重すぎず軽すぎず、ましてや打痕や傷があるのはもってのほか。グリスアップにもひと手間もふた手間も掛かりますが、バイクの操縦性を左右するステアリングステムベアリングのメンテナンスは重要です。いざベアリング交換を行うとなると、フレーム側のアウターレースとステアリングステムのインナーレースの双方の組み付けに気をつけなくてはなりません。ここではテーパーローラーベアリングのインナーレースをステアリングステムに圧入する際に便利なインストーラーを紹介します。

不具合が日常!?になっていることもあるステムベアリング

カウル付きのバイクの場合(画像はGPZ900Rニンジャ)ステアリングステムを単品にする際もカウルを取り外した方が作業が容易になる。その上でブレーキとホイール、フェンダー、フロントフォークなどの周辺部品を取り外す。作業前にエンジン下部をジャッキで持ち上げるなどの準備も必要で、誰もが容易にできる作業とはいえない。

トップブリッジとロアブラケットを取り外すと、ようやくフレームにヘッドパイプに圧入されたステムベアリングのアウターレースを確認できる。ローラーとの接触痕が筋状に見えるが、爪が引っ掛かるような打痕ほどひどい状態ではない。テーパーローラーベアリングはアウターレースとインナーレースが分割できるが、交換する場合はアウターとインの両方セットで新品にする。

バイクのメンテナンスに興味や関心があれば、空気圧が低下したタイヤや油分が切れたチェーンで走っているバイクを見て「なんでそんなことに気づかないのかなぁ」という経験は一度や二度ではないはず。人の振り見て我が振り直せの言葉通り「そういえば自分のバイクはどうだっけ」と確認するライダーもいることでしょう。
そんなメンテナンス好きでも手を出しづらいのがステアリングステムベアリングでしょう。走行中にハンドルが取られたり、ハンドルを左右に切ったときに感覚が異なるなど、明らかな不具合があれば別ですが、ベアリングに多少の傷や打痕があっても自覚していないパターンも少なくないようです。先のタイヤやチェーンと同じく、他人から指摘されることで「え、このハンドリングは変なの!?」と気づくこともあります。
前輪を浮かせてハンドルを左右にゆっくりフルロックさせて、どこか途中でカクッと引っ掛かるようならベアリングに異常がある証拠、といわれていますがサイドスタンドのみのバイクで前輪を浮かせるにはジャッキなどの工具が必要で、誰もが簡単にできるわけではありません。
ベアリングのコンディション確認だけでもひと手間掛かるのですから、いざ感触の悪さやベアリング交換となるとさらにハードルが上がります。面倒だからやらないという以前に、気になるけど工具や作業環境上できないという場合もあるでしょう。
とはいえ傷や打痕がついたベアリングが自然に直ることはないので、バイクショップに修理を依頼するか、あるいはベアリングの交換手順を知っておくことは有益です。

インナーレース取り外しは最悪の場合破壊してもOK

これは専用工具メーカーのテーパーローラーベアリングリムーバーツールの使用例。ベアリングサイズに適合したアタッチメントでインナーレース(リテーナー)をしっかり保持して、ステムシャフト上部に組んだフレームのボルトで引き上げる。ベアリングをしっかり保持できれば確実に取り外せるが、ロアブラケットの形状によってはリムーバーのアタッチメントとハンドルストッパーが干渉する可能性もゼロとは言い切れないので注意が必要だ。

専用工具を使えば、リテーナーを壊したりステムシャフトに傷をつけることなくインナーレースを取り外すことができる。

ステアリングステムベアリング交換では、古いベアリングを取り外す作業から面倒です。ここではステアリングステム(ロアブラケット)のステムシャフトに圧入されたロアインナーレースに注目して話を進めますが、シャフトの根元にがっちりはめ込まれたレースは簡単には抜けません。
車体剛性が高いスーパースポーツモデルはステアリングステムの造りも頑強で、タガネなどの打撃工具がインナーレースにうまく引っ掛からないことも多々あります。このような場面でロアブラケットとレースの僅かな隙間にタガネを突っ込んで隙間を広げようとすると、レースが傾いてステムシャフトに食い込みさらに面倒なことになりかねません。
汎用のギヤプーラーを流用したり、テーパーローラーベアリングの場合は専用工具のリムーバーを使えばステムシャフトに傷つけることなく無理なく引き抜くことができますが、いずれにしても工具代が必要です。
趣味のバイクユーザーがインナーレースを取り外す機会はそう多くはないでしょうから、わざわざ専用工具を購入するほどではない。そんな時はちょっと荒っぽい方法ですが、ディスクグラインダーでレースを切断してしまう手もあります。
カッティングディスクでレースを切断する際は、テーパーローラーを保持しているリテーナーを切断してインナーレースを露出させてから、ロアブラケットやステムシャフトを傷つけないよう慎重にレースを切断します。
一カ所でも切れればレースが広がってステムシャフトとの間に隙間ができるので、手で引き抜くことができます。取り外すインナーレースはどうせ再使用できないので、ステアリングステムを傷つけないことだけに細心の注意を払って作業を行いましょう。

