
ドライブレコーダーやUSB電源などの電気系アクセサリーを取り付ける際、どうしても配線作業が必要です。バイク用品メーカーによっては、結線に必要な部品がすべて同梱されていて、電気工作が苦手なユーザーでも簡単に取り付けできる配慮をしてくれていることもありますが、それでも車体配線から電源やトリガー線を分岐しなくてはならない場合もあります。ここではギボシ端子からワンタッチコネクターまで、電源を分岐する際に重宝するアイテムを紹介します。
電気工作好きに定番のギボシ端子による分岐

右の2個がオスギボシ、左がダブルタイプのメスギボシ。メスギボシにバッテリー側(スイッチ側)の配線を接続し、オスギボシの片方に既存配線、もう一方に追加配線をかしめれば、既存回路と追加回路に同時に通電できる。メスギボシは先端部分まで確実に絶縁スリーブをかぶせておくことが重要。

上のオス・メスギボシで既存電源をバイパスさせて、途中でダブルタイプのメスギボシを取り付けた一例。この配線では追加アクセサリーの電源を2系統取り出せるが、接続する製品の消費電力を考慮しなくてはならない。消費電力が大きすぎるとヒューズが切れることがある。その場合ヒューズの容量を大きくするのではなく、追加するアクセサリーのための電源線を新たに配線し、そちらにもヒューズを組み込んでおく。
既存の配線を分岐させて新たな配線を製作する場合、その目的は二つあります。
ひとつ目は分岐した配線を電源として用いる場合で、USB電源の装着が代表例となります。イグニッションキーONで通電する電源から分岐することで、キーを抜いて停車している間は通電しないため、バッテリー上がりを防止できます。
もうひとつは分岐した配線でリレーを作動させて、大きな電流を流すスイッチ線(トリガー線)とするパターンです。
昨今ではヘッドライトにLEDを使用する車種が多くなりましたが、ハロゲンバルブが一般的だった頃に流行した「バッテリー直結リレー」を装着する際に、既存のヘッドライト配線を分岐してリレーのスイッチとする際がこの例となります。
分岐部分に流れる電流の大きさを比較すると、分岐した先が新たな負荷となる前者の方が、リレーを作動させるための微弱電流しか流れない後者よりも大きくなります。
電源であってもトリガー線であっても、分岐する配線に流れるのがプラス電流である以上、分岐部分は配線処理をしっかり行わなくてはなりません。分岐部分の芯線が露出した状態でフレームなどの金属部分に接触するとショートして、ヒューズが切れるだけで済めば幸いですが、一気に大電流が流れることで車両火災につながる場合もあるので、電源分岐を軽く考えてはいけません。
電源分岐やその他の電気工作で配線を制作する際の基本アイテムが、オスとメスのセットで使用するギボシ端子です。基本はオスとメスの一対一での接続ですが、分岐に使用する際は既存配線を切断した一方にダブル(二口)のメスギボシを使用することで、1本の配線を2本に分岐できます。
この時、メスギボシはバッテリーやイグニッションスイッチに近い側の配線に接続します。そうすることで、万が一通電中に端子が抜けても、端子部全体をカバーで覆われたメスギボシは車体の金属部分に接触することはないのでショートを防止できます。もちろん、そのためにはギボシをかしめる際に絶縁スリーブを取り付けておくのが大前提となります。
エレクトロタップを使えば既存配線を切断せずに分岐できる

