全盛時代に登場した多くの小型モデルにはレギュレーターがない、という共通した問題がありました(後年6Vでもレギュレター付きモデルも登場していますが)。レギュレーターがないということは、オルタネーターで発電した電圧を制御する機能がないということになります。

オルタネーターの交流のまま直流のバッテリーを充電することはできないので、昔の原付にもさすがにレクチファイアは付いています。しかしレギュレーターがないため、発電電圧はオルタネーター任せになります。

もちろん電装部品メーカーでは、6Vバッテリーの充電に適した電圧になるようにオルタネーターを設計しています。しかし、発電電圧はエンジン回転数に比例するという特性上、低い回転数で充分な発電量を得ようとすれば、高回転になると充分以上の電圧が発生してしまいます。

エンジン回転数と発電電圧の辻褄をどう合わせるかを考慮した時、原付バイクの法的な制限がひとつの判断基準になります。公道上で合理的か否かは別問題として、50ccの法定速度は昔から30km/hとなっています。ミッションが4速で速度が30km/h時のエンジン回転数で6Vのバッテリーが充電できればその時点で必要条件を満たします。それを上回る速度で走行してそれ以上の電圧が発生しても、それはユーザーの責任となるわけです。

レギュレーターの制御は電圧のコントロールと同時にバッテリー電圧に応じて充電の断続も行っているので、電装系の消費電力が少なくバッテリーの状態が良好なら充電をカットします。

しかしレギュレーターが存在しなければ、バッテリーが空腹だろうが満腹だろうがお構いなしに充電されつづけてしまいます。その結果、過充電状態になったバッテリーは電解液が揮発して液面が低下してしまいます。

しばらくバッテリーをチェックしていない6V車が、走行中に電球類が次々と切れてしまうことありますが、それはバッテリーの電解液が干上がって発電した電気がそのまま電球に流れてしまうことで発生するトラブルです。それでもエンジンは回って走ることができるのは、原付や小型モデルの点火系はフライホイールマグネトータイプであることが多く、このタイプはバッテリーを電源としていないため、バッテリーがなくても大丈夫なのです。

6Vのバッテリーは9Vや10Vの電圧で充電されても出力される電圧は6Vです。実際には6Vを超えますが、6Vバッテリーから9Vや10Vが出力されることはありません。つまりバッテリー自体がレギュレーターの役目をすることで、電圧をバランスさせているのが6V車ということができます。

 

POINT

  • ポイント1・昔の6V電装車にはレクチファイアはあってもレギュレーターがない
  • ポイント2・バッテリーをレギュレーター代わりにするから過充電で電解液が蒸発する

レギュレートレクチファイア装着でバッテリー液減少をストップ


いくつかのショップから発売されている6V用レギュレートレクチファイア。見た目は12V用レギュレートレクチファイアと変わらず、中身の回路によって6Vに適正化されている。


コネクターは4極でオルタネーターとバッテリープラスに加えて、車体アースとヘッドライト配線に割り込ませる2本が追加となる。画像の配線はこの製品の例なので、それぞれの端子がどのような機能なのかは購入するレギュレートレクチファイアの説明書に従うこと。

それでは都合が悪いということで、最後期の6V車には標準でレギュレートレクチファイアを装着したモデルが登場します。ホンダジャズがよく知られたモデルです。そしてアフターパーツメーカーからは6V用レギュレートレクチファイアが発売されています。

この部品を使えば、レクチファイアしか持たない旧式の6Vモデルでも充電電圧の制御が可能になります。

ここではセレン整流器というレクチファイアを備えた1960年代のスズキAS90という古いバイクにレギュレートレクチファイアを取り付けました。セレン整流器はプラスとマイナスの波形が入れ替わる交流を直流にするだけの部品で、端子は2本でボディアースされています。

6V用レギュレートレクチファイアには4つの端子があり、このうち3つはセレンと同じ使い方になります(黒線はセレンのボディアースに相当します)。新たな機能は交流で点灯するヘッドライトとテールランプの制御となります。既存の回路では、ヘッドライトとテールランプはバッテリーを介さず、オルタネーターのライトコイルにダイレクトに接続されていました。その途中に黄色線を割り込ませることで、ヘッドライトが過電圧で切れるのを防止できるようになります。

6V電装の不安定さを嫌って12V化するという手段もありますが、充電状態を改善することで6Vのままでもバッテリーが干上がることなく、電装系の動作も安定する場合もあります。もとより発電電圧が低く放電過多になる場合は12V化を考えるのも良いでしょうが、その前段階として6Vレギュレートレクチファイアを装着するだけでも状況は好転するかもしれません。


レギュレートレクチファイアを組み込むと充電状況に応じて電圧を断続するため、結果としてバッテリーの電圧が安定する。制御電圧はレギュレートレクチファイア内部の設定で決まってくるが、1100回転前後のアイドリング時に6.3V程度の電圧となっている。


アイドリング時のヘッドライトは5V台の電圧が掛かっており、回転を上げていくと6.3V近辺で上昇が止まる。これなら全開で夜間走行中に突然フィラメントが切断して真っ暗……ということもない。


1968年製のウインカーリレーは古めかしいので最新の6Vリレーに交換。絶版車にとって電装系パーツのアップデートはメリットばかりだ。

 

POINT

  • ポイント1・6V用レギュレートレクチファイアという部品が販売されている
  • ポイント2・純正レクチファイアと交換することで6Vバッテリーの充電状況が大幅に改善される

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