使用済みベアリングが圧入用のコマに使えることもある

新品インナーレースをステムシャフトに圧入する工程では、ベアリングが傾かないよう注意しながら、ローラーベアリングを保持するリテーナーを傷つけないことも重要。取り外したインナーレースに切れ目を入れれば、リテーナーに触れることなく新品レースと突き合わせて圧入時に活用できる。ゴミだと思われるような部品も専用アタッチメントに早変わりする可能性がある。

リテーナーを傷つけるリスクがなければ、圧入も躊躇なく行える。アタッチメントに廃品のインナーチューブをかぶせて上からハンマーで叩き込む。軽いハンマーで何度も叩くより、ある程度重量のあるハンマーで力強く打ち込む方が結果的にスムーズに作業が進む。

ステムシャフトのインナーレースは外すだけでなく、組み付け作業もまた面倒です。長いステムシャフトが邪魔になり、ソケットレンチのコマで打ち込めるホイールベアリングのようにはいきません。またテーパーローラーベアリングのインナーレースには薄い板金部品のリテーナーが付いているので、叩きどころを誤ると新品ベアリングが使い物にならなくなることもあるので、慎重さが求められます。
ここで役に立つのが、先に取り外した古いベアリングのインナーレースです。インナーレースの外径はテーパー加工で一方が小さいので、小さい側を新たなベアリングに突き当てることでリテーナーに触れることはありません。
ベアリング同士を密着させた状態で、古いインナーレースを長い筒(ここでは廃品のインナーチューブ)で叩いて圧入すれば、新品インナーレースやステムシャフトを傷つけるリスクが低い状態で組み付けることができます。

専用工具を使えばミスなくスムーズに組み付けできる

アストロプロダクツで販売しているベアリングレースハンマーセット。スチール製パイプのハンマーと、ベアリングの内径と当たる部分のサイズが異なる3種類のアルミ製アタッチメントのセットで税込7689円。

アタッチメント黒の適用径(ベアリング接触部分)はφ32mm、金はφ35mm、赤はφ44mm。圧入するベアリングのサイズに応じて使い分ける。

画像のベアリングの場合、黒のアタッチメントを使用することでリテーナーとの接触を避けつつインナーレースを圧入できる。こうした専用工具を使用するのが理想で、古いインナーレースをコマにするのが次善策。どれだけ注意してもインナーレースが傾くリスクがあるので、細い平ポンチや貫通マイナスドライバーで全周を少しずつ叩いて圧入することは避けるべきだ。

アストロプロダクツのベアリングレースハンマーセットのハンマー(スチール製パイプ)の上部打撃部分にはテーパー形状のキャップがあり、ここを叩くことでアタッチメント全周に均等な力が加わり、インナーレース傾斜圧入のリスクを軽減できる。

バイクメーカーは自社製品の整備に必要な専用工具を独自に設定しています。その中にはステムベアリングのインナーレース圧入工具もありますが、専用工具というだけあって汎用性が高いとは言えません。
これに対して、専用工具でありながら汎用性を併せ持つのがアストロプロダクツが販売しているベアリングレースハンマーセットです。
この工具はステムシャフトにすっぽりかぶせることができるスチール製のパイプ(ハンマー)とベアリングに接触するアタッチメントの2ピース構造で、アタッチメントは外径が異なる3種類を用意することで汎用性を高めています。
3種類のアタッチメントはいずれも、リテーナーとの干渉を避けながらインナーレースに接触するようサイズ設定が行われ、汎用性が高いのが特長です。サイズが合えばテーパーローラーベアリングだけでなく、ボールベアリングタイプのステムベアリングレースの圧入にも使えます。
またスチール製パイプの打撃側にはテーパー形状のキャップが装着されており、ハンマーで叩く際にパイプの中心に力を加えることでアタッチメントの全周に均等な力が加わりやすい点も、インナーチューブを流用したインストーラーとの違いです。
ただ先述の通り、ステアリングステムはそれ自体を着脱するための工程や手間が掛かる作業です。前輪を浮かせてフロントフォークを着脱するには、それ相応の作業経験も必要です。その上で専用工具まで必要となるとハードルが高すぎると感じるライダーも多いかもしれませんが、使い勝手の良い工具を用意することで作業が正確かつスムーズに進むという面があることも知っておくことは重要です。

POINT

  • ポイント1・ステアリングステムベアリングはバイクの操縦性を左右する重要なパーツだが、グリスアップやベアリング交換は容易ではない
  • ポイント2・ステムシャフトに圧入されたインナーレースを取り外すには専用のプーラーを使う方法とディスクグラインダーで切断する方法がある
  • ポイント3・圧入が難しいインナーレースは専用工具によって正確に打ち込むことができる
GPZ900Rニンジャのステムベアリング交換のカギを握る作業で役に立つインストーラーの使い方 ギャラリーへ (10枚)

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