法定速度30km/hや一人乗り専用などの制約はあるものの、簡単に免許が取得でき手軽に乗れるのが魅力の原動機付自転車。新たな排気ガス規制の施行により日本国内では排気量50ccの新車販売は終了しましたが、世間には数多くの50cc原付が存在しています。ここでは手入れ次第でまだ充分に使える2スト原付スクーターに注目し、複数回にわたりベーシックな駆動系メンテナンスについて解説します。
スクーターの駆動系はシンプルな構造ながら実用性能は充分
スロットルをひねるだけで発進から最高速まで自動的に変速していくのがスクーターの特徴です。ライダー自身がギヤを選択して変速するマニュアルミッションに比べて操る楽しさは少ないものの、誰もが簡単に運転できるのが大きな魅力で、50ccクラスの大半を占めるのがスクーターだったといっても過言ではありません。
クラッチレバーを握ってシフトペダルを操作するのがバイクの醍醐味だという声もありますが、マニュアルミッションでも駆動力の断続を排除すべくさまざまな電子制御を活用しています。あるいはスクーターでも排気量の大きなモデルではライダーの手によるマニュアル変速が可能な車種もあります。
それらに比べて50ccの原付スクーターの駆動系は、2スト時代から4ストに移行した後も前後のプーリーとドライブベルトで構成される伝達機構の基本的な構造は踏襲されています。2ストロークエンジンは排気ガス規制値の変遷によりスポーツバイクでも原付スクーターでも生き残ることはできませんでしたが、2ストスクーター時代に確立された駆動系のメカニズムは4スト化以降も充分に通用しました。
つまりエンジンが2ストロークであっても、駆動系のメンテナンスをちゃんとすれば現在の公道でも実用的に使えるということです。エンジン構造がシンプルで低速からトルクの出る2ストロークスクーターの方が、街中ではむしろ4スト車よりキビキビ走れるという意見もあるほどです。
2スト、4スト問わず駆動系で摩耗、消耗する部品は決まっています。かつて原付スクーターはまともなメンテナンスもせず乗り潰されるイメージもありましたが、適切なメンテナンスを行い乗り続けることはSDGsな時代に適していると言えるかもしれません。
プーリーとドライブベルトの組み合わせが自動変速の決め手

スクーター変速装置は乾式なので、カバーを外してもオイルが流れ出ることはない。その代わりに走行距離が多くなるとドライブベルトやクラッチシューの摩耗粉が堆積しているのが一般的だ。向かって左がエンジンにつながるドライブ側で、ベルトを介して回転する右がドリブン側となる。

プーリーフェイス中心のナットが締め付けられた雄ネジがクランクシャフト端部で、外周は左上のセルモーターピニオンギヤと噛み合うリングギヤとなっている。このナットはギヤをホルダーで固定してソケットレンチで緩めても良いが、インパクトレンチがあればホルダーなしでも緩めることができる。

プーリーフェイスの表面はテーパー形状で、ドライブプーリーと向かい合うことでドライブベルトが収まるV字溝ができる。黒い線状痕はベルトが擦れてゴムが焼き付いたようになっている。プーリー表面の汚れはスムーズな変速の邪魔になるので除去しなくてはならない。
原付を始めとしたスクーターの自動変速は、エンジンのクランクシャフトにつながるドライブプーリーとリヤタイヤにつながるドリブンプーリー、その間をつながるゴム製のドライブベルトの3つのパーツで構成されています。前後プーリーはエンジンの回転数によって自動的に幅が変化し、それに連動してプーリーのV字溝にはまったドライブベルトの回転半径が増減することで減速比が調整されて速度が変化します。
これは自転車の変速装置に置き換えて考えることができます。変速機なしの自転車はペダル側とリヤタイヤ側のギヤ比が一定なので、速度を変えるにはペダルの回転数を変えなくてはなりません。しかしリヤホイールに歯数が異なる複数のギヤがあると、負荷が大きい発進時や坂道では歯数の多いギヤを選択し、スピードに乗ってきたら歯数の少ないギヤを選択することで、漕ぎ手の負担を軽減しながら幅広い速度域に対応することができます。
スクーターの自動変速は、プーリーの回転半径の調整をドライブプーリーに内蔵されたウェイトローラーによって行います。エンジン停止時やアイドリング時は、ドライブプーリーとプーリーフェイスからなるV字溝の幅が広く、ドライブベルトは溝の奥に位置しています。
次にエンジン回転数が上昇すると、遠心力により内部のウェイトローラーがプーリーの外側に移動してプーリーフェイスに接近してV字溝の幅が狭くなり、ドライブベルトが押し出されて回転直径が大きくなります。この回転直径の変化に対応してドリブンプーリーの幅が変化することで、リヤタイヤの回転数=速度も変わるのです。
前後のプーリー径(ドライブベルトの回転直径)と速度の関係は以下のようになります。
ドライブプーリー ドリブンプーリー
低速時 小 大
高速時 大 小

