
電気トラブルの内容によっては、バイクが不動車になるケースもある。電気の流れには、大きく分けて2種類あると考えても良い。ひとつは「バッテリーに充電」するための発電→充電系までの回路。もうひとつは、バッテリーに充電された電気を使用→消費系の回路である。仮に「電気収入」と「電気支出」と捉えた場合、電気に関連する機器そのものの働きと、その働きを各部へ伝える電気回路によって物事が成立していると考えれば、不具合が発生したときのトラブルシューティングは理解しやすくなる。
一方で、トラブル症状ではなく「目視で発見=気がつく」ような電気トラブルもある。ここでは、洗車&拭き上げ中に「偶然」気がついたトラブルの修理を実践してみた。
白い配線カプラが茶色く焦げ、ハーネスが変色しているので引っ張ったてみら、いとも簡単に「スポッ」っと抜けてしまいこの状態に……。気分的には、すべての配線を張りかえたいところだが、ここは部分補修で修理してみた。
「向かい合わせた配線」を接続する専用端子金具
本来の黄色から茶色へ変色してしまった配線を見つけたので引っ張ってみたら、あろうことかスポッと抜けてしまった……。どうやら配線端子のカシメ部分が焼けてコード被服を溶かし、カシメが緩くなり配線が抜けてしまったようだ。配線焼けでカプラが茶色く変色していたのだと思う。今回は、部分的に配線を作り直す(張り直す)方法で補修を進めた。そんな配線を確実に接続する金具のひとつに「スプライス」がある。1.25~2.00sq(太さ)サイズの配線用が手元にあったので利用することにした。
カプラだけが焼けているようなので、保護テープとチューブを切開して配線コンディションを確認した。カプラから離れた部分にダメージは無かった。そこで、同じ太さで同じ色のコードを用意し、コード両端の芯線を向かい合わせにスプライスを使って圧着カシメで固定した。焦げた配線部分+αの長さで、新品コードへ交換することにした。
スプライス接続部をハンダで補強
スプライスでカシメた周辺にハンダ用ペーストを適量塗布。ハンダゴテ(今回は200Wを利用)が温まったら軽く当てて、塗布したペーストをジュジュっと溶かした。このペーストによってハンダの作業性が良くなる。ここでは、鈑金ハンダ用ペーストを使ったが、一般の電気ハンダ用ペーストやフラックスで良い。
温まったコテの先端にをハンダを当てて、スーッと溶けることをまずは確認。次に、温まったコテ先端をスプライスのカシメ側へ当て、ハンダを極少量溶かしてスプライスの隙間に流し込んだ。流し込みは少量で十分。テンコ盛りにし過ぎると逆にビニールのコード被服にダメージを与えてしまうので要注意。
コード芯線を向かい合わせで重ね、スプライスでカシメ固定し配線を接続した。その後、ハンダの追加で補強したのが今回の作業手順だ。実は、芯線を露出した際に双方の芯線にハンダを溶かして薄く載せ(ハンダメッキ状態)、その状態で芯線を重ね合せてプライヤーで押し寄せスプライスで圧着固定。さらにスプライスをハンダゴテで温めることで、薄く載せたハンダメッキが溶けてスプライスと一体化でき強度が高まる。そんなやり方の方が、作業性が圧倒的に良いようだ。
接続部分を収縮チューブで保護しよう
仮に、ギボシ端子には保護カバーを取り付けるのが決まり事である。電気が流れる金属部分の露出は、ショートなどのトラブル原因になるからだ。今回の場合は、スプライスで接続した部分を「熱収縮チューブ」でしっかり保護した。
- ポイント1・洗車&磨き込み時には、各種ハーネスのカプラに異常が無いか、注意深く目視確認しよう。
- ポイント2・配線修理の接続端子には様々なタイプがあるので、数種類在庫しているとタイムリーなメンテナンスが可能になる。
- ポイント3・端子のカシメ作業時には、端子カシメ用の専用プライヤーを必ず利用しよう。
- ポイント4・熱収縮チューブを利用するときには、ライターではなく工業用ヒーターの利用がベスト。
電気系トラブルには様々な症状があるが、今回の修理ポイント「カプラの配線焼け」は、比較的起こりやすいトラブルのひとつである。発電機によって出力された交流電流が、レギュレーター・レクチファイアで直流化されて、バッテリーへ充電される途中で起こったトラブルである。具体的には、三相交流の立ち上がり配線の1本が焦げて焼けてしまったのだ。原付クラスから大型車まで、この発電機からの立ち上がり配線が焼け焦げるトラブルは数多い。ちなみにこのモデルの場合は、3箇所のコイルから交流50ボルト以上が出力され、それが直流化されてレギュレーターで電圧制御されている。
一般的に、直流12ボルト車の場合は、エンジン始動前は12.4ボルト前後のバッテリー端子電圧。エンジン始動後のアイドリング時には12.6~12.8ボルト前後に上昇し(バッテリーコンディションやレギュレーターの設定によって異なる)、エンジン回転を高めるとさらに高い直流ボルトになる。仮に、バッテリーが弱っているときには、直流14.5ボルト近くまで充電電圧を高めることもある。
そんな発電機の立ち上がり配線は、高電流ということもあり、トラブルを起こしやすい部分でもあるのだ。
何故、カブラ部分で「トラブルが起こりやすい」のか? スムーズに流れていた電気は、配線の接続部分で流れに変化が起こりやすい。その原因はズバリ、接触部分の汚れや腐食や異物の混入である。これらの原因で電気の流れが悪くなるのと同時に熱を持ち、周囲にダメージを与えてしまうのだ。
洗車後の拭き上げ時に、カプラの変色に気がついた今回。端子の接触部分が汚れ、熱を発してトラブルを起こしたのだろう。トラブルに気がつかないでいると、関連ハーネスすべての交換や発電機のパンク、最悪で、ハーネス発火などのトラブルも考えられる。
実は「雨天走行」が原因のケースもある。高年式モデルには防水カプラが採用されているが、旧車ではギボシ端子やカプラ接続が当たり前。そんな接続部分に雨水が溜まって汚れとなったのだろう。洗車後は、外装パーツを取り外し、ハーネスやカプラ確認しながらウエスで拭き上げ、それと同時にカプラを抜き取り、「フゥーッ!!」と強く息を吹き付け、カプラを抜き差しするだけでもこのような腐食トラブルを回避できる。理想的には、雨天走行後や洗車後のハーネスカプラに向けてエアーガンで圧縮エアーを吹き付けるのが良い。汚れを見つけたら接点復活スプレーケミカルを利用するのも良いだろう。こんなメンテナンスこそ「転ばぬ先の杖」となるのだ。
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