
バイクは転倒してしまう乗り物なのです
もちろん誰だってコケたくないに決まってます。
でもバイクは2輪でバランスしながら走る乗り物ですので、不注意や外乱やちょっとした操作ミスで転倒してしまう事もあります。
そして、機械であるバイクは壊れる事もあるし、生身の人間は怪我する事もあります。
出先でそういったトラブルやアクシデントが発生したらどうします?
レッカーを呼びます?救急車を呼びます?
確かにそれが正解なのかもしれません。
しかーし!
バイク乗りは基本的にドMなので、何とかして自力で帰ろうとしてしまう生き物。
その『すぐに諦めない気質』だからこそ、バイクという不便で不完全な乗り物を楽しいと感じてしまうのかもしれません。
皆様にささやかな幸せとバイクの知識をお送りするWebiQ(ウェビキュー)。
今回は出先のアクシデントでどこまでやれるのか?です。
いつか役に立つかもしれない変な知識がてんこ盛りです!
最後に強烈な体験談集もありますよ……
目次
マシントラブル偏
出先で起こるマシントラブルは大きく分けて2種類。
純粋に車体が故障したものと、転倒によって車両が破損する場合です。
転倒した場合は破損が重篤になりがちですが、実は転倒した場合の方が破損個所が明確なので応急修理しやすかったりします。
逆に快調に走行中に原因不明の停止……などの場合は止まった原因から探らねばならず、内容によっては難易度が跳ね上がります。
単純な断線が原因であっても、『ココが断線してるのが原因だ』と特定するのは難しいからです。
今回は一発で原因特定しやすいトラブルを例に、生還する方法をレクチャーします。
キルスイッチOFF(生還確率100%)
転倒などの緊急時にエンジンを停止する為のスイッチがキルスイッチ。
非常停止ボタンみたいなものです。
ハンドル右側に付いている事が多いのですが、これが何かの弾みで手や服や荷物やヘルメットが触れて気付かないうちにOFFになっている事があります。
再出発しようとしたらエンジンが掛からないパターンですね。
ライトやウインカーは点いてセルモーターも回るけれどエンジンは掛からないといった場合、かなりの確率でキルスイッチが切れています。(車種によってはセルモーターも回らなくなる場合もあります)
対策は目で見てOFFになっていたらONにするだけ。
あまりにバカバカしくてチェックし忘れる初歩的ミスですが、誰もが1度は経験するトラブルだったりもします。
焦ってセルモーターを回し続けるとバッテリーが弱ってホントに再始動不可能になるので要注意。
基本的にいつも同じようにセルを回しても掛からなければ、もっと回してもほぼ無意味です。
ガス欠(生還確率50%)
キルスイッチはONでセルモーターも回るのにエンジンが掛からない場合、次に疑うのはガス欠です。
タンクの底は複雑な形状をしている事が多いので、ガソリンを最後の一滴までキッチリ使い切れる車種はあまりありません。
多くの場合はまだまだガソリンが残っているのにガス欠でエンストします。
逆に言えば、その残っているガソリンを上手く使えばしばらくは走れる可能性があります。
その方法は……
『揺する』&『傾ける』です。
揺すってみてチャプチャプと音がする場合、燃料コックのある側に思いっきり傾ける事で今まで吸えなかったガソリンがコック側に移って吸えるようになる事があるのです。
サイドスタンドくらいの傾きではダメで、転倒寸前の限界ギリギリまで傾ける必要があります。
傾けた状態で前後に揺すれれば最良!
古典的方法ですが、運が良いと最寄りのガソリンスタンドまで結構な距離を走れたりします。
ただ、最近はインジェクションの普及でタンク底の形状が変化してきた結果、あまり通用しなくなってきました。
しかもインジェクション車のガス欠は事後対応が大変なので要注意です。
点火系(生還確率25%)
ガソリンが入っていてキルスイッチもONなのにエンジンが掛からない場合は点火系がトラブルを起こしている確率が急上昇します。
この点火系トラブルは応急処理の難易度が高く、処理するつもりで悪化させてしまう場合も多々あります。
自信の無い場合は触らない方が吉!
ありがちな症例としてプラグキャップの抜けがあります。
対策はプラグキャップを差し込むだけ。
……なのですが、差し込もうとしたらコードとキャップが分離した!など、問題が大きくなってしまう場合が多々あります。
プラグキャップは本来抜けるものではないので、それが抜けているという事は他に重大な問題が発生している可能性も高いのです。
次はプラグのカブリ。
燃料が濃すぎる事でプラグが濡れて火花が飛ばなくなるというものです。
対策は一旦プラグを外してからライター等で焼く。
……と、大昔から言われて来ましたが、私はこの方法でプラグが復活した経験が1回もありません。
ホントに有効なのかなぁ??
