今では立派な旧車だが、60~80年代にバイクの楽しさを知ったベテランライダーの中には、「2ストバイク命!!」の熱狂的なファンが数多い。エンジン腰上の分解メンテナンスが簡単なのが、空冷2ストエンジンの特徴だ。今、旧車が見直される中で、2ストエンジンにも熱い眼差しが寄せられている。この機会にベテランライダー達と同じように、2ストモデルを手に入れ「DIYメンテナンス」にチャレンジしてみよう!!

4ストロークエンジンとはまったく違った構造で、実に、シンプルなのが2ストロークエンジンの特徴だ。特に、80年代以前に一世風靡したレジャーバイクやスポーツバイクに数多く搭載されていた「空冷2ストロークエンジン」は、メンテナンスの楽しさを覚える意味でも「最高の教材」と言うことができる。ひとつひとつの作業には、それぞれに奥深いノウハウがあるのだが、それ以上に重要なことは、自分自身の手を油で汚し、修理し、調子が良くなる様を「身をもって体感することができる!!」と言ったことだろう。もちろん、失敗すれば最悪の結果になるが、それはどんなことてせも同じこと。さぁ、チャレンジしてみよう!!

新品ピストンはそのまま組み込まないで


4個のナットを取り外せばシリンダーヘッドが外れ、さらにシリンダーを抜取ることで現れるのがピストンだ。4ストロークエンジンとは大違いで、すぐにピストンへアクセスできるのが、空冷2ストロークエンジンの特徴である。ピストン下部スカート外周の「最大径」がピストン寸法になる。この最大寸法とシリンダー内径の寸法の間にある隙間が、ピストンクリアランスである。


新品ピストンを組み込む際には、お約束的な作業がある。そのひとつがピストンスカートエッジの面取りだ。円筒ピストンのピストンピン側には「コの字型」の切り欠きがあるが、その切り欠きやスカート底辺の外周エッジは、耐水ペーパーで面取り作業を行おう。耐水ペーパーは800番を使い、折りたたんで使うと良い。ペーパー摺動部には防錆オイルスプレーを吹き付けよう。ドライユースは良くない。

ピストンリングやピストンピンクリップも点検


ピストンリングは合口部分の断面がポイント。外周側と内側を面取りしよう。僅かな角がシリンダー内壁にキズを付けてしまう原因になる。小さな細目の小型オイルストンでナメるように、滑らせるような作業の面取りで十分。削り過ぎてしまうと、逆に性能低下の原因になるので要注意。


ピストンピンクリップが切りっ放しになっていて、エッジにバリが立っていることも多い。特に、アフターパーツにはその傾向がある。ピンクリップ開口部の断面にもオイルストンを掛けてバリを除去。バリがあるとピストンへ組み込んだ際に、食い込んで引っ掛かってしまう原因にもなる。

シリンダーベースガスケットには液体ガスケットを併用


シリンダーを抜取った際に切れてしまうことが多いシリンダーベースガスケット。分解後にはスクレパーを使って除去し、ガスケット面はオイルストンで慣らそう。新品ガスケットを組み込む際は、液体ガスケットを併用する。状況によっては、シリンダー側へ液体ガスケットの粘着力で、ベースガスケットを貼り付けると作業性が良くなる。

コンロッドはガタの有無に要注意


コンロッドの上側(スモールエンド)には、ニードルローラーベアリングが入るので(50年代設計の2スト車は砲金ブッシュ仕様も多かった)、ベアリングは外して洗浄し、2ストロークオイルに浸しておく。コンロッドは指でつまみ、クランク側(ビッグエンド側)の横方向、回転方向にガタが無いか確認しよう。

シリンダーはまっすぐ、リングは指先で縮める


すべての作業工程にノウハウがあるのがエンジン組み立てだ。ここでは、ピストンをシリンダーへ納めるときのコツを解説しよう。ピストンリングを指先でグイッと絞り込みながら、ピストンの水平を保つ。そして、ピストントップをシリンダー端部へ覗かせる。次に、ピストンの首を前後に振りながらシリンダーを上から押し下げ、ピストンをシリンダー内へ挿入。4ストロークエンジンとは異なり、シリンダー端部に切り欠きがある分、挿入はしやすい。

