ヘッドライト用のLEDバルブが普及して、旧車や絶版車に装着するユーザーも増えています。その一方でデジタルなLEDの発光色より、ちょっと暗くても昔ながらのフィラメントの輝きが良いというライダーも少なくありません。古いバイクのヘッドライトが暗いのは仕方ないと半ば諦めているひともいるようですが、経年劣化した配線を見直すだけで光量がアップする可能性もあります。ここではLEDバルブもバッ直リレーも使わず、ヘッドライトを明るくするテクニックを紹介します。

バッテリーからライトバルブまで旧車の配線には抵抗要素がいっぱい

ヘッドライトバルブのコネクターを着脱する際に配線を掴んでコネクターを揺すりながら引っ張ると、コネクター内部の端子のカシメ部分で芯線が切れたり抜けることがあるため、必ずコネクター本体を持って作業しよう。

12V車でなら満充電状態のバッテリーターミナル電圧は12.8V近くになりますが、スイッチや端子を経由するごとに電圧は少しずつ降下して、ヘッドライトバルブにつながるコネクター部分では1V近く損失していることもあります。ギボシ端子のオスとメスの両端で測定した抵抗値が0Ωであっても、接点が多いほどほんの僅かな抵抗が積み重なることで最終的な電圧降下の要因となります。
旧車や絶版車の配線を点検するとギボシ端子の被覆が焦げたように劣化している例がありますが、それは流れる電流が熱となることで浪費された証拠であり、ヘッドライトの光量低下の原因となります。
ギボシ端子だけでなく、ヘッドライトスイッチやハイ/ローを切り替えるディマースイッチの接点も経年劣化による酸化や摩耗により通電していてもロスが生じて、電圧降下につながる要因となります。
こうした金属疲労に対して、バッテリーからヘッドライトバルブまで新たに配線を敷設するバッテリー直結リレー、いわゆるバッ直リレーを組み込むことは、最も効果がある対策方法のひとつです。
既存の配線はリレーを作動させるためのスイッチ電源として利用し、実際にヘッドライトに流れる電流は新規の専用線とすることで中間のロスをなくすバッ直リレーは、抵抗要素を取り除くという点でとても合理的です。

ヘッドライトバルブ端子につながるコネクターの端子をチェックしよう

カワサキ車のマイナス配線である黒/黄が怪しげだったのでコネクターから端子を抜いたところ、芯線の大半がカシメ部分で切断していた。これでも回路は成立しているので点灯するが、ロスは多いはずだ。

不全断裂部分を切断して、新たにH4コネクター用端子を用意してかしめ直した。この端子をコネクターに戻せば性能は回復するが、黒/黄のマイナス配線はメインハーネス内で各所のマイナス線とつながりながらクランクケースに接続される。

ヘッドライトが暗ければ問答無用でバッ直リレーを組み込むことで状況は確実に良くなります。その一方で、既存の配線をチェックすることで改善の手がかりが掴めることもあります。
ここで紹介するカワサキZ1Rは複数のオーナーが代替わりで所有してきた、絶版車にとってありがちな遍歴を重ねてきたマシンです。その過程で社外品のハーネスを装着していますが、ヘッドライトがいまひとつ明るくないのがオーナーの不満でした。
旧車では反射鏡の曇りやレンズ内側の汚れなどヘッドライト本体やバルブの性能低下の可能性もありますが、このバイクの場合はH4バルブにつながるコネクターのマイナス端子のかしめに問題がありました。
ライトコネクターを抜き差しする際は必ずコネクター自体を持つのが必須条件ですが、状況によってはコネクター部の配線を持って引っ張ってしまうこともあります。その際に社外品のハーネスによっては端子のカシメが甘く、芯線が抜けてしまうこともあります。完全に抜けてしまえば分かりますが、ヘッドライトが消えるほどではない中途半端に芯線が切れたり抜けた不全断裂状態では、不具合に気づかないこともあります。
これは断線ばかりでなく芯線の腐食やサビでも同様です。コネクターから端子を引き抜くと、カシメ部分と芯線が緑色に酸化(緑青)していたということも絶版車では珍しくありません。
また社外品ハーネスの場合、カシメの他に端子自体の品質にも注意が必要です。ギボシ端子でも平端子でも、太さや厚さの微妙な違いが接触不良につながることがあります。
ハーネス交換を行う場合はメインハーネスだけでなくサブハーネスも同時に交換し、さらにコネクター内部に挿入された端子の状態にも注意しましょう。

ヘッドライトコネクターのマイナス線を車体やバッテリーに戻すだけでも変わる

ヘッドライトコネクターとクランクケースのアースポイントを直接つなぐマイナス線を新設する。

ヘッドライトコネクターの形状によっては、画像のような差込部と配線が90度曲がった旗型端子を使用する場合もある。

車体取り付け側はボルトを取り外さず着脱できるクワ型の方が楽だが、ボルトやナットが取れない限り外れない丸型端子を使用する。

カワサキZ1系のエンジンはクランクケース右側のキックペダル後部にアースポイントがあるので、ヘッドライトコネクターに取り付けたマイナス線の端子を共締めする。バッテリーのマイナス端子に直結しても良い。

話は横道に逸れましたが、マイナス側端子のカシメに問題があったヘッドライトコネクターを修理するにあたり、新たに製作した配線はメインハーネスに戻すのではなく、エンジンのクランクケースにアースしてみました。
既存の配線ではヘッドライトのマイナス線はメインハーネスに接続され、車体各部の電装品のマイナスと合流して車体にアースされています。その際、プラス側と同様に配線の合流と分流で接点が増えるほど接点抵抗が増加することが考えられます。
そこでヘッドライトコネクターのマイナス端子から直接クランクケースに配線することで、一種のアーシング効果を狙ってみたのです。クランクケースではなく、バッテリーのマイナス端子に接続しても同様の効果が期待できます。
アーシングについては様々な意見がありますが、バッテリーから電装品までの「往路」だけでなく、回路全体を考えれば電装品から車体やバッテリーに戻る「復路」も重要であることは間違いありません。
今回の例では、ヘッドライトを暗く感じる主因は端子部分での配線の不全断裂でしたが、カシメに問題はなくてもマイナス線を車体やバッテリーに接続することで、劇的な効果は実感できなくとも負の要素は取り除くことができます。またヘッドライトだけでなく、ウインカーやホーンなど配線はプラス側だけでマイナスは車体アースという電装品にとっても有効です。
マイナス配線を追加するだけならバッ直用のリレーやヒューズを新たに取り付けるよりローコストで、それらの部品を装着するスペースを考える必要もありません。配線の劣化が少ない高年式車や元より消費電力が少なくLEDヘッドライトモデルには無縁のアナログ対応ですが、旧車や絶版車にとってはこういった手法も有効であることを知っておくと良いでしょう。

バッテリーからヘッドライトまでのプラス側の配線に専用リレーを組み込むバッ直リレーは有名だが、その前段階としてマイナス配線の車体直結も有効であることを覚えておきたい。

POINT

  • ポイント1・ヘッドライトスイッチがあったころの旧車や絶版車にとって、経年変化による接点の抵抗増加や配線の破損や劣化は光量低下の原因となる
  • ポイント2・カシメ部分の状態を確認しやすいギボシ端子だけでなく、コネクター内部端子のコンディション確認も重要
  • ポイント3・メインハーネスなどに接続されるマイナス配線を車体やバッテリーのマイナス電極に直結することで接点抵抗の低減が期待できる
ギャラリーへ (8枚)

この記事にいいねする


コメントを残す