大切な愛車は末永くコンディション良くありたいものだ。特に、2ストロークエンジンのスポーツモデルは、性能追求のために吸排気ポートをとにかく大きく設計し「ハイパワーを獲得」している例が数多い。しかし、その一方で大切なエンジンの「耐久性」を犠牲にしているケースも多々ある。ここでは、ヤマハSDRを末永く乗り続けるために実践した、ICBM®しかも「柱付き吸排気ポート」を実現した、その具体例をリポート。
このモディファイによって得られたものは、とにかく大きかった! もちろん、SDRに限らず、すべての2ストロークモデルには、今後もおおいなる可能性がありそうだ。


大きな排気ポート中央に柱を追加。その意味は?


2ストロークエンジンの場合は、吸排気ポートのタイミング次第で、パワー感やエンジン特性が様変わりする。本来、ヤマハSDRのシリンダーは鋳鉄製である。ICBM®化とは、アルミ削りだしスリーブに特殊メッキ処理を施したシリンダーへ変更するメゾット。今回はさらに吸排気ポートの中心に柱を立てることで(写真は排気ポート)、ピストンリングの拡張による飛び出しやピストン頭の首振りを防止している。



ヤマハSDRには排気デバイスが標準装備されているため、排気ポートに柱を追加するためには、排気デバイス周辺の「柱対応加工」も必要不可欠になる。このSDRは、排気デバイスに加工を施し、標準の開閉タイミングでサーボモーターを作動させYPVSバルブを制御している。ヤマハSDRはもちろんTZR250RやNSR250Rの排気デバイスにももちろん対応し、数多くの実績を得ている。

「左ビフォーVS右アフター」その違いは一目瞭然


鋳鉄スリーブのヤマハ純正シリンダー(左)から、アルミスリーブのICBM®特殊メッキシリンダー(右)へ変ったことで、圧倒的な軽量化と同時に熱伝導性の向上を達成。純正シリンダーの排気ポート周辺には無数のタテキズがあるが、これらのキズは、ピストンの往復運動時にピストンリングエッジやピストンスカートによって付けられたものだ。



ヤマハ2ストロークスポーツの特徴であるYPVS排気デバイスはそのまま生かし、追加された柱部分には逃がし加工が施されている。左右2分割設計の排気デバイスは、それらの改造にともない左右分割の位置決めピンの位置も移動変更されている。

エンジンを降ろさずシリンダーを組み換えられるSDR


メンテナンス性の優先でエンジンを降ろさず腰上部品(ピストンやシリンダー)を交換することができる2ストロークエンジン。水冷エンジンなので冷却水の抜取りやラジエター関連部品の取り外しが必要だが、エンジン搭載状態でピストンを取り外し、交換することもできる。今回のシリンダー&ピストン組み換えも車載状態で行った。


POINT
  • ポイント1・アルミスリーブの特殊メッキシリンダーICBM®の採用によって耐摩耗性の向上と放熱性の向上を確実に得られる。
  • ポイント2・「柱付き吸排気ポート」を採用することで、ピストンリングの引っ掻き音やピストンのスラップ音(首振り打音)を大幅に抑制。その効果でシリンダー、ピストンともに異常摩耗が発生しにくい。
  • ポイント3・排気ポートの柱には排気熱が集中し歪みが発生しやすいもの。しかし、柱を逃がす特殊加工によってピストンの焼き付きやダキツキの懸念はない。

2ストエンジンを愛して止まない熱烈なファンのあいだでは、もはや救世主的な技術として注目されているのがICBM®シリンダーである。I/イノウエボーリング・C/シリンダー・B/ボア・M/メゾットを略したのがICBM®で、登録商標もすでに済ませている。2スト/4ストエンジンを問わず「減らないシリンダー」の代名詞となりつつあるのがICBM®技術。
大型2ストモデルの中には、伝説的な走りで知られるカワサキマッハ500/H1や750/H2があるが、それらのモデルでは、特に、数多くの実績があり圧倒的な普及数を誇っている。

4ストエンジンのカワサキZ2/Z1でも、オーダー数を増やしている。もちろん、これらの人気モデルに限らず、ボアサイズでΦ52~91mmの範囲内であれば、2ストエンジンでも、4ストエンジンでも、ICBM®シリンダーの製作依頼は可能だ。ここでは、ヤマハSDRのシリンダーを「柱付きICBM®」仕様にモディファイした実例をご覧頂こう。

