カスタムパーツが星の数ほど存在するホンダ4ミニの世界。旧型の横型エンジンでも縦型エンジンでも、はてまた現代のFI系横型エンジンでもそれは同じだが、パワーアップに合わせて強化しておきたいのがクラッチユニットだろう。ここでは、自動遠心式クラッチを装備する旧シャリィに、12Vにモデル用の後期型純正クラッチを「改造」強化して組み込んだ様子をリポートしよう。


基本寸法が同じなので流用可能な旧型と後期型の遠心クラッチ

チューニングパーツとして以前は市販例があったが、現在は見当たらないのが自動遠心クラッチ用の強化型クラッチ。純正流用でも作れないことは無いので、ここでは敢えて自作にチャレンジしてみることにした。非力なエンジンには必要無いかも知れないが、ボアアップエンジンには必要な装備だと思う。オーバーホール用の純正新品部品が手元にあったので、チャレンジしてみた。


使ったパーツはスーパーカブ90(HA02系)用の純正遠心クラッチ。コイルスプリングの交換によってチェンジフィーリングは調整可能だが、ここで行なうのは、ドライブプレート外周にセットされるウエイトの枚数変更だ。アウターの溝はウエイトの逃がしだ。

スーパーカブ90の遠心クラッチは50cc用と比べて強化仕様。今回はその90用をさらに強化してみた。ドライブ外周のウエイトプレートだが、4箇所すべてに「もう1枚ずつ増量」することにした。アウター側のフトコロにも余裕があった。


通称「ひよこ」ウエイトを増すことで押し付け力を強化できる

スーパーカブ90用のウエイトは1箇所7枚で全28枚。ちなみにカブ50のノーマルウエイトは1箇所4枚で全16枚仕様。一枚分幅が広がっても物理的には問題無いことがわかった。


スーパーカブ90用の純正ウエイトプレートを4枚追加購入した。ドライブプレート外周のウエイトが収まる溝の幅をもう1枚分広げてやれば、8枚×4=32枚ウエイト仕様が完成する計算なのだが、果たして……。


スーパーカブ90用純正クラッチのストッパーリングを開放して、ウエイトプレートを取り外す。エンジン回転の上昇によってこの、ウエイトが遠心力で広がりクラッチプレートを押し込み、クラッチ滑りを抑制する仕組みだ。

ドライブプレートの溝加工を終えたら、追加一枚分≃計8枚のウエイトが溝の中に納まり、しかもスムーズに振り子のように作動することを確認しよう。動きが渋かったり作動中に引っ掛かるのはクラッチ滑りの原因だ。


増量(増枚)ウエイトに対応してホルダー部の幅を切削拡張する 

ひよこプレート追加分の溝加工は、フライス盤にて行なった(ディスクグラインダーでも加工できないことは無さそう?すべて自己責任でチャレンジ)。さほど精密な加工ではないため、クランプ段取りは簡単に済ませた。


組み込んでしまえば強化内容を判別できないが……

ドライブプレートの溝拡大加工を終えたらウエイトプレートを仮組みした状態でストッパーリングに通していく。ウエイトプレート数が多い分、この作業が意外と面倒なのだ。リングをカチッとセットしたら、ウエイトがスムーズに作動するか確認しよう。


ドライブプレートの溝の中にセットされたウエイトプレート。クランクシャフトの回転力によって遠心力が生まれ、ウエイトプレートがクラッチプレートを押し込むことでクラッチの滑りを抑制する仕組みだ。旧横型エンジンはローラーウエイトだった。


ハイギャード化も想定してプライマリードライブギヤを18T仕様に変更(ノーマルのスーパーカブ90は17T仕様)。もちろんプライマリードリブンギヤも同時に交換する。左がC90改で右がCF50用の純正部品。




POINT
  • ポイント・通常のオーバーホール用新品部品が手元にあったのでトライしましたが、一般市販の強化クラッチの方がリーズナブルかつ交換作業のみなので、明らかに楽だと思います。このような方法もある、程度に知って頂ければと思う。 

ギヤチェンジがスムーズかつスポーティな走りが可能で、しかもハイパフォーマンスパーツが数多く存在する「マニュアルクラッチ」は、魅力的なスペシャルパーツである。そんなプレミアムパーツを組み込んでみたい気持ちは確かに理解できる。特に、レースシーンやハイパフォーマンスエンジンの場合は、マニュアル式かつ二次クラッチ仕様がベストだ。しかし、お気楽なチョイ乗りツーリング仕様となると「マニュアルクラッチじゃなくてはいけない!!」なんてことはまったく無く、逆に、遠心クラッチ仕様の方が、のんびり楽しむことができる。一時期はメーカーワークスのモトクロッサーやエンデューロバイクにも、遠心クラッチが組み込まれていたが、ぼく個人としても、楽々操作で片手運転も可能な遠心クラッチ仕様は大好物。正直なお話、現代のモデルに多い、発進時とギヤチェンジ時のクラッチが2モーションになっている「湿式多板式の二次遠心クラッチキット」が登場すれば、個人的には積極的に取り付けてみたいと思うほどだ。

さてさて、ここではエンジンチューニングに対応するため、純正遠心クラッチの強化実践を行おうと思う。ちなみに88cc程度でしかもキャブレターがPB18なら、どんなに頑張っても最高出力は10馬力未満なので、ホンダ純正C90用クラッチを使えば滑るようなことは無い。ちなみにこの強化加工を実践する前に、シャリィ純正の旧型(ローラーウェイトタイプ)遠心クラッチで走行してみたが、キック始動時のクラッチ滑りが明らかだったので、4ミニ愛好家の友人から頂戴したC90用ホンダ純正クラッチを組み込もうと考えた。フリクションディスクやコイルスプリングを新品部品に交換するのと同時に、「ウエイトプレート増量チューニング」も楽しんでみた。また、ホンダ純正遠心クラッチには、一次減速比がハイギャードな18×67T仕様と一般型の17×69T仕様の2タイプがある。ドライブプレートとの相性もあるため、ハイギャード仕様で強化タイプの純正遠心クラッチを購入したい場合は、CRF70用。一般タイプで良いのならC90(HA型)用でパーツを購入すれば良いだろう。

兄貴分モデルのパーツを使った純正流用チューニングで、純粋にクラッチ強化を実践しつつ、さらにウエイトプレートの増量によって高回転時の滑り抑制を狙ったカスタマイジングがここでのテーマである。ドライブプレートを切削加工する際には、4箇所の溝の幅や深さが同一になるように心掛けよう。いい加減に削ってしまうと、サイズがバラバラになり、高回転時の「振動原因」になることもあるので要注意だ。



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