雌ネジを作るタップと雄ネジを作るダイスは、金属で一品モノのパーツを製作する際に不可欠なツールです。しかしこれらは工作に必要なだけでなく、ネジが傷んでスムーズに回らない時のネジ山修正などメンテナンスや修理でも重宝します。数千円で購入できるタップダイスセットを手元に用意しておくだけで、さらに高額なリペア費用を節約できることもあります。絶版車や旧車をいじる機会の多いライダーは、いざという時のためにも1セット用意しておくことをお勧めします。

タップダイスセットはメンテナンスや修理でも役に立つ

工具ショップのストレートが販売しているタップダイスセット。M5からM14サイズのセットで、そのうちM10 、M12、M14は並目と細目のピッチ違いが用意されている。

ビス留めやボルトナット固定など、バイク各部の締結部分に使われているさまざまな「ネジ」は、雄ネジと雌ネジの組み合わせで成り立っています。メンテナンスやレストア作業でネジを緩めたり締めたりする際には、ドライバーやスパナやソケットレンチのサイズに注目しがちですが、実際にはネジ部分が健全でなければうまく機能しません。

雄ネジも雌ネジも、そのサイズはネジ部の直径とネジ山のピッチによって決まっており、それらを製作するためにあるのがタップとダイスです。

中学校の技術家庭科の授業で習うこともあるタップは金属に雌ネジを作る工具で、ダイスは棒状の金属に雄ネジを作るための工具です。

バイク関連でいえば、ブレーキキャリパーサポート製作時にアルミ製の平板に雌ネジを作る際にタップを使用します。

ドリルで明けた貫通穴に雌ネジを作ったり、無垢の丸棒をボルトに加工するため雄ネジを作るなど、タップやダイスはゼロからネジを作る際に必要な工具であり、メンテナンスでボルトやビスを着脱する際に使うことはないと思うかもしれません。

ところが実際には、泥だらけのままで部品を着脱する際にネジに砂利が噛み込んだり、ナットやパーツに対してボルトが斜めになったまま工具で締め付けたり、着脱作業でネジ山を傷めることも少なくありません。

外してあったボルトの扱いが悪く、ネジ山の角が潰れた状態で締め込むことで、雌ネジが傷んでしまうこともあります。「ちょっと回りが渋いけど、工具を使えば締め切れるはず」と力任せに作業して、途中で締めも緩みもしなくなるのが最悪のパターンです。

タップやダイスはそうしたトラブルを未然に防ぐためにも有効です。ボルトでもナットでも、ネジを締める際は指で締められる間は工具を使わないのが基本です。ネジの入り口や途中で抵抗が大きくて指で回せない場合は、確実にネジ山に不具合があると考えて間違いありません。このような場合にボルトやビスであればダイスに通し、ナットや雌ネジならタップを立てることでネジ山を修正できます。

バイクには多様なサイズのボルトやナットが使用されています。タップやダイスはネジ径やピッチごとに1個ずつ購入することもできますが、いざという時に持ち合わせがなければ修理はできません。そのため、さまざまなサイズを詰め合わせたタップダイスセットを用意しておくことをお勧めします。

製品によって入組内容はまちまちですが、バイクや自動車系工具を取り扱うメーカーのセットなら使用頻度の高いサイズが揃っている場合が多いようです。

ボルトを交換する際はピッチ違いを選ばないよう要注意

ネジピッチの判断に迷ったときはピッチゲージで確定させることが重要。「だろう」「たぶん」は工具選択ミスの元であり、修正目的なのにさらにネジ山を破損させる原因となる。

ボルトナットやビスには、直径違いともにピッチ違いも存在します。例えばM6ボルトにはピッチ1.0mmの並目(標準ピッチ)と、それよりネジ山のピッチが細かい0.75mmの細目があります。

両者はネジ山の頂点の間隔(距離)が異なるため互換性はありません。

タップやダイスも同様です。細目のネジを修正する際に並目のタップやダイスを使えば、並目のネジができてしまいます。

ボルトやビスなどの雄ネジのピッチの確認は、ボルトとタップのネジ山を重ねてみれば一目で判別できます。ピッチが違えばネジ山が合わないからです。

その一方で、タップダイスセットによっては「ピッチゲージ」という測定道具が入っている場合があります。これはネジ山に使われているピッチばかりをノコギリの刃のように何枚も並べたもので、これをボルトやビスに当てることで、直径にかかわらずピッチを特定できます。