エンジンのメカニカルノイズが気になり始めたのが、このヤマハSDRだった。そこで、オーバーサイズピストンを探して購入。仮に、通常のボーリング&ホーニングで仕上げても、比較的短い走行距離で2ストエンジン特有のノイズが出てしまう。それが2ストスポーツエンジンの特徴でもある。気持ち良く全開走行を楽しめば(サーキット走行など)、極めて短い走行距離でもピストンリングの打音やピストンスカートのスラップ音が気になってしまうもの……。ハイパワー2ストロークエンジンは「大きく吸って、大きく排気するポートタイミングを採用」しているため、どうしてもメカニカルノイズや耐久性の維持が難しいのだ。200ccの排気量で素晴らしい走りを魅せるSDRでも、そんなネガティブ要素は同じなのだ。

「ICBM®」とは、鋳鉄スリーブからアルミ製特殊メッキスリーブへ交換する、減らないシリンダースリーブを目指した(株)井上ボーリングの内燃機加工技術である。現代のエンジンの多くは、4ストロークでも特殊メッキシリンダーを採用している例が多い。その理由は、圧倒的な耐摩耗性の向上=耐久性の高さを目指した結果でもある。 今回、SDRに実践した「柱付きICBM®」とは、2ストシリンダーの吸排気ポートの中央に「柱」を追加する技術とICBM®を組み合わせたもの。ピストンはシリンダー内を往復運動し、その行程中に大きな吸排気ポートを通過する。その際、ピストンリングやピストンスカートがシリンダー壁面の吸排気ポートのエッジに引っかかってしまう現象が起きる。それがメカノイズの原因であり、シリンダーやピストンを摩耗させる最大の要素なのだ。ピストンリングが排気ポートエリアを通過する際には、物理的なリング張力によって、大きな排気ポート側へ飛び出そう(ハミ出そう)とするチカラが発生する。吸気ポート側は、ピストンの首振りによってスカート部分がポートのエッジに引っかかってしまう現象が起こる。

こうしたメカノイズの原因を、追加した「柱」が解決してくれるのだ。具体的に説明すれば、追加した柱がピストンリングのハミ出しを抑制し、同時に往復運動中のピストンの首振りを防止。つまり、往復運動するピストンにとっては、吸排気ポートの柱が「ガイド」となる存在なのだ。高温の排気ガスが流れ込む排気ポートに柱を追加すると、熱歪みによって柱が変形しやすくなる。しかし、そんな排気柱を熱歪みから逃がす特殊な加工技術を持ち、バイクメーカーからも高い評価を得ているのが、この内燃機加工技術を提供している井上ボーリングである。

マニアックなディテイルを持つヤマハSDR


前後アルミ製ワイドリム仕様のヤマハSDR。みるからに軽快なマシンデザインだ。このモデルには根強いファンが多いことでも知られるが、バイクブーム当時は、決して営業成績が良かったモデルではなかった。登場が早すぎたモデルでもあった……。

ウルトラ・ライトウエイト・スプリンターとして1986年に誕生したのがヤマハSDR(排気量200cc水冷クランクケースリードバルブエンジン搭載)。当時のレース人気も反映し、ワンメイクレースでも愛されたマシンだった。超軽量な車体がもたらすハンドリングの良さは高く評価され、80年代のバイクムーブメントにも影響を与えたモデルだった。アルミ製キャストホイールが当たり前になっていた時代の中で、スポークホイール&アルミワイドリムの組み合わせがカスタムシーンで注目された。ヤマハ車ではSRXシリーズのスポーク化やSDRのスポーク化が注目を集めた。

このSDRには前後17インチのエキセル製アルミワイドリムをチョイス。前後スポークにはダートフリーク製Dachiブランドのステンレススポークにブラックアルマイトのアルミ製ニップルを組み合わせている。フロントの対向2ピストンキャリパーもリアの同キャリパーもSDR純正部品をそのまま利用。対向2Pキャリパーながらスポークと干渉しないように、キャリパー側のスポーク張りはすべて「内掛け」仕様。リアキャリパーブラケットは、純正ブラケットをベースに加工溶接し、オフセット変更することで寸法的ツジツマを合せている。気になる前後ハブは、フロントがビラーゴ250純正で同ディスクローターを組み合わせ、リアには初期セローシリーズのリアディスク仕様のハブを純正流用している。


対向2ピストンキャリパーは、スポークホイール側にもブレーキピストンがあるため、物理的にスポークを逃がすのが大変だ。このSDRでは、オフセットディスクローターとキャリパー側スポークの「全内掛け仕様」の採用で、ブレーキピストンの逃がしに成功している。



リアブレーキハブは初期シリーズのセロー用。初期型はドラムブレーキだったが2型でリアディスク仕様になった。そのモデル用を流用。キャリパーのオフセットは、キャリパーサポートの改造(溶接逃がし)で対応した。


撮影協力:(株)井上ボーリング



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