エレクトロタップを使用する際は、装着する配線の太さとスリットの幅が適合していることが重要。配線(芯線)に対してスリットの幅が広すぎても狭すぎてもトラブルの原因になる。エレクトロタップは本体色で適合配線のサイズを見分けることができ、一般的に赤色は0.2~0.5sq、青色なら0.5~1.25sq、黄色は1.25~2.0sqの配線に適合する。
ギボシ端子が配線分岐の基本であるのは確かですが、配線を切断して被覆を剥がし、カシメ部分を電工プライヤー(電工ペンチ)で圧着する作業が不可欠であり、電工プライヤーを持っていない人にとってはかしめ作業自体が容易ではありません。
また、たとえプライヤーを持っていたとしても、配線が束になっていると目的の1本を切断してギボシ端子を取り付けるのが容易ではないこともあります。
そんな場面で重宝するのがエレクトロタップです。
樹脂製の本体の内側に2本のスリットが入った金属プレートが内蔵されているエレクトロタップは、プライヤーやペンチで配線を挟み込むことで被覆の一部が切開されてプレートと接触し、並列する配線に通電します。配線の被覆を剥かなくても金属プレートで切開され、その部分はタップ本体の内部にあるため初めから絶縁されているため絶縁処理も不要です。
ただしエレクトロタップはギボシ端子と違って、プライヤーで閉じるとロックが掛かり、一度配線したら外さないのが前提となります。このロックは精密マイナスドライバーなどで開くことができますが、被覆が金属プレートで切開されることで僅か1ミリ程度ですが芯線が露出(被覆の隙間から僅かに見える程度)します。
また、エレクトロタップは接続する配線の太さ=芯線の太さに応じてサイズが設定されており。これがミスマッチだとスリット幅に対して芯線が太い場合は芯線の一部が切断されたり、スリットに対して芯線が細い場合は被覆の切開量不足により芯線に届かず接触不良の原因になることもあります。
ワンタッチで分岐した上で配線が抜き差しできるコネクターもある

アストロプロダクツから販売されている、分岐コネクター平型端子用0.3~0.75sq。ギボシを使わなくても分岐して取り出した配線を抜き差しできる便利アイテムだ。
ギボシ端子を接続するには電工プライヤーが必要で、基本的に配線の脱着を前提としていないのがエレクトロタップです。そんな両者の弱点を踏まえた上で、いいとこ取りのような機能を持っているのが分岐コネクターです。
ここで紹介するのは、工具ショップのアストロプロダクツの「分岐コネクター 平型端子用0.3~0.75sq」で、10個セットで販売されています。
このコネクターの特徴は、既存配線への取り付けはエレクトロタップと同様、金属プレートのスリットで配線の被覆を切開しながら、分岐側には直接配線を取り付けない点です。そして新たに取り出す配線の先端部分には、別途ユーザーが用意する平型端子を取り付けることで、ギボシ端子と同様に任意に抜き差しできる点が大きな特徴となっています。
コネクター自体はエレクトロタップと同じく樹脂製なので金属部分の露出はないため、追加配線を抜いた状態で車体の金属部分に接触してもショートする心配は無用です。
その一方で分岐して取り出す配線のオス平型端子は、配線のかしめ部分に絶縁スリーブを取り付けることが必要です。このアストロ製コネクターはオス平端子が別売りとなっていますが、他メーカーから発売されている分岐コネクターの中には、絶縁スリーブ付き平端子が付属しているものもあります。
これなら電源を取り出す既存配線を切断する必要はなく、後付けしたアクセサリー類も必要に応じて着脱できます。接続するオス平端子と配線の接続に電工プライヤーによるカシメが必要である点が、電工プライヤーを所有していない人にとって唯一の問題点となりますが、ギボシ端子とエレクトロタップの長所を生かしつつ配線作業を簡単にできるアイテムとして重宝することは間違いありません。

10個セットの中にオス平型端子は付属しないので別途用意する。サイズは250型と呼ばれる端子が対応する。絶縁スリーブはここではオス端子用を使用しているが、メス端子用を使用することで分岐コネクターにかぶせることで絶縁性をさらにアップできる。
- ポイント1・ギボシ端子を使った配線分岐は端子の着脱が可能だが、電工プライヤーを用いたかしめ作業が不可欠
- ポイント2・エレクトロタップはプライヤーひとつで配線を分岐できるが、一度接続した配線の取り外しは考慮されていない
- ポイント3・分岐コネクターを使用すれば既存配線への取り付けはプライヤーででき、追加した配線は任意に抜き差しできる
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