そもそも最近はインジェクションなのでカブリなんか発生しないし、それでもカブリが発生している場合は他に何か重大な問題があるという事です。
このように、点火系は難易度が一気に高くなります。
メンテナンス知識と経験があれば現地で応急修理する事も可能ですが、やったことが無い整備を何も無い場所で行うのは難易度激高。
最近は点火系が電子制御されている事も多く、何故か火が飛ばない……といった感じで制御系に問題発生している場合はほぼ修理不可能です。
セルモーターが回らない(生還確率95%)
新車に近い車両では滅多に起こりませんが、数年乗った車両では突然起こる事があります。
原因はセルモーター内の「ブラシ」と呼ばれる消耗部品が減ってしまった事や、そのブラシを押さえているスプリングが弱ってしまったが考えられます。
接触不良で通電しなくなっているというワけです。
ただ、家を出発するときにはセルモーターは元気に回っていたはずなので、ほんのちょっと衝撃を与える事であと少しだけ頑張ってもらえる可能性は結構あります。
対策方法は「叩いてみる」という、昭和臭さ全開な方法が有効です。
セルモーターの叩き方ですが、何か固い物でモーターのお尻の辺りをコンコン叩きます。
私は道端に落ちていた適当な石(角の丸まったコブシ大のもの)で軽く叩いて無事に生還した事が2回もあります。
ちなみにセルモーターが完全にダメだったとしても「押し掛け」が出来れば特に問題はありません。
押し掛けはバッテリー上がりの際にも使える便利なテクニックなので、余裕のある時に練習しておくと良いかもしれません。
コツは高めのギヤで行う事と、クラッチミートの際にはシート上に飛び降りてリヤタイヤに過重を掛けてスリップを防ぐ事です。
下り坂なら飛び乗る必要が無いので簡単に実行できます。
ただし、下りきってもまだ始動できなかった場合は坂道を押して登らなければならなくなるので、軽い気持ちでやると大変な目に会います。
あと、飛び乗る事に不慣れだと反対側に倒してしまって自ら破損度を上げてしまうので要注意。
充電しなくなった(生還確率100%)
バッテリー上がりには2種類あります。
ライト点けっ放しやイグニッション切り忘れなどが原因で一時的にバッテリー上がりを起こしているだけなら良いのですが、
充電系統の何かが壊れて充電されないせいでバッテリー上がりを起こしている場合は帰還難易度がグンと上がります。
一時的なバッテリー上がりであれば、押し掛け等で始動さえしてしまえば走りながら再充電できます。
特に大きな問題無し。
しかし充電系統が壊れている場合、バッテリーは消耗される一方なので、どれだけ満充電してもある程度進んだところで点火できなくなって止まります。
既に止まっている場合はバッテリー残量ゼロなので、しばらく休ませて多少復活したとしても1分もしないうちに停止してしまうはず。
しかし、逆に言えばフル充電されたバッテリーの電力さえあれば、充電しなくても走れるという事です。
フル充電されたバッテリーを出先でどうやって入手するかが問題ですが、私は歩いてガソリンスタンドまで行き、車用の大型バッテリーとジャンプコードを購入して元の場所まで戻った事があります。
あとはバッテリーをリヤシートに固定してジャンプコードで無理矢理繋ぐだけ。
これでバイク屋さんまでの50kmを何の問題も無く移動できました。
(極力電力を温存したいので、ライトは消す(コネクターを外す)、停止中はブレーキを掛けない、といった地味な事も行いました)
現地で直す事は基本的に出来ませんが、生還する事は十分可能です。
ヒューズが切れた(生還確率30%)
ヒューズが振動で切れる事はまずありません。
必ず切れた原因があるので、まずはその原因を突き止めて修理しましょう。
この『切れた原因を発見できるか?』が物凄く重要で、原因特定できれば生還確率は一気に上昇します。
切れた原因を特定できない時が問題で、この場合はヒューズ交換しても近日中に再度切れます。
次に電源ONにした一瞬でアウトかもしれないし1週間後かもしれませんが。
切れた原因が特定できたとして、その原因の99%は配線のショートです。
まずは問題の個所を何らかの方法で絶縁しましょう。
普段から絶縁テープを持ち歩いている方は少ないでしょう。
でも要するにショートしなければ良いって事なので、最悪下着を脱いで絶縁したい部分に巻く……などの応急処置も可能です。
私は路肩に落ちていた紙ゴミをその辺に生えている雑草の茎を巻いて固定して難を逃れた事があります。
原因さえ発見できればたいてい何とかなります。
次に切れたヒューズを交換しますが、予備が無い場合はどうするか?です。
そのままでは導通しないので、何とかして導通させなければなりません。
その方法は大きく分けて2種類!