ドライブプレートを裏返すとランププレートがあり、これを外すと6個のウェイトローラーが現れる。ローラーが転がる部分は外周から中心に向かって傾斜が付いており、停止時およびアイドリング時は画像のように中心寄りにある。ランププレートはクランクシャフトに突き当たっているので、回転速度が上がってローラーが外側に移動するとプーリーが押し上げられてプーリーフェイスとの幅が狭まり、間に挟まったドライブベルトが外周側に移動する。

ドライブベルトがドライブプーリーの中心から外側に移動することで、リヤタイヤ側のドリブンプーリーに掛かったベルトは外側から内側に移動する。ドライブベルトはできるだけドライブプーリーの外側に移動した方がスピードが上がるが、ドリブンプーリーのV字溝の幅やウェイトローラーの重さとの兼ね合いもあるため限界はある。プーリーフェイスにくっきり残った線状痕は、現状のエンジンパワーやウェイトローラー、ドライブベルトで可能な最も高速寄りの変速状態だ。後の回で説明するが、プーリーフェイスにベルト粉が張り付いた現状は最高速が低下しているはず。

プーリーフェイスとドライブプーリー表面に付着したベルト汚れはサンドペーパーや金属磨き、パーツクリーナーで除去しておく。プーリーフェイスは鉄製なのでサンドペーパーで擦っても平気だが、アルミ製のドライブプーリーは表面が変形するほど擦らないように注意しよう。またベルトが当たり続けて摩耗している場合(このディオも表面が若干凹んでいる)交換した方が良い。
避けて通れないウェイトローラーの摩耗

ウェイトローラーは本来なら筒状だが、まるでヤスリで面取りしたかのように平らに偏摩耗している。ランププレートとプーリーに挟まれたウェイトローラーは、遠心力によって両者の隙間をこじ開けるように転がるため、その際に生じる摩擦や熱によって摩耗し変形してしまう。この摩耗は乗り方にかかわらず発生する。

