人気の高い原付二種モデルであるグロムに、キタコ製「145cc LIGHTボアアップKIT」を組み込む工程を紹介していく。第1回目となる今回は、補機類の取り外しを紹介する。
手軽にパワーアップが図れるボアアップキット
横型の125ccエンジンを搭載するホンダ・グロムは、ツーリングユーザーからレースユーザーまで幅広い層に人気のスポーツミニバイクだ。よりパワーを求めるユーザーも多く、様々なメーカーからチューニングパーツも発売されている。その中でも比較的低価格で一気にパワーアップが期待できるボアアップキットは人気が高い。ただし、ボアアップキットを組み込んだ車両で公道を走行する場合は、軽二輪として登録することが必要なので注意したい。
今回から数回に分けて、JC92型ホンダ・グロム(FNO,JC92-1000001~1099999)に、キタコ製の「145cc LIGHTボアアップKIT」組み込む手順を解説していく。連載の第1回目となる今回は、補機類の取り外しを行なっていくのだが、配線類はカプラーかギボシで接続されているので作業に迷うことは少ないはずだ。スロットルボディを取り外す際には、インジェクター部やシリンダーヘッド内にゴミやホコリなどが入らないように注意が必要だ。

組み込んでいくのは、ノーマルのシリンダーヘッドがそのまま使用できるキタコ製「145cc LIGHTボアアップKIT」。ø54mmグラビティ鋳造ピストンとシリンダーを基本とし、ハイカムシャフト付きのセットも用意されている。価格はハイカムシャフト無しが2万8600円、ハイカムシャフト付きが3万8500円となっている。
エンジンオイルを抜く
まず最初にエンジンオイルを抜いておく。エンジンオイルを抜く際は、必ずエンジンに触っても問題ない程度まで冷やしてから行なうこと。走行直後などエンジンが熱い状態で作業を行なうと火傷をする可能性があるので注意したい。
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(1)作業を開始する際は、エンジンが完全に冷えていることを確認する。エンジンが冷えていない状態で作業を開始すると、火傷を負う危険性があるので注意すること。
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(2)エンジンオイルを抜いていく。最初にオイルフィラーキャップを外す。基本的に手で回せば外れるはずだ。
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(3)次にクランクケースの下面にあるドレンボルトを外し、エンジンオイルを抜いていく。ドレンボルトは12mmのソケットを使用して緩める。
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(4)ドレンボルトを外す際は、必ずドレンボルトの下に受け皿となるトレーなどを用意しておくこと。
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(5)ドレンボルトをある程度まで工具で緩めたら、最後は手で回して外す。ボルトを外してオイルが出てきたら、止まるまで放置しておく。
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(6)オイルの排出が終わったら、フィラーキャップを取り付ける。フィラーキャップは手で締め付けるだけでいい。
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(7)ドレンボルトを締める前に、クランクケースに付着した古いエンジンオイルを、パーツクリーナーを染み込ませたウエスで拭いてクリーニングしておく。
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(8)クリーニングが終わったら、ドレンボルトのワッシャーを新品に交換して取り付けていく。ホールにセットししたら手で回し、締め込めるところまで締め込んでおく。
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(9)最後にトルクレンチを使って、24N・mでドレンボルトを締め付ける。これでドレンボルトの締め付けは終了。
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(10)オイルを抜く際にマフラーにオイルが付着していると、エンジンをかけた際にマフラーに焼けむらができることがあるので、パーツクリーナーでクリーニングしておく。
各部のセンサー類とエアクリーナーボックスを外す
グロムに限ったことではないが、ECU制御が行なわれている近年のバイクには様々なセンサー類が取り付けられている。シリンダーを分解する際には、周囲に取り付けられているセンサーの配線を取り外しておく必要がある。また、ここでエアクリーナーボックスも外しておく。
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(1)センサーなどのカプラー類を外していく。まず、車体左側にあるO2センサーのカプラーを外す。写真右親指部分を親指で押しながら引き抜く。
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(2)次に、シリンダーヘッド部分に取り付けられているEOTセンサーのカプラーを取り外す。まず、カバーをずらしてカプラーを露出させる。
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(3)カプラー右側のツメを押さえながら外す。
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(4)次にカバーをめくり、ACジェネレーターとクランクパルスの配線を露出させる。
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(5)白と緑の配線が繋がった2極のカプラーを外す。
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(6)カプラー上側のツメを押さえながら外す。
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(7)次に、青と黄の配線が繋がっているギボシを引き抜く。
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(8)両側をしっかり手で持ち、引っ張ると外せる。
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(9)次に、白と黄の配線が繋がっているギボシを引き抜く。
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(10)両側をしっかり手で持ち、引っ張ると外せる。
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(11)これでジェネレーターとクランクパルスの配線が全て外れたことになる。
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(12)次に車体の前方にあるエアクリーナーボックスを外していく。
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(13)エアクリーナーボックスの横に出ているホースは作業の邪魔になるので、上にまとめておく。
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(14)まず、吸気温度センサーのカプラーを外す。手前側がツメになっているので、このツメを押しながら引き抜く。
