
各種ロードサービスの充実によるところもありますが、最近の自動車ではスペアタイヤを積んでいない機種もあるほど、路上でのパンクの機会は少なくなっているようです。バイクのパンクでもレスキューを頼めば確実ですが、異物が刺さっても空気の抜けが少ないタイプのパンクなら、自宅で修理できるかもしれません。
釘を踏んでも空気が抜けないこともあるチューブレス
トレッド面に異物が刺さっているのを発見しても、チューブレスタイヤの場合は慌てて抜かないこと。チューブタイヤはこの時点で空気は抜けてしまうが、チューブレスなら異物が栓になって空気が一気に抜けないこともある。
霧吹きで石けん水を吹き付けると蟹の泡のように空気が吹き出しているが、これはタッピングビスを踏んだため。釘や針金のように表面がツルンとしていれば、空気の漏れ方が少なく、場合によってはしばらく気づかず走行してしまったという例もある。
スペアタイヤを搭載していない自動車なんて考えられなかったのは過去の話で、今の自動車のなかにはパンク修理キットだけが積んである機種もあるようです。クルマに乗るならタイヤの着脱ぐらいできなきゃ、という男性優位主義的な発想は時代遅れなのかもしれませんし、路上でジャッキアップしてタイヤを着脱する危険性に配慮しているのかもしれません。
個人の印象としては、昔に比べてパンクは減少しているような感じですが、ロードサービスの統計ではいまだにパンクはバッテリー上がりと双璧をなすトラブル原因のようです。
ただここには一般道で釘を踏んで空気が抜けるタイプだけでなく、空気圧管理や摩耗チェックをおろそかにして高速道路でバーストする事例も含まれているようなので、いわゆる街中でパンクして立ち往生というシーンは減っているのかもしれません。
いざパンクしてもロードサービスに連絡することで安全に回収してもらえるので、あえて路上でリスクを取る必要もないのかもしれません。余談ですがロードサービスは任意保険に付帯しているものもあるので、一度確認しておくと良いでしょう。
バイクのタイヤにはチューブタイプとチューブレスがあるのは多くのユーザーもご存じの通りです。かつてはスポークホイールならチューブタイヤ、キャストホイールならチューブレスというのが見分けるポイントでしたが、ヤマハセローやBMWのGSシリーズにはスポークホイールでチューブレスというパターンや、逆に絶版車の中にはスズキGSX750/1100Sカタナのようにキャストホイールでチューブを使用する例もあるので注意が必要です。
チューブタイヤで釘を踏むと、タイヤとチューブの間に空気が漏れるのであっという間にタイヤはぺしゃんこになります。しかしチューブレスタイヤは、タイヤの内側はリムの内面とひとつの空気室になっているので、刺さった異物が抜けなければ空気圧が保たれる場合があります。
出先の駐輪場でふとタイヤを見た時に、トレッドに金属片が刺さっているのを見つけても、空気が抜けていないようなら驚いてその場で抜かない方が良いかもしれません。自宅が近ければそのまま帰宅できるかもしれないからです。
ただしそれが高速道路のパーキングエリアだったり、自宅から遠く離れたツーリング先だとしたら、そのまま走行を続けるのは危険です。素直にロードサービスを呼ぶか、パンク修理キットを携行しているのであれば修理を行いましょう。
- ポイント1・チューブタイヤはすぐに空気が抜けるが、チューブレスタイヤは異物が刺さっても空気が抜けづらい場合がある
- ポイント2・低速で補修場所まで移動できるなら異物は抜かずに走行する
補修キットは「プラグ」と「ヒモ」の2タイプ
パンク穴を整えるドリルのようなリーマーと補修材を挿入するハンドル、ヒモ状の補修材とゴムノリがワンセットになったパンク修理キット。空気入れが自宅にあれば、ガレージに置いておくキットとしては充分だ。
空気を圧縮して詰め込んだボンベが付属するキットなら、出先でパンクに遭遇してもその場で修理できる。このキットはデイトナ製で、17インチタイヤでボンベ3本で120kPaぐらいまで空気圧が上がり、低速走行ならば可能。
ここで紹介するパンク修理は出先ではなく、自宅での作業を前提としてます。出先と自宅の最大の違いは、抜けた空気を入れられるか否かです。
自宅であれば、手押しでもコンプレッサーでも空気を入れる手段を確保してからパンク修理作業ができますが、出先ではそうはいきません。その際に携行するパンク修理キットには、圧縮空気を封入したボンベが入っている製品をおすすめします。
チューブレスタイヤのパンク修理をひと言で片付ければ、異物で開いた穴を詰め物で塞ぐと言うことになります。チューブタイヤの場合、自転車のパンク修理で経験のある方も多いでしょうが、タイヤのビードを落としてリムとの間に隙間を作り、そこからチューブを引き出してパンク部分にパッチを貼って穴を塞ぎます。
