数ある絶版車の中でも、世代を問わず多くのファンに支持されているのがカワサキZ1/Z2シリーズです。製造から40年以上を経過している旧車だけにさまざまなトラブルや弱点が共有されてますが、中でもオルタネーターのステーターハーネスグロメットからのオイルにじみや漏れは「Z系あるある」の代表例です。対策用の社外部品を使用した対策方法の中でも、メンテの効果が一段アップするひと手間を紹介しましょう。

オイル漏れの原因は熱と経年変化と取り付け位置問題

Z1/Z2シリーズのオルタネーターはエンジンオイルに浸っており、オルタネーターカバー側に固定されるステーターコイルもまたオイルが回っている。こんな状態なので、左下に見えるグロメットの接着剤が劣化すればオイルが漏れるのは必然である。ステーターコイルハーネスも毛細管現象によって、かなり上流までオイルが浸透していることもある。

「みんな大好き」というと大げさですが、この20年ほど絶版車の中心で輝き続けているカワサキZ1/Z2シリーズ。時が経てば経つほど台数が減少するのは絶版車の宿命ですが、パーツメーカーのリプロ部品に加えて川崎重工がシリンダーヘッドの再生産を行うなど、デビューからもうすぐ半世紀になろうとする旧車の人気は衰えを知りません。

Zのどこが魅力なのか? という理由は人それぞれで異なるでしょうが、いくら人気があると言っても製造から何十年も経過した旧車であることは事実なので、調子よく維持しようとすれば適切なメンテナンスは不可欠です。

エンジンまわりで気になる代表的な不具合といえば、オイル漏れやにじみが挙げられます。オイルが漏れるのはオイルが入っている証拠などという言い訳もありますが、漏れない方がいいのは当然です。

Z1からZ1000MkⅡと同年代の750に共通する代表的オイル漏れポイントといえば、エンジン左側のオルタネーターカバー下のグロメット部分です。カバーの内側にはオルタネーターのステーターコイルがあり、三相交流で発電されるコイルの3本のコードがゴム製のグロメットを貫通してカバーの外側に導かれています。

このカバーの内側にはエンジンオイルが循環しているので、カバーとグロメットの隙間やコードが通る3つの穴などからオイルが漏れてくるわけです。

オルタネーターがエンジンオイルに浸っているか否かは機種によって異なりますが、少なくともZ1系はここにオイルが回っています。しかしカバー内部がすべて没しているわけではないので、コードを通す部分がカバーの上側にあればオイル漏れの可能性は低下したでしょう。

とはいえそれでは外観的な美しさを損なうため、目立たないカバー下部から引き出すことにしたのだと想像がつきます。

エンジンの熱を受けながらオイル漬けの環境で40年以上の年月を過ごせば、経年劣化によってグロメットが劣化しても致し方はありません。ステーターコイルのハーネス自体も、オイルに浸かり続けることで毛細管現象によって外皮と芯線の間にオイルが浸透していることも珍しくありません。

そうした不具合を解消するため、Z系のリプロパーツを積極的に開発販売するメーカーから交換用のハーネスキットが発売されています。この部品を活用すれば、オイルが漏れるグロメットとオイル漏れとエンジンの熱で硬化してオイルが染み込んだステーターコイルのハーネスを同時に交換できます。

 

POINT

  • ポイント1・オルタネーターカバーからのオイル漏れはZ1/Z2シリーズの定番症状
  • ポイント2・経年変化によるグロメット硬化は避けられない

ハーネス交換作業は難しくないがせっかちは禁物

オルタネーターカバーグロメットとステーターコイルハーネスをリプロ部品(ここではドレミコレクション製)に交換。ハーネス交換の際は、事前にステーターコイル自体に焼損や断線がないかを確認しておく。ハーネスキット付属のスリーブリングを圧着することで結線できるが、より確実に結線するためハンダも併用した。

ステーターコイルハーネスを交換する場合、オルタネーターカバーを外すためカバーガスケットが必要です。またエンジンオイルを抜くため、オイル交換と同時に行うと良いでしょう。

ここで紹介するのは1976年式KZ900LTDの作業例ですが、Z1もZ1000も内容的には同一です。この車両は新車からの走行距離が7000km弱の低走行車ですが、それでもステーターハーネスの配線にはオイルが浸透して柔軟性が失われ、グロメット部からエンジンオイルが漏れ出していました。

