新車でも旧車でも、エンジンにとって混合気を燃焼させる火種=スパークプラグの点火火花が不可欠です。エンジンの調子が今ひとつの時、とりあえずシリンダーヘッドからプラグを外して火花を確認するのが定番ですが、原因がプラグなのかそれ以外なのかの見極めは難しい。そんな時に、不快な感電の不安やリスクなく、原因究明の役に立つのがイグニッションスパークテスターです。

点火系の診断には“感電”がつきもの!?

スパークプラグはイリジウム系の高性能品であっても走行距離に応じて定期的な交換が必要な消耗品である。キャブレター車であれば電極やガイシの焼け具合(くすぶり具合)がキャブセッティングを判断する目安にもなる。

マフラー交換やインジェクションチューニングを行っても、スパークプラグが混合気に着火しないとその効果は発揮できません。旧車や絶版車はポイント点火方式が定番ですが、この場合は点火時期調整やポイント自体のコンディションによってプラグの点火状態の良し悪しが変化するため、まずはポイントのメンテナンスが重要です。
それに対して今のバイクは機械的な接点がないため、機械部分の摩耗を心配する必要はありません。ただイグニッションユニットや点火コイル、ハイテンションコードやスパークプラグ自体など、点火系全体として見れば経年劣化やトラブルが発生しないと言うわけではありません。
そんな点火系統の簡易的なチェックとして、エンジンから外してプラグキャップを取り付けたプラグをシリンダーヘッドに当てて、セルモーターを回すかキックペダルを踏み、プラグの電極に火花が飛ぶか否かを確認する方法があります。
これは大昔から行われてきた初級メンテナンス項目ですが、イグニッションコイルからプラグに火花を飛ばすため2万ボルト以上の電圧が加わっているため注意が必要です。
スパークプラグの金具部分をシリンダーヘッドに接触させる際は、必ずプラグキャップを握ることが絶対条件です。間違ってプラグ本体、ましてや金属部分を握ってスターターボタンを押せば、百発百中で感電します。
指先から肘、さらには肩口まで“バシッ!!”と伝わる電気ショックはなかなかの衝撃で、それがトラウマで火花チェックはやりたくないという人もいるほどですが、ベテランサンデーメカニックの中には「たまに感電するぐらいがちょうど良い」などと豪語する人もいます。ただ、誰もが感電しない方がいいのは間違いありません。

不調の原因はスパークプラグの火花では分からない

プラグに火花が飛ぶか否かは、プラグの金属部分をエンジンの金属部分に接触させた状態でセルモーターを回す(キックペダルを踏む)ことで分かる。この時にプラグを摘まんでいると感電するので、必ずプラグキャップを保持すること。電極のギャップに放電すれば感電しないので、エンジンや車体に触れていても痺れない。

スパークプラグをシリンダーヘッドに当てて火花を飛ばすチェックするのは、過去数十年に渡って受け継がれてきた伝統的な方法です。しかしそれだけで良否を判断するのは早合点で、時に誤解の元となります。
大気中で火花がバチバチと飛んだとしても、燃焼室内の圧力は大気圧の10倍以上になることもざらで(コンプレッションゲージで測定した圧縮圧力が1000kPaなら大気圧100kPaの10倍となる)、圧力が高くなるほど火花は飛びづらくなるからです。その理由は、圧力が高くなるほど分子の密度が高まり、放電による電子が密度の高い混合気分子に衝突して減衰するためです。これは何となくイメージできますが、物理の法則でも証明されている事実です。
つまり大気中では盛大な火花に見えても、混合気がギュウギュウに圧縮された燃焼室内では火花が飛ばず失火してしまう可能性もあるのです。
これに打ち勝つには、プラグに加える電圧を上げるのが最善策です。点火系チューニングアイテムとして大人気のASウオタニSPⅡフルパワーキットは、SPⅡハイパワーイグニッションコイルが約4万ボルトの二次電圧を発生するのが特徴です。標準装備されている純正コイルの電圧は2~3万ボルトなので、1.5~2倍となり、これが強力な火花の元になっています。
逆にプラグのギャップを標準より狭めることで、点火系の能力が低下してプラグが失火しがちな状況を改善できる場合もあります。ただしこれはあくまで対症療法であり、不具合やトラブル自体が回復したわけではありません。ギャップを狭めることで火種が小さくなるため、混合気の燃焼にも影響が生じます。
ここまでの説明で分かるように、エンジンに不可欠な点火火花の好不調はスパークプラグだけでなく、プラグ以外の点火系パーツが原因となっている可能性も考えなくてはなりません。

イグニッションスパークテスターで「プラグ」か「点火ユニット」かを切り分けできる

全国展開の工具ショップ、ストレートが販売しているイグニッションスパークテスター。火花が飛ぶ電極部分が透明のカバーで保護されているので、測定中に感電するリスクが軽減されるのが特徴。

電極の隙間は本体のノブで調整する。隙間を広げるほど点火系統に対する要求電圧が高くなるため、火花が飛びづらくなる。サーキットテスターのように電圧や抵抗の絶対値を測定するわけではないが、15mm程度のギャップで火花が飛べば点火系のコンディションは良好と判断できる。

