定期点検とオイル交換で性能回復はもちろん、ライダーの好みに合わせたセッティング変更も可能な高性能リヤショック。ミニバイクレースはもちろん、街乗りやワインディングを楽しむスポーツライクな愛車でも、エンジンオイルと同様に定期的なダンパーオイル交換が必要不可欠なことをご存じだろうか?ここでは、英国ナイトロン製リヤショックの分解オーバーホールをご覧いただこう。


驚きの激変!! 高性能リヤショックの素晴らしさ

スプリングの強さで車体の姿勢を決めて、コーナリング中に微妙に変化する挙動をコントロールするのが、伸びや縮みの動きを制御するダンパーユニットの存在である。一般市販車用リヤショックの多くは、ダンパー調整機能を有していない例が数多い。

 

埼玉県春日部市にラボを構えるナイトロンジャパン。市販のキットパーツはもちろん、ユーザーニーズに応じたスペシャル仕様やセッティング変更のオーダーも可能だ。前後サスペンションのセットアップ次第で、ラップタイムは大きく変化する。


撮影協力/ナイトロンジャパン www.nitron.jp 


かつてのDE耐!(ミニバイク7時間耐久レース)に参戦していたホンダモンキーR(RT)ベースの改造車に装着したナイトロン製リヤショック。フルアジャスタブル仕様へ交換したことで、走りは一変を超えた激変領域へと進化!! フルアジャスタブルは素晴らしい。


まずはガス高圧窒素ガス抜きから。そして分解開始 

別体式リザーブタンクのバルブキャップを取り外し、専用特殊工具のニードル(針)を差し込んでタンク内に充填されている高圧窒素ガスの抜き取りから始める。 


ダンパーロッド下部へ締め付け固定されているアイエンドを取り外し、リバウンドアジャスターノブとピンを取り外す。サーキット走行専用部品だったので痛みが少ない。 


硬質クロームメッキのダンパーロッドを傷めないように加工を施したバイスグリップでロッドを固定し、アジャスターをガスで炙って温めてネジロック剤を緩める。 


バンプラバーを抜き取りエンドキャップを取り外す。ダンパーユニットの抜け防止となるCクリップを取り外すことで、ダンパーシャフトを引き抜くことができる。


抜き取った左の汚れたダンパーオイルは、右の新品オイルと比べて明らかに粘性が低い印象だった。ダンパーオイルがナイトロン純正指定のダンパーオイル。劣化は明確だ。


肝心要、サス性能を左右するダンパーユニットの分解 

ダンパーロッドの分解組み立て専用盤にダンパーロッドをねじ込んで固定し、ダンパーピストンとなるユニット部分を分解していく、この内部に様々なシムが組み込まれる。


ロッド伸び切時のショックを和らげるラバーを抜き取ってからシールヘッドを取り外す。シールヘッドのシャフト部にはナイロン製ブッシュとOリングが組み込まれる。 


中空構造のダンパーロッド内部をダンパーオイルが行き来し、この移動時に伸び側減衰力が決定される。ダンパーロッドエンドにセットされる通路ジェットを取り外す。


ジェットよりも奥にセットされているニードルバルブを抜き取る。ニードル先端のテーパー部分がジェット内通路に刺さり、調整によって隙間が変化しオイル流量が変わる。


ダンパーボディ本体とリザーブタンクを接続するオイルホースは、サークリップによる固定式で簡単に取り外すことができた。分解時はクリックボールの紛失に注意。 


リザーブタンクはダンパーボディと同様にアルミ製でアルマイト仕上げとなる。タンク両端はネジ固定式なので、バーナーで温めてから専用工具で分解する。 


圧縮側の減衰力調整は、リザーブタンクに取り付けられるノブを操作して決定する。ノブを回すと、複数枚組み込まれたシムに掛かる圧力の変化で減衰力が変化する。 


すべての部品が分解できた。数多くの部品が様々な機能を持っている。レース用リヤショックには、圧縮のハイスピード時とロースピード時のダンパー切り替え機能も付く。 


完全分解後の部品は超音波洗浄によって徹底クリーニング 

オーバーホール時に交換される各種リングやブッシュ、オイルシールなどなどは数多い。高性能リヤショックは、完全分解とオイル交換によって本来の性能へ蘇る。 


ダンパーピストンの分解時には、シムの入り組や向きが変わらないように順序良くタイラップで保持される。分解されたパーツは超音波洗浄によって小さなゴミも徹底除去。


ダンパーロッドの摺動部分に点サビなどがあると復元時にオイル漏れを起こしてしまうため、完全分解時にはダンパーロッド面を旋盤+耐水ペーパーで研磨する。 


すべてのパーツが洗浄完了できた。ごく小さなゴミでもマイクロ振動と洗浄液の効果によって、汚れを徹底除去できるのが超音波洗浄だ。いよいよ組み立ての開始。


 