ハーネスの交換には、古いハーネスを外して新しいハーネスを結線するためハンダ付けが必要です。この作業はステーターコイルがオルタネーターカバーに付いたままでも可能ですが、ステーターコイルのリード線と新たなハーネスを確実に結線するため、コイルを取り外してしっかり脱脂して、空間的にも余裕のある場所で作業した方が良いでしょう。

また新たなハーネスを結線する際は、3本の配線をハンダ付けする前にグロメットに通して、ハンダ付け部分を絶縁する熱収縮チューブを通しておきます。気ばかり焦って作業して、ハンダ後にグロメットに気づいて呆然……とならないように落ち着きましょう。

ハーネスをハンダ付けして熱収縮チューブを被せたら、ステーターコイルをオルタネーターカバーに装着して所定の位置にグロメットをセットします。この時カバー側に油分が残っていると、グロメットに塗布する接着剤の効きが悪くなるので、事前に入念に脱脂しておきます。

この時、ステーターコイルをカバーに付けたままステーターコイルハーネスを結線していると、思わぬところからエンジンオイルが流れてくることもあります。ステーターコイルを外しておけば、オルタネーターカバーは単体になるので必要充分に脱脂できます。

 

POINT

  • ポイント1・オルタネーターカバーグロメットはステーターコイルハーネスと同時に交換する
  • ポイント2・接着剤が着くようオルタネーターカバー脱脂が重要

グロメットに接着剤を塗布したら固定して待つ

脱脂したオルタネーターカバーにステーターコイルを装着したら、セメダインスーパーXを塗布したグロメットを所定の位置にセットする。スーパーXは短時間で初期硬化が始まるが、グロメットを溝の奥に押しつけて硬化させるにはひと手間加えたい

アルミ製のアングル材をC型クランプで挟み込んでグロメットを圧着する。カバーの取り付け面とツライチになる材料を選ぶことで、後で修正することなくエンジンに取り付けできる。ステーターハーネスの3本線のスリーブカバーは、接着剤が付着しないようたくし上げてテープで仮固定してある。

オルタネーターカバー内外を隔てる新品のグロメットは、接着剤を塗って取り付けますが、使用する接着剤は耐熱性と耐油性に優れ、耐震性があって肉盛り性の良さがあれば最高です。

そんな欲張りな条件を満たす接着剤として絶版車ショップのメカニックにも愛用者が多いのが、セメダイン社のスーパーXシリーズです。超多用途弾性接着剤というキャッチコピーどおり、スーパーXは硬化後もゴムのように適度な弾性を持続するのが特長で、耐熱性や耐水性に優れています。金属とゴムの接着にも適しており、オルタネーターカバーグロメットのために生まれてきたと言っても過言でないほどの逸材です。

スーパーXに限らず、接着剤は硬化するまでしっかり圧着することが重要です。接着剤を塗布したグロメットも、塗り立てのままエンジンに組み付けるのではなく、オルタネーターカバー単品状態で硬化させます。

その際に取り付け状態を考慮して、カバーとグロメットがツライチになるようひと手間を加えます。手間といっても、アルミ製のアングル材などを用意して、グロメットを圧着するようにC型クランプなどで挟むだけです。接着剤が貼り付かないようアングル材には離型剤代わりにうっすら油分を塗布して、カバーの端面とグロメットがツライチになるように固定方法を工夫すれば、硬化後にアングル材を外した後にオルタネーターカバーガスケットがぴったりフィットして、スーパーXのシール能力も完璧に発揮できます。

ここまで入念にシールしておけば、短期間で再び漏れ出すようなことはありません。せっかくの名車を美しく保つためにも、地味な作業も手間を掛けて実践することが重要です。

接着剤硬化後にアングル材を外すと、カバーとグロメットの端面がぴったり揃っていることが分かるだろう。スーパーXは硬化後も弾性が持続するので、黄色の3本線が通る部分も割れることなくシール性をキープできる。

オルタネーターカバーを装着してしまえばオイル漏れ対策はまったく見えなくなる。純正スタイルにこだわるオーナーも、隠れた部分でのクオリティ向上であれば受け入れやすいのではないだろうか。

 

POINT

  • ポイント1・グロメットの接着には弾性接着剤が最適
  • ポイント2・エンジンに組み付ける前に接着剤を圧着硬化させる

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