
ガソリン満タンにすると、タンクキャップ周辺からジワジワ「ガス漏れが……」、といった経験、ありませんか? 給油後は、キャップ周辺にウエスを巻いて滲むガソリンを吸って滲みを防止していたが、いったい、その原因は何なのか……?
ひとつ間違えると大惨事に至ってしまうのがガソリンの取り扱いだ。現代のバイクと旧車を比べると、当然ながら安全性が異なるが、しっかり保守メンテナンスしていれば、大きなトラブルに見舞われるケースは少ないはず。しかし、旧車の場合は部品の劣化によってトラブルを起こすケースが少なくない。ここでは60~70年代のバイクに多い、ガソリンタンクのガス漏れ補修をしてみた。こんなケースもあるのだ!!
原因は口金の「ロウ付け」劣化にあった
当初は燃料タンクキャップのガスケット劣化が原因かと思い、新品部品に交換した。しかし、満タン(もしくは満タン近く)まで給油すると、タンクキャップを固定する口金の根元の隙間からガソリンが滲んでいるのを発見。仕方ないので、タンクを取り外しガソリンを抜いて、タンクキャップ口金の内側周辺をアセトンで浸したウエスで拭き取った。
タンクのペイントが気にならないなら、アセトンを入れてキャップを閉じ、ウエスでキャップをおさえてゆっくり逆さまにすることで、タンク内部を脱脂できるが、今回はオールペンしているタンクを気遣い作業進行。口金外側の溝は、綿棒にアセトンを湿らせてからクリーンナップ。汚れの堆積は爪楊枝で突っつき除去するのがよい。
ガソリンが滲み漏れるということは、亀裂や隙間を埋めない限りガソリンリークは止まらせない。今回は、現状のペイントにダメージを与えないような方法で作業を進めることにした。したがってタンク内部からガソリンを抜き取り、さらに中性洗剤と水道水で残留ガソリンをクリーンナップ。ここでパーツクリーナースプレーを利用し、漏れ箇所と思われる隙間に軽くひと吹き。さらにエアーガンで隙間に圧縮空気を吹き付け、隙間に残留しているガソリン汚れを吹き飛ばすイメージで作業進行。さらに綿棒にアセトン(脱脂能力が極めて高い溶剤)を浸して、口金根元の隙間の汚れを除去しつつ、ウエスにアセトンを浸し、そのウエスを指先にあてて、キャップ口金の裏側周辺を拭き取った。ペイント前のガソリンタンクやペイントコンディションが気にならないガソリンタンクなら、タンク内洗浄と乾燥後に少量のアセトンをタンクに注ぎ、ゴム栓を口金に押し付け、タンクを逆さまにすることでタンク内部の口金周辺を効率良く脱脂できる。
掃除機のバキューム圧を利用する!!
タンクキャップの口金に掃除機のノズルを差し込み、掃除機でタンク内部の空気を吸引しながら、時々、燃料コックの継ぎ手穴を指先で閉じる。その瞬間にバキューム圧が高まり、口金のロウ付けクラック(亀裂)部分から空気を吸い込もうとする。そんなパキューム圧で耐ガソリン性接着剤を亀裂溝に吸い込ませるのだ。
あらかじめタンクキャップ口金に布ガムテープを巻き付け、掃除機ノズルを固定しやすく養生しておくのが良い。こうすることで、ノズルの合体を楽に行えるようになる。
今回は、ペイント終了後にガス漏れが発覚したため、このような「裏技」でガス漏れのシャットアウトにチャレンジした。以前にも同じトラブルに遭遇し、この作業手順で補修チャレンジし、ガス漏れを遮断できた実績があったため、今回もこの作業にトライしている。仮に、ペイント前のガソリンタンクなら、鉄板地肌をムキ出しにしてから患部を「鈑金ハンダ」で埋めることもできる。絶対にやらない方が良いのが、再度、ロウ付けでガッチリ固定!! なんて考えだ。再ロウ付けを行うにはガスの火で部品を高温加熱するため、その他の部分のロウ付けも流れて口金固定が現状よりもひどい状況になってしまう可能性があるからだ。ペイント前の本格修理は鈑金ハンダで行おう。
2液式エポキシ接着剤は耐ガソリン性良好!!
