
バイクのメンテナンスに限らず、自転車でも家電でも、部品の分解に必要不可欠なのが各種工具である。バイクの場合なら「車載工具があるから大丈夫!!」なんて思っていませんか? 車載工具は、非常時に使う程度だと考え、普段は実用性が高い様々な工具を買い求め、メンテナンスするのが確実である。それでも不足する工具が時折あるが、そんなときにはアイデアや便利な道具や工具を見つけて、実践利用するのがよい。ここでは、自作アイデア工具、本来の目的とは違った使い方で便利な特殊工具、本当に持っていると便利な特殊工具の3点に注目してみた。
意外と使える「自転車用の細いスポーク」
狭いところや奥まった部分にある部品を、拾い上げる目的で使うのが「ピックアップツール」の役割である。そんなピックアップツール代わりとして利用でき、思いの外、使い勝手が良いのがスポークホイールのスポーク単品だ。新品スポークに組み換えたり、仲間がスポークを組み換えたと聞いた時には、交換したスポークを何本か頂戴し、それを利用するのもよいだろう。細いスポークほど使いやすいので、リアよりは細いフロント。さらには、バイク用よりも「自転車用スポーク」が、極めて細く使い勝手が良好のようだ。
ブレーキキャリパー用工具が本格的専用工具に変身!!
ブレーキパッドを交換する際は、押し出されたキャリパーピストンを押し戻したいシーンが必ずある。そんなときに利用する特殊工具がキャリパーピストンツールである。この工具は、隙間に2枚合わせのスライド部を差し込み、ハンドルを回すことでスライドプレートを並行に広げることができる特殊工具だ。片押しでも対向ピストンでも、ブレーキキャリパーピストンの押し戻しには、必要不可欠な特殊工具だ。
上下重ねのクランクケースではなく「左右合わせクランクケース」を分割する際は、そのきっかけ作り用として最高のツールがこれだ。例えば、モンキーやスーパーカブのホンダ横型エンジン、エイプなどの縦型エンジンでも、クランクケースは「左右合せ式」なので、クランクケース分解時のきっかけ作りには最高だ。メーカー製サービスマニュアルを見ると、プラスチックハンマーで「叩いて分割」とあるが、液体ガスケットの固着や位置決めピンがサビで固着していると、プラハンで叩いてもビクともしないことが実際には多い。そんなときにはブレーキピストンツールにキズ防止のスポンジを貼り、じわじわ広げつつ、戻す作業を繰り返すことで、クランクケースは想像以上に楽に分割できる。
フルードストッパーは燃料チューブの遮断に便利
燃料チューブを抜き取る際に、燃料コックがキャブ側にあるモデルでは、チューブを抜き取ったとたんにガソリンが溢れ、流れ出てしまうことがある。そんなときにはフルードストッパーと呼ばれる特殊工具を利用するのが良い。この工具は30年以上前にスタビレー製を購入。現在では、様々な工具メーカーから販売されているので、全国の工具専門ショップで購入することができる。
30年以上前は、欲しい工具がなかなか購入できない環境だった。そんな環境の中でほしいものを見つけたときには、実に嬉しい気持ちになったものだ。現在は、自動車やバイクに強い、様々な工具を揃えたショップが数多くあるので、このような「便利工具」を見つけるのも、たやすいことかも……
- ポイント1:なにかに使えそう!? と直感したら具体的に試してみよう。
- ポイント2:廃部品でも改造することで特殊工具として利用できることもある。
- ポイント3:本来の使い方ではなくても、ひらめいたときには自己責任でチャレンジしてみよう。
車載工具では、満足できるメンテナンスはなかなかできない。普段のメンテナンス用には、工具ショップで取り扱っている自動車やバイク用として特化したセット工具を購入するのがベストだろう。使っていくうちに、更に必要な工具が必ず出るので、その都度、必要なものを買い足して、メンテナンスライフを充実させたいものだ。
工具を買い増すことで、かなりの充実感を得ることができる。しかし、それでも何ともしがたいケースがある。
そんな作業箇所用として、特殊工具(SST/スペシャル・ショップ・ツールズと呼ばれる)の存在がある際には、特殊工具を利用するしかない。とは言え「特殊」という名称だけに、利用する機会が少ない。ならばその場しのぎでも良いので、何とかしたいとアイデアをしぼり出すことで、特殊工具を自作することもある。
大切なことは、その作業によって他の部品にダメージを与えないことである。SSTレプリカを作ればダメージを与えない可能性が高いが、違った角度からアプローチすると、例えば部品を取り外すことができても、他の部品にダメージを与えてしまう可能性もある。そんなリスクを常に考えながらDIYメンテナンスを経験していくことで、様々なノウハウを得ることができるのだ。
ここに紹介する特殊工具は、どちらかと言えば利用機会が多く、汎用性もある高いものが多い。自作したSSTもあるが、いずれも使い勝手は極めて高い。このような特殊工具を自作することで、DIYメンテナンスの奥行きが、またひとつ少し拡がる。もっともっとメンテナンスを楽しもう。
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