エンジンの回し過ぎでピストンが焼き付いたり、ダキついたりしてしまうことがあるが、その一方で、日常点検(オイル管理忘れ)やメンテナンスを怠ったことで、焼き付きやダキツキが発生してしまうこともある。そんなトラブル時には、ピストン交換やシリンダーのリフレッシュが必要不可欠になる。そんなエンジン修理=内燃機加工のひとつに「ボーリング」や「ホーニング」があるが、ここでは、どのような作業が行われるのか解説しよう。
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ボーリング作業とホーニング作業はまったく別工程で行われる

025OSとか050OSと呼ばれるのは、ピストンのボアサイズが0.25ミリや0.50ミリ、大きなオーバーサイズ (OS)であることを示す。ボーリング作業とは、ボーリング専用機や縦型加工マシンのベッドに固定したシリンダーを、ボーリングカッターで切削拡大する作業を表す。激しいサビや焼き付き痕が深いと、例えば0.25ミリや0.50ミリ、ボア拡大したところで、サビやギス痕を削り落とせないこともある。このボーリング段階で、正確なオーバーサイズピストンをチョイスすることができる。

ボーリングを終えた4スト単気筒エンジンのシリンダー。サビが酷く、深くまで食い込んでいて、当初ユーザーが用意していた0.25ミリのオーバーサイズピストンではサビ痕を消せなかった。そこで、サビ痕が消えるまでボーリングを進めて行ったら、何と、標準ボア(STD)から1.00ミリを超えたところで、ようやくサビ痕を消すことができた。純正オーバーサイズビストンの最大サイズを超えるため、ここでは社外ピストンキットの1.25ミリオーバーサイズを手配し直し、ボーリング作業を進行して頂いた。
「ボーリング=切削」→「ホーニング=磨き仕上げ」の作業工程

潤滑油を流し込みながら、シリンダー内壁を真円かつ高い直進度で仕上げる。この作業が「ホーニング」と呼ばれるものだ。専用のホーニング砥石を回転させながら、しかも適正圧力を掛けつつ、シリンダー内径内壁を精密に磨いて仕上げる。

イラスト左が、ボーリング=内壁を拡大する作業工程。イラスト中が、粗目の砥石で深いクロスハッチを付けながらシリンダー内壁を磨く下仕上げ。イラスト右が、仕上げ用の細目砥石で圧力を掛けながら指定された仕上げ寸法に精密に仕上げている。この2段階仕上げが「プラトーホーニング」と呼ばれる、慣らし運転が不要な高精密ホーニングだ。
深いクロスハッチが潤滑オイルの溜まり溝となるプラトーホーニング

プラトー=高原と呼ばれるのは、山岳地帯にある広い平原を意味し、周囲やところどころにある谷をオイル溜まりとしてイメージする技術名称である。一般的なホーニングではクロスハッチが一定範囲の深さなので、ナラシ運転によって内壁をある程度平面にすることが必要になる。一方、プラトーホーニング仕上げなら、ナラシ後の内壁面を機械的に作り上げるので、シリンダーとしてのナラシ運転は不要と解釈される。

プラトー仕上げになっているか否かを目視確認するために利用するのが面粗度計だ(ひとつ前の画像が面粗度測定中)。シリンダー内壁の仕上げ状況をグラフに表すことで、目視確認が可能になる。このデータはプリントアウトすることもできる。
シリンダーによって使い分けられるホーニング砥石
撮影取材協力/iB井上ボーリング www.ibg.co.jp
- ポイント1・ピストン×シリンダーの焼き付き時に行われる内燃機作業がボーリングだが、そこには様々なノウハウがある
- ポイント2・ボーリング+ホーニングを作業依頼する時には、ピストンクリアランスを指定しよう
- ポイント3・トラブルに遭遇した時には、ベテラン経験者にまずは相談し、意見を聞いてみよう
シリンダーの焼き付きやピストンのダキツキが発生したら部品交換を行うが、そんな作業時に頼りになるのが、内燃機加工のプロショップ=通称「ボーリング屋」さんである。ボーリング屋さんと呼ばれるように、新たに組み込むピストンに合わせてシリンダーを拡大加工するのが内燃機加工のプロショップである。業者の方にお話しを伺うと、さすがにボーリング仕上げの依頼が圧倒多数だが、それと同時に数多くの依頼があるのが、シリンダーヘッド関連の部品加工である。擦り減って楕円に摩耗したバルブガイドの新規製作入れ換えやアタリが悪くなり摩耗した吸排気バルブのフェースの研磨仕上げ。バルブシートのカットと擦り合わせ。シートカットができないほど摩耗しているバルブシートは、製作入れ換えが必要など、シリンダーヘッド関連だけでもオーダーの依頼は多い。
ひとことで「ボーリング」と言っても、そこには様々なノウハウがあり、オーバーサイズピストンの有無にも関心が高い。オーバーサイズを超えるボアでも、モデルによっては社外ピストンキットがある。以前はメーカー純正補修ピストンとして、STDサイズに始まり、025/050/075/100OSがあり、バイクメーカーによってはSTD/050/100の3サイズのケースもあった。しかし現在では、メーカー純正でオーバーサイズピストンがラインナップされている例はごく稀で、分解補修したいときには、ピストンとシリンダーの双方を新品部品に交換するといった考え方だ。だからこそ、社外ピストンキットメーカーの商品に対する需要が高まるのだ。
ここでは、そのボーリング作業に関するあれこれを写真解説しているが、摺動するピストンとシリンダー間の「ピストンクリアランス数値」の指定は、作業依頼者自身がエンジンの使い方に合わせて数値指定するものだと知っておこう。一般ユースの街乗り車なら、メーカー発行のサービスマニュアルを参考にクリアランス数値を決めれば良い。よくわからない時には、内燃機業者に相談すれば良いだろう。いずれにしても、ひとことにボーリングと言っても、実際にはボーリング加工とホーニング仕上げがあって、それぞれに様々なノウハウがある。レーシングエンジンチューナーは、そんなノウハウを状況に応じて使い、高出力エンジン作りを創造しているのだ。
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