口金をロウ付け固定する部分の亀裂クラックからガス漏れしているのは明らかだと判断。今回のような補修には2液式エポキシ接着剤を利用するのが最適だ。二液同時にシリンジから押し出し、その途中に2液が混ざる仕組みだが、補修箇所が僅かなので無駄に使ってしまいがち。一般的なチューブ2本タイプで流動性が高い商品が最適だと思う。
2液接着剤を混ぜ爪楊枝先端で塗布
タンク口金周辺のゴミや汚れを徹底的に洗浄したら、使用方法に従いエポキシ接着剤を楊枝の先端で塗布する。チューブタイプでも1対1配合(同量配合)が多いので使いやすい。流動性が高い商品があれば、使いやすく仕上がりは良くなりそうだ。爪楊枝の先で接着剤を塗布しながら掃除機のバキューム圧を掛けながら亀裂クラックに接着剤を流し込むのが通気遮断のコツだ。
バキューム圧を掛けたり、フリーにしたりしながら作業完了。接着剤の塗布は素早く適量で行おう。全周に接着剤を塗布したら、小刻みにバキュームを強めたり、フリーにしたりを繰り返すのが良い。作業完了後は、丸1日=24時間はそのまま放置しておきたい。
- ポイント1・タンクキャップ周辺のガス漏れは、キャップのガスケット劣化以外にも原因がある。
- ポイント2・旧車のガス漏れはタンクキャップ口金周辺を疑おう。
- ポイント3・再塗装するガソリンタンクは、あらかじめキャップ口金のコンディションを疑おう。
- ポイント4・再塗装前なら金属地肌に鈑金ハンダで補修するのがベスト。
フルレストアを終え、ガソリン満タンにしたら、タンクキャップ周辺から「ガソリンがジワジワ流れ出てきた……」というこの原付ヤマハ。オールペン=再塗装したばかりの悲劇である。ガス漏れは、樹脂部品のタンクキャップや美しく仕上げたペイントに決して良くないので、キャップのガスケットを新品部品へ交換した。
しかし、満タンにすると再びジワジワとガソリン漏れ。ガスケットを新品部品に交換したのに……。ガスケットと口金座面のアタリは悪くない。そんなガス漏れ症状の原因を探ったら、漏れの原因は口金を固定する付け根だった。
60~70年代に登場した多くのモデルに採用されているのが、このタイプの口金だった。丸い口金に限らず、パッカンとキャップを開くタイプの口金も、ガソリンタンク本体へは「ロウ付け」で固定されていた。仮に70年代後半に生産されたモデルでも、遡ること40年以上前に生産されたことになる。そんな長年に渡る利用で、ロウ付け固定にクラックが入り、その僅かな隙間から走行振動でガソリンが漏れてしまうのだろう。
今回は、ガソリンタンクの再ペイント後にトラブル症状に気がついたので、可能な限りペイントにダメージを与えないように作業進行した。その結果、思いついたのが、耐ガソリン性が良好なエポキシ樹脂接着剤の利用と、亀裂クラック部分に接着剤が入り込むように、掃除機によるバキューム圧を利用した修理方法だ。
今回は再塗装後だったのでこのような方法で修理チャレンジしたが、再ペイント前に気がついたり、将来的に「転ばぬ先の杖」として対策しておくのなら、口金周辺の地肌鉄板に鈑金ハンダを盛ってから削り、それからペイントすれば良いだろう。修理方法は様々だが、ここに紹介したようなエポキシ接着剤作戦なら、ノンレストア=未再生の雰囲気で乗り続けたい旧車オーナーさんにとっても、参考になる工法だと思う。
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