一つは他のヒューズを抜いて代用する方法。
例えばセルモーターとキックが併用されている車種なら、セルモーター用のヒューズを抜いて問題の場所に使う、などです。
本当は同じアンペア数のヒューズが流用出来れば良いのですが、自己責任で違う容量のヒューズを入れてしまう事も可能です。
小さな容量の物を入れると再度切れてしまう可能性がありますし、大きな容量の物を入れると(ヒューズが切れないので)大事な本体が致命的に破損してしまう可能性もあります。
車両火災につながったりするので正直オススメはできませんが、緊急事態なら「そういう事もできる」と思っておいてください。
二つ目は全然違う物を突っ込んで無理矢理導通させてしまう方法です。
ヒューズ機能は無視して導通する事だけを重視しているのでオススメ出来ない度はMAX!
使えるヒューズがどうしても無い時の最終手段です。
ヒューズの代用になる(電気が導通する)身近な物としては……
タバコの箱の銀紙をちぎって丸めて突っ込む(!)、ガムの包み紙を丸めて突っ込む(!)、ジュースのプルタブを折って石で形を整えて突っ込む(!)などなど、目も当てられない野蛮なことになります。
ガムの包み紙以外は経験ありますが、意外と何とかなるものです。
ただし、車両火災の可能性はMAXですので、ホントに緊急時以外は止めた方が良いです。
レバーやペダルが折れた(生還確率50%)
これは車載工具に何が入っているかで全く違う結果になります。
標準装備の車載工具でレバーは外せるかもしれませんが、都合良く予備の部品を持っていなければ意味がありません。
予備レバーを持ち歩いている方でも、さすがに予備ペダルまで持っている方は居ないと思います。
それに、レバーにしろペダルにしろ、先端がちょっと折れただけなら部品交換しなくても帰れます。
問題は根本の方から折れて指や足を掛ける部分が無くなった場合ですよね。
この時、バイスプライヤーという工具を持っていると、予備レバーを持っていなかったとしてもかなりの確率で何とかなります。
バイスプライヤーは別名ロッキングプライヤーとも言い、何かを強力に挟んだ状態で固定出来るのが特徴の工具です。
ペンチで何かを挟んで全力で握った状態を維持出来る工具というとイメージしやすいでしょうか。
このプライヤーを持っていれば、例えレバーが根本付近から折れたとしても残った部分をガッチリ咥えて固定する事ができます。
そうするとプライヤーそのものをレバーやペダルの代わりにして使う事が出来るようになるのです。
もちろん操作はしにくいですが、レバーやペダルの操作が出来ればゆっくり帰る事ができますよね?
これは本当に便利なので、ぜひ皆さんも車載工具の中に小型バイスプライヤーを常備しておく事をオススメします!
レバーの代替用途以外にも工夫次第で様々な使い道があり、応急修理時には大活躍してくれます。
本当は大小2サイズくらい持っておきたいくらいです。
バイスプライヤーは万能!
転倒でケースが割れた(生還確率50%)
これも良くあるアクシデントです。
特に並列4気筒でクランク左右がドーンと出ている車両では顕著で、駐車場で倒したらサイドのカバーが割れてエンジンオイルが漏れてきた!というのが典型。
高速から転倒して派手に削れて大穴が開いた……などなら諦めも付きますが、多くの場合はヒビが入ってオイルがダラダラ出てきてしまうという症状だと思います。
ガムテープで塞いだ程度ではすぐにオイルが漏れてくるので、諦めてレッカーされた経験をお持ちの方も多いのでは?
実はコレ、ガムテープと石鹸で塞げます。
ヒビの入っている部分に石鹸をゴシゴシ擦りながら塞ぐように押し当て、その石鹸もろともテープで固定してしまうのです。
ガムテープも石鹸もコンビニで簡単に入手可能なので、かなりの確率で帰宅可能になります。
派手に割れて明らかに穴が開いているような場合は無理ですが、ほんの少しの穴なら大丈夫かもしれません。
私の経験では5円玉の穴くらいの穴が開いていても、数kmなら大丈夫だった事があります。
運頼りな部分はありますが、試してみる価値はありますよ。
なお、応急処置が不完全だった場合は途中でオイルが漏れてしまいます。
自分自身が危ないのはもちろん、後続車、特にバイクが漏れたオイルに乗ったら致命的な事故となる可能性大です。
修理現場でエンジンを始動し、絶対大丈夫な事を確認してから出発しましょう。
タイヤにクギが!(生還確率90%)
チューブ式ならクギが刺さった瞬間にパンクするので、パンク修理しない限りは自走不可能です。
諦めましょう。
でもこれがチューブレス式だったら?
刺さっているのに空気が抜けきっていないという場合、余計な事をしなければ相当良い確率で帰宅可能です。
そのまま何もせず、そっと帰るのです。
抜こうとしたり、パンク修理キットで修理しようとすると悪化してしまう可能性大。
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