エンジンで発生する熱を冷却水に伝えて、ラジエターで放熱させるのが水冷エンジンの冷却の原理です。

空冷に比べて夏場の冷却に有利なだけでなく、サーモスタットの働きにより冬季の暖機時間を短縮できる利点があります。

そんな水冷エンジンの冷却経路にはロングライフクーラント(LLC)を入れるのが前提ですが、ついつい面倒で水道水を入れたことはありませんか?
一度きりなら大丈夫ですが、水道水ばかりを使い続けると深刻な問題が生じることがあるので注意が必要です。

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ロングライフクーラントには冷却効果以外にいくつもの役目がある

水温計が水冷エンジンのコンディションを把握するための必需品だったのは過去の話。
冷間時のみ青色のインジケーターが表示され、消灯することで水温が適温になったことを知らせるパターンもあり、水温計を持たないバイクも多い。

水冷エンジンの冷却媒体として重要な役目を担っているのがロングライフクーラントです。
頭文字を取ってLLCと略されるこの液体は、昭和の時代には不凍液とも呼ばれていました。

水道水を筆頭にして、いわゆる一般的な水の凝固点は0℃で、それ以下になると凍結が始まります。
水が氷になる過程で体積は約10%増加するので、ラジエターやシリンダー内部で水が凍ってしまうと膨張した体積の逃げ場が無くなり、エンジンにダメージを与える可能性があります。

LLCの主成分であるエチレングリコールは、水道水と混ぜることで凝固点を下げる能力があり、そのためラジエター液を凍らせない=不凍液と呼ばれていたのです。
希釈タイプのLLCは水の割合によって凍結温度を調整できるので、本州から北海道まで幅広い地域で使用できます。

そしてLLCには防錆や消泡、冷却性能向上など、冬季の凍結防止以外にもいくつかの役割があります。
中でも重要なのが防錆能力です。
クランクケースやシリンダーなどエンジンの骨格ともいえる主要部分はアルミ合金で作られており、水道水に触れていてもそう簡単には錆びません。
しかしエンジンに鋳込まれた冷却水パイプやシリンダーに圧入された鋳鉄製のスリーブは、水に触れた状態で温度上昇を降下を繰り返すことで錆びやすくなります。
LLCの防錆効果はそうした場面で効果を発揮します。

またラジエターで温度が下がった冷却水がウォーターポンプでエンジンに圧送される際、ウォーターポンプの羽根(インペラ)部分で気泡が発生します。
これはキャビテーションと呼ばれる物理現象で、発生した気泡はLLCの吐出量を低下させるのと同時に、インペラを破損する原因となります。

そこでLLCには、高速でインペラが回転しても泡の発生を抑制する消泡成分が含まれています。
ちなみに消泡成分はストロークによって泡立ちやすいフォークオイルにも含まれています。

ワイズギアが販売するヤマルーブロングライフクーラントは、高純度のエチレングリコールに各種金属に対して防錆効果を発揮する添加剤を加えた不凍液。
このLLCと水を50対50で混合することで、凍結温度はマイナス36℃になる。
POINT

  • ポイント1・LLCは水の凝固点を0℃以下に下げるために有効だが、それ以外にも効果効能がある
  • ポイント2・水は凍ることで体積が膨張してエンジンにダメージを与える可能性がある

冬でも氷点下にならない地方で水道水を入れ続けるとどうなるか

冷却水の交換時はドレンボルトから抜くだけでなく、冷却系統に水道水を圧送することで水あかを洗浄できる。
汚れが溜まっている時は、冷却経路を循環させながら汚れを落とすラジエターフラッシュと呼ばれるケミカルを使うのも効果的だ。

カウルやマフラーなど純正部品がすべて揃った稀少なカワサキGPZ400R。
一時期の絶版車はカスタムの対象だったが、現在では新車当時の雰囲気を持つスタンダードスタイルが好まれるようだ。

夏場にオーバーヒート気味になったり氷点下で凍結すれば一目瞭然ですが、そうした変化は起こりづらくなかなか分かりづらいのが冷却水の性能低下です。
それでもLLCの防錆能力や消泡性能は主成分や添加剤によるものなので、定期的な交換が推奨されています。

現在のLLCは以前よりも使用期間が大幅に長くなり、ヤマハのある機種では新車から5年目とその後2年に一度と指定されています。

冷却水を交換する場合、ウォーターポンプのカバーやその近辺にあるドレンボルトから古い冷却水を抜き、ラジエターやエンジン内部の冷却経路を水道水で洗うか、ラジエター洗浄剤を使ってクリーニングした後に、水道水とLLCを混合した冷却水を補充します。

しかし先述の通り、冷却水にLLCを使うのは凝固点を0℃よりも下げることが大きな目的であり、真冬でも気温が0℃以下に下がることがない地方であれば、LLCを使わず水道水だけを満たせば用は足りると考える人がいても不思議ではありません。