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(15)次に、エアクリーナーボックスの下側部分にあるコネクティングチューブのバンドを留めいているプラスビスを、バンドが動く程度まで緩める。手でビスの後ろ側を押さえておくと作業しやすい。
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(16)エアクリーナーボックスを留めているボルトを緩める。ボルトは左右に1本ずつあるので、まず左側を軽く緩める。使用するレンチは10mmだ。
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(17)左側のボルトを緩めたら、車体右側に周って右側から留めているボルトを緩める。このボルトはそのまま外してしまって良い。外したボルトを落とさないように注意すること。
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(18)再度車体の左側に回り、エアクリーナーボックスに繋がっているホースを外す。まず、ラジオペンチでホースバンドをずらす。
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(19)ホースバンドをずらしたら、手でホースを掴んでエアクリーナーボックスから引き抜く。ホースを傷つけないように注意すること
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(20)コネクティングチューブをスロットルボディから取り外す。少し硬いので、両手でしっかりと持って車体後ろに向かって引き抜く。
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(21)緩めておいた左側のボルトを外し、そのマウント部分の下を通っているハーネスを逃しながら手前にエアクリーナーボックスを引き出すようにして外す。
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(22)引っ掛かっているハーネスとマウントを外したら、エアクリーナーボックスの左側はこれで全て外れたことになる
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(23)車体の右側に周り、エアクリーナーボックス上部がフレームに引っ掛かっている部分を確認する。
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(24)コネクティングチューブにクランプされているホースとプラグコードを取り外す。
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(25)コネクティングチューブを引き出しつつ、エアクリーナーボックスを前側にずらすとエアクリーナーボックスがフレームから外れる。
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(26)コネクティングチューブを引き出していく感じで、エアクリーナーボックスを回していく。
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(27)その状態で車体左側に周り、さらに回すようにするとエアクリーナーボックスが外れる。
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(28)エアクリーナーボックスが外れた状態。再使用するので、安全な場所において保管しておくこと。
マフラーを取り外す
マフラーを取り外す。今回作業する車両にはオーヴァーレーシングプロジェクツ製の「GP-PERFORMANCE」が取り付けられているが、ノーマルマフラーでも基本的に取り外し方は同じだ。
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(1)マフラーを取り外していく。マフラーが完全に冷え切っていることを確認してから作業を始めること。この車両にはオーヴァーレーシングプロジェクツ製のGP-PERFORMANCEが取り付けられている。
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(2)まず、ヘッド側に取り付けられているフランジ側を少し緩めておく。このフランジナットを緩めるのに使用するのは、12mmのレンチだ。2個のナットでフランジは留められているので、このナットを交互に少しずつ緩めていく。
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(3)ナットははまだここでは取り外さず、フランジが少し動く程度までナットを緩めておくだけだ。
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(4)次に、サイレンサーを固定しているボルトとナットを緩めていく。このボルトとナットを緩めるためには、12mmのレンチが2本必要になる
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(5)ある程度までレンチで緩めたら、手でナットを回してその下のワッシャーと共に取り外す。ボルトはそのまま残しておき、少し車体の外側に引き出してサイレンサーにアソビがある状態にしておく。
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(6)サイレンサーの固定ボルトを緩めたら、フランジナットを取り外す。この時、エキゾーストパイプに負荷がかからないように片手で支えておくようにする。
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(7)フランジナットを取り外したら、ナットを取り外しておいたサイレンサーの固定ボルトを引き抜く。そのままマフラーは外れるので、ボルトを引き抜く際にエキゾーストパイプを片手で支えておくこと。
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(8)サイレンサーの固定ボルトを外したら、落とさないように注意しながらマフラーを下側に下ろしていく。
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(9)これでマフラーの取り外しは完了。マフラーを傷つけないように、安全な場所に移動して保管しておく。
スロットルボディを取り外す
スロットルボディにはスロットルケーブルが取り付けられているので、まずそれを外してから本体を取り外す。インジェクターも一旦取り外す必要があるので、作業中に傷つけないように注意したい。スロットルボディはマニホールドごと外して保管しておく。
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(1)スロットルボディを取り外していく。まず最初に、プラグキャップを取り外しておく。プラグキャップは引き抜くだけで取り外せる
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(2)外したプラグキャップは今後の作業の邪魔にならないように、上に持ち上げて引っ掛けておく。
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(3)インテークマニホールドに繋がっているホースを取り外す。まず、ホースの根本を留めているホースバンドをラジオペンチを使ってずらす。