POINT

  • ポイント1・ピストンやピストンリング、ピストンピンクリップの要所は、耐水ペーパーやオイルストンを使って面取りする。その際、キズを付けないように防錆スプレーを併用する。
  • ポイント2・面取り時の削り過ぎは厳禁。耐水ペーパーやオイルストンは滑らせるように、ナメるような感覚で作業進行する。
  • ポイント3・ひとつひとつの作業にはノウハウがある。メンテビギナーは、ひとつひとつの動作を確認しながら作業進行しよう。

空冷2ストローク単気筒エンジンのメンテナンスはシンプルだ。しかし、それぞれのメンテナンス工程に様々なノウハウがあることも御理解頂きたい。そんなノウハウうんぬんを覚えるには、何より経験が大切だ。自分自身でいじってみる「好奇心と勇気」が重要でもある。もちろん、そんな「綱渡りのようなメンテナンスはイヤだ!!」「まっぴらご免!!」と考えるマシンオーナーさんには、バイクショップへ持ち込んで頂くのが最善だろう。

しかし、さまざまな事情で「自分自身の手で何とか……」といった延長にあるのが、サンデーメカニックの姿である。経験を重ねることで様々なノウハウを知ることができる。体現することで、それが経験となるのだ。結果、それが楽しくなってプロの道へ進む者もいれば、気がつけばベテランと呼ばれるようなサンデーメカニックなる例もある。

ここでは、すべての作業手順ではないが、空冷2スト単気筒エンジンの腰上を組み立てる際に、知っておきたいノウハウを、いくつかご紹介することにしよう。

分解されたエンジン腰上に新品部品やオーバーサイズ加工されたシリンダー&オーバーサイズピストンを組み込む際には、ピストン本体、ピストンピン、ピストンリング、ピストンピンクリップの要所を確認点検し、面取りや摺り合わせを行うと良い。これらの作業によって、エンジン始動直後のカジリや引っ掻き回避でき、より一層、馴染みを良くすることができる。ピストンは、スカート底面外周エッジやコの字型の切り込み外側エッジを面取りしよう。耐水ペーパーの800番を準備し、ふたつ折りもしくは4つ折りにして、防錆浸透スプレーを吹き付ける。そして、軽く滑らせるように面取りすると良い。削るような加工は必要無いので、あくまで耐水ペーパーを軽く当てる程度に面取りしよう。

ピストンピンはピン穴に差し込み、スムーズに抜き差しできればOK。仮に、渋さを感じたなら、ピンにメタルコンパウンドを少量塗布し、ピストンのピン孔に差し込み、押し引き回転させながら摺り合わせを行う。パーツクリーナーでそれぞれのパーツを洗浄し、防錆スプレーを塗布した状態でスムーズな抜き差しができれば大丈夫だ。

ピストンリングはピストン側リング溝の回り止めピンとの合いを確認し、リング合口の外周エッジと内側のエッジを細目の小型オイルストンで面取りしよう。この面取りも滑らせる程度の軽い磨きで十分。ピンクリップの合口コンディションは虫眼鏡で拡大確認。バリが出ているときには完全除去後にオイルストンで合口を面取りしよう。この作業によって、クリップの回転が良くなり、組み込み後の合口確認も苦労せずに済む。

コンロッドはスモールベアリングのコンディションを確認(ピストンピンに差し込み確認)してから2ストオイルを注油。コンロッド本体は、左右への首振り摩耗が無いか?回転方向(縦方向)にガタが無いか?確認しよう。組み立て復元時には、作動各部に2ストエンジンオイルをたっぷり塗布し、初期カジリが発生しないような気配りも重要だ。


誰もが最初はビギナーサカメカ。ベテランなんて呼ばれるようになっても、時にはポカをやらかすもの。それがプロではなく「サンデーメカニックの特徴」だろう。DIYメンテナンスを積極的に覚えて、楽しいバイク人生を、思いっきり楽しみましょう!!

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