屋外保管で雨風や紫外線が当たり続けても数年間は当たり前、中には数十年に渡って質感を保ち続けることもあるバイクのシート。耐久性の高さはお墨付きだが、扱い方が悪かったり保管状況が悪ければ表皮が変色、変質することもあります。劣化して切れたり破れた場合は張り替えなどの補修が必要ですが、色だけの問題なら「皮革用塗料」で再塗装して風合いを取り戻せる場合もあります。

黒色だから目立たないだけ!? 実はめちゃくちゃ汚れているバイクのシート

洗車用シャンプーを使ってブラシやたわしで擦っても、シボ模様の奥に入り込んだ汚れが完全に落ちないトレール車のシート。林道やモトクロスコースなどで泥がついたブーツで乗降する際にシートを擦ると、しつこい汚れになることがある。

ワイズギアから発売されているシートクリーナー。自動車向けケミカルだと布製シートを対象とすることが多いが、バイク用品メーカー製だけあり合成皮革に対応するのが特長。

軽い汚れならクロスにスプレーしてシートを拭く。汚れがひどい場合はシート表皮に直接スプレーして3~5分ほど待ち、汚れが浮き上がったところでウエスで拭き取る。

ハンドルやステップと同様に、常に身体が接しているにもかかわらず注目されることが少ないシート。足つき性を良くするためのアンコ抜きや破れた表皮を張り替える際以外は、洗車の時にウエスでさっと拭くぐらいというライダーもいるのではないでしょうか?
普段は見過ごされがちなシートですが、バイクを構成する数多くのパーツの中でも強度や耐久性はズバ抜けています。特に風雨や紫外線に晒されながら伸縮を繰り返すシート表皮のタフネスさは驚異的といっても過言ではありません。
シート表皮の材料として一般的な合成皮革の中でも、バイク用シートに使用される素材の耐候性や耐久性は特に優秀で、ダイニングチェアやソファ、ワーキングチェアの表皮やスポンジが数年でダメになることも珍しくないのに対して、バイク用シートの表皮は5年や10年もつのはザラ。ガレージ保管されているバイクなら30年40年も柔軟性を保つことも珍しくありません。
そんなシートのコンディションを保つためには、定期的なクリーニングが効果的です。ガソリンタンクやカウルと同じ洗車用シャンプーで洗うのも有効ですが、黒いシート表皮は汚れが目立ちづらいため、実は想像以上に汚いこともあります。
そんな時に役立つのが、シート専用に開発されたクリーナーです。ワイズギアのヤマルーブシートクリーナーには、表皮のシボ模様に入り込んだ汚れを浮かせる効果があり、スプレーしてしばらく待ってクロスで拭き取るだけでしつこい汚れを落とせます。

ツヤが引けて白くかさついているだけならシリコンスプレーより再ペイントがベター

シリコンスプレーを塗った直後はツヤツヤ状態だが、時間が経つと部分的に艶消し状態になりムラが目立つ。製造から20年近く経過しているシートなので仕方ないかもしれないが、表皮が切れたり破れているわけではないので張り替えするには惜しい。

