リプロダクト(複製再生産部品)の新品コンプリートシートが入手できるのならまだしも、そんな部品が販売されていない機種であれば、シートの張り替えをプロショップへ依頼するのが常道だろう。また、人気モデルの中には、純正タイプの「複製シート表皮」が販売されている例もある。ここでは、永遠の大人気モデル、カワサキ750RS/Z2のDIYシート張り替えにチャレンジしよう。


シート表皮の切れ破れ患部から「雨水」が侵入する 

長年の利用によって表皮表面はツルツルかつシボと呼ばれるシワが浅くなってきていたシート表皮。さらにはパターン=縫製模様には破れ切れが発生している。今回は、市販の複製シート表皮へと張り替えてみようと思う。


旧車の人気モデルなら純正デザインの複製表皮もある 

メーカー純正シートのデザインを参考にリプロダクトされた張替え用シート表皮。昔は、このような商品を入手できなかったが、旧車ブームの影響もあって、人気モデル用ならリプロ部品を見つけやすくもあるようだ。


素材の艶加減やシボのフィーリング、そして張替え時に重要になる「フックの引っ掛け部分」となるマチは折り返しで縫製されていた。完成度が高い商品である。

純正シートと同様に、パターン部のクッション性を高めた作りもファンにとっては嬉しいものだ。折角なら、こだわりを持って作られた商品を購入したい。


ホームセンターで購入できる材料を利用してみた 

シート表皮の張替えを決断したら、出来る限り「最善」を尽そう。張替えのプロショップに依頼するのが確実だが、ここではDIY張替えを行うので、一般的に購入できる補修材料をホームセンターで購入した。スポンジの接着にはボンドG17が使い易い。


シートボトムの鉄板にスポンジアンコが重なる部分は、劣化によって切れていることが多い旧車用シート。厚さ違いかつスポンジ密度も異なる補修スポンジがあると便利だ。

ボトム鉄板と表皮が擦れて、表皮が切れてしまう恐れがある部分へは、切り売りの保護モールをセットし直すことにした。純正の保護モールは劣化ですでに脱落状態だった。


表皮を引っ掛ける、通称「サメ歯」コンディションに要注意 

表皮を引っ掛けて固定する「ワニの歯」のようなフックを戻してシート表皮をリリースする。フックを戻しただけで折れてしまいそうな部分は、新たなフックを取り付けるか、折れる前のワニ歯をロウ付けや板金ハンダで補強しておくのが良い。


すべてのフックを戻したら(完全に曲げ返すのではなく表皮を外せる程度に戻す)、ゆっくりやさしく純正シート表皮を剥がしていく。内部の傷みは、やっぱり酷い。


シート表皮を剥がしていたら、残念ながらフックが2箇所、折れてしまった。完全に折れてしまう前に「ロウ付け」や「鈑金ハンダ」で補強すると再利用可能になる。


何とかシート表皮を剥がすことができた。この状態まで分解したのだから、鉄板ボトムを再塗装すれば、驚いてしまうほど良い仕上がりになるはず。今回は再塗装しません。


湿気のあるスポンジアンコは陰干しで完全乾燥させよう 

シートスポンジは、シート表皮の破れや切れによって湿気を吸い込んでいることが多い。それが原因でスポンジ崩れやボトム鉄板へサビが発生する。日陰干しで乾燥させよう。


鉄板シートボトムの内側はシートスポンジと接着剤で固定されていて正解だが、長年の利用でスポンジが分離しているケースが多い。接着部分のサビをワイヤーブラシで除去。


鉄板ボトムの外周エッジには、表皮切れ防止用保護モールがセットされている。今回、作業しているシートでは、前部モールが脱落していた。こんな部分こそ要修復である。


保護モールの固定に使えるホットボンド=グルーガン 

エッジ部分にはホームセンターで購入したビニールモールを取り付けることにした。単純に差し込んでも外れてしまうので、ホットボンドを利用して、しっかり固定した。


エッジ先端部にホットボンドを塗布して、冷えてしまう前にモールを被せて(押し込んで)固定した。新しいモールだけではなく、再利用する旧モールもホットボンドで固定した。

シート前方部分は旧モールを復元できなかったので(劣化によって形状も変形)、ホームセンターで購入したビニールモールを利用。ヒーターで温めてカーブ形状を合わせた。


ヒーターで温めたらカーブ形状を倣わせることができた。ホットボンドで固定すれば形状維持+表皮切れを防止できる。欠落したモールの再生にはこの方法が良さそうだ。



POINT
  • ポイント1・複製シートの表皮販売があるのなら、DIYでも張り替えは可能 
  • ポイント2・ボトム鉄板のコンディション次第で仕上がりが大きく変わるので、気になる時にはサメ歯の再生とペイント仕上げを実践しよう 
  • ポイント3・鉄板ボトムとスポンジアンコが走行振動で擦れると、シートコンディションが低下する。スポンジとボトム鉄板は接着剤でしっかり固定してから表皮を張り込もう 

「シートコンディション」は、絶版中古車に限らず、マシン全体のコンディション判断に大きな影響を与える重要なファクターだ。色褪せたガソリンタンクを色褪せた雰囲気のままリペイントする「雰囲気再現ペイント=エイジングペイント」の人気が高まりつつある昨今だが、シート表皮に関しては、切れや破れが無く、表皮自体にも弾力性があってほしいものだが、理想通りのコンディションはなかなか得られない。何故なら、乗っているうちに劣化が進み、気が付いたときには「破れてしまった」とか「スポンジがポロポロ」といったケースに見舞われてしまうことが多いのだ。仮に、極上コンディションの純正シートをそのままの姿で維持したいのなら、湿気が少なくかつ陽が当たらない場所へ保管しておくことだろう。

ここではDIYシート張り替えを実践しよう。純正シートの雰囲気を再現したいマシンオーナーには、リプロダクション部品と呼ばれる「複製シート表皮」の利用がお勧めである。旧車人気の昨今では、高品質かつ純正シートの雰囲気に近い「張替え用の複製シート表皮」が単品販売されている例もある。そんなリプロ表皮を購入し、シート張替えのプロショップへ持ち込むこともできるが、器用なサンメカならば、DIYによるシート表皮張替えも可能なはずだ。ただし、肝心なのは、シートボトム鉄板の「フック」コンディションが良い状況でないと、張り替えは難しい。また、シートスポンジのコンディションが良く、型崩れしていないことも大切な条件と言える(過去にアンコ抜きされていないことも重要)。これらの条件を満たしていれば、市販のリプロ表皮を使ったシート再生も可能だろう。

ここでは、カワサキ純正シートをベースに、リプロ表皮をDIY張り替えつつ、シートベルトを取り付けることで国内Z2仕様を狙ってみた。ベースとなったシートコンディションが比較的良かったため、作業はスムーズに行なうことができた。まずは前編として、スポンジアンコの取り外しとシートボトム鉄板の手直しをリポートしよう。



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