スパークプラグが失火気味の時「とりあえずプラグを交換してみようか」というのが一般的な対処方法でしょう。しかし前記の通りイグナイターやイグニッションコイル、ハイテンションコードなど車体側の点火系統に原因があることもあります。このような場合に原因探求の一助になるのがイグニッションスパークテスター(イグニッションコイルテスター)です。
このテスターはプラグキャップに本体を挿入し、アース線をボディアースしてセルモーターを回す、あるいはキックペダルを踏んで使用します。テスター内部には電極が向かい合い、この電極間のギャップは任意に調整できるようになっています。
デジタル要素が一切ないアナログ式のテスターですが、これが想像以上にトラブル診断の役に立ちます。
スパークプラグの火花ギャップは0.7~0.9mmが標準値で、ASウオタニSPIIキットを装着した際は1.3mm程度に設定します。これに対してイグニッションスパークテスターはギャップを20~30mmまで広げることが可能です。
実際のエンジンではこれほどギャップを広げることはあり得ませんが、ギャップを広げることでイグナイターやイグニッションコイルの状態を知ることができます。
ここで紹介している工具ショップ、ストレートのイグニッションスパークテスターは、芝刈り機などの小型エンジンの場合はギャップを約5mmとして測定を行うよう指示されています。
バイクや自動車用エンジンの場合はさらにギャップを広げて確認を行います。ギャップが広がるほど火花が飛びづらくなるので、電極間を真っ直ぐで青紫色の火花が飛ぶ限界まで広げてみます。
これによりギャップが5mm程度でも火花が途切れたり、火花の色が赤い時は点火系に問題があると判断できます。逆に、ギャップを10mmにしても20mmにしても青紫色の火花がバチバチ飛ぶようなら、スパークプラグに問題があると考えられます。
このように、点火不調の原因がスパークプラグなのか電装系なのかを切り分けられるのが、イグニッションスパークテスターを活用する最大の利点です。
ただしイグニッションスパークテスターで車体側の不具合が分かっても、その原因がイグナイターなのかイグニッションコイルなのか、ハイテンションコードかプラグキャップなのかまでは分かりません。それを知るにはそれぞれのパーツを個別にチェックすることが必要ですが、点火系トラブルによるカブリなのにスパークプラグを交換するという判断ミスをする確率は大幅に減少するはずです。

本体先端の電極をプラグキャップに差し込み、ノブに挿入したアースコードをエンジンの金属部分にクランプする。なお4気筒エンジンの場合、セルモーターに対する負担を軽減するため、あらかじめスパークプラグはすべて外しておくのが良いだろう。

電極部分の保護カバーには目安となる数字が入っているので、ここでは1に合わせて測定を行う。

青紫色の火花が飛べば正常なので、このシリンダーの点火系の状態は良好と判断できる。残る3気筒でも同じ測定を繰り返して、火花の色や状態を比較する。火花が赤い場合は電圧が低く、ノブを回してギャップを広げると失火気味になる。また火花が断続的に飛ぶ場合も点火系統の不具合が想定される。

4気筒エンジンのプラグ焼けのバラつきの原因が点火系にあることも

4気筒エンジンの4本のプラグの焼け具合が揃っていれば問題ないが、キャブセッティングが同じなのに1本だけくすぶり気味の場合、エンジン本体のコンプレッション不足や点火系の失火が疑われる。イグニッションスパークテスターがあれば点火系に問題があるか否かを判断できるため、解決に至る道筋がクリアになる。

また4気筒エンジンでは、イグニッションスパークテスターはプラグ焼けのバラつきの原因追求にも役立ちます。キャブセッティングが同じなのに特定のプラグがかぶり気味のような場合、ギャップを一定値にした状態で各プラグキャップにテスターを付け替えて火花の状態を確認します。
4気筒とも青紫色の火花が飛んでいれば、ギャップを広げてテストを繰り返します。広げすぎればやがて火花が届かず失火状態になりますが、この時に4気筒とも同じようなギャップで失火すれば点火系に問題はないと考えて良いでしょう。
一方で失火のタイミングがバラバラの場合は注意が必要です。180°クランクの4気筒エンジンでイグニッションコイルが2個ある場合、1番と4番、2番と3番で使い分けるのがセオリーです。
したがって1番と4番、または2番と3番の失火がセットで発生した場合、イグニッションコイルの不具合が原因である可能性が高まります。それに対して1番と2番の失火が早い場合は、ハイテンションコードやプラグキャップが疑わしくなります。もちろん、1気筒だけ失火が早く始まる場合も、コードやキャップに問題があると考えて良いでしょう。
キャブレター車の場合、スパークプラグの焼け具合でキャブセッティングが合っているか否かを確認しますが、1本だけカブリ気味の場合は判断が難しくなります。
このような場合にイグニッションスパークテスターによって点火系の不具合を発見できれば、メンテナンスの効率化も可能です。
電気系のテスターと聴くと、電気は苦手だし使い方がよく分からないと敬遠気味になるライダーもいるようですが、このイグニッションスパークテスターは直観的に使用でき、4気筒エンジンであれば相対的な比較ができる点でもおすすめです。

POINT

  • ポイント1・エンジンから取り外したスパークプラグをエンジンに接触させると火花の確認はできるがエンジン内部の状況を再現できるわけではない
  • ポイント2・イグニッションスパークテスターは電極ギャップを任意に調整でき、点火ユニットの限界を探ることができる
  • ポイント3・スパークプラグの焼け具合のバラつきの理由がプラグなのか、車体側の点火系統なのかを判断する一助になる

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