ウェイトローラーは金属製の「おもり」と樹脂製のカバーの二層構造。樹脂カバーは滑りが良く耐摩耗性に優れたエンジニアリングプラスチックが用いられる。今回は社外品(左上)に交換したが、重量はノーマルと同じ8.5gとした。
ドライブプーリーとランププレートに挟まれた円柱状のウェイトローラーは、エンジン回転数に合わせてプーリーの回転数が上昇すると遠心力により外側に転がります。その際にローラーには強い摩擦力が加わり、摩擦に打ち勝ちながら転がる際に熱も生じます。
ウェイトローラーは中心部分の金属のウェイトと外周を樹脂の二層構造で、走行距離が増えたり経年劣化によって樹脂部分が摩耗します。変速する際は必ずローラーが回転するため摩耗は避けられませんが、その摩耗は均等に進行するわけではなく円筒の一部が平らに偏摩耗するのが一般的です。
偏摩耗が進行するとローラーがスムーズに転がりづらくなり、変速ムラの原因になることがあります。さらに状況が悪化して樹脂部分が摩滅して金属ウェイト部分と分離すると、変速時に異音が発生すると同時にローラーが転がる溝が削れるなど大きなトラブルにつながり、補修にかかるコストも上昇します。
サービスマニュアルにはウェイトローラー外径の摩耗限度は記載されていますが、交換時期や距離の記述はありません。スロットル操作が荒い、全開走行が多い、エンジン回転数の変化が大きい乗り方をすることでウェイトローラーの移動量は多くなり、必然的に摩耗も多くなります。またある部品メーカーのサイトを見ると5000km程度が点検交換目安とされています。
ウェイトローラーは外から見えない場所にあるため、交換が必要であると思われていない、あるいは一般的なスクーターの使用時間からするとメンテナンスせず乗り換えると思われがちですが、タイヤやブレーキパッドと同様に摩擦により消耗する部品なので交換が必要であり、適切なタイミングで交換することでスムーズな変速がよみがえります。
ウェイトローラー重量は純正が基準

ウェイトローラーの中には取り付け時の向きが決まっているものがある、樹脂カバーの断面の穴径が両端で異なる場合、穴径が小さい方をプーリーの回転方向に対して後ろになるよう取り付ける。そうすることでプーリーが回転する際にガイドと樹脂が接触し摩耗を防止できる。

ランププレートを取り付ける際は、ドライブプーリーのリブにはめ合わせる部分のスライドピースに損傷がないか、スムーズに作動するかを確認する。ドライブプーリー右側の円筒(プーリーボス)は、プーリー外側から挿入する。

ドライブプーリーはプーリーボスを中心に回転しながら、ボスに沿ってスライドする。エンジン回転が上昇してウェイトローラーが外側に移動すると、プーリーは本来であればボスの端部に密着しているプーリーフェイスに向かってせり出し、V字溝が狭くなりドライブベルトが外周に向かって押し上げられる。
摩耗したウェイトローラーを交換する際、ローラー重量という選択肢があります。ウェイトローラーは遠心力によって作動するため、重さによってプーリーの応答特性が変化します。
一般的にはウェイトローラーを軽くすることで加速重視、重くすることで最高速重視の特性になると言われています。ノーマルより軽いウェイトローラーは遠心力の影響を受けづらくより高回転域で変速が始まるため、マニュアルミッションならより高回転でクラッチミートを行うのと同様の効果が期待できます。
ただし軽すぎるとプーリーが充分に動かず(V字溝が狭くならず)最高速が伸びない場合もあります。逆にウェイトローラーを重くすると低回転域から変速が始まりますが、マニュアルミッションで3速、4速発進が難しいのと同様に発進加速が鈍くなることがあります。
このようにウェイトローラーによって変速特性の味つけを変えることができますが、チェーン駆動のバイクのスプロケットを交換してギヤ比を変更する場合も、加速重視にすれば最高速が頭打ちになり、最高速重視にすれば発進加速が鈍くなるのと同様に、その効果はエンジン特性やライダーの好み、走り方によって評価は変わります。
エンジンや吸排気系がノーマルのままなら、変速特性を変えるつもりでウェイトローラー重量を変更しても、エンジン特性とうまくバランスしないこともあるので注意が必要です。偏摩耗したウェイトローラーを交換するメンテナンスなら、まずはノーマル重量で組み立て走行してから判断すると良いでしょう。またウェイトローラーの重量を変更する場合、次回以降で紹介するドライブベルトの状態も確認することが重要です。
- ポイント1・4ストローク+インジェクション化された50cc末期のスクーターに比べて、2スト+キャブ時代のスクーターはメンテナンスが簡単
- ポイント2・駆動系のメンテナンスによってパフォーマンスが回復する原付スクーターは多い
- ポイント3・変速がスムーズに進まないときはウェイトローラーの偏摩耗を疑い、エンジンや吸排気系がノーマルならローラー重量もノーマルで組み立てる
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