適材適所で各種ケミカルを利用し、分解と逆手順で組み立て開始 


スムーズかつ高精度な上下アイエンドに利用されるフェリカルベアリング(通称ピロボール)へは、フリクションロスが少ないテフロン系グリスを適量塗布する。


リザーブタンク内に組み込まれるロースピード側コンプレッションアジャスターは、アップデートされたニュータイプへ仕様変更された。セッティング性能が高まる。 


Oリングを交換したニードルバルブとジェットを中空のダンパーロッド内部へ組み込み、次にシムをセットしたピストンを組み込みロックナットで固定した。


ダンパーロッドにダンパーピストンとシールヘッドを差し込み、ダンパーボディに挿入する。この後に、抜け止めのCクリップをセットしてからエンドキャップを準備する。 


分解と逆の手順でリザーブタンクを組み込み、ダンパーボディとリザーブタンクをホースで連結したら、いよいよ高圧窒素ガスを封入する。充填圧力は1.4Mpaと高圧だ。


ロッドエンドに組み込むニードルアジャスターを挿入したら、ネジ部分にロック剤を塗布し、リバウンド用ダンピングアジャスターを締め付け、最後にアイエンドを固定。


購入当時の仕様から、コンプレッションのロースピード側が調整しやすいノブへと変更され、コンプレッションアジャスターが金色から青へと変わったナイトロン製レーシングリヤショック。これで使い勝手がさらに良くなった。 



POINT
  • ポイント1・エンジンオイルと同様にサスペンションのダンパーオイルも定期的に交換しよう 
  • ポイント2・DIYメンテナンスが難しい領域は、プロショップのラボへ作業依頼するのが基本 
  • ポイント3・単純な分解洗浄だけではなく、ゴム樹脂やオイルシール類をすべて交換するのがオーバーホールの基本 

バイクメーカーにとって重要なファクターとなるのがコストダウンである。サスペンションの場合は、開発車両の使用目的を想定した上で、バネの硬さやダンパーの減衰力が想定されている。一般的に、ビジネスユースのモデルで、ダンパー減衰力の調整機能を有したモデルは皆無に等しいが、1990年代以降に登場したスポーツモデル、特に、レーサーレプリカと呼ばれたモデルの場合、仮に、リアショックユニットなら、スプリングのイニシャル調整(しかもネジ式の無段階調整式)はもちろん、コンプレッション(圧縮)側、リバウンド(戻り)側のそれぞれに数段階の調整機能が盛り込まれるモデルが多かった。

どちらかと言えば、バイクメーカー製の純正ユニットの場合は、調整範囲の幅が広いのが特徴で、シビアな調整には適していない例が多かった。何故なら、ユーザー=ライダーの体重を想定できないため、仮に60kg以下の小柄なライダーが乗っても、90kgを超える体格のライダーが乗っても、それぞれの好みにおおよそ適合でき、ある程度はセットアップできる仕様にしてあった。


一方、高性能リヤショックと呼ばれる商品は、調整幅の範囲内で、クリック段数を増やすことで、伸縮時の減衰圧を微妙に調整可能な商品が多かった。完全に的ハズレな時にでも、シム調整によって、ユーザー好みにリセットできる利点もあった。ここでは、かつてのミニバイク耐久レースで活躍したモンキーRに装着していたナイトロン製リアショックをナイトロンジャパンへ持ち込み、セッティング変更無しでオーバーホールして頂いた様子をリポートしよう。ミニバイクから大型モデル、ストリートからレーシングまで、幅広くラインナップを充実しているのがナイトロンだ。基本的には英国のナイトロン社で設計と開発、部品製造が行なわれ、組み立てとセットアップは日本のナイトロンジャパンが行う方式を採用している。そのため、日本の走行環境やライダーの好みを商品に反映できるといった利点を持っている。

ここでは、ダイジェスト的に作業手順を解説するが、リアショックユニットには様々な特殊工具や道具が必要不可欠で、それ以上に重要なのがオーバーホールに関するノウハウが必要なことだ。エンジンオイル性能が低下すると、その違いを熱ダレなどで体感できるケースがあるが、サスペンションに関してもそれは同様である。なかなかできないリヤショックのオーバーホールだからこそ、定期的に実践依頼し、その違いを体感して頂ければと思う。ナイトロンジャパンを運営するサスペンションのプロショップ、テクニクスでは、国産でも外国製でも、分解可能なリヤショックならオーバーホールを引き受けてくれるケースが多いので、まずは相談してみよう。

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