
「シールドビーム」とは、読んで字の如くヘッドライト本体が「発光バルブと一体化された部品」で、バルブだけを交換できないのが大きな特徴だ。つまりフィラメントが切れたら本体ごと交換しなくてはいけない部品なのだ。ここでは、バルブ切れで廃品になったシールドビームをベースに「バルブ交換式ヘッドライト」へ改造してみよう。
旧式シールドビームのままユーザー車検にチャレンジしたところ「光量不足」と判定され、継続車検をパスできなかった…… といった経験のあるサンデーメカニックは数多いはず? バルブではなく、配線回路に問題がある場合は「ヘッドライトブースターキット」を取り付けることで、光量回復することもある。
しかし、シールドビーム自体の劣化で光量低下しているケースも多々あるので要注意だ。ここでは、バルブ切れで廃棄されるシールドビームボディを改造することで、ヘッドライトを明るく、また、光軸が出るものなのか? チャレンジしてみた。
バルブ交換できるヘッドライトが羨ましい!!
現代のバイクではなかなか見られない光景だろう。80年代前半以前のバイクでは、シールドビーム式とバルブ交換式の2タイプがあり、輸出先派生や国内向けなどで分けて採用されていた。
シールドビーム用として開発されたガラスレンズをそのまま使い「バルブ交換式」で販売された国内仕様のヘッドライトボディもあった。一般的にアメリカ仕様はシールドビーム式が多く、ヨーロッパ仕様は、バルブ交換式(しかもユーロ球と呼ばれる専用規格品のバルブ)が多かった。
シールドビームバルブとバルブ交換式ヘッドライトを比較すると、交換式にはバルブの位置決めとなる切り欠きがあった。そこで、その切り欠きを基準にエンピツ石刷りで穴形状を複写し、シールドビームボディのキリ抜き加工にチャレンジしてみた。
バルブ交換式の国内ボディ廃棄品を利用!?
北米輸出仕様の500SSマッハⅢ用シールドビームを改造し、国内仕様のバルブ交換式へと変更したのがこのチャレンジだった。捨てられていたサビサビ国内仕様のヘッドライトボディをカットし、バルブソケットのセット部(穴部分)をシールドビームに被せて形状を複写。金尺でセンタリング確認しながら位置を決め、薄い紙の両面テープでテンプレートとなるカットボディを固定。ソケット部の切り欠き形状を模してマーキングし、TOP位置のケガキ線と小さな切り込み部分を一直線で合わせた。
マーキングに合せて細いキリでボディに穴開け。さらにリューターや精密ヤスリでバルブソケットホルダー形状に合わせて仕上げ削りを行った。シールドビームには2タイプあり、ガラスボディ内部全体に窒素ガスを封じ込めた完全シールド仕様と薄いガラス球がフィラメントを覆う仕様の2タイプがある。ガラス球やフィラメントは棒で突いて割り砕いた。
単純に発光していれば良いという訳ではないのがヘッドライトである。明るさも大切だが、その「光軸」が何よりも重要なことは、過去にユーザー車検のヘッドライト検査で不合格になった経験があるものなら、誰にも御理解頂けると思う。車両のヘッドライト取り付け位置に対して、定められた位置に光軸が無くてはいけないし、定められた値よりも明るく照らさなくてはいけない。光量不足を指摘され、検査ラインで空吹かしを繰り返し、ヘッドライト光量を稼ぐ例を過去に何度も見たことがあるが、光量に関しては、ロスの少ない配線の取り回しで改善できることが多い。バッテリー電力をダイレクトにヘッドライトバルブへ送り込む「リレーキット(ブースターキット)」はありがたい存在だ。
しかし、今回のヘッドライト改造では、そんな明るさよりも気になるのが「集光=光軸」が出るか否かである。バルブの取り付け位置や角度が変わることで、光軸が出ず、光が拡散してしまう可能性も多々考えられるのだ。
バルブ交換式なら「高性能バルブ」が使える!!
ヘッドライトの点灯テストを実施。標準バルブではなく、MHマツシマ製の型番PH8バルブがソケット形状と合致したので使ってみた。MH製はハイワッテージバルブ仕様で、以前のシールドビームと比べてその明るさは圧倒的!! 車検場へ持ち込む際に、予備検査をテスター屋さんで行ったら、ラッキーなことに光軸もOK!! もちろん光量は余裕でOK!! 加工で失敗すると車検にパスできなくなる。
- ポイント1・当たって砕けろ!? なバイクいじり&メンテナンスもある。今回はバルブ切れの廃品利用で大成功!!
- ポイント2・ソケットホルダの形状複写はしっかり慎重に。不要ボディを複写元にできれば作業性は圧倒的に向上する。
- ポイント3・通常ワットのバルブ球ではなく、社外バルブにはハイワッテージ球があるので利用するのが良い。
バルブ交換できないシールドビームが山積みになっている光景、旧車専門店の整備スペースの棚で、見たことがありませんか? シビエやマーシャルは、おしゃれで魅力的。しかし、昔ながらのノーマルレンズカットにこだわりたい方、意外と多いのが事実で、近年のトレンドともなっているようだ。ユーザー車検時の光量不足や光軸調整は、サンデーメカニックにとってはまさに「鬼門」。光軸や光量がらみで、継続車検を一発パスできなかったサンメカも数多いはずだ。
カスタム車ならシビエやマーシャルが似合うが、純正スタイル至上主義!? の旧車ファンにとっては、メーカー純正部品のヘッドライトのデザインが良く、固執している者も少なからずいる。ヘッドライトは、明るさと光軸が国内基準に合致していれば良いが、右側通行用ヘッドライトは光軸が違うため、車検にはパスできない。ここでトライしているのは、バルブ切れで廃品になった「シールドビーム」をベース部品に、ランプソケットを取り付けられるように改造。つまり「バルブ交換式」を目指しているのだ。さらにハイワッテージ仕様の社外高性能バルブを組み込むことで、ヘッドライトの明るさを向上させたいと考えたのだ。
バッテリー電圧をダイレクトに入力できるブースターリレーを取り付ければ、旧式のシールドビームでも確実に明るくなる。何故、旧式ヘッドライトバルブが暗いのか? それは、バルブそのもの以上に、電気が流れる「ハーネス劣化」によるところが大きい。しかし、高性能バルブを利用できれば、より明るくなり夜間の安全性も高まる。
ここでは、バルブが切れてしまい、ゴミ同然(完全なゴミ)のシールドビームをベースに、バルブ交換可能なボディに改造してみた。何故なら、バルブ交換タイプのヘッドライトなのに、ガラスレンズには「シールドビーム」と明記されたパーツがあったからだ。そのパーツを見て、もしかしたら…… と思ったのである。
実は、経験豊富な旧車専門店の中には、このような策で車検対応している例が多いそうだ。メーカー純正指定バルブにこだわることなく、量販店で購入できる「高性能ハイワッテージバルブ」をチョイスしたことで、その明るさは、シールドビームを遙かに凌ぐものとなり大満足の結果だった。
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