HONDA Trail CT110(型式CT110B)1981年型のセミレストア物語 Vol.09

実作業が始まってしまえば、あっという間に組み立て&仕上げられる!?とは思っていました。ホンダ横型モデルのいじり経験は、それなりにありましたので、やっぱり「あっという間劇場」で一気に作業進行。それでもこのエンジンには、きっと何かがある?何かが潜んでいるだろう?なんて思いながら、恐る恐る作業に取り掛かりました。


前回

粘土質のドロンコがてんこ盛り!汚れが激しかったエンジン 

畑仕事や田植えの季節に使われていたのだろうとは思われたCT110ハンターカブ。クランクケースのフレームに隠れる上側や下側、エンジンガード内側の下側も、粘土質のドロで覆われていた。屋外でざっくり落としてから本格的なクリーニング開始。


外側だけざっくり洗って、本格的クリーンナップの段取り開始 

ドロ汚れはブラッシングをメインに落としてから、徹底的にエアーブローを行い、それからエンジン腰上を分解することに。クランクケースカバーは、エンジン用の耐熱シルバーでペイント予定。

数種類のスクレパーとワイヤーブラシを使い分け、粘土質のドロで汚れ切ったクランクケースを数時間に渡って磨き込みました。酷い油汚れ箇所には、あらかじめCRC556をたっぷり吹き付けてからブラッシング!


エンジン腰上は現段階でしっかり仕上げて好調を目指す 

エンジン腰上を分解したら、シリンダーヘッドを単品にする。バルブ周りを取り外して点検してみた。前オーナー曰く「走っていました」とのお言葉通り、比較的コンディションは良い雰囲気ですが……。


吸排気バルブの当たりを見る限り、メーターの走行距離通りで、過走行なエンジン特有の排気側バルブフェースがベタ当たりにはなっていなかった。当然に、バルブステムの曲がりや減りも無かった。


iB井上ボーリングさんへ持ち込み、ヘッド周りを内燃機加工修正していただくことに。まずは吸排気バルブのフェースを専用研磨機で磨き仕上げして頂いた。当たりが激しくてもフェース加工によって再利用できるレベルだ。


4ストエンジンの要「良い圧縮」はシリンダーヘッドから始まる 

スイスのミラ社製の高性能バルブシート加工機にて旧排気バルブのシートカットを行っていただいた。過走行ではなかったため、バルブガイドの摩耗は無く再利用することができた。


シリンダーヘッド工程は4ストエンジンの内燃機加工では特に重要な工程となる。バルブのアタリ位置はもちろん、アタリ幅にもノウハウがあり、ぼくの要望に応えていただくことができた。


シートカットによって旧排気バルブとバルブフェースの当たりが良くなると、アイドリング中の弾き音が力強くなる。例えば排気音はシトシトと湿った感じから、乾いて歯切れが良い音へと変化する。


吸排気バルブは、シートカットと擦り合わせが重要 

レーシングチューンを目指したエンジンなら、吸気バルブは外当たり、排気バルブは一般位置で依頼するが、今回は、両方とも一般位置で、あたり幅は両方とも0.8mmで指定した。

シートカットが完成したシリンダーヘッドの燃焼室。この状態でサンドブラスト→徹底洗浄してから組み立てるが、4ミニのレーシングチューンなら、特に、排気ポートの形状を変更すると効果大だ。


実は、シリンダー内径の一部にサビが出ていた。今回は、汚れ取り程度にホーニングをお願いしたが、次にエンジン分解したときには、オーバーサイズピストンへ交換したほうが良いと思う。


取材協力/ iB井上ボーリング(内燃機加工) www.ibg.co.jp


メタルペイントに特化したアレックスコートで高品位な耐熱ペイント 

シリンダーやクランクケースカバーは焼き付けペイントで仕上げようと思う。シリンダーやクランクケースカバーを耐熱ペイントで塗り直すことで、エンジンの見栄えがガラッと変化する。


カーベックがメタルコート専用として発売しているアレックスコートを頻繁に利用している昨今。純正調に仕上がりながらも、純正ペイントと比べて圧倒的に高耐久力を持つのが魅力のペイントなのだ。


シルバー、黒ともにアレックスコートは一液仕様。ペイントガンで塗りそこねが無いようにしっかり何度も吹き付け、高温乾燥器のCVジュニアで乾燥180度設定に達してから1時間の乾燥。それを2回繰り返した。


純正調のシルバーと同じように、メタリック感が無い「銀」のように仕上がるアレックスコート。サンメカライフを楽しみたいのなら、設備投資してDIYペイントにチャレンジしてみよう。楽しいですよ!


