部品の組み込みを終え、カバーを閉じてエンジン始動!! ところが……
気がついたときには、エンジン下にはオイル滴りが……
過去にそんな経験があるサンデーメカニックは、実のところ数多いはず? 原因は、ガスケットの組み込みミス。パコッと上手にカバーを組み込んだつもりだったのに、ボルト1箇所分が内側にズレていて、そこからエンジンオイルが漏れてしまって……。
そんなつまらないトラブルを、間違い無く回避することができるアイデア工具が、ボルトを改造したガスケット組み込み用の「ガイドバー」だ。
完全手作り!! 金ノコと平ヤスリで自作できる!!
ホームセンターで購入した長さ130mmのM6ステンレスボルト(それが一番長い在庫ボルトだった)。その頭部分を切り飛ばしてから、平ヤスリで先端側を尖らせるように形状変更した。こんな手作業時にあると便利なのが作業台と大型万力。メンテナンススペースを確保できないときには、事務机に万力を固定した作業台作りと、AC100Vコンプレッサーの装備からインフラ整備を始めるのが良い。
金ノコで切ってヤスリで尖らせた完全なるハンドメイド特殊工具だが、ディスクグラインダーを利用すれば、ものの数分で自作することができる。今回は、3本ガイドでイメージしたが、部品形状や状況によって、ガイド本数は増やせばよいだろう。
セットしづらいガスケットは意外と多い
大きなクラッチカバーや発電機カバーの場合は、フランジ面積が狭いためガスケット座面幅も当然に狭くなっている。こんな箇所は、ガスケットがヨレヨレになりやすくセットしにくいことが多い。スプレー接着タイプのガスケットもあるが、今回のガイドバー(ガイドボルト)式なら、より確実な作業を行うことができる。
自作したガイドバーをクラッチカバー締め付けボルトの要所へ指締めする。この際、カバー締め付けボルトのねじ座にダメージが無いか?全ボルト孔を指回しで確認すると良い。ボルトが回りにくいときには、ウエスで周囲を押えつつ内部をパーツクリーナーで噴射洗浄してみよう。それでもダメなら、タップでねじ山をさらい直そう。切り粉がエンジン内に落ちないように、慎重な作業が大切だ。
ガイドボルトにガスケットを通してプリセットする
いわゆるガスケットを「串刺し」にしたような感じだ。こうすることで、よじれたガスケットやクセのついたガスケットを容易にセットアップできる。この方法で作業進行すると、意外なほどの作業性の良さに気がつくはずだ。この説明画像には、一次クラッチやクラッチリフターが組み込まれていないが、それらのパーツがあると、この方法での作業性の良さがより一層際立つ。失敗経験がある方なら、御理解頂けると思います。
ガスケットを串刺しにしてガスケット座へ押し付けたら、クラッチカバーをガイドバーに沿ってセット。ガイドバー以外の箇所のボルトを通して仮締めし、カバーをクランクケースへ押し付けたら、ガイドボルトを抜き取り本来のボルトで仮締めする。大型カバーの場合は、中央付近のボルトから両外へ向けて順序良く締め付けていくのが鉄則だ。
- ポイント1:幅が狭く大きなガスケットの組み付け時に失敗しにくい最善策がこの方法。
- ポイント2:事前に指締めで「ねじ山コンディション」を確認。違和感があるときには即座に対処しよう。
- ポイント3:ガスケットを自作した時や古いガスケットは形状が歪んでいることが多いので、特に高い効果を実感できる。
4気筒エンジンならヘッドカバーガスケット。排気量を問わずクラッチカバーガスケットなどは、ガスケットの座面幅が狭くて組み立てにくいことがある。液体ガスケットを併用することで、ガスケットをエンジンに貼り付けて締め付けることもできるが、そんなやり方をしても、ガスケットにダメージを与えてしまうことがある。
特に、旧車エンジンメンテナンスでは、補修用ガスケットも年代物で、形状補正しようとガスケットのよじれを引っ張ったら、いとも簡単に切れてしまった…… といったケースが多々ある。そんなよじれたガスケットを元に戻したい際には、WD40やCRC556のような防錆浸透スプレーをガスケットへ吹き付け、広げた新聞紙の上へガスケットを広げて置いとくのがよい。こうすることで紙ガスケットにオイルが染み込み、ガスケットが簡単には切れにくくなる。
ガスケットの柔軟性がある程度回復したら、エンジン側のガスケット座面にシリコン系液体ガスケットを薄く塗布しよう。そして、写真解説の通りガイドボルトを要所へ締め付け、ガスケットが切れないようにセットしてみよう。さらにガスケットを液体ガスケットへ押し付けたら、その状態を保ちながらエンジンカバーをガイドに沿って締め付けると良い。
ここで残りのボルトを仮固定しよう。もちろんその際には、ボルト先端がガスケット孔を通過していることを確認すること。それらの正規ボルトを仮締めして、ガスケット越しにクランクケースへカバーを押し付けたら、ガイドボルトを抜き取り、こちらも正規のボルトで仮締めしよう。
これがおおよその作業手順である。この方法でよじれたガスケットを利用し作業を終えると、次からもこの方法で作業したくなるほど、より確実な作業方法である。
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