倉庫の奥の奥に何十年間も放置され続けてきたスーパーカブを発掘。コンディションを整え、走れるように仕上げようと考えたのが事の始まりだった。エンジンは完全にサビ付き、キックすら降りない最悪のコンディション。しかし、熱意を持って取り組めば、このような個体でも何とかなってしまうもの? である。
もっとも重要なのが、バイクいじりに対する熱意である。エンジン載せ替えなど、安易な方法はとらず、徹底的に現状再生で復活させることにしたのが、このスーパーカブC100の1960年後期型である。

1958年(昭和33年)の生産開始から2020年で生誕62年目に突入したホンダスーパーカプ。基本デザインやコンセプトを変えずに、様々なモデル変遷があることで知られるのが初代シリーズである。さすがに現行モデルと初代シリーズモデルの各部を比較すると、その仕様は相当に異なっている。そんなディテイル比較が楽しくて、旧型スーパーカブを愛するファンが年々増えているのは、確かな事実である。
また、ライダー自身の「生誕年モデル」を見つけて、直して、乗る!! といった楽しみ方ができるのも、おっさんライダーにとっても数少ないモデル。その代表がスーパーカブと言うことができるだろう。ここでは電気系、人間に例えれば「血管」でもある電装ハーネスのリフレッシュにチャレンジしてみよう。

ハーネス自体の劣化よりも端子接続部に要注意!!


旧車の修理再生やレストアの際に鬼門となるのが電気系である。各機能が満足な働きをするのは当然だが、そんな働きや電気信号を伝えるのがメインハーネスの役割である。

ここでは、車体の分解と同時にメインハーネスのコンディションを確認するために、ハーネスを保護するビニールテープをすべて剥がし、内部のコード1本1本、すべてのコンディションを、見て、触れて、確認してみた。


ギボシ端子のメス側保護には透明ビニールチューブが使われ、コードの各色被服と熱圧着されている。当然ながらすべてカチカチに硬化していて、端子の抜き差しが容易な状況ではない。そこで、刃先が鋭い解剖用ハサミを用意して、熱圧着部分に切り込みを入れ、すべての透明ビニールチューブを除去。メス側純正ギボシ端子のコンディションは良く、そのまま使ってもまったく問題なさそうだった。

ビニールチューブをホームセンターで購入


仮に、メスギボシ端子の腐食や焼けダメージがひどくて再利用できないようなら、カシメ端末部分からカットして、コード被服をストリッパーで剥がして新しい保護チューブを差し込み、それから新しいメスギボシ端子をカシメれば、それでも良い。しかし、今回は、当時(1960年生産型のスーパーカブ)の部品コンディションがあまりにも良いので、メスギボシを生かして保護チューブのみ交換した。ビニールチューブを旧保護カバーと同寸にカットし、ギボシに差し込み、コード側のチューブ端末とコード被服をクリア接着剤で固定(セメダインスーパーXのクリアを利用)した。コードと保護チューブ内は、アセトン+綿棒でしっかり脱脂してから接着固定するのが良い。

バルブ金具は汎用部品を利用して補修


「マルエムブルー」と呼ばれるペイント色は工場出荷当時のまま。敢えて塗り直しはしたくなかった。しかしエンジンは、まったく動かない完全固着のため、完全オーバーホールを実施。エンジン関連部品のみ再ペイントで化粧直し。さらに各種ボルトや金属の「ユニクロメッキ」仕上げ部品は、すべて再ユニクロメッキで仕上げることにした。ウインカーのベース金具も配線の組み込みを分解してから磨いて再ユニクロメッキ処理に依頼。小型豆電球タイプのバルブ接点は、バルブ取り付け時にグイッと押し付けると座のベーク板が割れてしまうことが多いため、現代の接点部品と交換。こんなに小さな部品交換と気配りで、電気トラブル=導通不良は回避できるのだ。

完全バラバラ+単品部品の磨き込みだけで蘇る!?


