スクーターのドライブベルトはプーリーのV字溝の間を滑りながら駆動力を伝達するため、スプロケットと噛み合いながら回るチェーンと違って摩耗によって最高速が低下するのが特徴です。交換時期は走行距離で判断するのが一般的ですが、乗り方によっては想定以上の短距離で消耗し、場合によっては切断して走行不能になることもあるので注意が必要です。前後プーリーとウェイトローラー、遠心クラッチに加えてドライブベルトを交換することで、スクーターの駆動系メンテナンスは完璧です。

社外製ドライブベルトを使用する際は幅と長さの確認が重要

社外品のドライブベルトの中には、製品番号に加えてベルトの寸法がプリントされているものもある。

ライブDIO適合の社外品(右)に比べて8000kmほど走行した左の純正部品は明らかに幅が狭い。

新品の幅15.5mmに対して1mm幅が狭い14.5mmまで摩耗。ライブDIOではないが、ベルトの摩耗限度が1mmに設定されている機種もあるので、交換時期と判断するのが妥当だろう。

厚みは新品の9mmに対して8.2mmまで減少していた。

 

スクーターの駆動系メンテナンスで交換する部品の筆頭に上がるのがドライブベルトです。チェーン駆動車のドライブチェーンはピンとブッシュが摩耗することで全長が伸びていきますが、ドライブベルトはプーリーのV字溝に挟まれて回転しながら直径も変化するため、主に側面が摩耗していきます。

通常、エンジン回転数が上昇してドライブプーリーとプーリーフェイスのV字溝が狭くなると、ドライブベルトは中心から外側にせり出していきます。しかしベルトの側面が摩耗して幅が狭くなるとプーリーのV字溝を上がれなくなることで高速側に変速しきれず、最高速度が低下します。

摩耗が進行して幅が狭くなると、プーリーがベルトを挟む力が低下して発進時にもたついたり、心線が露出して切断することで強度が低下して破断につながることもあるので、そうなる前に交換しなくてはなりません。

ドライブベルトはドライブチェーンと違って簡単に確認できないため、交換時期は走行距離で判断するのが一般的で、原付スクーターの場合は1~2万kmごとの交換が推奨されているようです。ただし運転の仕方や使用方法によってはそれより早く摩耗することもあります。

ドライブベルトを交換する際、車種によってはバイクメーカーの純正パーツ以外で社外製ベルトを選択できる場合もあります。その場合、車両に適合した製品を入手するのが大前提です。特に製造期間が長期にわたるホンダDIOやヤマハJOGなどは、型式だけでなく車台番号によって部品適合を照合し、全長と幅を確認することが重要です。

リヤタイヤのアクスルシャフト位置を前後に調整できるチェーン駆動のバイクと違って、前後プーリー間の距離が決まっているスクーターは純正と長さが異なるドライブベルトは装着できません。またプーリーのV字溝の幅とベルトの幅が合わないと変速比がずれてしまう場合もあるので、純正寸法に正確に従った製品を入手しましょう。

ドリブンプーリーのV字溝を開いてベルトを押し込む

ドリブンプーリーのセンタースプリングが伸びきった状態(V字溝が最も狭まった状態)でドライブベルトをセットすると、ドライブプーリー(クランクシャフト)まで届かない。ここから無理に引っ張るのではなく、ドリブンプーリーを広げてベルトをV字溝の奥に押し込むのが正解。

ベルトをドリブンプーリーの中心側に押し込み、真ん中あたりを結束バンドで縛ることで、センタースプリングが伸びてベルトがプーリーの外側にせり上がるのを防ぐことができる。ドリブンプーリー側のベルトの直径が小さくなることでドライブプーリー側に余裕ができ、プーリーフェイスを取り付けても側面は大きく潰れない。

 

ドライブベルトをプーリーにセットする際は、先にドリブンプーリーにセットしてからドライブプーリーに掛けるのが一般的です。さらに具体的に言えば、ドリブンプーリーのV字溝を広げてドライブベルトを奥に押し入れた状態でドライブプーリーに掛けます。

エンジン停止時のドライブベルトはドリブンプーリーの最も外側に掛かっていますが、センタースプリングが伸びきった状態=V字溝が最も狭くなった状態ではベルトが外過ぎてクランクシャフトまで届かないことがあるのです。

そこでドリブンプーリーのV字溝を広げてベルトをプーリーの内側にセットすることでドライブプーリー側に余裕ができてプーリーフェイスを取り付けやすくなるのです。

ドライブプーリーフェイスとクランクシャフト端部の密着を確認

ドライブプーリーフェイスを取り付けた際に、プーリーの裏面とプーリーボスが接触していることを確認してからナットを仮留めする。プーリーフェイスがドライブベルトを押す感触がある場合、ベルトをさらにたわませる。

 

ドリブンプーリーのV字溝の奥にドライブベルトを落としてからドライブプーリー側にセットした方がよい理由はもうひとつあります。ドライブベルトをクランクシャフトギリギリの位置で掛けると、ベルトの側面をドライブプーリーとプーリーフェイスで挟みつけることになります。

プーリーフェイスはプーリーボスにぴったり密着した状態で締め付けるべきですが、締め付けトルクがドライブベルトを潰す力に使われてしまうと本来の力が逃げて緩みやすくなります。

プーリーフェイスとプーリーボスが接触することを確認してからナットを締め付けることが重要で、そのためにドライブベルトはできるだけドライブプーリーに対して余裕のある状態でクランクシャフトに掛けられるよう、ドリブンプーリーのV字溝の奥に落とし込んでからセットするのが有効なのです。

クラッチアウターとドライブプーリーフェイスナットの締め付けトルクが重要

プーリーフェイス外周のギヤをホールディングツールで固定して、60Nmにセットしたトルクレンチでナットを締め付ける。

クラッチアウターのロックナットの締め付けトルクは40Nm。結束バンドを切断してベルトカバーを装着し、エンジンを始動してドライブプーリーが回るとベルトの遊びがなくなり正しい位置に落ち着く。

 

ドライブベルトを取り付けたら、ドライブプーリーフェイスのナットを60Nmで締め付けます。緩ければ走行中にナットが外れてエンジンが破損する恐れがあり、オーバートルクではネジを傷めるリスクが大きくなるので、回り止めをした上で適正トルクで締め付けましょう。

クラッチアウターナットもトルクレンチを使用して40Nmのトルクで締め付けます。どちらも過大な力で締めるのではなく、適正トルクで作業することが重要です。

前後のナットを締めたら、ドリブンプーリーのV字溝の奥にドライブベルトを保持するために締めておいた結束バンドを切断してベルトカバーを復元し、試運転してスムーズに変速すれば作業は完了です。

原付スクーターには車検もなく法定点検の義務もないため、タイヤやバッテリーやブレーキパッド交換以外のメンテナンスは思いつかないかもしれません。しかし便利な自動変速機構の内部にはウェイトローラーやドライブベルトやクラッチライニングなど、走行距離によって摩耗し交換が必要な部品が使われており、乗りっぱなしでは不具合が広範囲に広がり修理費用がかさむ原因にもなります。

そうならないためには、たとえ原付スクーターであっても走行距離や使用期間ごとにメンテナンスを行うことが重要です。

POINT
  • ポイント1・ドライブベルトはプーリーとの摩擦で消耗するため走行距離によって交換が必要
  • ポイント2・社外品のドライブベルトを使用する際はベルト長とベルト幅が純正寸法と一致していることを確認する
  • ポイント3・ドライブプーリーフェイスの固定を確実に行うため、クランクシャフト側に余裕ができるようドリブンプーリーのV字溝を広げてからベルトをセットする

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