取材協力/カーベック(Alex Kote/CV-Junior取り扱い) www.carvek.jp


エンジン腰上の復元組み立てで、コンディションが改善されれば……… 

排気バルブにだけ組み込まれるバルブステムシール。新品部品に交換してから組み立てよう。吸排気バルブをセットする際には、ステムシャフト部分に組み立てオイルをしっかり塗布しよう。エンジンオイルで良い。


エンジンの分解段階でピストンピンとコンロッドのスモールエンドやコンロッドのビッグエンドにガタがあったら、エンジン腰下も完全分解していたが、両端にガタは無く正常を保っていて良かった。


ピストン本体はΦ51mmのCT110純正部品の再利用だが、ピストンリングは純正新品部品へと交換した。次回、エンジン腰上を分解したら、ハイコンプ仕様の郵政MD90用を組み込んでみたいですね。

工具ショップのストレートから発売されている樹脂製ピストンリングコンプレッサーが最高に使い易い。特に、ホンダ4ミニエンジンの組み立て時には、もはや欠かせない専用工具となっている。


この系列エンジンの最終モデルは国内郵政仕様のMD90だと思われる。郵政車は基本廃棄前提なので、もはやこの系列エンジン用部品にもゴソウダン扱いが増えている。将来のために補修部品は確保しておこう。


エンジンが完成すれば試運転を行い「膿だし」へ突入 

クランクケースはワイヤーブラシによる磨きがメインで、シリンダーの黒とエンジンカバーは耐熱塗料でリペイント済。シリンダーヘッド本体は、アルミナ→ガラスビーズでブラスト仕上げにした。十分美しいエンジンなのですが……



POINT
  • スーパーカブ×メンテの世界・乗りっぱなしで納屋に放置されていたかのようなホンダCT110ハンターカブの国内仕様車をセミレストアで楽しんでいます。国内販売された当時の名称は、ホンダトレールCT110。1980年に輸出向けで発売開始され、その後、2000年代まで生産され続けたロングセラーモデル。CT125ハンターカブの登場と大人気によって、ご先祖様のCT200/CT90/CT110も再注目されている。まだまだ補修部品が手に入りやすいので、今のうちに完全整備して楽しもう!

以前のマシンオーナーさんからお話を伺うと「エンジン始動はできて、ヘンなメカニカルノイズも出ていなかったです」とのお話しだった。そこで、このセミレストアでは、外観仕上げをメインに作業進行することにした。

4ストエンジンのコンディションは、シリンダーヘッドコンディションに左右されることでも知られている。「良い圧縮」を得るには、吸排気バルブまわりが重要である。バルブフェース加工やシートカット&擦り合わせは必要不可欠と考え、井上ボーリングさんへパーツを持ち込んだ。「旧排気バルブ周りのケアによって、エンジンコンディションは様変わりする」というのがぼくの考えだが、今回、唯一気になったのが、スパークブラグのネジ山に「補修痕」があったことである。本来なら、リーチの長いプラグ(NGK製ならDプラグのES=ロンナグリーチ)が標準仕様なのに対し、このエンジンには、短リーチのD7HSが組み込まれ、シリンダーヘッド側のネジ山半分は、完全に余っていた。

ちなみにシリンダーヘッドのネジ山「奥半分」は、まったく傷んでいなかった。そんな状況ながら、ネジ山修正用のインサートが挿入されていたのだ。インサートを除去して修理依頼しようとも考えたが、ロングリーチプラグの「ねじ山半分」が、シリンダーヘッド側のネジ山に掛かっているので、このままロングリーチプラグを使い続ければ、トラブルは起こらないと判断。プラグ穴はこのままで、作業進行をお願いした。個人的な意見を申せば、このような不具合は気持ち悪いので、別途スペア部品のシリンダーヘッドを準備しておきたいところだ。



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