旧車のレストアには技術を要する。わからない部分は無理矢理作業を進行するのではなく、経験豊富な先輩達にお話しを聴くことで、何らかのヒントを得ることができるはずだ。このように、決して美しくはなかったボディでも、各部を分解して、しっかり磨いて組み立て直した。サビが酷いボディパーツは、塗装に影響を与えない、サビとりケミカルを使って可能な限りサビ除去。さらに同色のペイントを用意して、そのサビ部分をメインにペイントした。ハケ塗りでも大丈夫だが、一気に塗らず、うっすら塗りの繰り返しが良い。スプレーガンを利用するときも、薄く薄く吹き付けるのがコツである。そのように進めたボディパーツを組み込んでいけば、徐々にお気に入りのバイクが完成する。原付クラスは、レストア入門にも最適である。

POINT

  • ポイント1:ベース車を分解するときには、安易にボルトやナットは緩めず、作業数日前に防錆浸透スプレーをあらかじめ吹き付けておくのがコツ。
  • ポイント2:ハーネスのコンディションは、保護チューブやテープを剥がさないとわからない。
  • ポイント3:ギボシ端子にダメージが無いときには、カチカチに硬化した透明保護チューブだけを交換しよう。

超性能なニューモデルは魅力的だ。特に、ここ数年、日本のバイクメーカーは、以前の自主規制が何だったのか? 眼を疑うほど高性能かつ魅力的なモデルを数多く発表している。そろそろ本気になってくれないと、バイク一筋で生きてきた我々ライダーやサンデーメカニックには、それこそ辛いものがある。だからこの魅力的なバイクの登場傾向は、頭の中をリフレッシュする意味でも素晴らしいことだろう。

その一方で、旧車にはやはり味わい深い魅力がある。ここに紹介するスーパーカブは、30数年間、ガレージの奥の奥にしまい込まれていた個体だ。何らかのトラブルもしくは整備の途中で放置された形跡がある完全な「不動車」だった。
ピストンリングとシリンダーはサビで完全に固着。キックはビクともしなかった。しかし、ニュートラルにするとギヤは回るし、オイルフィラーから覗き込むとミッションパーツはオイルに浸って輝いていた。
そんなコンディションだったのと、このモデルが初期シリーズのOHVエンジンモデルでも珍しいタイプだったので、カスタマイズではなく、普通に走れる美しい姿に戻してあげたいと考えた。

フルレストアで美しく仕上げるのではなく、当時の塗色や雰囲気を残して仕上げるにしても、車体の全バラシは必要不可欠である。なかなか分解できない部分への注油やグリスアップを考えても、完全バラバラ後の組み立て作業は、基本中の基本である。
そんな分解作業時なら当然だが、通常の旧車メンテナンスでも気を配りたいのがメインハーネスや各種スイッチハーネスのコンディションである。特に、メインハーネスは見た目云々ではなく、配線そのもののコンディションが重要になる。新品部品や代替え部品に交換するのならそれで良いが、今回は、使えるものは再利用し、年代にそぐわしい雰囲気や仕上がりにすることも考えていた。
そんな旧メインハーネスはテープ巻による仕上げだったので、古いテープを剥がしてコードをムキ出しにした。分岐点となる場所はタイラップや新しいビニールテープでマーキング固定し、露出した配線コードは、一本一本、目視&指先で点検してみた。

保護チューブでカバーされていたり、保護テープに巻かれていると内部状況を判断できないが、コードが露出すると各部のコンディションは理解しやすくなる。特に、要チェックなのがステアリングの作動部分やハンドルスイッチ回りのコンディションである。ステアリング周りにレイアウトされるハーネスは、引っ張られていることがあり、コードがのびていたり、部品に挟まれてダメージ(折れ目や押され痕)があることも多い。そんなコンディションを目視と指先で発見し、必要に応じてハーネス補修。短くなってしまう際には、同色ハーネスで延長するなどの修理を行おう。

ギボシ端子の透明チューブカバーは、劣化や硬化でカチカチになっているのが当たり前。今回はすべて交換した。メーカー純正ギボシ端子は、カシメが確実に行われているので、端子に目立ったダメージが無い場合は、今回のような方法で透明チューブのみ交換するのがお勧めである。
透明チューブは端子の太さに合わせてホームセンターで購入。旧保護チューブと同じ長さにカット。あとは端子に被せてコード側の端部とコード被服を接着剤で固定するのだが、その作業前に接着剤の反応が良くなるように、保護チューブ端部の内側を綿棒で、端子カシメ部からコード被服をウエスで、それぞれに脱脂能力が高いアセトンを染み込ませて拭き取るのが良い。
接着剤は、セメダイン製スーパーXのクリア。脱脂状況が良ければ、しっかり接着でき、確実にギボシ接続部分を保護することができるはずだ。

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