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(4)ホースバンドの位置をずらしたら、ホースを引っ張ってインテークマニホールドから取り外す。
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(5)カプラーを外しておいたO2センサーに繋がる配線がクランクケース右側にクランプ留めされているので、このクランプを外してフリーの状態にしておく。
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(6)スロットルケーブルのカバーを取り外す。このカバーはボルト1本で固定されているので、8mmのレンチを使ってボルトを緩める。
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(7)固定ボルトを外すと、カバーはそのまま外すことができる。ボルトを外す際に、カバーを落とさないように注意する。
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(8)スロットルボディからスロットルケーブルを外す。スロットルケーブルを外す際は、スロットルドラムに引っ掛けられているタイコを外すことになる。
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(9)引き側のスロットルケーブルを外すために、ロックナットを緩める。ロックナット側に10mm、アジャスター側に8mmのスパナをかけて、ロックナット側を緩める。
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(10)ロックナットを回して緩めて、ホルダー部分との隙間を大きくしておく。
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(11)戻し側のケーブルも緩める。こちら側はロングナットのみになっている。
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(12)引き側のアジャスターナットとロックナットを回して緩め、ホルダーからケーブルを取り外す。
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(13)露出しているケーブル部分をスロットルドラムから外し、先端のタイコを取り外すとスロットルケーブルはフリーになる
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(14)戻し側もアジャスターナットを緩めてホルダーとの隙間を大きくして、ホルダーからスロットルケーブルを外す。
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(15)引き側と同様に、露出しているケーブル部分をスロットルドラムから外し、先端のタイコを取り外してスロットルケーブルをフリーにする。
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(16)スロットルドラムからタイコを外し、引き・戻し両側のスロットルケーブルをスロットルボディから取り外した状態。
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(17)インジェクターを取り外していく。インジェクターはボルト2本で固定されている。
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(18)インジェクターの固定ボルトを10mmのレンチで緩める。ある程度まで工具で緩めたら、最後は手でボルトを回して取り外す
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(19)スロットルボディ周辺のカプラーを外していく。カプラーは3つ接続されており、その全てを取り外す。
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(20)インジェクターに接続されているカプラーを取り外す。写真のように押しながら引き抜く。
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(21)次に灰色のソレノイドのカプラーを取り外す。
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(22)このカプラーも写真のように親指で押しながら引っ張ると外せる。
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(23)続いてスロットルポジションセンサーの黒いカプラーを取り外す。
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(24)このカプラーも写真のように親指で押しながら引っ張ると外せる。これで3個のカプラーが外れた。
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(25)3個のカプラーを外したら、先に固定ボルトを外しておいたインジェクターを取り外す。負荷をかけないように注意しながら、インジェクターを上に引き抜いていく。
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(26)インジェクターが外れた状態。先端にはOリングが取り付けられており、これがマニホールド側に残ってしまった場合は外して回収しておくこと。
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(27)インジェクターの先端部分に何かが接触すると壊れてしまうことがあるので、保護するためにビニール袋を被せて保護しておく。ウエスなどでくるんでおいてもよい。
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(28)スロットルボディとマニホールドをシリンダーヘッドから取り外していく。マニホールドは2本のボルトでシリンダーヘッドに固定されている。
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(29)10mmのレンチでマニホールドをシリンダーヘッドに固定している2本のボルトを緩める。
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(30)ある程度ボルトが緩んだら、手で回して外していく。ボルトが緩んでくるとマニホールドとスロットルボディが不安定になるので、片手で支えながらボルトを緩めて外す。
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(31)2本のボルトを外すと、マニホールドとスロットルボディが一緒に外れる。
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(32)マニホールドとシリンダーヘッドの間に入るスペーサーを回収しておく
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(33)スペーサーを回収したらスロットルボディの取り外しは終了。取り外したスロットルボディは、安全な場所に保管しておくこと。
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(34)スロットルボディを取り外したら、シリンダーヘッドに異物が入らないように養生テープなどを貼って、蓋をしておくようにする。
【KITACO虎の巻】JC92型グロムにボアアップキットを組み込む!第1回:【補器類の取り外し】 (82枚)