左右のブレーキレバーを握れば、自転車と同様に前後のブレーキが利くスクーター。ディスクブレーキの場合はパッドが摩耗してもレバーのストロークが変化しないため、キャリパー周りの変化や劣化に気づきにくいものです。しかしピストンの汚れやフリクションロスによってパッドの引きずりやフィーリングが悪化するのはスーパースポーツモデルと同じ。ちゃんと止まるからイイやと放置せず、定期的にチェックすることが重要です。
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操作感に変化がないからこそ確認が重要なディスクブレーキ

250ccのスクーター、ホンダフォルツァ(MF08)のフロントブレーキ。ABSが装備される前のモデルで、左ブレーキレバーを握るとフロントブレーキも作動する前後連動ブレーキを採用している。そのため3ピストンキャリパーを装着している。
ではなぜパッドのライニングが減っても遊びやストロークが変わらないかと言えば、ピストンのストロークがピストンシールの弾性を上回るとキャリパーからせり出していくからです。
ピストンがせり出すとキャリパー内部の容積が増えて、その分はブレーキマスターシリンダーから送り込まれるブレーキフルードによって満たされ、そのためマスターシリンダーのリザーバータンクのフルードが減少します。
したがってマスターシリンダーの点検窓を見てフルード面が低下していたら、リザーバータンクにフルードを継ぎ足すのではなく、ブレーキパッドの摩耗を確認することが重要です。
これを誤解してフルードを補充し続ければ、ライニングはどんどん摩耗してやがてキャリパーのバックプレートでローターを挟む、いわゆる「鉄板ブレーキ」状態になってしまいます。バックプレートはローターに対する攻撃性が高く傷だらけになってしまうため、一度鉄板ブレーキをやるとローター自体の交換が必要となるため注意が必要です。
通勤や通学など、日常の移動手段として使われることが多いスクーターは、スポーツモデルに比べてメンテナンスに対する意識が低くなりがちですが、タイヤやサスペンションやブレーキなど個々のパーツに対するメンテナンスの必要性には違いはないので、ブレーキの確認も怠らないようにしましょう。
シャラシャラと引きずり音がするのはキャリパーピストンの戻りが悪い証拠
摩耗したブレーキパッドの交換以外で、スクーターのディスクブレーキでも効果的なメンテナンスがキャリパーピストンの清掃と揉み出しです。
徐々にせり出していくキャリパーピストンはダストシールから先、パッドとの接触部分は露出した状態で走行中の汚れが付着します。ホコリや砂、跳ね上げた雨水や摩耗したパッド粉が付着することピストンの動きが渋くなり、ピストンシールとの接触面に働くロールバック効果が徐々に低下します。
本来であればブレーキレバーやブレーキペダルを離した際に、ブレーキパッドとローターには適正なクリアランスが生まれるはずですが、ピストンの戻りが悪く両者に引きずりが生じることがあります。
空走時にシャラシャラという引きずり音が聞こえてくる場合は、パッドとローターの摺動面に砂利や異物が挟まっている場合もありますが、キャリパーピストンの戻りの悪さを疑って確認することも重要です。
ピストンせり出し量は、キャリパーによって見やすいものと見づらいものがありますが、ライニングの摩耗量と相関関係があるのでリザーバータンクのフルード液量を参考にするのも良いでしょう。
2ポットや対向キャリパーはピストンの動きが揃っているかも確認する
キャリパーピストンを清掃する際は、キャリパーからブレーキパッドを取り外してブレーキレバーやブレーキペダルを操作してピストンを押し出します。キャリパーから外れてしまうとピストンを戻した後でエアー抜きが必要なので、清掃だけならピストンが外れない程度にしておくのがコツです。
汚れの首輪のように付着したパッド粉や砂利は、歯ブラシとキッチン用の中性洗剤で水洗いするのが簡単で効果的です。缶スプレータイプのブレーキ&パーツクリーナーも有効ですが、ピストンにこびりついた汚れに対しては中性洗剤の界面活性剤の方が有効である場合も少なくありません。
またシングルピストンキャリパーでは関係ありませんが、片押し2ポットキャリパーや対向キャリパーはピストンがバランス良く作動するか否かも確認します。
どこか1個のピストンだけフリクションが大きかったり、あるいは固着していれば、ブレーキパッドに加わる圧力がアンバランスになったり、傾いたパッドが部分的にローターに引きずるなどのトラブルの原因となります。
複数のキャリパーピストンがシンクロしてせり出すようにするには、押し出したピストンを洗浄した後に、ゴムと金属の両方に使える組み付けスプレーやシリコングリスをピストンに塗布してキャリパーに押し戻し、再度レバーやペダル操作でピストンを押し出したり、専用工具のキャリパーピストン用プライヤーでピストンを回す揉み出し作業が必要になる場合もあります。
しかし洗浄したピストンを押し戻したら、もう一度ブレーキを操作してピストンの作動状態を確認することで、レバーやペダル操作にリニアに反応するブレーキに仕上げることができます。
ピストンサビを早期発見するためにも定期的なチェックが有効
たかがスクーターのブレーキでそこまで神経質にならなくても……というライダーもいるかもしれません。鉄板ブレーキ直前でパッド交換すれば良いだろうと考える人もいるでしょう。
しかしピストンの作動性が悪化して、パッドとローターが引きずった状態が続けば、異音と共にフリクションロスの増加につながり、さらに汚れたままのキャリパーピストンにはサビが発生するリスクもあります。
鉄製のキャリパーピストンの表面には硬質クロームメッキが施されていますが、長期間に渡って水分が付着した状態が続くと、メッキ表面から浸入した水分によって点サビが発生します。そしてピストンシールとの接触面に点サビができてしまうと、ブレーキ操作時のフルード漏れにつながるためピストン交換が必要で、余計な部品代が掛かることになります。
鉄板ブレーキにしてもキャリパーピストンのサビにしても、すべてのバイクに発生するわけではありません。しかし、定期的にメンテナンスを行っているバイクとそうでないバイクを比べれば、当然ですが後者の方がトラブルが発生する確率が上がります。
そう考えると、ある程度の手間と時間は掛かりますが、愛車の定期検診代わりにキャリパーピストンメンテナンスを行うのは、相対的に見れば有効であることを疑う余地はありません。
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