ピッチゲージでネジピッチが把握できれば、雄ネジ修正のためにダイスのサイズ選択ミスを防止できます。ナットや雌ネジを修正したいときも、その雌ネジの相手となるボルトのピッチを測定すれば、正しいタップで修正できます。

ピッチゲージは単品で購入できます。タップダイスセットに入っていない場合は別途購入して用意しておくことで、修理するつもりが余計に壊してしまったという余計なトラブルも回避できます。

ダイスがあればボルトやビスのネジ山を修正できる

ボルトやビスの雄ネジを修正する際に使用するのがダイス。ボルトのサイズに合ったダイスを選択してナットに通すようにねじ込めば、潰れたネジ山部分をダイスの刃がカットして修正する。ネジ径が細いナベ小ねじや通常の六角ボルトはダイスで切らずに新品に交換した方が良い場合もある。

ここまで説明した通り、タップやダイスは無垢の素材に雄ネジや雌ネジを作るだけでなく、ボルトやナットのネジ山を修正することもできます。というよりも、メンテナンスの現場ではむしろネジ山修正で使う機会の方が多いかもしれません。

先に説明したように、ボルトやナットは指で回せる間は工具を使わず締められるようできています。それにも関わらず締め始めから工具の力を借りなくてはならない場合、雄ネジか雌ネジのどちらかのネジ山が傷んでいると考えるのが妥当です。

タップやダイスの素材としては高速度鋼が主流で、これは鉄やステンレスや合金鋼を加工できるほど硬いため、潰れたネジ山を修正しながら新たなネジ山を作ることができます。ネジ山のダメージが軽度であれば、さほど力を入れなくても締め続けることができる場合もありますが、締め込むにつれてネジ山にストレスが加わりフリクションが大きくなり、そのうちかじって被害が拡大してしまいます。

そうなる前に、違和感を覚えたら一度取り外してタップやダイスで適切なネジ山修理を行ってから再度指でねじ込むようにしましょう。

ラチェットタップホルダでネジ穴作業の効率アップ

タップラチェットハンドルの一例。この製品はラチェット機構による正転と逆転に加えて、ギヤを固定したリジッド状態でも使用可能。

タップを取り付けるチャック部分とハンドルが離れているので、フラットなタップハンドルが干渉してしまうような場所でも連続的に回すことができる。

このような作業例では、フラットなタップハンドルが干渉して回せなくなるのは明らかだが、タップラチェットハンドルがあれば余裕で修正作業ができる。雌ネジがさまざまな場所にある修正作業では、このハンドル形状が重宝することが少なくない。

タップダイスセットを購入すると、タップやダイスを回す専用のハンドルが付属してきます。それらは昔ながらのフラットハンドルで、確かにネジを作ったり修正する作業に使えます。

しかしタップの場合、雌ネジのある場所によっては一文字形状のタップハンドルが干渉して使えないこともあります。

そのような場合に重宝するのがタップラチェットハンドルです。この工具はドリルのようにサイズが自由に変更できるチャック部分でタップをしっかりホールドした状態で、軸部に内蔵されたラチェット機構によってタップを連続的に回すことができるのが特長です。

ラチェットを回すハンドルはタップから遠く離れているため、通常のタップハンドルでは引っ掛かってしまうような穴の底にある雌ネジも修正することが可能です。またラチェット機構によってハンドル振り角を一定のまま回し続けることができるため、タップが斜めに傾きづらい利点もあります。

今回は紹介を割愛しますが、ダイス用にもラチェットハンドルやギヤレンチとの組み合わせで連続的に回すことができるホルダーがあります。
タップダイスセットを買っておけばそれだけで充分と思わず、作業効率をアップさせる周辺工具を用意しておくことで、万が一のネジトラブルに冷静かつ効率的に対応できることを知っておくと良いでしょう。

POINT

  • ポイント1・雄ネジを作るダイスと雌ネジを作るタップはDIYでパーツを制作する際の必須工具であると同時にネジ山修理にも大いに役立つ
  • ポイント2・ボルトやナット、ビスが指でスムーズにねじ込めない時は、無理に工具で締め続けるのではなく一度取り外してネジ山の状態を確認する
  • ポイント3・ネジ山修正を行う際はネジ径だけでなくネジピッチも確認した上で適切なタップやダイスを選択する
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