しかし水道水だけを冷却水として使い続ければ、当然のことながら防錆能力はゼロなので、エンジン内部が錆びることがあります。
ここで紹介する画像はLLCを使わず水道水だけを入れた後、数年間にわたって放置されたカワサキGPZ400Rのウォーターポンプです。

車体全体の印象は悪くなく、エンジン外観も比較的きれいにもかかわらず、ポンプ内部はひどいありさまです。
この状態でラジエターに水を入れて再びエンジンを始動すれば、赤茶色の錆び水が循環してインペラのシャフトを盛大に傷つけてしまうかもしれません。
またはこのスラッジがラジエターのパイプに詰まって冷却性能が著しく低下するかもしれません。

水道水を注入してはいけないとはいえ、LLC抜きの水道水でここまで錆びるのはそれなりに長い期間が必要です。
たまたまLLCが手元にない状態で水道水だけ注入して忘れてしまったのか、大丈夫だろうと高をくくったのかは分かりませんが、鋳鉄製のスリーブにLLC抜きの水道水が触れているとこのようになる可能性があるという一例です。

絶版車になるとウォーターポンプがもちろんラジエターやラジエターホースも販売終了となることが多いので、オークションや個人売買で入手したバイクの冷却系がこんな状態になっていたら目も当てられません。

冷却水のドレンボルトを開けるのが難しい場合、リザーブタンク内の冷却水の色やタンク内側の変色具合がヒントになる場合もあります。
ラジエターとつながったリザーブタンクは冷却水の温度変化による体積膨張と収縮に連動して増減します。
意図的にリザーブタンク内だけLLCを入れない限り、ラジエターとリザーブタンクの内容物は同じになるはずです。
つまりリザーブタンク内が単なる水あかと異なる様子で茶色く濁っている場合、エンジン内部の冷却水にサビが混ざっている可能性があるわけです。

GPZ400Rの純正ラジエターリザーブタンクはアンダーカウル内側の先端にあるので、アンダーカウルが残っている場合はフロントタイヤの奥を除いてみましょう。
GPZに限らず他のほとんどの機種でも、リザーブタンクはカウルやサイドカバーを外さず確認できるので、保管期間が長いバイクはチェックしてみましょう。

ラジエターのリザーブタンクはアンダーカウルの先端にある。
GPZの現役当時はマフラー交換と合わせてカウルを外すカスタムが流行ったが、その場合はどこか別の場所に移植していたのだろうか? 先端ののぞき窓から見えるリザーブタンクの内側が茶色に変色していたら水道水だけで走っていた可能性がある。
POINT

  • ポイント1・ラジエターに水だけを入れていると、遅かれ早かれ内部からサビが発生する
  • ポイント2・リザーブタンクの状態によって冷却系統のコンディションが推測できる

冷却水はやっぱりLLCに限る

ウォーターポンプカバーを外すとインペラが崩壊しそうなほど真っ赤に錆び付いていた。
このバイクは長期間保管していたもので、昨日まで走っていたというわけではない。
また冷却水が満水だったわけでもなく、中途半端に空気に触れていたせいで腐食が進行したらしい。
そうであったとしても、LLCが入っていればこれほどひどくはならなかったはず。
「面倒だから」と水道水だけをいれていると痛い目に遭うので気をつけたい。

水道水で赤さびにまみれた冷却系統を完全に洗浄するのはなかなか難しいことです。
ラジエターやホース、サーモスタットなどをすべて取り外して流水で洗えば表面の浮きサビは流れますが、スリーブやアルミのシリンダーやゴムホースに食い込んだサビは簡単には剥がれません。

高圧洗浄機やキッチン用の発泡洗浄剤が有効だったという事例もあるようですが、すべてのサビに効果があるわけではないので万能とはいえません。
ウォーターポンプは機種ごとにデザインや駆動部分の設計が異なるため、簡単に多機種用部品を流用できるとも限りません。

こうしたトラブルを避ける最善の方法としては、冷却水にはLLCを使うというより他はありません。
メーカー純正でも用品メーカーの製品でも防錆成分は含まれているので、冷却水を交換する際は必ずLLCを水で希釈して使用します。
さらに希釈する水は水道水が適しています。
ペットボトルの水を買って使う場合は、成分中のマグネシウムやカルシウムなどが析出する可能性がある硬水ではなく、軟水を選ぶようにします。

リザーブタンクの残量が少なくなっているのに気がついて、一時的に補充するだけなら水道水でもかまいませんが、冷却系統の性能維持を考えるならLLCが最適であることは間違いありません。

POINT

  • ポイント1・一度錆びた冷却系統をクリーニングするのは難しい
  • ポイント2・ペットボトルの水で希釈する場合は硬水ではなく軟水を使用する

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