皮革用塗料にはさまざまな製品がある。これは主剤と硬化剤を3対1で混合して使用するウレタン樹脂塗料。シンナーや艶消し剤も専用品を使用する。

シートクリーナーを使ってもなお、落ちないタイプの汚れもあります。何らかの薬品やクリーナーが付着した痕跡がシミ状になったり、強力な脱脂剤で表皮のツヤが引けてカサカサになってしまうような例もあります。
このような場合に、とりあえずの対処として使われることが多いのがシリコンスプレーです。中古車をきれいに見せるためにスプレーされることもあるシリコンは、一時的には黒々としたツヤを回復できますが、ライダーが座れば短期間で効果が薄れ、何より滑りやすくなるためライディングに支障が出ます。
このような時の対応策として有効なのが塗装による補修です。
外装パーツを塗装するためのペイントは、ラッカー塗料でもウレタン塗料でも乾燥後の塗膜は硬化して柔軟性はありません。トレール車の外装に用いられることが多いポリプロピレン樹脂のような柔らかい素材を塗装する際は、軟化剤と呼ばれる添加剤を加えて柔軟性を与えることも珍しくありません。
シート表皮はポリプロピレンよりさらに柔らかいだけでなく。シワが寄るほど折り曲げられるため、一般的な塗料は塗膜が割れて剥離してしまいます。
これに対して皮革用塗料は、文字通り革製品の塗装に特化した塗料です。ここで紹介する製品は主剤と硬化剤を反応させる2液型のウレタン塗料で、施工する際はスプレーガンを使用します。また銘柄によっては1液型の缶スプレータイプの製品もあります。手軽に使えるハケ塗りタイプの塗料もありますが、シート全体を塗るならムラになりづらいスプレータイプの塗料を選ぶと良いでしょう。

柔軟性があり剥がれづらい皮革用塗料でお手軽リフレッシュ

どんなペイントでも塗装前に脱脂洗浄するのは共通だ。日常的にシリコンスプレーを塗布しているならなおさら、洗剤を使った入念な洗浄が不可欠。

主剤と硬化剤を混ぜた後、ハケ塗りでもスプレーガンによる吹きつけでも施工できる。スプレーガンの場合、専用シンナーによる希釈でハケ塗りより低粘度で使用する。

黒いシートに黒い塗料を塗るのは分かりづらいと思うかも知れないが、脱脂洗浄ですっかりカサカサになった表皮に塗料が載ることでツヤが出るので実は分かりやすい。

皮革用塗料でバイク用シートを塗装する際の手順は、塗料の使用方法に従います。下地処理が必要な製品もありますが、ここで紹介する塗料は中性洗剤による脱脂洗浄を行った後にスプレーすることが可能でした。
今回は元の表皮色が黒の上に黒塗装を行うためワンコートで仕上げることができましたが、色替えを行う際に黄色や赤色で塗装する場合、一度白色で塗装することで発色が良くなることもあります。ただし2コート仕上げを考える際は、塗料が重ね塗りに対応しているか否かを事前に確認しておくことが必要です。
また塗装後の質感が想定と異なることもあります。外装パーツは塗装面を平滑に仕上げるようペイントするのが一般的でしょう。しかしシート表皮はシボ加工による模様がついているのが一般的で、これが潰れる(埋まる)と雰囲気が変わってしまう可能性があります。
さらに塗料によってツヤ感が思い通りにならない場合もあります。今回使用した塗料には別途艶消し剤があってツヤの調整が可能ですが、テカテカすぎる、艶消しすぎるという仕上がりを調整できない場合もあります。これらは再塗装につきもののリスクであり注意点でもありますが、表皮を張り替えることなく大きなリフレッシュ効果を得られるメリットはそれらを上回るはずです。
ここで紹介しているシート塗装は10年以上前に作業したものですが、現在も表皮には柔軟性があり塗膜が剥がれるといった不具合もありません。すべての塗装で同様の効果が持続するとは断言できませんが、このようなリペア方法があることを知っておくことで、想像以上にお手軽かつ効果的にリフレッシュできることもあるのです。

自然乾燥で塗装の硬化反応が終われば、表皮にどれだけシワを寄せても塗膜が剥がれることはない。そもそも塗ったかどうかすら分からないほど自然な仕上がりだ。

シボ模様も埋まっておらず質感も良い。マスキングテープでテンプレートを作れば、ロゴを入れたカスタムシートを製作することもできる。

POINT

  • ポイント1・バイクのシート汚れはシート専用クリーナーで洗浄するのが効果的
  • ポイント2・クリーナーでは落ちない汚れは皮革製品専用塗料でペイントすることでカバーできる場合もある
  • ポイント3・塗料の種類(缶スプレーかスプレーガン用か)、施工方法、乾燥後の仕上がり具合などは目立たない部分を塗って確かめる
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