ディスクブレーキのローターには表面に穴が明いたドリルドタイプと穴のないソリッドタイプ、これに加えてまれにベンチレーテッドタイプもあります。スポーツモデルでポピュラーがドリルドディスクにはいくつものメリットがありますが、よく観察してみると思ったより摩耗が進行していたり汚れが溜まっていることがあります。ローターが汚れたままだと本来の性能を発揮できないこともあるので、定期的にチェックして洗浄しておきましょう
ローターに穴をあける穴いくつもの理由
ブレーキパッドやキャリパーは定期的なメンテナンスでコンディションを維持できることを知るライダーは多いはず。キャリパーピストンにブレーキダストが付着したまま放置すると動きが悪くなるので、ブレーキクリーナーや中性洗剤で汚れを落としてからMR20に代表される金属とゴムの潤滑を保つケミカルをスプレーするとよい。
バイクの市販車として初めてディスクブレーキを装着したホンダCB750フォアを筆頭として、1970年代にデビューしたバイクのディスクローターはどれも平らなソリッドローターでした。
しかし現在のディスクローターはといえば、小排気量やスクーターにはソリッドタイプの装着例もありますが、いわゆるスポーツバイク向けには穴あきのドリルドタイプが主流となっています。
ドリルドタイプには穴を通じて空気が通り、穴の円周×ディスクローター断面分の表面積アップにより放熱効果がアップする利点があります。また穴のエッジでブレーキパッドの表面を削ることで、炭化したパッドを取り除く効果もあります。
ブレーキパッドには効きの良さやコントロール性、耐久性といった観点からさまざまなキャラクターを持った製品が存在します。パッド自体が摩耗することで制動力を発揮するものもあれば、ブレーキローターへの攻撃性がやや高いパッドもあります。
摩擦材の種類によって、ブレーキパッドはセミメタル、シンタード、オーガニックの3タイプに分類されます。その上で、製造メーカーやブランドによって配合成分を変えて独自の製品を開発しています。そのため、ローターへの攻撃性、ローターをどの程度減らすかをパッドの銘柄で一概に区別、判断することはできません。
しかしながら、通勤などで同じルートを淡々と走り続けてみると、パッドによってローターを傷つける度合いが異なるものがあることが分かってきます。
さらに、ローターの穴にはブレーキパッドでディスクローターを挟み込んだ際に摩擦材の熱分解によって発生する「ガス」を逃がしやすくする効果もあります。
熱によってパッドからガスが発生するという件については、ブレーキメーカーのホームページでこのガスがパッドとローターの間に挟まって摩擦力が低下してフェード現象の原因となると解説していることからも、ガスを逃がすことが重要であることが理解できます。
このようにドリルドタイプのローターには多くの利点がありますが、削れたパッドのダストがこの穴に溜まることにも注意しなくてはなりません。
- ポイント・削れたパッドのダストがローターの穴に溜まる
ブレーキダストの堆積はトラブルの原因になることも
ブレーキパッドは摩耗が進むほど減りのスピードが早くなる。原因のひとつは、摩耗によって摩擦材の堆積が減少すると、制動によって受ける熱量が同じでも熱の逃げ場が少なくなるため。パッド自体が過熱するとフェード現象も起こりやすくなる。
ブレーキキャリパーやキャリパーピストンにブレーキダストが堆積するのと同時に、ブレーキローターの穴にもブレーキダストは詰まります。ダストが少ないうちは洗車時にブラシでこすれば簡単に取り除くことができます。
キャリパーピストンの洗浄ともみ出しを定期的に行うバイクユーザーなら、キャリパーメンテと同時にローターの状態をチェックして、必要に応じて洗浄している方もいるでしょう。
ところが逆に、走行距離は多いもののブレーキパッドはいつもギリギリまで使う、場合によっては摩擦材を使い切るまで気づかないような無頓着なユーザーの場合、ローターのダメージが大きくなっている場合もあります。
攻撃性の高いパッドを使用することで発生する可能性があるのは、ローターの穴から隣の穴にひび割れ(クラック)が入ってしまう例です。国産車の純正ローターの多くは板厚の下限値が刻印されていますが、それより摩耗が進むと制動時に発生する熱の逃げ場が少なくなり、クラックを引き起こす場合があります。
これとは別に、ローターの穴がブレーキダストで埋まるほどになると別の問題も発生します。
前述の通り、そもそもローターの穴には熱によって炭化したパッドの表面を削ってリフレッシュする役目があります。その穴がブレーキダストで詰まってくるとパッド表面の切れ味が悪くなります。
さらにブレーキダストがローター表面に付着した状態でブレーキングを続けると、ローター表面に摩擦材が付着してしまいブレーキ性能に影響を与える可能性もあります。ブレーキメーカーの見解によれば、ローターに摩擦材が付着するとブレーキ鳴きの原因になることがあるそうです。
またパッドに付着した汚れの逃げ道もなくなることでローターとの間に異物が挟まり、ローター表面を傷つけてしまうリスクもあります。
- ポイント1・ブレーキダストは徐々に悪影響を及ぼす
- ポイント2・ローター表面の汚れはブレーキ鳴きの原因になることも
洗車と同時にチェックすればローターの寿命が延びる
ローターの穴に汚れが詰まっている様子もなく表面の汚れも少ないにも関わらず、パーツクリーナーをスプレーしてウエスで表面を撫でるだけで汚れが付着する。通勤や通学で天候や季節を問わず走行するバイクだと、もっとひどく汚れていることも多い。
こうしたトラブルを予防するには、ブレーキパッドと同様にローターも定期的にチェックしましょう。雨天走行の後にローター表面を観察して、道路から跳ね上げた小さな砂粒が付着しているようなら、水道水と洗車用のシャンプーで洗い流すついでに、ローターの穴もブラシで洗浄すれば一石二鳥です。
ホイールだけ洗浄してブレーキローターをそのままにしておくと、ブレーキクリーナーをスプレーした時に汚れたブレーキダストがホイールに付着して洗浄に二度手間が掛かります。水で垂れたブレーキダストはホイールやタイヤを汚しますが、同時にホイールの洗浄を行えば足まわりが美しくなります。
大した成果や効果はないように思える地味な作業かもしれませんが、こうしたメンテナンスは年数を経て走行距離が増えた時に違いが現れます。ホイールベアリングやブレーキキャリパーのメンテナンスを行う際は、ブレーキローターの洗浄も合わせて行うことをおすすめします。
- ポイント1・雨天走行後はローター表面の汚れを落とす
- ポイント2・キャリパーとローターのメンテは同時に行う
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