しかしチューブレスはトレッド面から穴を塞ぐ補修材を突っ込むだけなので、車体からタイヤを外す必要はなく、作業自体は単純です。自動車の場合はトレッド面が見えづらいので、タイヤを外した方が作業しやすいです。ただし異物がタイヤの内側に落ちている場合には、ビードを落として異物を回収する必要があります。
パンク穴を塞ぐ詰め物には「プラグ」と「ヒモ」があり、ここではヒモタイプの修理材の使い方を説明します。プラグタイプはヒモタイプより小さく携行性が良いので、バイクに積んでおくには便利かもしれません。一方ヒモタイプはタイヤの内側に深く入り込む安心感があります。どちらも長きに渡ってパンク補修キットとして販売されており、正しく使えば性能に優劣はありません。
- ポイント1・パンク修理キットの補修材には「プラグ」と「ヒモ」の2タイプがある
- ポイント2・携行用の修理キットはエアボンベ付きを選ぶのが良い
ヒモタイプはしっかり押し込んで真っ直ぐ引き抜く
左上から順にハンドルにセットしたヒモ状に修理材にゴムノリを塗布して、タイヤに押しつけて真っ直ぐ挿入し、ハンドルのグリップがタイヤに接したら左右に回さず真っ直ぐ引き抜く。パンク穴をリーマーで整えても修理材を挿入する際には抵抗を感じるが、ハンドルは左右に回さないこと。また、挿入時にハンドルを強く押しすぎると、ヒモが切断してしまうので力加減に要注意。
ヒモタイプもプラグタイプも、パンク修理を行う際は異物を引き抜いた穴の下地作りから始めます。パンク修理キットには、補修材を押し込むハンドルと下地を整えるリーマーが付属していることが多いので、パンク穴にリーマーを差し込んで往復させます。
パンク穴はなるべく小さいうちに塞ぎたいのが心情ですが、異物があまりに細いとヒモやプラグの挿入時に無理な力が加わって失敗する原因となります。リーマーを通すのは異物で荒れた穴を整えると同時に、ヒモやプラグが通る穴を確保する目的もあります。そしてリーマーに修理キットのゴムノリを塗ってパンク穴に挿入して、穴の内側にノリを塗布します。
補修材を挿入するハンドルの針の先端のスリット部分にヒモ状の補修材をセットしたら、補修材にもたっぷりとゴムノリを塗布します。ヒモ状の補修材の表面にはゴムの粘り気がありますが、チューブタイヤのパッチ修理やゴム系接着剤を使う際と同様に接着部分の両面、ここではパンク穴の内面と補修材にノリを塗布することが重要です。
この補修材をパンク穴に挿入する際は、穴に対してハンドルを真っ直ぐ押し込みます。下穴に対してヒモの方が太いので抵抗がありますが、ハンドルを左右に回すとヒモが切れてしまうことがあるので、一気に真っ直ぐ押し込むのがポイントです。
挿入ハンドルの針の長さとヒモの長さのバランスにより、ハンドルを一気にタイヤに押しつけてもヒモの端部はトレッド面に露出するように設計されています。万が一ハンドルの針よりヒモが短ければ、ハンドルを押し込んだ際にヒモがタイヤの内側に落ちてしまう可能性もあるので、ヒモだけを後から購入する場合はハンドルとメーカーを合わせた方が無難です。
ヒモをタイヤに押し込んだらハンドルを引き抜きますが、この際もハンドルを左右に回さず真っ直ぐ引き抜くことが重要です。左右に回すとヒモがねじれてパンク穴との接触部分に隙間ができたり、針の先端のスリット部分でヒモが切断する危険性があります。
挿入されたヒモは、スリット部分を引き抜くとタイヤの中でリング状に残り、これがゴムノリによって固まると裁縫の玉結びのように抜け止めとなります。ハンドルをこじって切断すると2本のヒモが並んでいるだけなので、抜けどめ効果は期待できません。
挿入された修理材はタイヤ内面でループ状に広がり抜けなくなる。挿入時に切断すると2本のヒモが並んだだけの状態なので、遠心力で抜けやすくなる。
ハンドルを引き抜いてしばらく待ってから、トレッド面に石けん水をスプレーしてエア漏れがないことを確認する。泡が止まらない場合、ゴムノリの接着力が上がる前にヒモの片方を引っ張って抜ければ、新品のヒモを挿入できる可能性もあるが、基本的にはやり直しはできないものと考えて一回で決めたい。
表面に残ったヒモはトレッド面から2~3mmだけ残してカッターやニッパで切断する。
規定圧まで空気を入れて、漏れないことを再度確認したら修理は終了だ。
ハンドルを抜いたら、確認のためヒモの周辺に霧吹きなどで水を吹き付けて空気が漏れなければ、トレッド面に残ったヒモを表面から2~3mmで切断してパンク修理は終了です。
まさかのタイミングで遭遇しても落ち着いて対応できるよう、パンク修理の手順を覚えておくと良いでしょう。
- ポイント1・ゴムノリはパンク穴と補修材の両方に塗布する
- ポイント2・補修材の挿入ハンドルは左右に回さず直線的に押し込み引き抜く
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