絶版車や旧車人気のムーブメントが手伝って、復刻生産されたシートコンプリート(忠実なレプリカ品)を購入できる今の時代。
しかし、それは人気モデルに限ったお話しであって、不人気モデルに関しては、ダメージを補修して使い続けるのが現状だろう。
仮に、修理がまだ間に合うレベルなら、将来のためにしっかり本気でコンディションアップしておきたいものだ。
「あの時にやっておけば……」なんて思わないためにも。

「シート表皮フック」が腐り始めたら要超注意!!


60年代から80年代前半までに販売されたバイクの多くは、シートボトムに鉄板プレス部品を使っている例が多い。
そのシート鉄板にサビが発生したり、露天放置車の場合は、最悪でシートスポンジ側(内側)からサビ腐りが始まることも少なくない。
ここでは、シートボトムのサビ除去に「真剣トライ」してみよう。


サビ落とし工具にも様々なタイプがあるが、ワイヤーブラシやハンドブラシでは作業性が著しく低下するので、ここではリューターにセットできる縦型ワイヤーブラシを利用。
平面仕上げにはサンディングバフを利用した。

いわゆる3Mのスコッチブライトや不織布シートも使い勝手は良好。
シート表皮は、磨き箇所毎にフックからリリースして、表皮を破らないようにベース鉄板のサビを落としていくのが良い。
広範囲を一度にサビ取りするのではなく、10×10cm四方を単位に磨き広げていくのがお勧めだ。

サビを止めて皮膜形成する高性能ケミカルで下地作り



錆を除去した後に灰白色の防錆皮膜をつくり、あらたなサビの発生を防止する高性能ケミカル。
これは榮技研の花咲かGラストリムーバー。
鉄やステンレスへのサビに反応し、塗装や各種メッキには反応しないのが大きな特徴だ。
今回はサビ落とし後にさらにこの商品を利用し、防錆効果を狙ってみた。

サビ落とししなくても「ケミカル頼り」が可能


サビた鉄板の上から高性能ケミカルを塗布し、サビ処理後に表面皮膜の形成を確認後、さらにペイント仕上げできるのもこの商品の特徴だ。
しかし今回は、鉄板を平滑に磨き、できる限り凸凹を無くしてから半艶ブラックで仕上げることにした。
まずはシート表皮をマスキングし、ペイント吹きしにくい部分から先に筆入れでサフェーサーを塗った。その後、平面にガン吹きでサフ入れし、乾燥後に半艶ブラックをペイントした。

保管方法次第であと数十年は大丈夫!?

作業前とは比較にならない美しさへと変貌したシートボトム鉄板。
スポンジ側=鉄板内側のサビの進み具合がどうなのかは不明だが、シートを開いたときに眼に入るシートボトムのコンディションは、格段に良くなった!!

POINT

  • ポイント1・できる限りサビ除去してから高性能ケミカルを併用することで仕上がりは圧倒的に良くなる。
  • ポイント2・サビ取りケミカルは鉄板表面に防錆皮膜を形成し、後々のサビ再発を防止する。
  • ポイント3・サフ仕上げからの半艶ブラック仕上げで、完成度を高めてみた。サビ除去後に凸凹がある場合はパテ処理することで仕上がりはさらに良くなる。

本気を出して「やる気があるのか? 無いのか?」その違いで、仕上がりには「雲泥の差」が生まれてしまうのが、この手の作業の特徴だろう。
目立つサビをそのままにしておくと、間違い無く数年後には、もっと酷いコンディションになってしまう。
しかし、重い腰を持ち上げて、できる限り早いタイミングで作業進行することで、間違い無く数年後のコンディションに大きな影響を与えることができる。

ボトム鉄板が単品になれば、サンドブラストでサビを根こそぎ除去することができる。
しかし、状況によっては、今回のように表皮を部分的にバラし、サビ除去やリペイント補修を行うことができる。
また、サビ取り実践は、物理的にサビを除去した後に「高性能ケミカル」を併用するのがよい。
サビの進度だけでも止めたい場合は、最初から高性能ケミカルを利用し、サビ取りと同時に表面処理効果を得よう。
花咲かGラストリムーバーは、処理後に塗装できるのも特徴なので、時間的な都合を見て、まずはサビの発生から抑えておくのもひとつの方法だ。

エアーツールとワイヤーブラシを利用し、さらにサンドペーパーや不織布シートで磨くことで、シートボトム鉄板は美しく仕上げることができた今回。
一般的には、このような状況まで作業が進むと、あとは「ペイント仕上げで」となるものだ。
しかし、ここでサビの再発防止を目的に、高性能ケミカルを併用した。
鉄板地肌にケミカルをハケ塗りし、説明書の使用方法に沿って作業することで、鉄板地肌を酸化防止皮膜で覆うことができる。
その後、ペイント仕上げすることで、サビの発生をさらに抑えることができるようになるのだ。

ペイントはできる限り高品位に仕上げたいもの。
一般的な黒色ラッカースプレーで塗るのはなく、こんなときにこそ利用したい商品が、イサムエアーゾールから発売されている「エアーウレタン2液缶スプレー」である。
説明書通り段取りし、エアーゾール内部の隔壁を突き破って顔料と硬化剤を混ぜてから攪拌。
その後、一般の缶スプレーと同じように吹き付け作業を行う。
硬化剤を混ぜても、作業当日なら缶スプレー内はすぐに硬化しないため、吹き付けたエアーウレタンが乾燥し、表面を研いでからさらに吹き付ける(塗り重ねる)ことで、その仕上がりは想像以上に良くなる。

2重構造の高性能「ウレタン塗装缶スプレー」

イサムエアーゾール製「アクリルウレタン樹脂塗料」。
本体内部には隔壁があり、それを突き破ってから顔料と硬化剤を混ぜる2液仕様。
攪拌した後は一般の缶スプレーと同じように吹き付け作業ができる。
硬化剤を混ぜても缶内部ではすぐに硬化しないため、慎重にペイント作業を進められる。

撮影協力/モデルクリエイトマキシ

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